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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐06‐8 茨模様

 

 治療院から広場に出ると、ここもここで大騒ぎである。

 騎士達の大半とアースター達神官が集まっており、馬を用意してどこかへ向かう準備をしている。


 皆殺気立った雰囲気を纏っていて、何が起きているのか気軽に聞くのは難しそうである。セラスは今はできることをしようと、目的の馬車に向かおうと......

「セラス!」

 アースターから大声で呼び止められた。


 駆け寄ってきたアースターがセラスの耳元へ顔を寄せる。

「わたし達は浄化に向かう。サクスムだが、恐らく彼の解呪は彼らには無理だ。魔力ポーションをあるだけ持って君が対処してほしい」と小声で告げられる。


 セラスが驚きに目を見開いていると、アースターの手が頬を軽く触れるようにほつれ毛を耳にかけてくれる。


「サクスムを頼む」


 アースターの言葉に顔をあげれば、澄みきった水色の瞳がセラスを真っ直ぐ見つめていた。




 セラスが治療院に戻ると、3人の神官達は解呪を続けているのだが、その表情はかなり危険な状態を表していた。


 魔力切れ。


 普通の魔法であれば魔法は続かない。だが、解呪は生命力を利用してそのまま継続してしまう。彼らの表情は既に魔力切れを起こしかけているものだ。


「御三方とも、すぐに魔力ポーションを!」


 セラスは3人の手に魔力ポーションを強引に握らせる。


 3人とも危険な状態に陥っていたことに気付いていなかったようで、セラスの言葉と握らされた薬瓶に一様に驚いた表情を浮かべる。


 セラスは解呪の魔法が中断されるのを見て、慌てて解呪の呪文を唱える。最初の村で少年に行ったようにサクスムの手をとり、自身の手を重ねた。


(!? 魔力が吸い取られる...... これはただの呪いではない?)


 解呪を行うことで当然魔力は消耗するのだが、それとは別にサクスムの指先からセラスの魔力が持っていかれる感触がある。これは一体何だろうと思うのだが、その力に反抗することに気力を使わないと解呪が進まない。


 途中何度か魔力ポーションを飲みながら解呪を続けるのだが、徐々に魔力不足よりも体力と気力が辛くなってくる。


 ─ ………


(えっ? 今、何か魔力が...... うそっ、体が軽い......)


 セラスが体力的に限界を感じていた今、何かが起きた。何が起きたのかはわからない。が、自身の魔力量と体力が回復していることを感じる。

 しかも、サクスムの指先から感じていた魔力を持っていかれる感触も今は何故かなくなっている。

 だが、戸惑っている余裕はない。せっかく魔力体力ともに回復しているならば、一気に解呪を進めないければと、セラスは魔力を解呪へよりいっそう注ぎ込んだ。




 どれくらい集中していただろうか? サクスムの体が白く淡い光に包まれたと思うと、スッと光が引いていく。サクスムの手を確認すれば茨模様は消えていた。


「「「おおぉ、セラスさん、やりましたね!」」」


 神官達が魔力ポーションや体力回復ポーションを手に駆け寄ってくる。彼らは先の魔力切れからまだ復調できておらず、セラスへポーションを手渡したりして補助してくれていたのだ。


「ありがとうございます。わたしのことよりもサクスムさんの容体を確認しましょう。解呪はできたと思うのですが、お顔の色が......」


「いや、サクスムならそれこそ治癒と体力回復ポーションで後は大丈夫です。セラスさんこそポーションを飲んでください。この解呪は大量の魔力と高い技量が必要な呪いですから」


「あの、これは一体何の呪いなのですか? 茨模様の呪詛模様も学んだ覚えがないのですが、何故かわたしの魔力を吸い取ろうという力を感じたのですが?」


「──恐らく魔力溜まりが原因です。詳しくはアースターに聞いてみてください。そろそろ浄化も終わって戻ってくるはずですから」





(──すまないね、セラス。僕の不手際で君にも負荷をかけてしまって。いろいろ間に合ってよかったよ。君に何かあったりしたらナギサが悲しむからね)



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