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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐06‐2

 聖都イスの市壁を離れ、馬車は速度を上げて進んでいる。

 長距離移動用の魔導馬車はやはり移動速度が別格だ。

 窓から見える風景が、流れるというよりも、消えるような速さで過ぎていく。

 高速移動しているはずだが、馬車の揺れは少なく、不快というよりも心地よい揺れ具合だ。


「間もなく野営予定地点です」


 御者台から声が掛かる。いつしか眠っていたようだ。何か必要な作業や準備はないかと慌てて神官達に尋ねるが、降りてからで問題ないから、今は体を休めておくようにと気遣われた。


 今夜は、いや浄化作業が行われる間は野営地を拠点とすると聞いている。セラスは野営が初めてである。前回の巡回時や今回も事前説明は受けているが、野営を経験したことがない為、なんだか落ち着かない。何かしておいた方がよいことがあるのでは、とついつい考えてしまう。


 本来、秋の巡回は各村の徴税が目的だ。故に村を巡る為野営は行わない。街より遠く離れている村であっても、廻る順序の工夫と魔導馬車の利用で野営することがない。もちろん不慮の事故はあり得るので、いつでも野営ができるよう準備はされている。


 が今回、最初の目的地は聖都イスより遠く離れた南の地点。村も少し離れた場所にあるのだが、その村を拠点とすると今回の目的達成に支障が出る。拠点から個々の目的地への移動時間の問題と、あまり魔力溜まりのことを知られたくないという事情の故だ。

 この為、村からは離れ、いくつかの魔力溜まりに近い場所に野営地を設定しながら移動することになっている。


 あれこれ考えているうちに、馬車は野営予定地に到着。セラスも他の神官達とともに降り立ち、設営の準備に入る。

 とはいっても、野営地の設営は騎士達を中心に手慣れた様子で行われていく。見習い達や神官達が言われたことを手伝っているうちにあっという間に設営が終わる。

 最後に野営地の周りに等間隔で魔導馬車を配置。魔導馬車の結界発生装置を使い、野営地全体を覆うことで本当の意味での簡易拠点完成である。


 魔導馬車の高速移動機能を利用したとはいえ、国の南端までの行程。気づけば夜も遅い時間になっている。

 今日はこのまま休み、明日早朝より活動を始めると班長のアースターから皆に伝達される。

 あたりを観察していると騎乗した騎士達が数人、森のほうへと走り去って行く。騎士達は周辺の調査等があるのだろうか?


 気にはなるがセラスは他の見習い達と食事の手伝いに走り、食事やなにやらとしているうちに気づけば就寝となっていた。



 ─翌朝─


 10の節と言えばもう秋。陽の昇る時間も遅くなっている。陽が昇る前、周りが薄ぼんやりと明るくなってきた頃、起床の合図である。皆が身支度を行う中、今日の予定が改めて伝達される。


 それによると、この拠点では6か所の魔力溜まりの浄化を予定している。2班を編成し、それぞれが3か所を担当するという。

 全員を2班に分けるのではなく、野営地にも人を残す。彼らは次の野営地での主力となる。ただ、今日何かあればその補佐・予備としての役割もあるという。


 昨日の騎士達がいつの間にか戻ってきていた。アースターと何やら相談している。いや、報告を受けているのか?


「この周辺において危険度の高い魔獣は排除済みとの報告だ。予定通り2班で浄化を行う。残った者達は順調に行けば次野営地で担当してもらうことになる」


 今日中に6か所とも浄化できればよいが、それは実際にやってみないとわからない。ただ、魔獣との大きな戦闘は避けられそうなので、それだけは朗報だ。


 セラスは班長であるアースター率いる第1班となった。

 まさか班長自らがいきなり浄化作業に入るとは思っていなかったため、班編成の発表で若干驚きの声があがっていた。




「アースター様、よろしくお願いします」

「ああ、セラスさんか。こちらこそ頼むよ。確か君は浄化に解呪も使えたよね?」

「はい。解呪はともかく浄化は実際に使う機会がないので、どれほどお役に立てるかわからないですが」

「まぁ、そうだよね。神官見習いで浄化経験あり、って、そちらのほうが問題だからね」


 セラスがアースターへ挨拶を行うと、アースターからはこのような場であってもにこやかな表情で挨拶を返される。しかも浄化や解呪を期待されているようなことまで言われ、セラスは若干戸惑ってしまう。


 今回の巡回班は、神官達すべてが浄化も解呪も行えるような人達ばかり。確かに見習いで浄化・解呪ができるのはセラスだけ。だけど、これだけの神官達が揃っている中でこのようなことを言われると、期待されているという嬉しさよりも、この先何があるのか不安のほうが勝ってしまう。本当にその魔力溜まりって、まだ小さくて脅威度が低いものなのかと不安しか感じない。




 朝食を手早く済ませると、早速出発である。騎士達は自身の馬に、神官達は連れてきた予備の馬を使う。ただ、予備の馬はそれほど頭数を用意できるわけでもなく、どれも二人乗り。セラスは何故かアースターと相乗りになった。


「アースター様、先程挨拶したばかりですが...... 重ねてよろしくお願いします」

「ははっ、そんなに畏まらなくてもいいから。それより今日わたし達を乗せてくれるこの馬に感謝しておかないとね」


 確かにそうだ。セラスとアースター、大人二人の重さを引き受けて、今日一日移動してもらわないといけないのだから。通じるのかわからないが「お願いね」と一言かける。既に馬上にいたアースターが手を引いて馬にまたがるのを助けてくれる。


 アースターは皆の準備が整うのを見届けると出発の号令をかけた、



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