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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐05‐1 治療系魔法

 10の節は今週で終わり。今節最終週の魔法学は午前中に終えたところだ。


 これまでに覚えた魔法は、魔導書の格納、鑑定、防御魔法2種、治療系魔法3種の計7種類。

 鑑定魔法は錬金学で思いがけずも手に入れた魔法。残り6つは魔法学の講義で覚えたものだ。この中で治療系魔法以外は無属性魔法。属性持ちでなくても、魔力と技量があれば使える魔法だ。


 だが治療系魔法は異なる。


 治療系魔法は属性魔法なのだ。それも“聖属性”の。いくつかある属性の中でも神官以外ではあまり所持していない属性だと聞いている。

 この世界では魔力は生まれつき持つもの。だが属性を生まれつき持つものはおらず、学舎の学生レベルでは属性を持っているものなど限られる。


 しかし、先週の講義冒頭でマグナルバは治療系魔法の呪文を教えると言った。『履修説明でも述べたとおり、防御と治療、この2つはしっかり身につけてもらわないと困る』と改めて言われたのだ。


 属性問題をどうするのだろうと不安になるのは皆同じようで、その気持ちが表情に現れていた。

 ナギサもひょっとして噂に聞いた、ひたすら呪文を唱えていつか使えるようになる、という方式なのか? と不安を覚えながら彼女の説明を聞いていたのだが、


『聖属性を持っていないものには、神殿契約を行ってもらう。この契約を行うことで聖属性が“仮”で付与される。そして“これから10年間、正しく大神殿に属していれば契約満了後聖属性が自身のものとなる”という契約だ』


 と、あっさりと解決方法が示された。


 部屋の中は一瞬静まり返り、その後は当然のように質問とおしゃべりの嵐だ。


 ナギサは驚くとともに納得もした。ここ大神殿では神官見習いは治療系魔法が全員使えると聞いている。どうやって属性問題をクリアしているのか不思議に思っていたのだが、こういう方法で対処していたのかと。

 実際、魔法学を受講している神官見習いと神官に皆が尋ねたところ、神官見習いになると最初にこの契約を結ばされたそうだ。




 その後は順に―魔導書を渡された時と同じ―マグナルバに呼ばれ神殿契約を行ったのだが、ナギサがマグナルバに呼ばれその前に立つと『ふむ。ナギサ、君は...... 不要だな』の一言だった。


 ナギサ自身は唖然というか、いつ? という自問で、自席に戻ってからも黙り込んでしまい、カエルにひどく心配されてしまった。


 マグナルバとの会話は遮音・遮蔽の結界魔法が張られているため、皆には伝わっていなかった。実際、ナギサもカエルや他の学生達とマグナルバの会話はまったく聞こえなかった。なので神官と神官見習い以外の学生のうち、ナギサと同様に神殿契約が不要だった学生がいたのかどうかもわからない。

 あえてそのことを口にする学生もおらず、聖属性を付与されたからといって何か外見上の変化があるわけでもなく、ナギサが既に聖属性を持っていたことに気づく者はいなかった。


 冷静に考えれば、この世界に転移した時に与えられた《女神》の加護であろうと想像はつくのだが、どこまで属性を与えられているのか少し気になるナギサであった。




 先週の講義はこんな状態で終わり、先程の講義では必要となる実際の呪文を教えられた。

 呪文を魔導書へ書き写し、すぐに使えるようにと暗記にも努める。神官と神官見習いの二人は既に使える魔法なので、防御魔法の復習を行っていた。


 教えられた呪文は、治療魔法のうち基本中の基本である怪我治療・病気治療・解毒、この3種類。そしてこれらの魔法も他と同じく技量と魔力量がものを言う。治療効果を上げる為にはひたすら練習して技量を上げるしかない。治療効果が低い間は、治療魔法を持続させる必要があるので魔力量も必要だ。技量が上がれば魔力量の消費も少なく、治療効果も高くなる。ひたすらこれも練習あるのみだ。


 練習するにも怪我も病気もしていなので、ここでどうやって練習を? と思えば、健康なものにこれらの魔法をかけても何ら問題はないらしく、皆自分自身にかけたり、友人にかけたり、とそんな練習方法をとるそうだ。


 だがここで、ひとつとても大切なことがあるとマグナルバから忠告を受けた。


『治療系魔法は際限がない。術を掛け続ければそれだけ治療効果が増す。大半の魔法は魔力切れで術が続かなくなるが、治療系魔法は異なる。己の生命力を使って術がそのまま継続してしまう』


 この問題がある為、神殿の治療院では必ず二人以上で治療を行うそうだ。遠征時も緊急でもない限り一人で治療は行わせないらしい。過去、この為に亡くなった神官が少なからずいるという話だ。



(ーー怖い)


 自身の魔力残量を上手く把握できない自分がとても危険であることに今更ながらに気づく。

 未熟な己が治療魔法を使い、治癒するまでと無理をすれば、気づかないうちに己の生命力を削っている可能性があるということだ。そして、それは死に直結する。


 ナギサは一人この魔法の危険性を考えていたが、他の者たちはそこまで危険を感じないのか『一人でやらなければいいんだよね』とあまり気にする様子を見せなかった。




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