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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐03‐5 ヴィアとマギー

 

 夜も更け、ここはクラーヴィアの私室である。

 クラーヴィアとマグナルバの二人がゆったりとソファでくつろいでいる。


「ところでマギー、今秋学期の魔法学の生徒はどんな感じかしら? 今日から講義よね?」

 クラーヴィアはティーカップをそっとテーブルの上に戻す。


「そうだな、なかなか楽しめそうだ。神官と神官見習いもいるし、今年の春入学の生徒もいるしな」

「春入学の...... それは優秀ね。必須講義をすべて終えて、あなたが認めるだけの魔力量を持っている、ってことでしょ?」


 マグナルバは手にしたグラスから琥珀色の液体を少し口に含む。

「ん、この酒、まろやかで口当たりがいいがかなりキツイな。ヴィアがこんな酒を持っているとは驚いたな」

「ふふ。それはリューク様からよ。マギーが来たときにでも出してあげて、って」

「納得。だが、それならわたしに直接くれればよいものを」

 マグナルバの言葉にクラーヴィアはクスクスと笑うのみ。


(ま、リュークはそういうやつだよな......)

 マグナルバはリュークの琥珀色の瞳を思い浮かべ一人納得する。


「春入学の生徒は二人。ナギサがその一人だな。あれから彼女について何かわかったのか?」

「手がかりなしね。ウォーリがひどく気にしていて、かなり広範囲に調査をしているようだけど......」


 クラーヴィアからは特に目新しい情報は何もなかった。ナギサが優秀であることはウォーリから報告が上がっている。ウォーリは彼女がどこかの富裕層の子女と当たりを付けて情報を探っているがまったく進展していないそうだ。



「ナギサといえば昔、白い髪色に憧れていてな」

「――どうしたの急に? マギーの紅い髪、とても綺麗で似合っているのに」

「いや、本当に昔、子供の頃なんだけどな。鬼姫おにひめと白銀の乙女に憧れていたんだ」

「『白炎の鬼姫』と『白銀の乙女』、どちらも昔語りよね。懐かしいわ。二つのお話に共通しているのは確かに白い髪の少女ね」


 肩までの白い髪と紅い瞳が印象的な少女が魔法を駆使して友人達を守り抜く。『白炎の鬼姫』はそんな内容の昔話。その少女が力を揮う時の様がとても美しくて憧れた。自身が紅い瞳であることもあって、妙に親近感を持ったというのもあるが、その分白い髪であればと周りを困らせたものだ。


『白銀の乙女』の主人公は白くて長い髪。ただし瞳の色は煌めく黄金色。魔術よりも剣術に優れ、その技で村や旅人を襲う魔獣と戦った話が伝わっている。


 どちらもシンプルな昔話なのだが、子供の膨大な想像力が加わって壮大な魔法と剣の物語としてマグナルバの中では存在している。


「じゃぁ、ナギサは宛ら鬼姫、ってとこかしら?」


「みかけは、な。髪色と瞳の色、それとあの魔力量は当てはまるな。だが、“鬼”というのはな......」


 “鬼”鬼属、もうそれは空想上の種族ではと疑われるほどお目にかからない。昔の文献では現れるので種族としては存在するらしい。だが、その外見上の種族的特徴というものがはっきりせず、能力も膨大な魔力量を持っている、ということ以外伝わっていない。このヴィルディステ聖国ではそもそも人属以外が少なく、この聖都でもあまりみかけない。それでも獣人属や小人属はまだ見かけるが。それ以外の種族は旅商人などで稀に見かけるぐらいだろう。仮に鬼属が身近にいたとしても、その特徴が不明な今、きっと気づかないし気づけない。


「どちらも昔語りでは最近はあまり流行らぬ物語だ。わたし以外にナギサを見てそんなことを思う者もいないだろうな」


「そうね。マギーが口にするまでわたしも思い出しもしなかったから」


 クラーヴィアがティーカップを手に取り口をつける。マグナルバはグラスをテーブルに置き、そんなクラーヴィアを静かに見ていた。


「ねぇ、マギーはナギサさんが気になるの?」


「ん? ヴィアこそ気にならないのか? 結界をかいくぐって女神像の前に突然現れたんだぞ。記憶喪失でコーマすら知らない。なのに少し訓練しただけで使いこなし、魔力量は膨大。そして私たちですら拒む鑑定阻害。気にならないほうがおかしいだろ?」

(おまけにあのリュークの肩の入れようだ)


「気になるわよ。《女神》様がきっと使わしてくれた子だと思っているもの。でも、どう接していいのか、何を話せばいいのかわからないのよ。それに......」


「それに?」


「最初に嘘をついたでしょ? バツが悪くて...... どうしよう、マギー?」






ヴィアの悩み。マギーの気分は知らんがな! です。


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