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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第一章】

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33/298

1‐12‐1 それぞれが思うこと



△▼ ナギサ


 明日から秋学期が始まる。あっという間の半年間。実際はもう少しか?

 クラーヴィアの部屋で目覚めたのは、確か3の節だったはず。そして明日からは10の節だ。


 《女神》の手伝いをすることを条件に、この世界に来たはずなのだが、一向に《女神》からの接触がない。

 そのため、少し前までは、本当にこの世界が《女神》が連れてきてくれた世界なのか自信が持てなかった。

 だが、療養棟を出て学舎寮に入り、日々生活するうちにあちらこちらで見かける女神像や肖像画。見間違えることもなく、それは《女神》だった。誰にも尋ねることができなくとも、ヴィルディステ聖国の主神として皆が崇める女神像のかんばせは、万象の狭間で己に声をかけてきた彼女と同一だ。このおかげで、ここは間違いなく《女神》が招き入れてくれた世界なのだと、自分の中で少しだけ納得が出来た。


 とは言え、『次に会う時にお話しましょう』そう言って別れた後、一度も会えていない。言葉すらない。ここがその世界であると納得すれば、それはそれ故にどうすればいいのか、不安と戸惑いしかない。世話を焼いてくれる周りの人々を本当に信じていいのか、頼っていいのかすら判断がつかなかった。


 そんな不安と疑心暗鬼にまみれていたはずなのに、気づけは、すっかりここの生活に慣れて楽しんでいる己がいる。




 こちらに来て初めて目覚めた時、己の容姿が十歳ころのものに戻っていたのには、とても驚かされた。何故? と今も思うのだが、神殿内で倒れていた“身元不明の怪しい大人”としてではなく、“病弱な記憶喪失の少女”扱いをされ、ある意味不自由なく日々を過ごせている。

 事実異世界へと渡ったことでかなり体力を使い、加えて体質も変わったようで、しばらく療養棟で過ごせたのはありがたかった。


 そして、何よりも髪色と瞳の色。

 元世界では、隠さなくては普段の生活が息苦しいものだった。でも、ここではそれがまったくない。セラスに尋ねた時も何故そんなことを聞くのか、気にするのか、といった表情と言葉だった。セラスの言葉を最初は素直に信じられなかったが、学舎に入り多くの人を見かけるようになれば、気にしている自分がおかしいぐらい。


 茶系の髪色が多いが、金髪に黒髪はもちろん、真っ赤に槐色、緑や青と軽く見渡しただけでも目に入ってくる。瞳の色も茶系が多いけど、青に緑に黒と多種多様だ。そういえば、紅い瞳の神官らしき人を見かけた。燃えるような深紅の髪色に紅い瞳、思わず凝視してしまった。とても堂々とした立振る舞いが素敵で、しばらく目で追ってしまったぐらいだ。

 だから、この悩みがもう悩む必要のないことだと気づいた時、自分の中で何かがスッキリと落ち着いた。


 が、落ち着いたから自分の髪色が気に入ったかと言われれば、それはまた別の話だ。


 先日のリュークの言葉があっても、やはり己の白髪が苦手である。ただ、あの時のリュークの一言『この世界では』が気にかかる。あれはどういう意味だろう。考えすぎなのかもしれないが、リュークには私がどこから来たのか知られている、そんな気があの時一瞬した......。




 髪や瞳の色で悩むことが減った分、《女神》に会えていないことが余計に気になってくる。気になる、ではないな。気がかり、不安、そんなもやもやとしたものが心の中で大きくなっている。


 《女神》にどうやったら会えるのか、誰に聞くのが一番か。気づけばそのことを考えている己がいる。

 誰に、といえば当然、巫女姫であり国主のクラーヴィアであろう。だけど、このクラーヴィアにも会えていない。彼女とは最初に目覚めた時以来一度もだ。このヴィルディステ聖国のトップだと考えれば、おいそれと会える相手ではないのは理解できる。だが、“巫女”である彼女ならば、“神”と連絡を取る手段を持っていそうな気がするので、なんとか会いたいと思ってしまう。


 そうは言っても、国のトップに会いたいと一学生が願うとして、どこで受け付けてもらえるのか? 会いたい理由を尋ねられたら、それこそ自分が困る。


 そうなると、次善は神官長か。神経質そうで気難しそうな人物だと思っていたが、先日の薬草園。リュークとはとてもくだけた雰囲気だった。あの雰囲気の時なら「《女神》の声を聞くには」って普通に聞いたらなんとかなりそうな気がする。気がするのだが、神官長も個人的に会話をする機会など思いつかない。学舎や洗濯場の手伝い時に、たまに見かける神官長はとても忙しそうである。目の端に入り振り向いた時にはもういない。神官長からの呼び出し自体も、コーマの確認の時以来一度もない。


 いくら考えても《女神》に会う手段は思いつかない。そもそも“手伝う”というけれど、何を手伝わされるのかも謎。元世界で読んだ小説のように“魔王を”“迷宮を”“世界を救う”といった雰囲気は周りにはまったくない。いたって平和で牧歌的な雰囲気のこのヴィルディステ聖国。わたしに何が手伝えるのだろうか?


 手伝いの内容がわからない以上、今はここで生きていく力をつけるしかない。それには秋学期の講義、何を選択するのか、しっかり考えなくては。



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