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強制的宇宙放浪

 男は、身動き一つ取れないでいた。苦しい。男は、外を辛うじて見ることのできる手段である窓をちらりと見やった。

 いつまで、俺は流されるのだろうか。男は、そうぼんやりと思った。死ぬこともままならぬ空間。男は、宇宙をロケットに乗り彷徨っていた。行き先などどうでもいい。というより、男にロケットは操縦できないのだ。このロケットには人工知能が搭載されており、男の意思に関係なく適当に何処かへとただひたすら進む。

 最初、男は宇宙へ出た興奮と宇宙の風景に見とれていたが、それも今では過去の遺物となった。

 狭苦しい。飲食料は無尽蔵で自動的に男の口へと運ばれるので、餓死することもない。

「ほんと、嫌になっちまうぜ。飲食料無尽蔵ってのはありがてえ。飢え死には相当苦しいだろうからな。だが、このまま暇だと気が狂っちまわあ」

 男は、けったくそ悪いと喚いて床へ唾を吐いた。その唾を床が反転して自動掃除機が出現し、その唾をきれいに拭い取る

「ああ、マジで頭が変になりそうだ。動くこともできねえし、暇だしこのまま俺は死ぬこともできず、ずっと宇宙空間を彷徨うのか! これなら、地球で死んでいた方がマシだぜ」

 男は、地球にいる人々を呪った。

「俺は、何も悪いことしてねえっつーの」



 男が、宇宙空間を彷徨ってから十年が経過した。男を乗せたロケットは、運良く謎の惑星へ不時着した。

「た、助かったぜ」

 本来なら、不時着はありえない。ロケットに搭載されている人工知能は、未知の星及び既知の星には着陸しないようにプログラミングされている。しかし、十年という長い歳月が経ち、何らかの不具合が生じたのだろう。男は気楽にもそう考えて、早いところ不時着した惑星の住人か何かが迎えに来てくれはしまいかと期待して待った。

 待つこと数分。たったそれだけで、惑星の住人が数人来たらしく外で音がした。

「助かったぜ。どうやら、この惑星には頭のいい生き物がいるな」

 まもなくして、ロケットのドアがこじ開けられて、身動きの取れない男を救出した。

「わ! わ! 俺に触るんじゃねえ!」

 その宇宙人の肌は、ぬめぬめしており棘だらけで、口には鋭い牙があった。男は、命の恩人である宇宙人を払い退けた。

「このぬめぬめ野郎が!」

 男が宇宙人を殴りつけると、いとも簡単にその宇宙人は死んだ。それを見た仲間の他の宇宙人は男を危険生命体と見なしてレーザー銃で撃ち殺した。

「危ない奴だ」

「うむ、それよりこの乗り物が何処のものか解るか?」

 他より棘の少ない宇宙人は、ロケットの材質を調べてからこう答えた。

「おそらく、この乗り物はチキュウとかいうところから来た乗り物のようだ」

「そうか。きっとチキュウには、このような危険生命体がうようよしているに違いない。我々の生命に危険が及ぶ前に、チキュウにミサイルを撃とう」

 その惑星から地球に向けて、核ミサイルの数百倍の威力を持つエネルギー弾が放たれた。死刑制度を撤廃し、代わりに罪人を永遠に宇宙空間へと放ち続けていた地球はあっけなく滅びた。



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