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死ぬために殺してきたのかもしれない
俺は猟師をやって、もうかれこれ十年にもなる。一番苦労したことがなんだってか? そりゃあ、毎日が苦労の連続さ。そんなことよりお前さん、俺が最も嫌だったことを語らしてくれ。
狩猟に出かけたことのない都会の若造なんかと一緒に猟に行った時だ。何回かそういうことがあったけど、毎回嫌なことをぬかしやがるのさ。
猟銃をぶっ放して熊を殺した後、皮を剥いでいると、「かわいそう」だの「よくそんなことができますね」とか。果ては、ゲロッちまう奴まで出てくる始末。別に俺はなんも悪いことしてねえのに、そんなの見てると罪悪感が湧いてくるってもんよ。
今の若者は殺して食わないから、そういう考え方をするんだろうさ。命を大事にするために菜食主義を貫くなんて、俺から言わせりゃとんだうつけ者よ。
しっかしまさかその菜食主義者が、手近にあった大きめの石で俺の頭をブッ叩いて、殺してくるとはなあ。熊に狙いを定めていて背後が疎かになったところをやるとは、俺以上の猟師じゃないか。けど、結局あそこに残ったのは熊と殺生を非道と捉える菜食主義者。はてさて、あの後どうなったのかねえ。