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愛の充電器がほしい  作者: もちっぱち


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第21話

歩行者用信号機の音が鳴り響く。


交差点では横断歩道を人が行き交っている。


ショルダーバックを斜めにかけては、

駅前のショッピングモールを目指して

歩いた。



若いカップルが腕を組んで

仲睦まじいそうに歩くのを見て、

羨ましそうに通り過ぎた。


あんな頃も自分にあっただろうかと

思い出す。


ベッタリとくっついて歩いたのは

いつのことだろうか。


今は、何だか宙ぶらりんの状態の

恋愛状況。


颯太も未だ決断してくれていないし、

拓海も別れ話を今度こそネックレスを

壊してまで言ったはずだったため、

もう連絡も来ないだろうと

スマホを何度も見ながら、

メッセージを確認する。


公式アカウントの

お店のお得情報のみが

大量に送られてくるだけで

個人的に“友だち”の項目から

連絡が来ることは

なかった。


心がぽっかりと空いたように

寂しかった。


今は、誰もそばにいない。


幼馴染の颯太を思い出しては、

気分が上がったかと思ったが、

通りすがりのカップルを見て、

落ち込んだ。


自分には、すぐに呼んで

隣にいてくれる彼氏がいない。


満たされない。


この際、

誰でもいいってわけでもなくて

自分をわかってくれる人が

もちろん良いのだ。


無意識に進めた足は、

何故かアクセサリーショップに

進んでいく。


罪悪感が沸々と湧き上がった。


人様から貰ったものを目の前で

壊してしまったことに

なんてひどいことをしたんだと

思い直した。



所狭しと、ピアスやイヤリング、ネックレスや

髪飾りなど様々な可愛いものがたくさんあった。


ひとつひとつ覗いてはどれか良いものが

ないかと見つめた。


拓海が選んでくれたものと

全く同じ蝶々のシルバーネックレスが、

ぶら下がっていた。


確かに高くはない。


でも、こうやって陳列されているのを

見ては選んで買ってくるというのは、

男性にとっては

恥ずかしい行為ではないかと

想像する。

女子が自分のために買うのとは

訳が違うのではないかと思った。


店員は女性ばかりであるし、

彼女にですかとか聞かれたり

しなかっただろうかと考えてみたりする。


美羽は、もう一度、蝶々のネックレスを

触っては、見直した。



横から、誰かの手が伸びた。



「それ、やっぱり欲しいんだろ。」


 ハッとした美羽は手が伸びた横に

目をやると、拓海が平気な顔して

立っていた。


「な?!

 拓海?!」


「美羽、それ、欲しいんだろ?」


「…別に。」


「嘘つくなよ。

 その蝶々、可愛いし、

 美羽に似合うから。

 買ってやるよ。」


「え…。

 だって、壊したし、

 いいよ、もう。

 いらないよ。」


 触っていた手を引っ込めて

 立ち去ろうとした。


「美羽、ごめんな。」


 後ろ向きのまま、拓海は謝った。

 美羽は振り返って、足をとめる。



「私も…せっかく貰ったネックレス…。

 壊してごめんなさい。」


「元々は、俺が悪いから。

 連絡もろくにしない俺が、

 急に誕生日祝いなんて調子良いよな。

 悪かったよ、本当。

 でも、壊したのは忘れていいから。

 これ、買ってもいい?」


「……もういいって。

 また無くしたりするかもしれないし。

 大事にできないから、私。」


 拓海は、美羽の腕をつかんでは、

 さっきのアクセサリーショップに

 連れて行く。


「んじゃ、違うのにしよう。

 どれがいい?

 前のこと思い出すのなら、

 好きなの選んでいいから。」


「…私にもらう権利ないよ。

 彼女じゃないし。

 いいよ、大丈夫。」


「…そしたら、友達としてでもいいから。

 ほら、選んで。」


 どうしても、

 プレゼントをしたかったようで

 拓海はしつこいくらいに推した。


「えー、良いって言ってるのに。」


「んじゃさ、アクセサリーじゃなくて

 防寒具とかどう?

 ほら、マフラーとか。

 これ、かぶるだけだよ。」


 頭からスポッとかぶって首を温める

 マフラーを美羽にかぶせた拓海。


「温かいけど…。」


 物をすすめられても罪悪感が強くて

 買ってもらうことに抵抗を感じた。


「全然、興味なさそうだな。

 んー、んじゃ、カフェラテでものむ?」


「……。」


 あの手この手で興味ありそうな

 提案をするが

 すぐに頷くことはできない。

 拓海は、美羽の手を引っ張っては

 同意を得ずに連れて行った。


 何も言えなくなった美羽は、

 とりあえず着いて行くことにした。


 嫌がる素ぶりは見せなかった。


 1人で歩くより、

 良いかと安易に考えていた。


 その様子を親子で買い物に来ていた

 颯太と紬がしっかりと見ていた。


「ねぇねぇ、あれ、この間、

 ウチに来たおねえちゃんじゃないの?」


「え…。ああ。そうかもしれないな。」


 颯太は、拓海と手を繋いで

 買い物を楽しむ美羽を見て、

 それが1番理想的だろうと

 自信を無くしていた。


「パパの彼女じゃなかったの?」


「…え?

 だって、俺は、紬のパパだろ?」


「パパだけど、彼女作っちゃだめって

 誰が言ったの?

 離婚したんだから、

 早く新しいママ連れて来てよ。」


「何言ってるんだか、簡単にママなんて

 できるわけないよ。

 ハードルが高いんだってば。」


「は?コンドルだかなんだか

 わからないけど、しっかりしなよ、パパ。

 他の人におねえちゃんとられないように

 頑張りなさい!!」


 紬に背中をバシッと叩かれる始末。

 なんでこんなことになってるんだと

 自分の行動を後悔し始めた。


 買い物を楽しむ2人の間に

 到底入れる訳もなく、

 紬の言われた方と違う方角へ足を進めては

 家に帰ろうとした。

 

 数メートル離れた紬と颯太。

 紬は手をポンと叩いて閃いたらしく、

 突然、大きな声を出して、

 泣き出した。


 颯太は、紬の大きな声にびっくりして、

 慌てて戻ろうとしたら、

 近くを歩いていた美羽と拓海が

 こちらに気がついた。


 ショッピングモールの通路は一時的に

 人だかりができた。


 颯太は、紬をヨシヨシとなだめるので

 必死だった。

 


「颯太さん?!」



 泣いていた紬に近寄った颯太に

 美羽はびっくりしていた。

 横にいた拓海は不機嫌そうだった。


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