第1話 隣国の敗戦、そして
〜第0章終わりの始まり〜
「ガチャっ」
「ただいまー」
まあ、誰もいないけどな。
いつも親父も母親も帰ってくるのは日が変わってから。
とりあえず、寂しさを紛らわすためにテレビでも観るか。
「...国は今日、我が国の領土アメリ島に港を不法に建設しました。これに対して国は...」
そういえばあったな領土問題。
とうとう占拠されたか、先手を打てないから仕方ないよなぁ。
さて飯食って風呂入るか。
さて!風呂入ってさっぱりしたし、ココアでも飲みながらアニメでも見よう。俺はなんとなくミルク多めにして飲む。あといつでもホット派だ。
「ピピピピッ」
牛乳はレンチンして温める。
「あ、吹き出して凝れてる。」
最悪だ。
まぁいい、いつもより牛乳少なめにするか。
最近は転生系が流行ってるな。面白そうなタイトルのアニメがあるな。今度はこれ観るか。
やっぱ俺も戦いで無双してみたいなぁ。
いやでも俺まだ死にたくないないからなぁ、
「ヴゥーーッヴゥーーッ」
久々に電話が来た。誰だろう。
「はい、もしもし。」
「おお、出た出た。お前すぐニュース見ろ。色々やばいぞ!」
なんだシュタールか。
「なんだよ、めんどくさいからやだね。」
「まじでやばいから見ろって、」
なんだよもぉ、異世界転生系恋愛アニメを見てるところなのに。
「我が国の隣国メルディアがユーベル共和国に無条件降伏しました。これにより、自衛軍総統は『我が国の防衛力を強化しなければならない。もし可決されればの話だが、徴兵制を施行するかもしれない』と話しました。....」
「は?」
「ガシャンッ」
思わず手出てきてココアを溢してしまった。俺は今のところ健康的な男子。徴兵制が導入されれば間違いなく召集されるだろう。
そもそも隣国が敗戦したから徴兵制ってどういう状況なんだ?それほどユーベルとの緊張が深まってるのか?
というかユーベルは核を持っている。もしうちとの戦争が始まれば確実に世界大戦に発展するだろう。
「おい、大丈夫か?」
あ、そうだった。電話中だった。
「ああ、少し驚いてな。」
「そうか。お互い頑張ろうな。」
「うん。」
「ツーッツーッ」
「まじかぁ」
流石に驚いた。まあ、何、死ぬことが決まったわけではない。戦場に行って死ななければいいだけの話だ。
そう。死ななければ。
とりあえずもう一回ココアを入れてゆっくりアニメでも見よう。
アニメも見終わってベットに入った。だがなかなか眠れない。理由はわかっている。徴兵が怖いからだ。
けど受け入れなければ。
そんなことを考えていると気づけば朝が来た。
4月1日、紛れもない俺の誕生日だ。最悪だ。前日に最悪のニュースが入ってきたから素直に誕生日を喜べそうにない。
リビングに行くと不安げな顔をした両親がいた。
「おはよう、」
「ああ、おはよう...」
これほど気分の悪い誕生日があっただろうか。
「お誕生日おめでとう、リヒト」
「おめでとう、」
「ああ、ありがとう」
なんてことだ。誕生日だというのに、こんなのってないよ。
とりあえず気晴らしに散歩することにした。
道ゆく人皆暗い顔をしている。まあそれもそのはずだ。近い将来、戦争するかもしれないから当然のことだ。
こんなところでニコニコしてるやつなんて、スパイかよっぽどいいことあったか、戦争大好きな厨二病レベルMAX(自分は無双できると思ってるやつ)だけだよ。
結局俺の誕生日は誕生日会の形をしたお通夜ぐらい暗いムードだった。誕生日プレゼントはもらえたが、奇しくもその誕生日プレゼントは俺の好きな戦争ゲームシリーズだった。
そして数日が経ったある日、留守番をしているとインターホンがなった。何事かと思って出たら郵便だそうだ。
しかも俺宛だそうだ。なんだろうと見てみたら、徴兵召集紙だった。
「おめでとう御座います。」
「どうも。」
そう言って郵便配達員は帰って行った。なんと心のこもってないおめでとうだ。
まあきっと何人もの絶望した顔をここまでみてきたのだろう。流石に気の毒だ。
さて、きてしまったものはしょうがない。5月1日にハーゲルブルク駅集合か。準備せねば。
ああ、最悪だ。
第0話 隣国の敗戦、そして
終