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プラネットクロニクル ~極地に至った男の物語~  作者: 月光皇帝
戦火の悲種と踏み躙られた魂
74/76

荒武者編:総力戦へ

更新遅れてすみません。


「・・・お水ぅぅ」


「アキハ。持ってきてもらえるか?」


「わかった」


「・・・ふぇ? ・・・ふぁえぇええアール!!?」


寝込んでいたマイの膝枕係をアキハから交代してもらい、起きたマイがどんな反応をするかなと考えながら様子を見ていたわけだが、一番ありきたりな反応だった。


「ななななななななんでだってぇええええ?!!?」


「落ち着け。かなり無茶したんだろ? 起き上がらないで素直に寝とけ」


「あう」


起き上がろうとしたマイの頭を押さえてそのまま寝かせた。おでこを触った感じ熱はない。運営に連絡も入れてマイの身体に異常状態が無い事も確認したし、キャパオーバーで倒れただけだろう。


「いやでもまって? なんでいるの?」


ごもっともな台詞である。なんてったって俺が普段使っているVR機材は現在進行形でマイに貸しているのだ。


「別のVR機材引っ張り出してきたんだよ。あとはアカウント連携とか諸々の設定してからいまここ」


俺はゲーマーである。剣聖物語ガチ勢であると自覚がある。


ゲームをプレイするだけなら機材・ゲーム機本体は一つあればいい。けどCPU処理速度や各種性能を求めていくと他の機材も試してみたくなるわけだ。


コンシューマーゲーム機であれば画質やフレームレート、更にクロスプラットプレイが可能かどうかなど、本体の性能一つで出来る事が大きく変わっていく。


そんな訳でゲームに本気で向き合う人はそういう細かい部分も自分が求めるものを日々求めていくのである。デスクトップPCとかその代表例だな。


んで、俺も剣聖物語という作品に対して俺はそっち側の人間になった訳だ。なので剣聖物語の為に幾つかの会社の機材を持っているのだ。


最終的には今マイに貸しているエクスゼウス推奨の機材に独自のカスタマイズを加えたPC兼用のVR機材を使っている。投資費用は・・・まぁ三桁万円である。


絶賛ローン返済中である。ただエクスゼウスから直接購入し、カスタマイズのアドバイスまで受けて更に故障対応サービスまで組み込んでもらったのだから安いと言えば安い。


あとエクスゼウスからの直接ローンだったので金利がものすごく安い。ほぼ原価くらいの金利なのである。これ以上踏み込むと不味い気がするのでやめておこう。


「え? でも私がソフト使ってるから別の繋げても」


「うん。だから近所のショップにひとっ走りしてパッケージ版買ってきた」


「ふぇえ!?」


「ネクロロンの配信見てて知ったが、まさか荒武者が桜花戦舞の使い手だとは。画面越しではあるが多分あれ全力じゃないと思ったんだ。あれに対応出来るの多分限られてくるし、もしもの時は介入出来るようにしとかないとなって思ってよ」


お財布の中身は最近結構潤っているのでゲームソフト一つくらいなら問題なかったしな。現実から仮想世界のマイに連絡入れて代わってもらうのも考えたけど、せっかくならちょっとしたドッキリもしてみたくなってしまったので。


「あーうー・・・とりあえずいる理由はわかった。色々聞きたい事もあるけどとりあえず無視するね」


「マミー。お水持ってきた」


「ありがとうアキちゃん・・・ぷはぁぁ!!生き返るぅ!」


「母さんもう元気そうだ」


「よかったです」


「・・・」


「ナツ君もハルちゃんもフユちゃんもありがとね。完全回復・・・とはいかないかもだけどとりあえず元気になったよ」


体をほぐす様に腕や胴を回すマイを見てアキハ達も一安心したみたいだ。良かった良かった。


「あれ? そう言えばなんで家で私寝てるの? クランハウスにいたはずじゃ? それに皆は?」


「順を追って説明するよ」








ーーーー








数時間前。


新しく買ってきた『プラネットクロニクル』の準備も整いアカウント連携でデータをこっちでも使えるようにして、こっちの世界にやって来た時、家の中で物凄いドタバタ音を聞いた。


流石に何かあったのかと焦って寝室から飛び出せば。


「それとそれもだ!!」


「それはいらないってアキハ姉さん!!」


「・・・全部持っていけばいいじゃん!」


「ででででもそれだと荷物が多くなりすぎてしまいますよぉ!」


四姉弟がてんやわんやしていた。


「落ち着けお前たち。とりあえず何があった?」


「「「「父さん!!」」」」


そこで初めてマイが無茶して倒れて、現在クランハウスの二階で寝込んでいることを知った。状況から察するに命に別状はないとは思う。


が、それでも何かあったら大事なので運営へマイの身体状態に異常がないかどうか確認して欲しいと一報を入れておく。送信っと・・・さて、介抱の用意をっと返事早っ!? まだ送ったばかりなんだが?!


閉めたウィンドウをもう一度開いてメッセージを確認。ふむ。なるほど。現実でのマイの身体に異常は見られません。こちらの世界での極度の精神疲労と魔力の使用過多による一時的な酔い状態か。運営でもこの事象は初めてではないとの事なので安心できそうだ。


でも不安ならば医療班を送りますと。サポート手厚いな。流石エクスゼウス。ありがたい。とりあえずログアウトした時の様子を見ながら考えようか。


安心できる状態である事はわかったので、次はアキハ達を安心させるためにマイの介抱の準備をしよう。


という訳で必要そうなものを一つずつ用意してアキハ達に順々に持たせていく。持ったらすぐに駆けだしそうだったが、慌てても何も好転しないから落ち着くように説得をして、ちゃんと一つずつ用意していく。


大体五分くらいで準備が出来たので家から出てクランハウスへと向かう。


「マスターか」


「オッス火力さん。遅れて主役登場だ」


アキハ達はとたとたと二階に上がっていく。俺は店舗の一角で装備の確認をしていたであろう老眼鏡、火力魂、テイマーズ、ルークのクラン男性陣と顔を合わせた。


「あれ? 確かマスターの機材マイさんに貸してるって話じゃなかった?」


「そこはあれだよテイマーズさん。色々とね」


「そう言えばマスターウチでのバイト代VR機材に投資してたね。予備機かい?」


「そんな所。準備終わったのが丁度今なんだよ」


「大人って感じだマスターさん。ガチゲーマーってやつ?」


「エクスゼウスゲーに関してはかなりガチ勢だな。ところで状況は?」


荒武者が推定第二形態移行してから、ネクロロンの映像で見た光景からはかなりの焦りと不安・恐怖の感情が入り乱れ、それを感じ取れるほどの迫力があった。


「それが今さっき現地のチーザーから連絡があったが、戦線が一時崩壊しかけているとの事だ」


「マジか」


「今はにゃーると雷華が何とか維持しているらしいが、同行していたマー坊が首を斬られてやられたらしい」


「速度特化技量あり判断能力もありって所か。そうなるとやっぱ中衛からの支援は逆に邪魔になるかもな。誤射しかねないし利用される可能性もある。魔法無力化領域にも変化があったんだろ?」


「なんで今のやり取りで荒武者のことほぼ全部理解出来たんですマスターさん!!?」


「戦線崩壊って事はそれだけの事があったって事だルーク。そこに俺が知ってる荒武者の情報を当てていけばそうかなって想像くらいはできるさ」


寧ろ出来ないとクリエイションモードとかやれないレベルだし。特にアフター。


「ほぼマスターが言った通りだ。第一形態は純粋な暴力と50mの魔法無力領域が脅威だった。だが第二形態では暴力ではなく圧倒的な速さで敵を殺してくる。防御極振り連中が一瞬で死ぬほどだ」


それは映像で見ていた。マー坊とにゃーるが第一形態を完封している間に、第二形態に対応できる準備をしてきた前衛部隊が、第二形態に移行した荒武者と対峙した時、次の瞬間には全滅していた。


ネクロロンの映像も暗転していた。つまり第二形態は後ろで構えていた部隊も纏めて処理したのだ。多分その事をにゃーる達は気が付いていない。


「俺達はマイの魔眼の能力でその光景を見ていたはずなんだがな。突然魔眼の効果が打ち消された。だからそれ以降はよくわからん状態が続いていた」


「多分チーザーもやられたか、魔法無力化領域に飲まれたかの二択だな」


「そうだろうね。たださっき連絡貰った時のチーザーさんの声色的に前者かなって皆で話してたんだ。キレてたし」


「あぁ・・・キレてたなら確定だわ」


チーザーって暴君ムーブがデフォだけど、限界超えるとヒステリック気味にずっとキレるからな。怒りに飲まれた暴君って感じで。そんな中で連絡入れてきたのが奇跡だ・・・いや違うな。多分。


「もしかしてお前らも現地来いって言ってなかった?」


「マスターさん馬鹿姉貴の理解者ですか?」


ルークの反応的に当たりらしい。多分。自分だけ死ぬとかムカつくからお前らも来て無残に散れやボケがぁ!!って言ってきたと思う。掲示板時代もそれで情報持ってきながらキレてたし。


「そういう訳で寝込んでるマイさん除いた僕らはこれから出撃さ。戦闘能力的に現地での支援になるとは思うけどね」


「老眼鏡さんはそれが出来ますけど僕はレベル的にも職種的にも完全お荷物ですけどね」


「大丈夫ですよテイマーズさん! 弱い僕も多分荷物運びとかの手伝いさせられるんで!!」


「テイマーズ。分かっていると思うが相手は子供だからな?」


「火力さん大丈夫だよ。僕は大人だからさ」


「???」


無自覚煽りである。これはチーザーの弟ですねはい。一応ウチのクランでレベル最弱はテイマーズである。リアル事情的に一番INしてないから毎日ほぼ配信してるか動画作成のネタ探ししてる同期のネクロロンとはかなりの差がついてしまっている。


その上で弱い僕なんて言ってしまえばまぁ、煽りですね。


「一緒に荷物運び頑張ろうかルークくん」


「はい! 一緒に頑張りましょう! 馬鹿姉貴の下っ端になるのだけは癪だけど」


テイマーズさんが大人の対応だったので特に問題は起きなかったので一安心。


「という訳なんだけどマスターも来るかい?」


「んにゃパス」


老眼鏡の誘いは悪いけどパスさせて貰う。


「出来れば俺が来たことも公言しないで欲しい」


「了解だ」


「??? どうして?」


「ルークくん。僕らのマスターのこの世界における第一優先事項は何か覚えてる?」


「んーっと。スローライフ?」


「当たらずも遠からずだね。マスターの優先は家族だ。そして今家族のマイマイさんが倒れてるでしょ? あとはわかるね?」


「っ! なるほどわかりました!!」


「理解が早くて助かるよ。皆頼んだ。あと気を付けて」


「っとそうだマスター。マスターから聞きたい事があるんだけどいいかい?」


二階で寝ているマイの元へ向かおうとした時、老眼鏡に呼び止められた。何と聞き返せば。


「桜花戦舞の対応策ってマスター的にはどんな方法があるかな?」


「自分の意識を相手に委ねない事だな」


「「「「???」」」」


桜花戦舞は自身を認識している相手が自身に意識をより向けてくる場合、容易に視線誘導と意識誘導が出来る。目のやり場、呼吸音。距離の取り方。相手の集中力があればあるほど全てが自分にとって有利に運ぶ状況を作りやすい。


これは映像越しで見ていた俺の憶測だけど、第一形態から第二形態へ移行した瞬間。荒武者に対して全員意識を向けていた。


それに対し荒武者は一瞬自己主張。つまり自分の存在感を極限まで高めてその場に居た全員の集中力を極限まで高めた。その後すぐに0に近い状態になり自慢の速度で確実に倒せる連中から倒していった。


更にその後方にいた支援部隊の事も把握し、にゃーるとの一瞬の攻防の最中で司令塔になりうる奴が集中していた場所。つまりチーザーとネクロがいた場所に奇襲をかけて全滅させ、何事も無かったかのように元の場所に戻る。


これでアリバイ(物理)証明ってか? 逆を言うと、それだけあの場にいた奴らが荒武者に対して警戒心高めで挑んでいたことになる。それが逆効果だったと思い知らされることになった訳だが。


「簡単に言えば考えて戦わない事だよ。反射神経全振りで戦え」


「無茶苦茶じゃん・・・」


「まぁその上で桜花戦舞側は相手の認識コントロールするから完全に無意識で戦ってもダメだけど」


「詰みじゃん!!」


「桜花戦舞はそれだけ積み上げてきた技術がある武術だからな。無知の状態で対策何かないかと言われたらそう言うしか出来ないんだよ」








ーーーー










剣聖物語の世界では、領主同士の小規模な戦争から国同士の戦争に至るまで多くの戦いがあった。そんな戦いで常に求められていたのは一騎当千の英雄よりも陽動と攪乱、そして戦線維持能力をもつ戦士だった。


それは何故か。一騎当千の英雄は確かに戦況を一人で変える豪傑だ。だが互いに目的がある場合。例えばその場で勝つ事ではなく相手に降伏を宣言させる何かを得るための時間稼ぎの為の戦争。そういうものもあるのだ。


そういうものが求められる場において桜花戦舞を使える武芸者というのは常に求められていた。その身一つで陽動と攪乱が出来るので、他の戦力を索敵や本来の目的に回せる。


仮に桜花戦舞の戦士が此方にいると敵が知っていたら、何かあると考えて索敵や進軍を考える必要が出てくる。だってわざわざ出してきたのだから裏があると考える。否、考えなければ陥れられる可能性があるから無視が出来ない。


それが落とし穴になる時もある。例えば、そうやって相手に考える時間をなくさせて、その間に桜花戦舞の武芸者が戦場をかき乱して、そこを主力部隊が食い破るなんて戦法も取れるし、実際は裏なんてなく、ただの陽動として使っており、本命は別の場所から一点集中で本陣を突いていてくるとか。そういうことも出来る。


なので桜花戦舞の武芸者は戦場において必ずというほど欲しい人材だった。戦争問題に関わらず、領内で出現したモンスターの襲撃に対しても、桜花戦舞という武術は常に輝き続けていた。


自分を犠牲に多くを生かす。時には自分を生かすために他者に意識を集中させる。本来の桜花戦舞のあり方で戦う事で、多くの民を守ることも出来るからだ 。


極めれば極めるほど、桜花戦舞の武芸者たちは、戦況を一瞬で変えられる者たちなのだ。


そんな桜花戦舞を相手にしていて、敵にして最も厄介なのは一騎当千の英雄が桜花戦舞の使い手の場合だ。ハッキリ言おう。そいつを倒せない限りこちらに勝ち目はない。


無双系ゲームよろしく好き勝手暴れて尚且つ無視できない相手。更に強襲・奇襲・陽動・攪乱。それらをたった一人あるいは1~4人程度で出来るのだから、残る戦力は別の事に使い放題なのだ。


じゃあ倒そうとすると今度は一騎当千の実力があるから半端な戦力はぶつけられない。最高戦力を集中させて惜しみなくぶつけて確実に撃破しなければならない。


そうなると戦力が全体的に低下するので相手側からすると押し込める事が容易になる。戦線を押し込まれやすくなるのだ。


これ実は剣聖物語をプレイ済みのユーザーからすると結構周知の事で、剣聖編第二章に当たる場面で貴族の領土問題に関わることになり、領地戦争に巻き込まれるのだが、そこに今話した一騎当千(登場時期のレベル的には)の強敵が敵陣営に加わる仕様になっていて、一種の登竜門になっていたのだ。


ハードモードまで位ならレベリングで平均+10くらいまで経験を積めば力技で乗り越えられるが、それ以上になるとしっかりと対策をしなければ絶対に戦争自体に勝てない仕様になっている。


んでその対策というのが、早い話で、最速で撃破あるいは足止めをすることだ。戦いが長引けば長引くほど、相手は桜花戦舞の英雄を使い戦場を荒らし、優位に立つからな。それをさせない事が最適解なんだ。


ここで二つの道がある。仲間を一人犠牲に戦争に勝利するかしないかだ。桜花戦舞の英雄だが、一人ではなく一部隊を率いている。率いているのはその領地側の兵士なのでそこまで強くはないが、それでも、強敵に従えているのでそこそこ強い。


ここまで進んでいると、一人桜花戦舞を使える仲間がいる。その仲間に英雄の足止めを任せ、他の兵士を全滅させれば、その時には足止めしてくれていた仲間が相手の英雄の足を無視できないレベルで負傷させてくれているので、本来の桜花戦舞を用いた戦い方が出来なくなっている。後は数の暴力でギリギリ英雄を倒せる。


だがその仲間は死ぬ。彼は文字通り自分を犠牲にして仲間にチャンスを作ってくれるのだ。


その仲間は主人公思いの熱血漢なのだか、パーティーにとってもムードメーカーでもある。終盤戦彼がいるかいないかでパーティーのムードは全然違う。


主人公である自分が彼のムーブを引き継げばそれはそれで解決なのだが。それでも、もし彼がここに居たらと仲間達は考えてしまうのである。ここが剣聖物語の凄い部分の一つで、人の感情がそのまま戦意に繋がるごくごく当たり前の事があの世界で起こる。


ゲーム的に言ってしまえば仲間を失う、残った仲間のステータスに一定値の解除不可能デバフが付く。とはいっても数値的には大きくはないが、失った仲間が多いほどそれは無視できない数値になる。


難易度が高ければ高いほどそれらの数値は1でも無視できなくなる。つまり安パイに逃げてその場を楽に乗り切ってしまえば後にその代償を払うことになるのだ。


特に剣聖編は表主人公。つまり民衆にとっての英雄であり光の存在なので、仲間を生贄に捧げるような戦い方ばかりするとついて行けないと離脱する仲間も出てくる。更には仲間が死んだのは主人公のせいだと言ってある日唐突に敵対し殺しにも来る場合がある。


これが俗にいう闇落ち√って奴だ。これはもう修羅の道で最終決戦で仲間は1~3人しかいない。その分戦闘経験が多いので戦力としては悪くない・・・のだが、取れる戦い方が絞られるし、援軍も多分無い。


これらの事から剣聖√は如何に仲間を失わず、民衆の英雄としてのムーブが出来るかどうかで選択した難易度程度かそれ以上になるかを調整出来てしまう。


因みにこれ英雄√だと、『仲間の死』=『同志の死』=『自分が経験した悪夢の様な出来事』=『これらが起こらない世界を作る為に奮起する』に繋がる為味方全体の強化になるという事が起こる。


しかもそれらを覚悟して英雄に着いてきた者達なので絶対に離反しないし、思いを受け継ぐとか言って、失った仲間の装備や戦い方を覚えてくれるので、一部からは『お前の仲間が剣聖√に欲しかった!!』と言われるほどである。


話が逸れ過ぎたな。けど続けよう。


剣聖√でじゃあ仲間を失わずに進むためにはどうするかというと、それはもう主人公である自分がタイマンで勝つしかないよねって話。そもそもの話、剣聖√は民衆の英雄。誰もが想像する勇者みたいな存在になるまでの物語だ。


強敵を相手にしたとき、誰よりも先に自分が強敵と戦う。それが剣聖√における最高の生き方なのだ。


じゃあ桜花戦舞の英雄と戦いましょうとなれば、必要なのは自分の桜花戦舞に対する知識と戦闘技術だ。


もっと簡単に、端的に言うと、お前も使えるようになれである。桜花VS桜花なら、桜花戦舞の技術が多少劣っていても他の技術で補って押し込める。言うは易しという言葉があるが正にその通りである。桜花戦舞覚えるの通常プレイでも結構大変なんだよな。


覚える為にダンスゲームをしながらその型を覚えると言った事が必要になり、それを一定回数。検証・攻略などのまとめサイトによれば最高成績なら最低50回。最低成績ならば302回の修業パートが必要になる。因みに一度の稽古時間は60分である。


そういう訳でこの桜花戦舞、かなり強力な反面、覚える人と覚えない人が極端に分かれる武術だった訳である。なので割とここで仲間一人だけを犠牲にして進むというのは実は効率重視の周回ユーザーやRTA走者からすると最適解だったりする。


更にぶっちゃけると、この後の主人公のムーブ次第で、この桜花戦舞の英雄が味方になるので上位互換キャラゲットとなる救済処置もあったりする。その代わりシステムアシストなしで役者よろしく桜花戦舞の英雄と話をしないといけないのだが。


後はそうだな・・・抜け穴として最初レベリングでごり押しの話をしたが、それを応用して味方を超絶強くする手段もある。


修業時に、より技術の高い桜花戦舞の武芸者に仲間に桜花戦舞を教えてくれと頼み込み、これを承諾してもらえるとこの仲間が英雄クラスまで桜花戦舞を使えるようになる。


こうなると戦争時には英雄を無視できない負傷を負わせるは出来ないが、双方痛み分けの状態で残り全員で戦いに臨めるため味方を犠牲にしないという意味では最高の物語を書くことが出来る。


因みに条件はこの時点で発生しているサブミッション的なものを全て終えた上で、その高度な技術を持つ武芸者との関わりを作りつつ、尚且つ好印象を持たれている事である。


つまりパーフェクトコミュニケーション必須である。抜け穴だから難易度高いのは仕方ないよね。でもこっちはシステムアシストアリでの会話になるので選択肢を選んで自分の声で勝手に話してくれるので、救済処置の完全マニュアルよりはマシである。というか攻略本やまとめサイトにそういった情報は記載があるので覚えてしまえばこれが一番楽まである。


といった感じで、桜花戦舞の英雄との戦いには様々な事をしなければいけない訳である。それも味があって楽しかったのだが。








ーーーー










では話を今度こそ現在に戻す。


Q:荒武者が桜花戦舞の使い手である。桜花戦舞以外の技術は圧倒的速度と判断能力である。どうやって倒すべきか。尚味方の被害は考えないものとする。


A:少数精鋭で技量で押し切って何とかしろ。


正直これしかないと思う。物量で押し込むことは出来ない相手だし。むしろ物量で戦うとプレイヤー側が不利だし。


それを踏まえて現時点の、俺を除く戦力で荒武者を叩くのならば。


「特攻前提で1~4人の部隊を継続的にぶつけ続けて荒武者の動作・思考・判断要素を割り出してパターン化。荒武者の速度を超える奴らがそれらパターンを暗記して完封。それで〆が現実的だろうな」


「「「「・・・」」」」


「ん? どした?」


「いやその・・・思ったよりも何というか。想像よりも簡潔な対策だなぁと」


「というか多分、それ以外で勝つ方法無いと思うぞ?」


「え!?」


「桜花戦舞が使えるって言うアドバンテージは、こっちにも同レベルの桜花戦舞が使える奴がいないと絶対に覆らない。ならそれを踏まえて勝つなら、相手の思考まで読み解いて完封する位の気持ちで挑まないと無理だ」


「簡潔だったけど、想像以上にバッサリ言い切ったねアール君」


「こちらは魔法が使えないが、荒武者は魔法に匹敵する技術がある。歩兵が騎兵に対して機動力で不利であるのと同じように、プレイヤー側は圧倒的不利な状況を押し付けられてるんだよ。魔法って言う当たり前を封じられた今、魔法にありきで戦いを構築していたプレイヤー側は両腕をもぎ取られてるに等しいんだ」


「で・・・でも覚醒者の人がたくさんいればっ!!」


ちょっとルークが涙目になってるな。どんなゲームでも勝てるように作られる。PVEなら当然だ。その為に難易度調整とか救済処置とか様々な方法が運営からされるはず。


だがエクスゼウス運営は過去に一度これを覆した。プレイヤー側に邪神に敗北したという事実を突きつけている。当時の事を俺は知らないけれど、その時と似たような相手が今回の荒武者のコンセプトにも含まれていると思うんだ。


「ルーク。その覚醒者の中で魔法を一切使わずに今日まで戦ってきた人が何人いる? 俺が知る限りはにゃーると雷華しか知らん。それ以外の覚醒者は、魔法無しでこれまで戦ってきたのか?」


「そ・・・それは・・・」


その邪神と対峙することすら叶わなかったと記事で読んだことがある。倒す手段も発見する手段すら全てで後手に回り、敗北の二文字を刻まれた。


魔法で解決できない相手に相対し、どうでるか。運営はこれを知りたいんじゃないだろうか。


「残酷な事言ってるのは理解してるがな。荒武者は俺が調べた中で対プレイヤーを最も意識して生み出された邪神だよ。それこそ、ゲームバランスの根幹を揺るがすレベルのな」


「っっ!!?」


だからプレイヤーから魔法を奪った。魔法”だけ”を奪った。それ以外の手段で荒武者を倒してみせろと、そう言ってる気がするんだ。


「けど、同時にこれは運営からの挑戦状でもあるって思ってる。万物を生み出していた魔法を失ったプレイヤーがどんなふうに戦い、この世界でどう生きていくのかを試されているんだ」


「つ・・・つまり・・・?」


「魔法で解決しないで知恵と勇気と技術を結集させてこの災害を乗り切ってみせろって事だよ」


「ふ、最後に言うのがロマンチストだなマスター」


「でもなかなか的を射てるだろ?」


「違いない。お前たち。そろそろ行くぞ。チーザーにねちねち言われるのはめんどくさいからな」


「そうだね。チーザーさん怖いからなぁ」


「老兵がどこまでやれるかわからないけど頑張るよ。アール君店番よろしくね」


「それなら閉めちゃっていいか? 上のマイも回収して自宅にいるわ」


「それでも構わないよ。それじゃ、いってくるよ」


「いってらっしゃい」


「あ・・・あのマスターさん!!」


「ん? どしたルーク?」


「あの! この戦いが終わったら僕にもっと沢山剣を教えてください!!」


「いいよ」


「思ってたよりアッサリOK貰えた!!?」


「お前さんくらいの年齢なら興味出た事やりたい事なんでもやってみるべきだからな。俺の剣で良ければいつでも教えてやるさ」


「~~~っっ!!! ありがとうマスター!! 僕、頑張る!! 行ってきます!!」


そう言って火力さん達は店を出て戦地へと向かっていった。











私事で申し訳ないんですが、九月に入り、体調を崩したり、生活が少し変化したりで執筆作業に取れる時間が減りました。なので更新頻度をしばらくの間減らさせてもらいたいと思います。


予定としましては毎月10日と20日過ぎを目途にしたいと思います。楽しみにしてくれている方には申し訳ないですが、この更新頻度でも良ければこれからも読んで感想頂けると嬉しいです。


私生活が落ち着いて執筆時間が十分に取れて、書き貯めも沢山出来たら元の頻度に戻したいと思うのでそれまではご了承ください。


今月次の更新は10月20日を予定しています。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  アール君は流石のガチ勢、エクスゼウスの挑戦状なのしっかり把握してら。 [気になる点]  桜花、前作の殲滅より怖くなってね?  殲滅って演技で狂気に呑み込んで視野狭窄を起こしたり、気配操作…
[良い点] 桜花戦舞という非常に対処の難しい武術を目にし、ついに真打のアールさんがプラクロ世界に降り立った。しかし最優先するべきは摩耗した嫁と子供達であるため、戦場に向かう仲間達への助言に留めた。果た…
[良い点] プライベートと作者様の体調が一番大事なので全然大丈夫ですよー むしろ更新してくれるだけで嬉しいです。 作品のクオリティや納得のいく描写などがあると思うので、じっくり時間を掛けて頂いても大丈…
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