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プラネットクロニクル ~極地に至った男の物語~  作者: 月光皇帝
戦火の悲種と踏み躙られた魂
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荒武者編:一撃

卒業おめでとう!今まで本当にありがとう!!伝説のアイドルだったよあくたん!!


では本編どうぞ

「所でなにあれ・・・!?」


「あァァ? 聞いてなかったか?」


「そうじゃなくて!! いや求めたのは私だけどさぁ!!」


「アヒャヒャヒャ! その反応見ててマジワロスwww」


「だって”あんなの”何処からどうやって・・!!?」


「しゃーねーな。耳の穴かっぽじって良く聞けや」






ーーーー








「とりあえず殴り込み部隊は決まったな」


「決まった・・・と言うかこのメンバーしか無理じゃない?」


近接戦が得意なメンバーがネクロの配信&邪神討伐に参戦することになった。当然と言えば当然だけどね。


ゴリラとにゃーるは言わずもがな近接戦メイン。ももちゅんとレイレイは支援特化だからそれぞれ現場判断で二人の支援援護。


んでチーザーがこの四人のまとめ役で現地入り。魔法無力化されてるから居ても使えないけど、口が達者だから上手い事現場に自分たちを馴染ませてる担当。


後のメンバーは荒武者に惨殺される未来しか見えないからお留守番ってこと。私含めてね。


「おいコラマイ。テメェ何自分は何もできませんみたいな面してやがる」


「え? だって実際戦力外だし?」


「ダウト」


「なんでよ!!?」


「テメェがコソコソ造ってたモノさっさと出せや」


「にゃ? マイはにゃんか作ってたのかにゃ?」


「そう言えば素材を分けてくれとこ工房に来ていたな」


「確かに言われると私も素材集め手伝ったわね」


「アハ☆ 何だかんだマイちゃんってばやる気満々だったんだネ♡」


んぐっ。いや別に隠してる訳じゃなかったから良いんだけどさ…。それにこれ多分荒武者相手には使えるものじゃなさそうだし。


「小さい鉄球…?」


テーブルの上に作ったものは、簡単にコロコロ転がるパチンコ玉程度の小さな鉄球。興味津々にレイレイが摘まんで凝視するように見ている。


「あとはこれとこれ」


「ん~棒? 見た感じ地面に突き刺す感じだねネ☆」


「ネックレスなんて洒落てんなァオイ」


私が用意したのは鉄球10球と地面に突き刺す棒5つ。それからネックレス。


「玩具かにゃ?」


「見た目はね。好きに見て良いわよ」


そう言うと皆興味深そうに私が作ったものを手に取って観察しだす。最初は皆なんだこれみたいな表情だった。けど最初に気づいたのは鍛冶師として本職の火力だった。


「ずいぶんとトンデモナイない物を作ったものだなマイ」


「でしょ~? 作るのに高度な素材必要だったから価値としてもかなりとんでもないわよ?」


「にゃ?」


「この発想はいつからだ?」


「覚醒者になった時から考えてはいたのよ。んで今日の今日まで暇だったから形にしたって訳」


「ちょっと、何理解者同士みたいな会話してるのよ。こっちにも分かるように教えなさいよ」


白旗上げたレイレイは不貞腐れた感じで私と火力に聞いてくる。


「ちょっと待てや・・・えーっとこの棒が誘導魔法組み込まれた棒でこのネックレスがなんかの魔術魔法組み込まれててまでは理解したァ・・・あああああ!! この球が全く理解出来ねぇ!!」


「チーザーの話的に物理遠距離攻撃の武器と言うことでいいんじゃないの?」


「球が高価な素材を使ってるって事じゃないのかい?」


「ちっげーよタコ助共!! あとちょいでわかりそうなんだから黙ってろ!!」


「「流石暴君」」


チーザーがほとんど答え言ってるけどね。チーザーが答えだしたがってるけど、時間もあんまりないし答え合わせはしちゃおっか。


「難しい事は特にないわよ。私が魔法で放つ弾丸。そっちの棒には私の組み込んだ誘導魔法が組み込んである。あとは皆が考えてる通りよ」


「つまりスナイパーライフル的な事を魔法でやるって事か?」


「そ」


「でもそれじゃら誘導魔法必要にゃくにゃいかにゃ?」


「曲線軌道で当てられるように誘導が必要なのよ」


「どっちかと言うとミサイルみたいなものなんですね」


「ルークくんの方が確かにしっくりくるかもね。


「・・・あ゛♥ ねぇねぇマイちゃん???」


「どしたのももちゅん?」


「これ”有効射程距離”どのくらい?」


「「「「「「っ!!?」」」」」」


「誘導の棒がまだ五本だからルーキストから王都まで位ね」


「「「「「ミサイル兵器じゃねぇか!!?」」」」」


「兵器までいかないわよ。誘導は”私がやらないといけない”から当たるまで手動だし」


「・・・おいまてバカ女。今誘導はテメェがやらないとって言ったな?」


「えぇ。言ったわよ」


「その誘導の間に別の魔法で加速させたりできんのか?」


「勿論」


「・・・因みに聞くが、”これ”は見た目と密度が比例してっか?」


チーザーも完全に理解したみたいじゃない。もう正解と同じね。


「してないわ。私の魔法で超密度に圧縮して耐熱耐冷耐圧耐性を可能な限り付与してある。一個作るのに少なく見積もっても王都に豪邸が建てられるわね」


それも踏まえて私は皆にこれを作った経緯も話す。


「これは私が作った対魔法対策をしていた相手に対しての攻撃手段。別に荒武者対策として作ったって訳じゃないんだけど、私が『魔導女帝』に目覚めた時点で、エクスゼウスは絶対にこれを否定する相手を用意するのは想像出来た」


ソロだった時から対人戦では、私と戦う連中は絶対に魔法対策をしていた。そんな相手に対して、私はいつも対策の対策として準高速アタッカーとして立ち回れるようにビルドしたりして対策してきた。


けど、それはアールがこの世界に来たから、私が一人で解決する必要なくなったのよね。だからそういう対策の必要がなくなったから実はソロの時よりも魔法に特化したビルドにステータスとかを振り直してたのよね。


これで完璧、とはいかないのがこの世界の怖い所。そんな怖い部分の中で、特にアールと私が苦手な相手はなんだ。初見殺しは考えないものとして。


それは私たちの攻撃範囲の外からの攻撃。それも魔法で迎撃できない部類の何か。


それがどんなものか想像は難しかったけど、私達二人の弱点になる攻撃はそれだと私は思った。だからそれを迎撃するための何かを用意しようと思ってた。


「魔法が使えない相手に対して物理攻撃が有効なのはよくある事だからね。最初は元々この鉄球はアールと私が協力して使う事を前提に作ったの」


「だから各種耐性がモリモリなんだね」


「そういう事。改良を繰り返してまず鉄球ようやく納得がいく物が出来たの。アールが月光真流で打ち出しても、私が魔法で打ち出しても使える投擲武器みたいなものね」


私はここで満足してた。私もアールも索敵能力はかなり高いから、何かあった時点でこれを持っていれば迎撃出来る。


けど、家族が出来た。そして家族が邪神の事件に巻き込まれた。


ここで私の認識が変わった。もう二人だけ守れればいい訳じゃない。私たちはあの子たちを守る義務があるって。だから更に改良を重ねた。


「そっちの棒は即席で作ったもの。本命は棒の先端に付けてる魔法石。その魔法石には私だけが認識できる魔力を常に発生させる魔法が常時発動するようになってる」


「想像以上にヤバい誘導機能だった!!?」


まず、行方不明になってもすぐ探せるように現実で言う所のGPSになりうるものを作る事にした。この世界は魔法の世界だから現実のような科学文化は無い。


だからGPSの役割を果たせる魔法を創った。ここに関しては魔導女帝の能力様様ね。常時発動型の魔法は燃費が激しい上に、製作にも膨大な魔力が必要なの。


その問題は魔力女帝に目覚めた時、それと一緒に持ってきてくれた能力が解決してくれた。


そしてその魔法を人体に刻み込む事も正直考えたけど、アキちゃん達の未来を考えて、倫理的にやめた。代わりに身に付けられる物に魔法を埋め込む為の技術を磨いてきた。結果生まれたのがその魔法石。


「それを認識するために私は私の眼を”作り変えた”の。それだけが理由じゃないけどね」


「・・・オメェヤバいわ。ドン引きだわオメェ」


「そのネックレスに仕込んである魔法は視覚同調の魔法。装備者の視界あるいは付近の様子を私が共有する為のアイテムよ。基本は装備者が起動する必要があるけど、やろうと思えば私が勝手に起動して視覚同調も可能よ」


「ちょっとサラッと言ってるけど実質監視カメラじゃないの!!?」


「失礼ね。防犯装備よ。アキちゃん達が誘拐された時即座に対応できるようにするために作ったんだから」


「それアールに渡したらアールの行動常に把握できる訳よね!?」


「??? そうだけど?」


何を当たり前の事言ってるのかしら? 最初からそう言ってるじゃない。視覚同調って事は相手が見てるものを私も見えるようにする事なんだから。


「姉ちゃん怖い!! 僕本物のヤバい人見たの初めてかもしれない!! マジで怖い!!」


「オイオイ愚弟心配すんな。俺も正直ビビってる」


「ぎゃぁぁあああ!!!?」


「・・・用途はこの際無視しようか。鉄球と棒は理解したけど、ネックレスは今必要かい?」


「えぇ老眼鏡。必要よ。画面越しにでも対象を捉える事が出来るなら命中精度は格段に上がるわ」


魔力を感知して標的に当てる事は出来るけど、当てる相手が見えるならそれに越したことは無いわ。


「鉄球にもネックレスと同じように視覚同調の魔法をかけてある。私は鉄球の弾道と標的の位置を同時に認識して加速と微調整を繰り返して確実に仕留める為の仕掛けよ」


魔力が無力化されても、運動エネルギーは残る。的確な照準と速度さえ出ていれば、魔法による誘導と加速が切れても破壊力はすさまじいものになるはず。


「まてにゃまてにゃ!? 要するに二つのチャンネル同時に見て操作するって事にゃよね!? おみゃーそれ速度考えたら相当なマルチタスク必要じゃないかにゃ!!?」


「ええそうよ。練習で何度か長距離射撃は試したけど、鉄球着弾から三十分以上私は何も出来ないし考えることも出来ないわ。どっちかと言うと気絶に近いかも」


「「「「「「!?!?!??!?!?!?!?」」」」」」


「最初に試した時は死んだと思ったわ。気が付いてから気絶してた時間を調べたり、着弾地点の確認をして、精度9割成功って感じだったわ。それも動いていない相手であることが絶対条件」


「・・・それ相応のリスクと反動は伴うって訳か」


「長距離となると特にね。だから正直荒武者みたいな相手には使えないと思ってたから黙ってたんだけど」


仮に荒武者の動きを止められるなら命中させることは可能。だけど魔法での拘束が出来ない以上、荒武者の動きを封じる為には。


「地形で身動きを封じるか、誰かが人柱が如く押し込めるかの二択ね」


「現状ウチで出来そうなのは・・・」


「俺とにゃーるが協力しないと無理か」


「荒武者と戦うのに二大戦力使い捨ては無理だよ♠ それにマイちゃんがPK扱いで犯罪者にされちゃうし♦」


「犯罪者云々はギルドにお金払えば何とかなるから気にしないでいいわよ。資産は潤沢にあるし」


「そういう事じゃないんだがな。ギルドに金を払う前に他のプレイヤーに殺されれば間違いなく牢獄行きだ。覚醒者としての能力も全て失うんだぞ」


「火力くんの言う通りだよ。確かに強力な攻撃手段ではありそうだけど、その負担をマイさんに全て押し付けるのは違うと僕は思うよ」


「そうにゃ! それにおみゃー母親にゃぞ! にゃーたちがおみゃーに全部負担賭けて作戦するなんて却下にゃ!! チーザーも文句にゃいよにゃ!!?」


「・・・オィマイ。マスターは今どこだ?」


現実むこうの自宅だよ。アールのゲーム機器借りてここにいるからね私」


「なら今すぐテメェの家帰って夫婦そろってこっち戻ってこい」


「ちょっとチーザーまさかアンタ!!?」


「マスターが護衛に付けば何があっても守れんだろォ」


「・・・本気かチーザー」


「本気だぜ俺はよォ火力。勝つためなら俺ァ何でもやってやるし使ってやァ」


「だどしt「待ってレイレイ」でもマイ!!」


チーザーはこういう時自分が全部ヘイトを買って悪役になろうとする。悪役になっても必ず敵には勝つ。どんな犠牲があっても必ず。だから皆その姿を見て暴君って呼ぶようになった。


そのRPは簡単な事じゃないし、一種の尊敬もするわ。そしてそれを踏まえても、それはダメだと止めようとしてくれる皆の優しさも嬉しい。


けど。


ムカつくのよね。


えぇすっごくムカつくわ。


「チーザー。それに皆にも。一つだけ勘違いを指摘するわ」


「あァン? 勘違い勘違いだァ・・!!?」


チーザーに歩み寄って襟をつかんで思いっきりド突きあう。それこそお互いの頭蓋骨にひびが入るような音がクランハウスに木霊した。


「~~~っ!!! テメェマイ何しやが「お前ら全員私を下に見るな!!!!」」


その気遣いが私を格下に見てる証明なのよ!!


「私は確かに覚醒者として新参だけど舐めるな!! アンタ達が覚醒者として上位種として戦ってた時!! 私はその壁を超える為にやれることを全部してきた!! 大好きな人に追いつくために出来る事は全部してきたのよ!!! 諦めたり心が折れたりもした!! けど・・・それでも!! やってやってやり続けて!! 今私はお前らと同じ場所に立ってるのよ!! この場に立って知ったことも沢山ある!! それだけじゃなくて家族も出来た!! それら含めて私は新参だけど!! 私は今覚醒者としてお前らと同じ場所にいるのよ!! 家族が出来た事を含めて私は覚悟を決めたのよ!! 私は家族を守る為なら全て捧げるってね!! 私の家族に仇なす敵を排除できるなら汚名だろうとリスクだろうとなんだろうとかぶってやるわよ!!」 


「「「「「「・・・」」」」」」


「・・・それにさ。私達友達でしょ。こんな事で喧嘩別れとかしたく無いのよ。だからチーザー。私達だけなんだから悪役にならなくてもいいのよ。それに皆も、私に気遣いしすぎないで。私は皆と、友達として対等でいたいの。こっちでの私の事情は抜きにして、私は皆と同じ場所で戦いたいの。もし本当に私の事を思ってくれるなら、この私の我儘を聞いてくれないかしら?」


これも嘘偽りない私の思い。家族が出来たからこの人は危険に晒しちゃいけないみたいな気遣いされたくないのよ。友達として、同じ覚醒者となった人として。偉そうなこと言うけど、新参だけど、同じ場所に居させて欲しい。


アールは私の特別な人だけど、皆も私にとっては同じくらい特別な友達なの。だからこれはある意味で傲慢な我儘。でもここは私のもう一つの現実みたいなものだから、この我儘を私のものにしたい。


「・・・すまないマイ。お前を格下に見ていたつもりは無かったが、そう思わせてしまったならすまなかった。それにチーザー。お前にも謝罪する。お前と言う奴はそうやっていつも悪役を演じてくれる奴だったな」


「うっせ馬鹿。口に出すんじゃねぇ。あとマイ。俺様は別にテメェを格下になんか見てねぇが・・・その・・・悪かったよ」


「ごめんマイ。そう言われると確かに自分の方が上だって思ってたかもしれない私」


「それを言ったらにゃーだってそうにゃ。すまにゃい」


「ごめん」


「こういう時、年上の僕やももちゅんが場を収めるべきだったのにね。ごめんねマイさん。君に不快な思いをさせてしまって」


「・・・大人げないねぇ私も。すまなかったねマイちゃん」


「別に皆に謝罪を求めた訳じゃないよ。ただ私を特別扱いしないでって話だから」


「・・・よし切り替えた!! じゃぁマイ! お前さんは荒武者が止まったら狙い撃ってってくれるんだな?」


この切り替えの早さと空気の入れ替えをしてくれるのはマー坊の良い所よね。


「ええ。動きさえしなければ確実に当てるわ」


「なら尚更マスターは呼ぶべきじゃないかな☆」


「いいえ、それだと私が戻ってくる前にネクロロンの戦線が崩壊するかもしれないから却下よ」


「にゃらにゃーかマー坊のどっちかが残るかにゃ?」


「あら? 居残り組の皆は気絶した私一人守れない位弱いの? もしかして皆が格上だと思ってたのは私の勘違い?」


「・・・言われてみれば確かにそうだね。僕の過剰付与と火力くんの火力で薙ぎ払えば全然守れそうだね」


「あえてお前の挑発に乗ろうか。お前一人守ることなど容易いことだ」


「・・・これ僕とルーク少年完全にカヤの外だったけど、マイさん一人守る事なら僕らでも出来るね」


「あ、ハイ。それはまぁ出来ると言うか、出来ないと僕も経験者として恥というか・・・です」


「決まりね。それじゃあ私はこの杭をいくつかの地点に分けて突き刺してくるから、それまでに出発の準備しておいてね。突き立てて来たら皆を荒武者付近に転移で送るから」








ーーーー








「要するに俺らが人柱作戦する前にテメェらが荒武者雁字搦めにしてたからぶち抜いたって訳だ。威力に関しては正直想像以上だったがなァ」


「なんか色々端折られてた気がするぅ!! 絶対にひと悶着あったよねその話してた時!!?」


チーザー紫はここに来るまでに話した会話を必要な事だけ拾ってネクロロンへ伝えた。無論、マイがキレた話やチーザーが謝った話などの現状不要な事は一切話していない。


それでも、ひと悶着あっただろうと察したネクロロンは、流石の付き合いと言うべきだろう。


「馬鹿かオメェ。炎上するような会話テメェの配信で話す訳ねぇだろ」


「炎上するような話してたって言ってるようなモノじゃん!! と言うか話的に今マイさん大丈夫なの!!? 絶対絶対反動ありきの攻撃だよねこれ!?」


当然この攻撃のデメリットなどチーザー紫は話していない。話したのはあくまでも再攻撃には30分以上の装填時間が掛かる事としか言っていない。だがネクロロンはこの攻撃が何のデメリット無しで撃てるとは考えていなかった。


「安心しろや。ここにいないメンバー全員でマイの警護してらぁァ。”もちろんマスターもなぁ”?」


「あ、はいそれはもう完全防衛ですね。ハイ」


ここでチーザーが全てを話さなかったことが生きる。同時にアールがこの場に参戦しない理由にもなった。


ネクロロンの配信に出演したことがあるアールとマイの関係は『夢見こころ』の視聴者は無論、プラクロユーザーにも周知の事実として知られている。


マイを守るためにアールはここにいない』


これ以上ない理由だ。そして想像を膨らませれば、チーザー紫達は”アール抜きでこの戦いに勝てる”と判断したから、アールを後方に下げたとも捉える事が出来るだろう。


そもそもの話、覚醒者が邪神戦に参戦すること自体が士気が上がる要素なのだ。それが0から一気に5人。この場にいないもの含めれば8人来たとなれば一般的なプラクロユーザーの士気は上がるのだ。


そしてネクロロンの配信を見てる視聴者やこの作戦に参戦しているのはそんな一般的なプレイヤー達である。


結果。そう事である。


「す・・・すげぇ・・・!!!」


「砲撃じゃんよ・・・!!!」


「人柱もとい英雄10名に敬礼!!」


「「「「「(ビシィッ)!!!」」」」」


「勝てるぞこれ!! 勝機が見えた!!!」


「あれでまだ原型留めてる荒武者もヤバいけどこっちの火力も追いついた!! 勝つぞ!!」


若干敗戦ムードだったプレイヤー達が一気に活気づく。この戦いで足りなかった、指揮官たるネクロロンが求めた火力問題が解決したのだ。この状況をすぐに察したチーザー紫はこの状況を更に利用する。


「オメェらネクロイド共!! ここでネクロの奴に! ネクロの奴が自慢だって言ってたネクロイドの本気見せてやれや!!!」


「「「「「「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」


「ネクロイドじゃネェ奴らもだ!! この作戦に参加した覚悟と熱意ここで見せたれやァ!!!」


「「「「「「「「「「おおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」」」


「荒武者はまだ形が残ってるが動けてねぇ!! 叩きのめしてあの鎧ボコボコにして丸裸にしてやれェェ!!!!」


「あぁもうそれ私のセリフ!! まぁ良いけどさ!! 攻撃部隊総員突撃!! 荒武者がまた動く前に全力を持って叩き潰すよ!! 同士討ちしないようにね!! 支援重装兵部隊はいつでも動けるように待機!! このチャンス必ず生かすよ!!」


作戦司令官ネクロロンの突撃許可をきっかけに、攻撃部隊が荒武者の索敵範囲内に撃する。防御を捨て、攻撃のみに特化した部隊。


狂戦士と言っても過言ではない物理攻撃極振り部隊の彼ら。一撃でも受ければ即死する彼らだが、目に恐れはなく、あるのは勝機を逃さんとする戦士の瞳。


そんな彼らが足音を響かせながら荒武者へと迫る。


対する荒武者もすぐにそれに気付く。己の認識できる範囲に生命が来た。ならば殺す。それだけ・・・だが、荒武者は動けなかった。


荒武者の身体たる鎧は全身がに罅が入り、力点となる場所も当然、力めば崩れるほどに大きなダメージを受けていた。それでも、荒武者は動くための行動を選択する。


それはアールとの戦いで見せた黒い蔦による再生。高速…とまではいかなくとも、その再生速度は生物として考えれば異常な速度であり、このゲームがもしターン制バトルゲームであれば一度の行動で半分の体力を回復できる程の回復力ではあった。


だが、この世界はターン制ではない。MMOだ。時間は止まらず、常に進み続ける。故に、回復が完了する前に、狂戦士たちは荒武者の元に辿り着いた。


「これまでの怒りぃぃぃぃ!!!」


「ウラーラーラーラーラー!!!!!!」


「砕く砕く砕く砕く砕くゥぅ!!!!」


「粉砕!! 粉砕!!! まだまだ粉砕!!!」


「パワーイズジャスティィィィィィス!!!」


「うおぉぉぉぉおおおおお!!! ネクロロン最高ォォォォォ!!!!」


「ネクロイド最高ォォォォォ!!!」


「あああああああああ!!!!!!」


それは理性無き獣による蹂躙のような光景だった。


激しい金属音が鳴り響く。鳴りやまぬ。鳴り続ける。それは今まで有効打を与えられなかったプレイヤーサイドの鬱憤を晴らすが如く。


荒武者は確かに硬い。再生速度もそれなりにあった。だが、レベル上限に達し、その上で攻撃に極振りし、装備も全て攻撃の為に調整された一品をそれぞれ担いだプレイヤー達による一撃・・・否、連撃は、荒武者の再生速度を上回る。


これがもしも、万全の状態であれば荒武者の鎧は傷つくことはなった。だが、その鎧は大きく罅が入り、身動き一つまともに出来ない。故に狂戦士”たちの攻撃ならば”通る。


一撃の数値は大きく変わらないが、それが連続して叩き込まれれば、罅を広げるが如く。一撃はやがて重撃となり、致命的な攻撃となり替わり、荒武者の鎧を粉砕し続ける。


「ありゃ完全に蛮族だなオイ」


「理性跳んでるなアイツら」


「やべーわ。アイツら。完全に狂ってやがるぜ」


誰にもそんな言葉を否定できないほどの惨状と言える光景だった。だが、彼らの次の言葉は。


「「「いいぞ頑張れー!!!」」」


荒武者に煮え湯を飲まされ続けたプレイヤーだ。攻守が反転した今、彼らのテンションもいい意味で()ってるのだ。


「とりあえず・・・あんまり配信にのせられる光景じゃないよねこれ」


「アヒャヒャヒャ!! いいぞやれやオメェら!!!」


「これにゃーたちいらにゃくにゃいか?」


「いうなにゃーる・・・悲しくなるから」


一緒になって盛り上がってる暴君と、配信に乗せるのが怖くなって視点を変えた配信者。完全に出番を失ったゴリラと猫は若干項垂れている。一応彼らは覚悟を決めてきたわけなのだが、来た時すでに彼らの役目は無くなっていなので。


「取りあえず予定通りにゃーるに支援全掛けでいいのよね?」


「そうだゾ☆ でも場合によってはマー坊くんに変更だね☆」


そんな中でも、自分たちの役目を忘れていない女性二人は次に備えて確認を行う。まだ見ぬ次の形態に対して、臨機応変に対応できるように。それを視て配信者は察する。


まだ終わりには程遠いと。


「・・・二人の会話的にそういう事だよね?」


「「そゆこと」」


「簡単にはいかないよね。待機中の総員気を抜かないでね!! 絶対に何かあるよ!!!」


状況は一気に好転したが、この戦いは生命種が生き残る為の生存戦争だ。この程度では終わらない。鎧にやどりし黒き芽は未だ健在なのだから。

ちょっと九月一日の更新危ういかもです。いつかは間違いなく更新行けます。

それはそうとして戦闘描写入ってないですねこれ。次回こそ頑張ります


感想・星評価・レビューにブックマークなど、是非是非たくさん下さい。お願いします。沢山くれると本当に嬉しいので!!!!

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[良い点] マイさんからしてみると子供がいるからと足手まといにされるのは気に食わないでしょうね。これに関してはいつかは起こり得たことですから、決定的な不和に繋がらなくてよかったなと。 [気になる点] …
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