荒武者編:それぞれの視点
あくたん卒業まであと少し・・・最後まで推します!!
知らない人是非見て!!
では本編どうぞ
真央のゲーム機器を使ってログインし、目覚めると、まず視界に入って来たのはアールの寝顔。今のアールの心(魂)はここにいないから肉体しか存在していないけど、規則的に、時に不規則に聞こえる呼吸音が、こっちでも生きている事を教えてくれる。
次にアールの腕を枕にして横になっていたハルちゃんと目が合った。
「・・・おはよ」
「おはようハルちゃん。今日も甘えん坊だね」
「・・・(プイッ)」
恥ずかしそうに顔を逸らせるハルちゃんが可愛くて、思わず頭を撫ぜてあげる。嫌がるそぶりも無く撫ぜられるハルちゃんは可愛いなぁ。
さてと。あんまり遅くなるとチーザーがねちねち言い出すだろうから、クランハウスの方に行こう。
「・・・出かけるの?」
「うん。ちょっと世界救ってくるよ」
「・・・ヤバい。マミーがバカミナツに毒されて変になっちゃった」
「相変わらずハルちゃんはナツ君に辛辣だね。それじゃ、いってくるね」
「・・・よくわかんないけど、いってらっしゃい」
優しくハルちゃんの頭を撫ぜて起き上がる。寝室を出て居間に行くとテーブルの上に広げた本と睨めっこしてる残り三人姉弟ともう当たり前のようにそんな子たちを見てお茶を飲んでるマリアーデさんの姿が見えた。
「あ! 母さんおはよー!!」
「む、マミー。おはよう」
「おはようございます。えへへ」
「目を覚ましたか。此度は起きるのが少々遅かったな」
「おはよう皆。起きてすぐだけどちょっと出かけてくるからお留守番しててね。マリアーデ様も家の子たちの事お願いします」
「任せよ」
「えー・・・母さんに新しい魔法教えて貰おうと思ったのにぃ~」
「こらミナツ。マミーを困らせるな。それに今は言葉と文字の勉強をすると決めたじゃないか」
「ミナツは文字読むの苦手ですからね。飽きちゃったんですね」
「ち・・・ちげーし! ちょっと休憩って奴だし!!」
「本当ですか? さっきまでプスプス煙出てましたよ?」
「え!? 俺燃えてたの!?」
「・・・ミナツ。やっぱりお前はもう少し会話とか言葉の勉強をした方がいいだろうな」
「いやいやアキハ姉さん俺燃えてたら危なくない!!?」
「例え話だぞ童よ。頭がいっぱいいっぱいで上手く回っていない時にそういう言い回しがあるのだ」
「あ、そうなのか。俺燃えてたわけじゃないのか・・・よかったぁ・・・」
「あはは・・・」
これは下手に読むのが嫌になる物を読ませるよりも続きが気になる感じの作品を読ませた方がいいかもね。
確かこの前市場にいった時に現実でいう所のライトノベル的な書籍を表紙買いしたのがあったはず・・・そう思って本棚に向かい、目的の本が並んでいる列に指を沿わせていく。新刊ゾーン発見っと。どれにしよっかな。ナツ君が好きそうなのはそうだなぁ。これにしよっか。
本の題名は『忠義と願望の物語』。名前はガッチガチだけど中身は荒くれ者だった主人公がたまたま出会った国の王様に仕える事になって、そこから色んなことを学んで最終的には時に臣下として、時には友人として、王様と一緒に平和な世界を作っていくファンタジー作品。
ありきたりかもしれないけど、こんなのが結構心に響いたりするんだよね。特に冒険大好きナツ君にはこんな形の冒険もあるのかって考える機会にもなりそうだし。
「はいこれ。ナツ君はこれ読んでどう思ったか後で私に感想を教える事を勉強にしよっか」
「わかった!!」
ピカーンって擬音が聞こえてきそうな表情で渡した本を受け取ったナツ君は自分の座っていた場所に戻り読書を始めた。
アキちゃん達はまぁやれやれみたいな顔をしながら、読んでいた本へ視線を戻した。それを確認して、私も家を出た。
ーーーー
「おせーぞマイ」
「どこがよ。一時間後どころか50分前に来た私の何処が遅いのよ」
「オメー以外揃ってんだからオメーは遅刻なんだよ」
「酷いわね」
クランハウスには私とアール、あと配信中のネクロロン以外全員が既に揃っていた。おっかしいなぁ? 私的には最速でここに来たはずなんだけど?
「チーザー。文句は良いが揃ったならどうするのか話し合おう」
「わーってるよ! ジジイアイスコーヒー」
「ミルクはいるかい?」
「いる」
「他の皆もアイスコーヒーでいいかな?」
首を縦に振ると他の皆も同じように返事を返した。それを確認した老眼鏡さんはカウンターでいそいそとコーヒーを入れ始めた。今日は向こうのお店は閉めてきたのね。
「早速本題いってみよっか☆」
「荒武者撃滅の最善手だけど・・・物理で殴るよね」
「魔法職は無力化されてるからそうなるでしょうね」
私達は今自分たちが知っている情報の照らし合わせを始めた。
荒武者はあらゆる魔法を無効化、あるいは無力化する能力がある。ネクロロンの配信で知った情報では索敵範囲と魔法無効範囲は同じもので半径50m。
荒武者のステータスはおそらく速度重視の物理アタッカー。レベル80台のプレイヤーが防御にステータスを寄せれば一撃で落ちない事を考えれば、速度極振りにすれば追うことは出来る可能性が高い。
などなど。そのほとんどはネクロロンの配信によって得られた情報ばかり。でもそれらの情報がかなり有益な情報でもある。
「メインアタッカーは猫とゴリラだなァ」
「にゃー。そうだろうにゃ」
「にゃーるが牽制、俺が背後からズドンか」
ウチのクラン実はメインアタッカーがゴリラ(マー坊)とにゃーるしか物理いないのよね。メインジョブを無視すれば火力さんも前を張れるけど、戦闘経験的にはゴリラとにゃーるには劣る。それに火力さん支援系の方が強いし。
「私の能力はどうする? ゴリラに全振り?」
「いや、ゴリラと猫に50:50だ。一人特化させたとき、荒武者に適応されたら面倒くせェ」
「りょーかい」
レイレイのステータス補強はこの盤面では重要だ。ステータス上限レベル100よりも生身のステータスが上昇するからこういう荒武者みたいなステータスで殴ってくる相手にと戦う時には大きな一手になる。
だからこそ、ここは意見をしよっかな。
「私としてはにゃーる極振りを押すけど」
「理由は?」
「安パイよりも全賭けの方が勝率高いでしょ?」
1を100にするよりも、100を1000にした方が強いからね。
「一理あるにゃ」
「ウチもマイちゃんに一票カナ☆」
「使う私としてはリソース管理も考えると一人の方がやりやすくて助かるわね」
「全賭け4票か。おい男性陣。お前らはどっち派だ?」
「・・・無論全賭けだ。火力は高いほどいい」
「僕は安全策かな。この歳になるとどうしても博打は手出しするのが億劫になるものでね」
「僕も老眼鏡さんに一票!」
「邪神戦は初めてだから僕としては安パイかな。何があっても適応できるように備えるのは悪い選択ではないからね」
「オィゴリラ。テメェの選択肢で作戦決まるから選べや」
「俺への負担デカくねぇかな!!? あとお前ら全員俺の事ゴリラゴリラ言いすぎじゃね?」
「うるせぇゴリラ。オメェの一票には二票分の価値を与えたんだ。さっさと決めろ」
「なんで!!?」
まぁ、進行はチーザーがやってるし、それぞれの案にもメリットデメリットはあるから別に文句は無いからスルーでいいか。
「いまさにゃだけどにゃー達が動くのは良いのかにゃ? あのクソうざかった嘆願書だかを無視することににゃるけど」
「あ? あんなもん破棄だ破棄。今俺が決めた。文句言ってきた奴は潰す」
「暴君ここにあり☆」
「異論はない。だがネクロの配信関連はどうする?」
「『手伝いに来た』っつって作戦に参加するって事にしとけばいいだろ。どう見ても消耗戦に持ち込まれて壊滅すんのがオチだ。そこに文句言うなら文句言う奴らが命投げ捨てて手伝いにこいやって話だ」
「・・・事実だけど酷くない? 私達で嗾けたのに」
「良いかレイレイ。あれだけ俺様達が懇切丁寧に名前も知らねぇ奴らの為に装備とアイテム諸々用意してやったのに生かしきれなかった奴らが悪ィ」
「うっわ・・・容赦ないわね暴君。流石暴君」
「姉ちゃん完全に独裁者じゃん・・・」
「うっせ愚弟。爆弾括り付けて荒武者に投げつけるぞ」
「ヒエッ」
とりあえず文句言われたらチーザーに押し付ける感じで良いって事ね。
「オラゴリラ。考える時間やったんだから決めろや」
「え、今の考える時間だったの?」
「その股座にぶら下がってる愚息を潰すぞテメェ」
「怖ぇよマジで!!? マジてお前ならやりそうじゃん!!」
「ほら3~」
「いきなりカウントダウン!!? じゃぁ極振り!!」
「・・・チィッ!」
「めっちゃ舌打ちされたんだが? 俺の扱いひど過ぎない? マスターお酒!! やけ酒してやらぁ!」
「君たちのやり取りは見てて楽しいね。お酒は無いけどコーヒーが入ったよ。マー坊くんには特別にハーブティーを入れたから飲んでみてよ」
「マスター優しい。惚れそう」
「キッショッ!!! キィィィィィッショ!!!!」
「・・・ぐすん」
レイレイのかなり強めの言葉でマー坊ってばマジ泣きしそうじゃないの。いい加減フォロー入れるべきよね。
「コントはそろそろやめて荒武者の話に戻そうネ★?」
「「「ハイ」」」
・・・ももちゅんのマジ声って言うの? 真剣な声ってこう威圧感半端ないわね。
「私たちのこれからとしては嘆願書を破棄して荒武者撃破を目標として行動を始める。作戦としては魔法型のメンツは戦力外だから戦闘面以外でマー坊くんとにゃーるちゃんを全力支援する。こんな感じカナ☆?」
「大体そんな感じだが一つ訂正だァ。おいマイ。アールがどうせ荒武者にちょっかいかけてんだろ。その時の話教えろや」
チーザーの一言に皆揃って『そうだそうだ』って言いたげに頷いてきたんだけど。
「ナチュラルに皆アールの事理解してるのね」
「たりめーだ。マスターが何もしてないなんて考える方が無理だろJK」
「どの程度かはともかく、マスターならば敵を知ることを欠かす事は無いだろう」
「にゃーたちの中で一番熱心に剣物クリアの為に情報集めするのマスターだったからにゃ」
「俺ら全員の経験談聞いてメモしてたのアイツくらいだったしな」
「あの熱量が簡単に無くなるとは思えないし」
「父親は守るべき者を定めた時どんな事だってやるものだからネ☆」
「僕は直感だけどね。マスターくんなら何かしてると思っただけさ」
「テイマーくんに同じだね。公式の推しだし」
「僕は馬鹿姉がいうならそうなんだろうなって感じです」
今までの積み重ね的にアールの行動が見透かされてる。もちろん良い意味でだけどさ。
「現状の話だからね? それを前提に聞いて。まず”今の荒武者”なら余裕で勝てるってさ」
「やっぱりあるよね第二形態」
「あるだろうなァ・・・」
「無いわけがないな」
今の一言で全員が察した。まぁ予想しなかった訳じゃないけど。エクスゼウスがアール推しをほぼ公言してるんだから、アールが簡単に無双できる程度の強敵で済ます訳がない。
「あと今でこそ分かったけど魔法無効範囲に入った時に感じたこと無い違和感を感じたとも言ってたよ」
「感じたこと無い違和感・・・普通に考えるなら荒武者の特殊能力を肌で感じての感想だけど、アールがそう言ったって事はなんかありそうだな」
「第二形態への布石なのか、ただの能力を感じた感想なのか。難しい所だね」
「実際戦闘して俺達で判断すべきだろう。警戒すべき事があると頭に入れておけばいいだろう」
「そうだね。火力さんの言う様に戦って知るべきだね。考えすぎ時には悪手だ」
「・・・それしかねェか。他になんかあるか?」
「殺意が高くてそこから動きが読めるらしいよ。あとは一撃必殺の動きが基本。早くて重い攻撃。鎧を砕いたら黒い蔦が伸びてきて鎧が再生したとも言ってたね。中身がない人形だってさ」
「鎧を砕いたって事は一定数以上のダメージはあった訳か。それで今現在HPゲージ出てねェからギミック解除で倒すボスか荒武者?」
「可能性高いにゃ。マイ。マスターが鎧を砕いた回数は何回にゃ?」
「二回。その時に仕掛けも一つ置いてきたって」
「仕掛けって☆?」
「衝撃の時限爆弾」
「『朔』じゃねぇか。絶対『朔』じゃネェかオイ」
「えっぎぃ・・・」
「まだ起爆してないよね・・・って事は・・・うわぁ・・・」
「荒武者粉砕するんじゃない?」
「??? 『朔』? なにそれ?」
隠し要素で公式が公開禁止してるからサブクエストとか図鑑集め全部やってないと知ることがないんだよね。ルークはシナリオ重視のプレイヤーだったのかな。
「月光真流『月波:朔』。衝撃を受け止める普通の月波の性質を反転させて、相手に蓄積させる技だよ」
「えっと・・・それだけ?」
「アホ愚弟。朔はな。常に蓄積し続ける技だ。相手がどう思おうとも無関係に、相手は衝撃を常に蓄積し続ける技だ。理解したか。知ろ」
「??? アクエリアの下位互換?」
「そう決めつけるのは良くないゾ☆ 『朔』は『アクエリア』と違って相手に風船を植え付ける技だよ☆ その風船は一挙手一挙動で少しずつ膨らんでいって、最終的に爆発するんだよ。自分の意志とは無関係にね☆」
「・・・うわぁ・・・」
理解したみたい。『月波・朔』は今言ってたように相手に衝撃を蓄積させる技。この衝撃が相手の許容量を超えたら相手の身体を内部から破壊する。
欠点としては瞬間火力が出ないから奥義『凪波アクエリア』の下位互換に区分されてるけど。それでも長期戦で考えれば初手に繰り出せば終盤自分を助けてくれる起死回生の一手にもなる。
習得条件、と言うか知る為の条件は剣聖物語で登場する図鑑の制覇と装備全種の入手。その為にはメインルートからずれて探索も必要だし、登場する武術の師範代とかとの戦闘も必須。そしてそれらを集めた上で最後の一つの武器を入手する事で条件がクリアされる。
劇中で『剣聖』の名を授かり、月光真流の師範代も務めるレガリオ。此奴と関わるのが最後の一つの武器を入手する条件になる。でもそれが本当に綱渡りなのよね。
第一印象と最初の一言で全てが決まるからね。このレガリオと言う男。自分が気に入らないと感じた奴には全くの無関心になるのよ。だから初手失敗するとnewgameでやり直すまで関係を結ぶことは不可能。ここまでやって来た事全部無に帰すからね。
んで逆に気に入られると今度は暴君が如く無理難題や無茶苦茶に付き合わされる。最終的には稽古と言う形で試合をするんだけど、そこで”自分が”負けて、更にレガリオから”俺ほどではないが俺の次くらいには強くなるだろう”と言う風に気に入られる事でようやく入手できる武器がある。
それを所持した上で劇中のマリアーデの元に訪れて武器を彼女に渡すと教えて貰えるのがこの『月波・朔』。
まぁ要するに、コンプ勢でない限りは知る事は無いし、知っていたとしても必須級の技でもないからそこまでする価値も無い。
これが一般的プレイヤーが感じる『月波・朔』の認識。
けど二周目以降。引継ぎが出来る状況でこの技を引き継いでプレイすると、一気に化ける。習得難易度も月光真流奥義よりも低く、引継ぎ時のポイント消費も少ない。そしてこの技は自分の能力に左右されず一定数以上の固定ダメージを与えられる。
クリエイションモード以外のモードを楽にクリアしたいなら図鑑コンプしろと言うのは割とみんなが言う事なのよ。
「だがよォ。それは良い事聞いたぜオイ。俺らが使わせてもらっても構わねぇだろォ?」
「いいんじゃない? まぁアールが仕掛けた『朔』だから相当蓄積させないといけないとは思うけど」
「少なくとも荒武者が確実に一回爆発霧散することが確定してんだ。ギミック解除の鍵にもなるだろうよォ」
「確かにそう捉える事も出来るか・・・でもギミック解除に役立つか?」
「再生するまでの時間は普通よりもかかるでしょうね。その時に何か荒武者の内部に何かあるか探せるかも。例えばコアみたいなものとか」
「今の段階だと黒い蔦の大元がコアに当たる何かだろうな。その場所を突き止められるだけでも大きな収穫になるだろう」
「他にはなんかねェのか?」
「”今の所”戦闘面で得られるものは無いとも言ってたよ」
「つまりマスターよりは雑魚って事か。”今の所”は」
「うん」
「って事は俺らがマジになれば今の荒武者には対応できるな」
「行けるにゃ」
「行けそうだな」
「行けるだろう」
「私は支援だけどまぁ行けるでしょ」
「右に同じかな」
「応援するよー☆」
皆自信たっぷりじゃんね。かと言う私もアールから話を聞いた時は『あ、それならいけそう』なんて謎の自信が出てきたんだけど。
アールの”何もない”って謎の説得力あるのよね。戦闘経験の差と言うか、経歴がそう思わせてくれると言うか。
アールを強さの根幹を知ってる私達目線だけど、アールの強さはその圧倒的な経験値。そして精神力。時間加速の技術をふんだんに使われている剣聖物語を約10年やってるアールには十年以上の戦闘経験と人生経験があると言っても過言じゃない。
それは簡単に埋められるものではないからこそ、その強さに憧れたり、尊敬したりできる。その本人が『此奴から自分が得られるものがない』と判断したって事は、アールが知ってる技術の範囲内で全て収まっているということ。
私達が全員揃ってアールに及ばなくても、何か一点に限れば並ぶ事が出来る。ここに集まってる覚醒者って言う連中は私含めてそう思ってると思う。私で言えば魔法みたいなね。
その並ぶ事が出来るもので荒武者と相対すれば行ける。そういう認識ってこと。
「方向性は決まったなァ。オラテメェら。作戦詰めるぞ」
ーーーー
「んがぁああああ!!!!
「こ・・・こころちゃん大丈夫?」
「せんぱーい・・・正直辛いよぉ・・・なんなのよ荒武者ぁぁ~」
司令部の蘇生ポイントで復活した私、ネクロロン。事務所の先輩『虹乃まゆゆ』先輩の胸に飛び込んでオイオイと泣いてます。
舐めてた訳じゃないし、覚悟もしてた。集められる過去の邪神戦の動画も漁ったし研究もした。けど実際に戦ってみて次元が一つ違うのは想定外なのよ。
一応荒武者を押しとどめる事には成功してるし、結構な情報も集められた。今足りない要素もわかったから次回に繋げると考えればここで切り上げて撤退するもの一つの作戦なんだけど。
「勝ちたいじゃんさぁ~・・・!!!」
配信としては良いものだと思う。けど私が求めてる結果はこれじゃない。勝つ。これだけ。もちろん無謀だと思ってるし、チーザーネキにもそう言われた。
それを全部飲み込んだ上で言う。”勝ちたいのよ” 。
結果的に勝ちじゃなくて、決定的な勝利。
次に繋がる敗北じゃなくて、次を得た勝利。
正直私はチーザーネキ達に嘆願書を送った人たちの事を少しは理解できる。自分たちだってやればできる事を証明したい。
きっとそう思った人たちは今までずっと居たんだと思う。けど皆それを飲み込んで頑張ってきた。けど、ふとした事を切っ掛けにして爆発したんだと思う。それが今回たまたま起こしたんだと思う。
でもさ。だからって強い人達を押し込めるのは違うんだよ。やり方が違う。
お互い話し合って妥協点を見出して、自分と相手が満足できる場所を見つけるべきなんだ。
これがシングルプレイのゲームなら縛りでも何でもすればいい。けどここはMMORPG。自分以外の大勢がいる。その全員が100%満足できる事なんてほとんどない。
だから皆それぞれの妥協点を持っている。『ここまで行ければ満足』『これだけ良ければいいだろう』みたいなね。嘆願書を出した人たちはその分別が出来なかった人だと思うんだよ。
自分こそ主人公という考えを捨てきれなくて、それを他人に押し付けてしまった。それが切っ掛けで今まで妥協してきた人たちが『自分だって妥協してるのに、お前らふざけるな』みたいな不満が爆発して、過去の邪神戦よりも参戦率が低いんだと思う。
まぁ、だからと言って私がそんな自分の理想を押し付けた人たちを擁護することも説教することも無いけどさ。
その代わり私はこの状況を利用する。
私と言う存在の影響力を利用して自分の自己満足を満たす。
人を”使って”勝つために”利用”する。言い方は悪いけどね。
だから、今足りない事が何かもはっきりと見つけられた。配信と戦闘時間はかなり経過したけど、その結果得られた今欲しいもの。
「速さと火力が欲しい・・・!!!」
「えっと・・・ステータス二極振りってこと?」
「ちょっと違うんですよ先輩。速さは速さでも回避が出来る瞬間的な速さと判断力、その速さについて行って尚且つ一瞬の隙を的確に付ける超火力が欲しいんですよ。魔法での強化が出来れば解決する問題ではあるんですけど」
「その魔法が無力化されてるもんね」
「今は皆が俊敏特化で頑張ってくれてるけど、その特化組が倒れたら瓦解する戦況なんですよ今」
「あぁ~・・・うん。そうだよね」
「今の私たちに守りは必要ないんですよ。速さと火力。これが必要なんですよ」
「一応そっちに特化した人はいるよ?」
「足りないんですよ~・・・あと一手何かが足りないんですよ」
「おぉう・・・ズバッといくねこころちゃん・・・今何人か膝から崩れ落ちたよ?」
見るも無残にガックシしてるネクロイドさん達がいるけど。
「認めたくないけど事実なんだよ皆ぁ~・・・受け入れないと次に進めないんだよぉ~・・・うがぁぁぁぁ」
「言動と行動があってないよこころちゃん」
せめて荒武者の機動力を奪えれば話は変わるんだけど、それが出来たらとっくにやってるんだよね。人海戦術でさ。
コメントを見てみれば皆優しい言葉とか激励の言葉を投げかけてくれてる。けど欲しいのは火力と機動力なんだよ皆ぁ!! てぇてぇは今いらないんだよ!!
「うがぁぁぁぁぁぁぁああああああああ」
「おーよしよし・・・少し休もうね」
「・・・よし切り替えた!!」
「速いね!!?」
うじうじタイム終わり!!
何事も切り替えが大事!
足りないなら別の方向から攻める!
「全軍に通達! 防御特化組投入!! 文字通り壁になって荒武者の行動範囲を押さえるよ!! 前線張ってる回避組は壁の範囲が狭くなり次第順次撤退! 判断は各自に任せるけど壁が半径10m以下になるまでは頑張って!!」
防御にモノを言わせて足を奪う!
司令部に入って皆に作戦を伝える。即興の作戦だけどこのまま持久戦に持ち込まれるよりはマシ!
「つまり盾持って荒武者を二重三重に囲んで押し込めるって事ですなこころん」
「そういうこと。大楯もって整列して押し込める。時間稼ぎにしかならないかもだけど皆の回復の時間には当てられるから」
「こういう時でも我々ネクロイドの事考えてくれるこころんマジ神。推せる」
「実際は一部に肉壁になれって言われてんだよな~やるけど」
「やるんかい! 私もやるけど」
「出番無くて元気だけはありまってるから元気に壁やりますはい」
「この魅せ筋の使い時ぃぃ!!」
「マッチョメン推参」
「マッチョウーメンもいるわよ」
「はいはい映りたがりのネクロイドの皆ハイチーズ」
「「「「「「「いえーい!」」」」」」」
「はい解散~。今の作戦伝達頼んだよ」
「「「「「「「イエスユアマジェスティ!!」」」」」」」
「いつもの事だけどネクロイドの人たちって統制取れてるよね」
「実はちょっとした私の自慢なので、はにゃ」
実はうちの事務所のリスナーの中でも私のリスナーってかなり治安がいいんだよね。言った事ちゃんと守ってくれるのは当然だし、マナーがなってない人もあんまり居ない。いたとしても団結力でそういうコメントを流してくれるから私のメンタル的にもありがたい。
このリスナーの皆が応援してくれるから私も頑張れてる所あるから、その声に応えたいって思うのも勝ちたい理由の一つなんだよね。
「おいこらコメントォぉ!! ちょっと可愛いに無理あるぞとか言うな!! サービスショットと言いなさい!!」
「はにゃはやりすぎだよね」
「まさかの先輩裏切り!!?」
「露骨すぎるのはあれかとこころん」
「本人前にしてよく言えるなネクロイドお前ぇ!!?」
「ネクロイドなので」
「くそう! 露骨なの自覚あったから否定できねぇ!!」
そろそろ戦闘描写書きたいから書くぜ。
やっぱり言葉にするのって大事だなって思いました。感想書いてくれる皆さん本当に感謝します。めっちゃ嬉しいです!!
返信や本編の修正箇所などについては少し待ってください!! 個人的事情で遅れますが必ず修正しますので!!
皆さん感想沢山下さい!!
一言でもいいので是非感想お願いします!!
皆さんの感想が私の活力になるので!!
続きが気になる方も是非一言待ってます!!
では!!




