荒武者編:配信視聴
ネクロロン行動開始。
こうして現実世界でのんびりするのは久しぶりじゃなかろうか。真衣の提案で今日一日はゲームではなく、こっちで過ごす日にする事なった。
とは言っても、デートに出かけたりする訳じゃない。本当に二人で家でゴロゴロだらだらと時間を過ごす日、酒飲みで言う休肝日ってやつだ。
「たまには自分たちの時間を作るのも悪くないよね」
「だな~あぁ~そこ効くぅ~」
「真央ってばお爺ちゃんみたい」
ゴロンとベットにうつ伏せで寝て、その上に乗った真衣が背中全体を指圧マッサージしてくれている。これがまた気持ちいいんだわ。本当にこれでお金稼げるんじゃないかと思う位には心地がいい。
「ああああああ~」
「もう、どこからそんな年寄りみたいな声出してるの?」
可笑しそうに笑われてしまうがもう、語彙力が置いて行かれるほど心地いいんだわ。肩甲骨の上くらいの場所めっちゃゴリゴリいってほぐされるのいいわ~。
「おっと、そろそろネクロロンの配信始まる時間だね。テレビつけるね」
「あいぃ~」
我が家のテレビはネット回線と繋げているからそのままネクロロンが配信をしている動画投稿サイトにもアクセス出来るのだ。枕元のあるリモコンを取り、マイはポチポチ画面を操作して動画サイトにアクセスする。
「む、真央ってば結構プラクロ最新情報見てたんだ。最新の状況まとめに反応集まで見てるじゃん」
「そりゃな。遅かれ早かれ戦う事にはなるだろうし、準備できるならしないに越したこと無いから」
「真央が戦う前に私たちが倒しちゃうかもだけどねー?」
「その前にまずネクロロンだろ。結構な規模らしいじゃん?」
昨晩の配信で色々と最後の確認や集まってくれた人の規模の話をしていたんだ。初心者から上級者、挙句の果てには新規視聴者まで巻き込んで最終的には戦闘部隊700人、後方部隊700人、その他司令部運営と作業班もろもろ込みで合計二千人を超えるらしい。
以前プレイヤードが独自に行った撃滅戦の規模を軽く超える数が集まり、本当に大規模作戦になったとネクロロンが嬉しそうに報告していた。因みに、どこの部署も参加希望者はその数十倍はいたらしいが、ネクロロンが指揮しきれないからと言って、縁起が良さそうな700人制限を戦闘部隊と支援部隊に掛けたらしい。本人曰く感情のジェットコースターを上り下りしたとか。
多分参加している人数がそれだけであって、それを遠くから観察したり、今の俺たちの様に画面越しで視聴している人間はいるはずなので実際現地含めた集客人数は凄いことになりそうだな。
なんてことを考えながらネクロロン、いや夢見こころの告知兼配信待機画面を見ていると、パッと画面が切り替わる。テレビの画面に映ったのは勿論この配信の主役だ。
『全世界のネクロイドの皆ちゃろー!! 君らの創造主、夢見こころだよ!! 今日は遂にプラクロのシナリオボス生命種の天敵たる荒武者をネクロイドの皆と撃滅する日だよ! 集まってくれたみんなー覚悟は良いかー!!』
『『『『『『『『『『オォオオ!!』』』』』』』』』』
「うわすっご・・・」
「実際見るとすげぇな」
いるわいるわいろんな奴が。
設置した作戦司令部の高台に立ち、いつもの挨拶をするネクロロンと彼女のカメラに映し出されたネクロイド、通称彼女の視聴者たち。多分そうじゃない奴も交じってるとは思うけどそれでもかなりの数だ。
視聴者数も凄いことになっていて12万人が視聴中と書かれている。ネクロロンの知名度は知っていたつもりだが、こんなにも大勢が見ているとは思わなんだ。
「なんか所属事務所の先輩後輩に他の事務所の友人配信者、あとはプラクロの攻略動画投稿してる人たちがこぞって『こころの配信は絶対に見るべき』とかなんとか言ったみたいで、あっという間に拡散されたみたい。公式番組かって思うよねこの規模だと余計にさ」
なるほど。つまりプラクロユーザーは当然として、同じ箱の人は勿論、他所の人たちからも推されてここまで人数が膨れ上がった訳か。これトレンド一位取れそうだな。
『事前準備で配信前に色々やってたんだけど凄い人数だよ! 作戦指示とか部隊分けに配置とかは配信前に先に済ませたから、私の号令ですぐに作戦開始だよ! 視聴してくれてるネクロイドの皆にもわかりやすいように概要欄に詳細は書いておいたから気になったらチェックしてね!』
「どれどれ・・・なるほどね。こっちの要望はちゃんと踏まえたうえでネクロロンの試したいことも盛り込まれてるわね」
寝転がっている俺の上に乗っている真衣は、携帯で概要欄を見ているようだ。元々この作戦の発端は一般プレイヤーから集められた嘆願書により、邪神との戦いに挑みにくくなった覚醒者、まぁ主にウチのクランの連中が中心なんだが。
そんな彼らがネクロロンと言う身内であり一般人枠のプレイヤーに、自分たちが試すはずだったことをやってもらおうと言う発想から始まったことだ。
んでネクロロンの視聴者も巻き込んでイベントとして扱えば、世間体では『人気動画配信者が難易度の高いボスに視聴者と共に挑む配信』と趣旨の攻略になる。
仮にここに対して文句を言ってきた連中がいたとしても、その様子すら不特定多数人の視聴者に見られるわけだ。プラクロユーザーだけではなく、夢見こころと言う配信者が好きな人、たまたま配信を見に来た人、切り抜き師と呼ばれる推しの見どころをぎゅっと纏めた動画を投稿する人。とにかく大勢に知られるわけだ。
そうなるとまぁどうなるかわかるよな。よほどの馬鹿ではない限りいちゃもんつけに来たり、場をかき乱す事はしないだろう。
仮にそういう意図で参加してる奴がいたとしても、数で鎮圧するのは容易だろう。その後はあっという間にプレイヤー名と共に下手すれば実名を特定されたりして・・・まぁ口には出さんがそいつの今後を変える事になるのは間違いないだろう。
今の情報社会、たった一つのネットでの行動が、そのままオンラインタトゥーとして残り続けるからな。学校でもそういう事があるから注意するようにって授業とかで話す事も増えてきたらしいし。
『まずは第一作戦。荒武者の進路誘導は可能かどうかだよ。初っ端ゾンビ作戦だけど私達数十人で荒武者の進路を変更出来るかどうかは、この後の作戦にも関わってくるから最優先事項だよ。いきなり特攻を頼んだけど快く快諾してくれた皆には感謝してもしきれないね。時間が惜しいから始めるよ』
大きく息を吸い込み、ネクロロンが声を高らかに宣言する。
『作戦開始!!』
「始まったわ」
「あぁ」
画面はネクロロンを第三者視点で見ている為大きく変化はないが、司令部の動きと集ったプレイヤーたちの眼つき雰囲気が引き締まったように見える。変化は直ぐに表れた。
『報告! 誘導ルートAに配置した部隊が蘇生スポットにて蘇生を確認しました!!』
『続々ルートAの配置人員が戻ってきます! 誘導出来てるみたいですこころん!!』
第一作戦。それは荒武者の索敵範囲ギリギリの等間隔で人員を配置し、荒武者の動きを固定できるかどうかだ。ヘンゼルとグレーテルのクッキーの欠片を落として帰り道を確認するのと同じ原理だ。
クッキーの代わりにプレイヤーを使っているのでかなり非人道的な作戦ではあるが、これがゲームなので成立している作戦だ。
『司令部は帰還者に戦闘になったかどうかと戻るまでの事を聞いて纏めて。ルードA以外に配置した人たちは直ちにルートAの延伸プランに入らせて。目的地は事前に話した中央平原だよ』
『『了解ですこころん!!』』
分かってない人は『当たり前では?』なんてことを思うだろう。索敵範囲に入れば誘導くらい出来るだろうと。だけどそれは違うのだ。
出来る”だろう”ではだめだ。”出来る”と確信を持って言えない事に命を懸けるのはかなり危険な事だ。だから想像できる事でも確信できる判断材料が必要なんだ。
特に今回の様に世界の危機に関わるなら尚更な。画面の向こうが現実世界ではなく、仮想世界であるからこそ生かせる事は多くある。やり直しもリトライも効くのだから、それを存分に生かすのは間違っていない。
『支援部隊は報告が終わった帰還者に装備の提供と次の作戦準備の手伝いをお願い! 狙撃部隊に伝令! 荒武者が目的地に到着し次第自由攻撃! ただし索敵範囲50mには絶対に接近しないこと! 攻撃時に起きた事は可能な限り記憶するように!』
「誘導出来るのが確認できたのは大きいわね。これなら今までの邪神よりも被害は減らせる」
「逆に今の今まで確認できなかったのかとは思うがな」
「情報としてはあったけど、それを確認してる人、証明できる人がいなかったのよ。今回は色々あったからね」
「それにしてもだと思うがな」
「それだけ覚醒者に対する邪神戦不参加嘆願書が私達含めたガチ勢のやる気を削いだって事よ。聞いた限り今までそういう風に色々動いてくれてた人たちもかなり萎えてて動かなったみたいだし」
「馬鹿はいつの時代もいるんだな」
「ホントにね。まぁそれを真に受けて萎えた私達も私達だとは思うけどさ。結果的には状況を知って見過ごせなくなった私たちがネクロロンを使ってそういう作戦を決行したわけだけどさ。これを見てやる気なくした人たちがまた戻ってきてくれれば状況は直ぐに変わると思うし。それに戦いにこそ参加してないけどNPCの避難誘導に関わってるプレイヤーも沢山いるからさ。皆完全に萎えてたわけじゃないし」
「感情だけはどうしようもないからな仕方ないか」
難しいな人間ってのはさ。
そんなことを考えながらも、画面の向こうではネクロロン指揮の元で作戦が動いていく。
ーーーー
配信開始から一時間が経過した。
荒武者の誘導は成功し、目的地とした平原に荒武者の誘導が完了した。そして作戦は次の段階へと移り、そこからさまざまな情報が明らかになる。
『魔法無効とか冗談でしょ・・・!!? あの高速インファイター相手に物理だけで挑めとかさぁ・・・!!!』
『報告だよこころちゃん! ステータス強化系の魔法を範囲外で使ってから突入しても入った瞬間に無効化されたって!』
『強化系の魔法も無効っ!? ホンット荒武者やってるわね畜生! HPゲージも見せないとかマジでふざけてやがるわね!! 〇〇〇ッ!!!』
『こころちゃん!! 復活してすぐなのに物凄い汚い言葉出てるよ!?』
『大丈夫だよまゆゆ先輩。私このゲームやってる時割とこんな感じだから』
『感情が急降下!! それはそれで危ないと思うよ!!?』
『平気平気! 私の所のリスナー鍛えられてるから!』
『今は私の所の人も見に来てくれてるはずなんだよ~!!?』
『見てるか諸君。これが自分のファンを大事にしてる超超超可愛い先輩だぞ』
『わわっ!? こころちゃん急にギュッてしないでよぉー!!?』
「事務所の先輩後輩がてぇてぇしてるわね。状況は全く尊くないけど」
「これさ? 真衣ガンメタなボスだな」
「ふぁっきゅー・・・でも、荒武者の攻撃が連続攻撃じゃなくて、連続した一撃だって知れたのは大きいよ。でもまじふぁっきゅー」
「ネクロロンが戦場に立ったのは大きかったな」
配信画面はあくまでもネクロロンを主としたものだから、司令部に篭りっきりだと、どうしても映像で荒武者の情報を知る事が出来ない。
ネクロロンもそれをわかっていたのか、あるいは一人のゲーマーとしての熱意か、自ら戦場に立ち、荒武者と相対した。そんなネクロロンの姿を見て、作戦参加者たちの士気も上がり、荒武者の戦闘シーンが多く撮れた。
魔法無効。これがまず得た情報としてはデカイ。これまでは『魔法が発動する前にやられていた』と考えられてきたが、今回の戦闘で、『索敵範囲ではあらゆる魔法が無力化される』という情報に更新された。
同時に、魔法系のジョブを主体として戦うプレイヤーは軒並み荒武者を相手に戦えない事も判明した。
おそらくあの時、荒武者の索敵範囲に入った時に感じた違和感は魔法を無力化する何かだったんだ。まぁ、俺も元々魔法をあまり使わないスタイルだから手札が一枚減ったくらいなのだが、俺の横でイライラしている真衣さんは手札ゼロにされた挙句、デッキ全て機能不全に陥れられたのだが。
「この瞬間まで誰も気づけなかったのも腹立つけどガンメタ貼られるのまじふぁっきゅー」
テシテシと人の上に乗ったまま、背中を叩きながら文句をいう真衣はもうイライラゲージの上りが凄まじいのかあまり表に出しにくい顔をしていた。怒髪天と言うべきか、阿修羅と言うべきか、行動と表情が全く伴っていない。とにかく人に向けていい顔ではない。
さて、こうなると真衣の機嫌が直るまで俺は真衣の敷布団係続行なので思考と視線をネクロロンが提供してくれているテレビ画面に移そう。
荒武者の行動パターンは変わらず一撃確殺を主体とした急所狙いの攻撃。主に首や喉、心臓の三か所狙いだ。それらが狙えない場合は肌が露出している箇所を集中的に狙い、外傷を与えてくる。それこそ、荒武者との最初の戦いで見せた口から心臓を貫くみたいな事だ。それを高速で狙ってくる。瞬きでもしてしまえば直ぐに姿を見失い程には速い。
ここまで聞くとかなり強敵だが、攻撃力はそこまで強大ではない。ネクロロンの集めた近接特化部隊もそうだが、物理防御に特化させれば一撃で倒される事はない。
そしてもう一つ。荒武者は一騎当千の強さを持っているが、同時に複数人相手の戦いはあまり得意ではないと言う矛盾があった。
要するに、一対一を高速で連続して行うのが得意ではあるが、一対多数を相手するのは苦手という事。だからこそ、索敵範囲内に入った確実に倒せる後衛支援役を先に潰していたんだと推測できる。
なら初戦の荒武者の戦闘ではニコニーコと言うプレイヤーが連れていた後衛を狙わなかったのかと言う疑問が生まれるが、これはおそらく戦意の有無で判断したんじゃないかと思う。
話は少し変わるが、荒武者の索敵範囲は脅威だ。半径50mにも及ぶ索敵は荒武者の行動速度が加わる事で初見殺しだけではなく、経験者からしても中々に手間取る事だろう。一対一でならば自分が狙われるとわかるから対応できるが、自分以外が近くにいればそっちに向かう”かも知れない”と思い込み、判断を鈍らせる。
ここでその索敵能力について考えるが、荒武者の索敵能力の根幹にあるのはどのような技能、あるいは能力なのか。
索敵に優れている生物で言えば、現実ならばイルカやシャチなどの超音波を使ったものがあるし、あっちの仮想世界ならば魔力で索敵が可能な生物だっているだろう。
荒武者もそのように特別な能力があるのではないかと考えるのが速い。けど一度対峙した時、荒武者は殺意のようなモノを垂れ流しにしていた。これが無関係であるとは考えにくい。
勿論、今回判明した索敵範囲内では魔法は完全に無力化されるという事を考慮すれば、それに関連する索敵能力であるとも考えられる。けどその場合魔法を無力化する能力と相反する気がする。
魔法に関しては詳しくないのであくまでも俺の想像の範囲内でしか考えられないが、魔法を使えなくするなら、もとから魔法が使えない人や生物を識別できなくなると思う。魔法の根幹にあるのはおそらく魔力だ。
それに何らかの影響を与えて魔法を無力化してるなら、魔力を持たない生物を荒武者は識別できないはず。だがそんなことはなく荒武者は生物全てを識別し殺戮を繰り返している。つまりそれ以外の識別手段も持ち合わせていることになるはずだ。
ここでさっきの話に戻し、ニコニーコ以外のプレイヤーを狙わなかった理由だが、あの映像を見て思ったのは、明らかな戦意が一番あったのはニコニーコだったように見えた。
実際ニコニーコは短時間ではあったが荒武者との攻防が出来ていた。その時他のプレイヤーは誰一人動かなかった。つまり戦意をむき出しにしていなかったんじゃないだろうか。
戦意を確認できない数人と戦意をむき出しにする一人。荒武者の能力を考え、後の事を考えればどちらから狙うか考えれば一択だろう。
戦意が高い相手を確実に討ち、完全に戦意を削ぐ。要するに大将首を取って配下を黙らせるという訳だ。こうすれば残りは”殺しやすくなる”。
荒武者は名前こそ荒武者だが、生命を殺す事に特化した邪神種だ。その為に最適な判断を下すだろう。戦意を失った相手はただ殺すだけだ。識別の必要などない。邪神種としての本能のままに追い、殺せばいいのだから。
このように考えればその後入ってきた荒武者の行動パターンに全てに、少なくとも俺は納得する。自分に対して敵意を向けてくる相手且つより遠くにいる相手。
後の戦闘を考えれば早めに潰しておきたい相手、ここで言えば援護攻撃や回復支援役を優先して殺し、援護を失った前衛を狩る。
これをひたすら続ける事で相手に”荒武者は一騎当千の力を持つ強敵”である事しか情報を与えずに済む。相手に無双ゲーの様に蹂躙されれば戦意は無くなるし一石二鳥だ。
今回ネクロロンが行っている大規模作戦のように統率の取れた行動や決意などがない限りはまず攻略は不可能だっただろう。だがこうしてネクロロンが大作戦を行ったことで荒武者の行動パターンを多くのプレイヤーが知る事が出来た。
あとは更に情報を引き出し、精査し、詰めていけば荒武者にも勝てるだろう。自力の問題は不明だが、油断しなければ勝つことも不可能ではないだろう。
あくまでも”今の所は”だが。問題はこの先がある場合・・・というか確実にある。それを出された時、俺含めプレイヤーが対応できるかどうかは不明だ。
個人的な事を言えば”世界の危機”なので、さっさと対応してしまうべきなんだろうが、大勢の”人が楽しむコンテンツ”でもある。俺のやり過ぎでアキハ達の今後に悪影響を及ぼすなら、今は静観&最低限の防衛で堪える。
「・・・世知辛いなぁ」
「珍しい、真央がそんなこと言うなんて」
「そうか?」
「うん。よくも悪くも考えるよりも行動で示すって感じだからね真央は。こうして思い留まってるのってなんか不思議だなって」
うん。確かにそうかもしれんな。考える事よりも動く方が得意だし、動いてる内にいい考えとか発想が思い浮かぶ事の方が多いし。
あれ? そう考えると俺の思考ってあんまり教育に良くない・・・?
「教育にあんま良くねぇかな?」
「別に良いんじゃない? 良い所も悪い所も子供は見て育つものだよ。それにそれは真央のいい部分でもあるからさ。もし仮にアキちゃん達が悪い方向に育っていったら私が矯正していけばいいんだよ。真央から見て悪い方向に育っていったと思えば真央が矯正する。親ってそういうものじゃない?」
「真衣って結構思考とか考え方が大人だよな」
「それを言うなら真央だって大人だよ。背中で語れるって簡単な事じゃないんだから」
「「・・・ふふっ」」
なんか、アキハ達の事をダシにしてイチャイチャしたみたいになっちゃったな。
「話は変わるけど荒武者よ全く・・・魔法メタは勘弁してほしいわよ・・・」
「やっぱり厳しいよな」
「一応完全に打つ手なしって訳じゃないんだけど、準備が必要だから気軽に出来る手段じゃないし」
あるのかよ攻撃手段。魔法メタ貫通してんじゃねぇか。
「それにあの防御力も脅威ね。今の所ネクロロン達の誰もダメージを与えられてないから相当防御力があるか、それともギミックが何かあるのか。あの戦力じゃまだそこの判別が出来ないし。因みに真央ならあの防御抜ける?」
「抜ける」
「・・・なるほどそういう事ね。でもそれなら物理無効って訳じゃないのは実証済みなのね。なんで倒さなかったの?」
一瞬で俺が何をしたのか見抜くのは流石幼馴染と言うべきか。
「今後の影響考えて慎重になっただけだよ」
「・・・理解したわ。さっきの話じゃないけどもう世帯持ちだもんね」
「んだ」
「はぁ・・・やっぱあの懇願書あの場で引き裂いてやればよかった。判断ミスしちゃったなぁ」
「過ぎた事は仕方ねぇよ。それに今後も完全スルーって訳でもないんだろ?」
「勿論。ネクロロンのおかげで情報は多く得られたし、次何処かの都市が落されたら少なくともクランとしては動くわ」
・・・初耳なんだが? 一応俺マスターなはずなんだけど?
「今の真央が守るべきはアキちゃん達家族でしょ? ここには使命とか目的がある訳じゃないからさ。だから家族に被害が及ぶまでは私達が頑張ってみるよ」
相変わらずの読心術だなオイ。
ーーーー
更に時間が経過し、戦っている彼らにも疲れの色が見えてき始めた。精神疲労は特にあるだろう。何度も死んで蘇り、同じ相手に挑むのは疲れる。
自分たちの行動で攻略が少しずつ進んでいることが救いにはなっていると思うが、それでも疲れる。ある意味で、此処が一つの壁だ。この壁を乗り越えられるかどうかで荒武者と戦えるかどうかのボーダーラインになると思う。
「攻略サイトのSNSも動き始めたし、他の動画配信者・投稿者もミラー配信し始めてるし、トレンドも一位取ってるしで配信者『夢見こころ』としての活動なら満点なんだよね。『ネクロロン』としては全然納得も妥協もしないだろうけど」
二人して壁を背凭れにベッドの上で並んで座りながら、それぞれの視点で今を見ている。真衣視点は配信者夢見こころの活動と荒武者攻略のための情報収集として、俺視点では荒武者に挑むプレイヤーの様子を。
同じ動画でもやっぱり人に寄って見方は全然違うな。俺は自分が戦わない場合を考えて、よく言う後方理解者面? みたいな感じで見てる訳だし。真衣からすれば今後戦う相手の情報をひたすら集めている感じだ。
「ネクロロンとしてはかなり悔しいだろうね」
「そうだな。防御は間に合ってるけど、圧倒的に火力が足りないって感じか」
装備とステータスを数値を防御に寄せればレベル80を超えていて、尚且つ80レベルでの平均より少し高いHPがあり、常時HPが70%以上になる様に回復を受ければ個人でも戦線維持は可能だという事も、作戦での検証結果で判明した。
「にゃーるか雷華くらいの高速アタッカーがいれば状況を好転させられそうなんだけど」
「あのレベルのアタッカーなんて簡単にいないだろ」
「そうなんだよねぇ。回復手段もスキルと加護、それかアイテムって言葉にすれば豊富だけど、魔法での回復封じられてるのがきついから被弾を可能な限り避けたいからこそなんだけど、求めるレベルが高いのよね」
回復手段の利便性は『魔法>その他』だ。
回復量だけなら『魔法<アイテム』なのだが、取り出す手間暇を考えると荒武者相手には致命的過ぎる。
そう考えると常時発動する『魔法<スキル&加護』が使い勝手が良さそうだが、今度は回復量が足りない問題が起こる。良くある『不死身&完全回復』などのスキルならばその問題も解決するが、今度は回数制限が掛かる。
それならば回復量に装備とスキルを寄せていけば問題は解決するのだが、今度は荒武者と戦えなくなる。さっきも言ったけど荒武者とやりあうならばステータスを防御に寄せるのは必須だ。
などと色々考えていくのだが最終的には回復手段としては『魔法以外の手段』と言う結論になるが、それらだけを求めても荒武者相手には勝てない。
ネクロロン陣営に決定的に足りないのはアタッカーだ。それも荒武者の速度に適応できる高速特化のアタッカー。もしくはニコニーコのような物理特化で殴り合いに持ち込めるアタッカー。
それらがそれぞれ二人以上は欲しい。が、残念な事にこの条件を満たすプレイヤーはあの場にいない。
「アキちゃんクラスなら探せば一人くらいいないかな?」
「速度だけならいるかもしれんけど、技量が足りねぇな。荒武者の戦意を完全に自分に引きつけつつ、横やりへの対処を封じないといけないから」
「つまり『横やりよりも此奴から目を離したら不味い』って荒武者に認識させるって事だよね?」
「そ」
「無茶じゃん。それこそゴリラとかライーダとかの覚醒者必須じゃん」
「そうだよ」
だからプレイヤー同士でのいざこざなんて気にせずに戦わないといけないのだが。残念ながらいざこざがあった訳で、それが原因で主力となるプレイヤーはやる気を削がれ、実力不足のプレイヤーがやる気を出している訳だ。
ネクロロンの配信をきっかけにして主力組が戦線に参加しないと、まず勝てないだろうな。それが分かったことも、配信を見ていた中で得られた大きな成果だろう。
「ん。チーザー連絡来た」
同時に俺の携帯にも通知が来た。クランメンバーでのやり取りをリアルでも出来るように、チャットアプリにてグループを制作したのだ。そこにチーザーからのメッセージが来た。
『今からアール以外集まれる奴一時間後にクランハウス集合。荒武者ぶち殺すぞ』-チーザー紫-
どうやらウチの暴君は我慢できなくなったようだ。
「行くのか?」
「んーどうしよっかな・・・確実に戦力外だし・・・ん、あーはいはい」
『特にマイ。オメェ魔法使えないからって不参加は認めねぇからな。オメェは絶対になんかあるだろオイ? どうせリアルでアールとイチャコラしてるだけだろ?』
どうやらさっき話していた真衣の限られた攻撃手段の事は見透かされたらしい。しかも状況まで察されてるし。
「しょうがないか。行ってくるよ」
「おう。もしあれなら俺のデバイス使って向こう行くか?」
「っ!! 使う!! やったなんか急にやる気出てきた!! これなら勝てるかも!!」
「盛大にフラグ立てるやん・・・」
アールが普段使ってるゲームデバイス使えてご満悦なマイさん。盛大なフラグを立てましたが結果はこれ如何に?
近況報告
実は水着エレチャン天井しました。石使い切りましたがほぼ無償石なので軽傷です・・・
けど今後を考えたら下手にガチャ引けない・・・!!ザビ・・・!!
渡し思ったんです。感想欲しいならやっぱり毎回しつこくても皆さんに懇願すべきだって!!
なので皆さん!!感想!!下さい!!お願いします!!
出来れば毎回10人ぐらいの感想がめっちゃ欲しいです!!
なのでこれを見てくれた方!! 是非!! 少しの時間をください!!
そして感想を書いてください!!
作者のモチベーションとか感激とかになるので!!
是非! 何卒!!




