月女神祭り編:祭りの折り返し
先日も言った気がしますが、七月更新は以前と変化ありませんのでお楽しみに!
月女神祭りもいよいよ後半戦。
世界各地では様々なイベントがあったらしいが、ルーキストは聞いた限りは平和な出来事だけで危険な事は無かったらしい。
しいて言うならマリアーデ降臨で一時期飽和状態になったくらいか。
しかしそれも、ネクロロンの配信後にはかなり落ち着いた。
何でもエクスゼウスはライブ配信に関して、かなり厳しい審査があるらしく、それを超えてライブ配信をしているネクロロンの配信は、なかなかに多くの人が注目しているらしい。
動画サイトとかであまりそういうvirtual配信者の動画を見ていないので、そのすごさは解からないが、とりあえずネクロロンは凄いという事がわかった。それでいいだろう。
んで、落ち着いたからと言って俺とチーザーへの挑戦権が減るかと言われれば、そうでもなかった。
寧ろ増えたくらいだ。
暇をしていた腕自慢、月光真流のスキルを強化しようと藻掻いていた攻略組など、強者が挑んでくることが増えた。
どいつもこいつも強い強い。ステータスの暴力と言うべきか、あるいはスキルの暴力と言うべきか、知らない能力で皆果敢に攻めてくる訳だ。
目にする全てが真新しくて、何度も心の悲鳴が鳴り響き、その危険度を伝えてきた。
まぁ、それを踏まえても負けないんだが。
マリアーデは暇だからと見ているし、アキハ達もマイと一緒に観戦していた。
こうなれば無様は晒せない訳だ。
慢心することなく、気を抜かず、戦う相手全てを丸裸にするくらいの意気込みで集中して観察と思考を回した。おかげでいろんな戦い方を知ることも出来たし万々歳という奴だ。
「おーマスターお疲れさんだなぁ? 本日怒涛の321連戦全勝の気分はどうだァ?」
「正直めっちゃ疲れたわ・・・」
「アヒャヒャヒャ! 俺様は見てて楽しかったがなァ?」
チーザーの気まぐれで一旦休憩となり、今はベンチに腰掛けてマイがくれた露店のドリンクでのどを潤している最中だ。
「父さん。これ、甘くておいしかったからその・・・よかったら食べてくれ」
「りんご飴か、ありがとう。貰うよ」
「・・・ん」
「ハルナもありがと」
いつも通り両隣を陣取るハルナとアキハからそれぞれ露店で売ってる食べ物を受け取り一口。りんご飴もいちご飴もうめぇな。
どっちも食べやすい一口サイズになってるから食べやすいし。
「えへへ、お父さん、あーんです」
「ん、あーん・・・んまい」
「そうですよね。えへへへ、私もこれ気に入ったんです」
お祭りで良くある簡単なクレープだ。生クリームとオレンジジャムを塗っただけのものだが、この甘さがなかなか癖になるんだよな。
「オメェ実はロリコンなんじゃねぇかって思い始めてきたわ」
ブフォッ!!?
「チーザーおまっ!!?」
「ダーハハハハ!! マジで焦るのウケルwww 冗談に決まってんだろバーカwww」
「止めろマジで。本当にマジで」
「アヒャヒャヒャヒャ!!!」
野郎マジでいつか泣かしてやる・・・!!
「残念でした。アールは私にメロメロだから少女趣味は無いんだよ」
後ろから頭を抱き抱えるようにマイに包まれる。ちょ、それはそれで恥ずかしい・・・!!
「・・・顔真っ赤じゃん」
「アヒャヒャヒャヒャ!!!」
マジで休憩時間が休憩時間じゃないんだが!!? 俺の心拍数爆上がりなんだが!!?
呼吸乱れるわ!!?
「肉体に引っ張られて愛弟子の精神も青年に戻っておるな」
後方腕組み彼氏の如くマリアーデがうんうん首を振ってるのがちょっとムカつく・・・!!
これ一応休憩時間って言う話のはずなんですがねぇ!!
ーーーー
休憩時間? 休憩時間だったはずの時間を終えて、再び挑戦者を迎え撃つ時間が始まる。既に数回目、あるいは数十戦目の奴も来始めて見覚えのある顔も増えてきた。
観戦者も中々の盛り上がりを見せており、会場のボルテージは良い感じに温まっている。
「オラァ次の挑戦者出て来いやァ!!」
「次誰行く?」
「観戦に回りたいからパスかな」
「俺もう一回行こうかな」
「十秒で乙るの見えるわ」
「うっせぇわ」
んでもって俺が本気でやっているので興味本位で来る人よりも、ガチ思考、あるいは怖いもの見たさで挑んでくる人が多くなる。
この短い休憩時間に持っているドリンクで喉を潤す。本気で思考を回すと汗だらだらだから水分補給できるときにしとかないとふらふらになって倒れるとか洒落にならないからな。
「失礼、挑戦者が出てこないので僕らが挑戦者で良いだろうか?」
決闘場のフィールドに入って来たのは二人組。和風装備と言うべき姿の男女で、それぞれ金髪。海外モデルが和装していると言う感じが一番しっくりくる。
「構わないですよ」
「良かったわ! 噂のアナタと一戦交えるのを楽しみにしていたの!」
女性の方は活発的な声色で、可愛らしくぴょんぴょん飛び跳ね、男性がそれを見てやれやれと苦笑い。
「おいマスター、あいつら強ぇからマジでやれよ」
「さっきからずっとマジでやってるよ」
「そうじゃねぇ。あいつら覚醒者だ」
「・・・マジか」
雷華以降初めて会った覚醒者じゃん。しかも対戦相手とか。
「自己紹介が遅れたね。僕はuserA、彼女はvivian。僕らは二人で一人の覚醒者さ」
「よろしくねミスター剣聖! この日を待ちわびていたの!」
UserAとvivianと名乗った二人の雰囲気が一瞬で切り替わる。あぁこれは強いな。
多分雷華とはまた違った強さだ。
「お二人さんルールは知ってるかい?」
「無論さ。それを知った上で提案したい」
「ミスター剣聖!! ミス暴君!! 私達は全力勝負を望むわ!!」
「んだァ? つまり覚醒者同士のマジ対戦したいってか?」
「「Yes!!」」
「ハッ! 上等だ! テメェら相手なら俺様も全力で相手してやんよ! オイマスター! やるぞ!!」
「断れる空気じゃないな。まぁ断るつもりは無いが」
ルール云々はあるが、主催側のチーザーが乗り気だし問題ないだろう。それに二人で一人の覚醒者か。正直滅茶苦茶気になる。
「勝敗の条件はただ一つ! 相手チーム全員の戦闘不能にルールを切り替えた! オメェらもそれでいいんだろうな!?」
「of coures!」
フィールドのルールがチーザーの権限によって書き換えられる。展開された結界は俺たち四人を囲み、戦いへのカウントダウンが始まる。
「双翼光歌userA、いざ尋常に勝負!」
「双翼聖唱vivian! 尋常に勝負よ!!」
二人はそういうノリが好みか、なら、俺も乗っからせてもらおうか。
「月光真流継承者アール、参る!」
「幻想魔術師チーザー紫、行くぞ!」
カウントゼロ。戦いの鐘がなった。
「「光歌聖唱!!」」
同時にuserAとvivianに変化が起こる。全身に光のラインが浮かび上がり、頭の上には天使の様な輪が出現した。
それだけじゃない。どこからか歌が聞こえる。それこそ聖歌隊が歌う讃美歌の様な歌が。美しい歌声が響き、まるでこの結果内部が神聖な場所にでもなったようだ。声のボリュームはすさまじくデカいが。と言うか大きすぎて近所迷惑レベルと言うか。とにかく歌声がデカい。
「テンめぇら初撃からそれはズリィだろうがァ!!?!!」
チーザーが耳を押さえるほどだ。相当だろう。こちらも呼吸を切り替えて目の前の二人に意識を向けていなければ同じように耳を押さえていたかも知れない。それだけ五月蠅い。
それに、唄の一つ一つがこちらの心に訴えかけてくるように響いてくる。集中力を乱すように、意識を持っていくように。
「驚いた。ミスター剣聖。君は僕らの歌の前でも平然としていられるんだね」
「声や音を使う相手には因縁があってな。対抗策もそれなりに磨き上げたつもりさ」
「That's interesting!」
そう言ってvivianが剣を抜いて突っ込んでくる。迎え撃つようにこちらもフルタカを抜いて構える。
最初の激突は互いにスキルや技無しの力押し。刃が互いを切り裂かんとぶつかり合う。
「セイァッ!!」
vivianを押し飛ばし、吶喊の構えで前に踏み出す。突き出した刃先は弾かれたが、すぐに引き戻し連続での突き攻撃を繰り出す。
ここでようやくuserAが動き出す。俺の背中を突くように回り込み、vivianと挟撃するポジションに着く。
「チーザーは無視かい色男!」
「今の暴君は動けないさ!」
UserAの武器は双剣。手数が多い武器だ。リーチは普通そこまで無いはずなのだが、彼が持つ双剣は細長く普通の両手剣ほどの長さがある。注意しないとな。
チラリと見ればチーザーの周りには鎧を纏う天使が彼女を囲み、歌声を響かせている。物理的な攻撃はしてないが、チーザーの顔色はあまり良いとは言えない。
藻掻くようにチーザーは槍を振るっているが、空振りばかりだ。
「余所見は悲しいわよミスター剣聖!」
「僕らの挟撃、どこまで耐えられるかな!」
「上等っ!!」
フルタカを片手で持ち、シマカゼ改を抜刀。前後から繰り出される攻撃を捌きながらポジションを変えるために少しずつ位置をずらしていく。
しかし流石覚醒者。戦闘慣れしているようで、こちらの思惑を読むように、いやらしく、常に前後で挟むように立ち位置を変えてくる。
それもお互い会話することなく、当たり前のように互いの場所を把握してるかのように。
双翼の名の如く、互いの思考でも共有してるんだろうか。そう思う位、位置取りが上手い。
「「光歌聖唱・第二節!!」」
瞬間、俺の身体がスピーカーにでもなったように鳴り響く歌声。ただの歌声じゃなくてこっちの集中力を削ぐように聞こえてくる。対人特化の能力だなこれ。正直厄介だ。
集中力をかき乱そうと、あちこちから声が聞こえる。
一瞬でも気を抜けば集中どころの話じゃない。
「これが僕らの能力『光歌聖唱』!魔法使いを不能にし、チームワークを崩す対人特化の能力!」
「ミスター剣聖! この孤立した状態をどうやって乗り越えるかしら!?」
二人の剣士による連続攻撃は続く。捌くことは難しくないが、連携と位置取りが上手い。ペアの強みを最大限生かして戦ってくるのがまたイヤらしい。
基本的に俺をはさんで前後になるように位置取り、正面のvivianが強めの一撃を、後ろのuserAが軽い連続攻撃を。それが上手い事同士討ちしない位置で、タイミングで放たれる。
防御と回避をミスれば一発でHP削り切られそうだ。
「全然当たらないなミスター剣聖!」
「凄いわ凄いわ!! まるで後ろにも目があるみたい!!」
vivianの一撃を受け止め、後ろから繰り出されるuserAの攻撃を気配から推測して避ける。それが何度も繰り返される。一寸の狂いなく正確に攻撃が繰り出されてくる。
まぁ、それが逆に攻撃を避けやすく受けやすい事にはつながっている。確かに二人の連携は完璧だ。だが、完璧ゆえに読みやすい。正面のvivianの攻撃から、後ろのuserAの攻撃が推測できる。
もう少し見ていれば完全にパターンを把握できる。チーザーが戦線復帰する方が先か。俺が状況を打開するのが先か。どっちだろうな。
ーーーー
「すっげぇ・・・」
覚醒者同士の決闘を見ている私達。ナツ君が声を漏らすようにそう呟いた。
アールは正面のvivianの攻撃は見ているから防御できるのは理解できるけど、背後に陣取るuserAの攻撃を寸分違わず回避、防御しているのは本当に後ろにも目があるように見えるよね。
一応第三者視点で自分と相手の場所を確認できるスキルはある。それでも、アールみたいに完全回避が出来る人は数えるくらいだと思う。
「ふむ、あの二人組、解かりやす過ぎるな」
「・・・何が?」
「コンビネーションのパターンが読みやすいのだ。故に愛弟子・・・主らの父親は相手の行動を先読みして動けておる。その状態も長くは続かぬだろう」
此処にいるマリアーデさんもその中の一人だ。んでもって実況みたいなことをしてくれてるから今聞いたハルちゃん達の疑問にもすぐに答えてくれる。
愛弟子補正ってやっぱり強すぎるなぁ。私たちが知るあのマリアーデがここまで軟化するってファンからすればある意味で解釈違い、別の意味ではご褒美。まぁ捉え方は十人十色だけど。
私は良いと思うけどね。
「父さん、勝てるよな?」
「アキちゃん。逆にお父さん負けると思う?」
「思わない・・・思わないけど・・・人数差は厳しいし」
「それなら心配するでないアキハよ。どうやら愛弟子め、状況を動かすつもりだぞ」
ーーーー
「『星波ピスケス』!」
二人の連撃が途絶えた一瞬を逃さず、地面を蹴り、空中へと飛び出す。二人の視線は・・・流石俺から外れていない。
着地狩りを狙っているのか、はたまた対空攻撃で撃ってくるのか。どちらかは解からないが、動きが遅い。
「『星波ピスケス』!!」
空を蹴り、急降下。全身で受ける衝撃を吸収しながら、シマカゼ改の刃先へと衝撃を集める。「『葬爪レオ』!!」
繰り出した抉る衝撃の爪は二人がいた地面を抉り取る。二人は既に回避行動を取っていたので命中はしなかったが、地面が抉られたことで土ぼこりが舞う。
土ぼこりで俺から完全に視線が途切れた。まずは第一段階成功。
二人の気配は・・・バラけてるが、フォローできる場所にはいるか。各個撃破するにはちょっと近すぎる。
なら先に相方を助けるとしよう。チーザーが槍を振るっていたのを見ればあの天使は物理攻撃で消し飛ばせるはずだ。
両手の刀を鞘に納め、背負うフルタカを腰の位置で抜刀の構え。相手の数、位置、チーザーの身長を考えれば・・・この位置がベスト。
「伏せろチーザー!!」
「あ゛ぁ゛聴こえねぇって言ってんだろボケナスッ!!?」
「『ふ・せ・ろ・!!!!!』」
舐めるなよ。桜花戦舞の声なら通じるはずだ。そしてその考えは的中。チーザーがその場に伏せていくのが確認出来た。同時にuserAとvivianが俺の場所を把握して動き出したが、こっちが一手速い。
「『剛歌剣嵐ブラキアス』!!」
叩きつけるように放つブラキアスが鎧を身に纏い歌う天使を吹き飛ばす。鎧が砕ける音と共に天使が衝撃の壁に激突し、一体、また一体と消えていく。
それを全て確認する前に、フルタカとその鞘をしっかりと握り直し、迫る二人を迎撃するために向き直る。
「弐連『剛歌キャンサー』!!」
土ぼこりを再度吹き飛ばしながら、衝撃の壁が向かってくる二人へそれぞれ向かっていく。
「vivian!」
「That's troublesome!」
二人は即座にキャンサーの壁から離れ再び距離を置いた。
キャンサーの避け方を知ってる動きだったな今の。この二人、たぶん剣聖物語経験者だ。
覚醒者はみんな剣聖物語経験者なのかよマジで。
「んで、お荷物だったチーザーよ。もう動けるか?」
「殺る気満々だぜェオイッ!! 分断すんぞマスター! あの女は俺が殺るから男はテメェが殺れ!! 援護はしてやらねぇから覚悟しろや!! 『マジシャンズウォール』!!」
チーザーの魔法が発動し、丁度彼らの中心から壁が出現する。丁度チーザー側には女性のvivianが、こちら側にはuserAがいる。
「流石暴君だ。合流する隙も無く私たちの間に一瞬で壁を作るとは」
「分断されたのにずいぶん余裕じゃないかuserA」
「こういう状況は良くあることだからね。寧ろこうなる事を想像できない訳ないだろ?」
流石にそうだろうな。二人で一人と言われれば、分断するのは誰もが考えるはずだ。
考えられるって事は対策もするはずだ。当然と言えば当然だけども。
「そうだよな。でも悪いな。ここからは一気に決着を付けさせてもらう『響詩ヴェルゴラ』」
鞘を背負い直し、フルタカを構えて歩み寄る。
感じる体の重さが増えつつも、増した五感を生かすために呼吸を整える。
意識は全て彼に、一挙手一挙動見逃さないために視線を集中させる。
「対峙してみると凄まじい気迫だ・・・!!」
userAが双剣を構える。額から汗がうっすらと流れ落ちている。視線はまっすぐこちらの目を射抜いている。この程度で戦意喪失はしないか。
また一歩前へ、続けてもう一歩。少しずつ緊張感を高めるように二人の距離を止めていく。
「っ」
userAが一歩下がった。攻撃の為の一手を繰り出せずにいるか。流石に敏感だ。
こちらはカウンター狙いで動いている。下手に動かないのは良い判断だ。
「どうしたuserA? さっきまでの勢いが消えたぜ?」
「言ってくれる。それなら攻撃の隙位見せてほしいものだよ」
「いいぜ、ならわかりやすく隙を作ってやるさ」
見せつけるように身体から力を抜き、気迫を押さえて『ヴェルゴラ』を解除する。ゆっくりとフルタカも鞘に納めて背負い直す。
「さぁ、隙だらけだ。打ってきな」
「逆にやりにくいね・・・」
我儘だなぁ。なら、眼でも瞑ってやろう。そこでuserAが仕掛けてきた。流石にここで踏み込んでこなかったら意気地なしと言われると思ったんだろうな。
けど、ここは攻めてこない方が正解だった。
月光真流の戦技には高速移動の戦技があるのを忘れてたな?
「『月風』」
「しまったっ!!?」
繰り出された双剣での攻撃をスライドするように回避してuserAの背後を取る。一撃必殺は狙わない。連撃で全て削り切る!
「月光真流極大奥義『星裁波状フォルトレナ』!!」
「っっ!!」
衝撃から信号へと変換したそれで行う身体操作。反射神経を強制的に働かせて不可能な動きを可能にする。
ピスケスの様な高速移動で攻撃が最も有効に当たる場所へと動き、シマカゼ改を抜く。userAは即座に距離を取り、攻撃範囲から逃れようとするが、間に合わない。
放つは身体全身を使った薙ぎ払いの三連撃。一撃一撃が『裁天リブラ』と同等の一撃。
一撃目、userAは回避を諦めて身を翻して防御を選択。ギリギリ直撃は免れたが、衝撃に飲まれて大きくバランスを崩す。
二撃目、おそらく起死回生の為にバランスを取り戻そうとするが、その前に攻撃がuserAの身体を斬り飛ばす。
一呼吸、間をずらして相手の意識がズレるように放つ三撃目、バランスが崩れ、負傷した体が言う事を聞かないうちにuserAの両足を切り落とす。
まだ生きている。食いしばりスキルなのか、はたまた復活スキルなのか不明だが、切り落としたはずの両足も瞬く間に再生し始める。
それでも、フォルトレナはまだ終わっていない。追撃する。
四撃目、刃を翻し峯でuserAの腕を巻き込むようにしながら、峰打ちで脇腹を叩きつけて地面から空中へと身体を放り投げる。片腕がへし折れた感覚が伝わる。
最後の一撃。フルタカを振り上げるように構えて、全神経を集中させる。
放り投げられたuserAは空中でぐるぐると回りながら地面へと落ちてくる。そんな中で俺を捉えた視線からは、まだ終わらないと勝負を捨ててはいなかった。
「終ノ一閃『フォルトレナ』!!」
ヴェルゴラで限界まで高めた身体能力にリブラ、ピスケス含めた全衝撃を集中させて、落ちてくるuserAを斬りつけ、地面に叩きつける。
「GOOD BATTLE」
UserAがそのHPを全損し、そのまま眠るように動かなくなった。
ヴェルゴラを解除し、大きく深呼吸を繰り返す。まだこの奥義全然慣れないな。身体への負担もデカい。こればかりは身体を奥義に合わせていかないといけないので修業あるのみだ。
「A!?」
「オラよそ見したなテメェ!! じゃぁ死ねェ!! ファントムペインゲイナー!!」
「しまっ!!? ちょっ!!? それズルくないかしら!!?」
「うっせぇ!! 黙って死ねやァ!!」
「酷」
どうやら彼方も終わったようだ。空に浮かび上がる俺たちの勝利宣言がそれを知らせてくれた。
ーーーー
「いやーまさか瞬殺されるとは! 極大奥義、凄まじいな」
「思わず動揺しちゃったもの! アナタが私よりも先に負けるなんて想像できなかったわ!」
対戦を終えて、感想会。
とは言っても、分断してからはそれぞれ瞬殺してしまったので感想戦はその前の攻防だけだ。
「あいっ変わらずテメェらの校歌斉唱うぜぇマジで」
「伊達に魔術師殺しの能力じゃないからね。あと多分文字が違うわよミス暴君」
「うっせ、校歌斉唱で充分だ。マスターには全然効かなかったみてぇだがな! ザマァ!」
「それは正直見据えてたよ。おそらく通じないと考えていたからね」
「負け惜しみだろうがよォ!」
「ハッハッハ、そう思うならそれでもいいさ! 噂の本物と御手合せできただけでも十分満足したからね」
userAさん良い人っぽいな。チーザーの憎まれ口と言うか、王様気質の発言にもクールに対応してる。
「私は悔しいわA! ミス暴君ってば本気でやるんだもの!」
「ったりめぇだクソが!」
「酷いわミス暴君! 私と貴女の友情が崩れてしまうわ!」
「友情あるなら魔法使い特攻の校歌斉唱なんて開幕で使うんじゃぇね!」
「友情だからこそ本気なのよ!!」
「テメェその言葉そっくりそのまま返されるって思わねぇのかクソアマ!!」
「思わないわ!!」
「こんのアマァ・・・!!」
vivianさんはかなり自由人というか、何と言うか、まぁ、変わった人だな。だからこそ、何でも受け流せるAさんと相性はいいのかもしれない。
「ミスター剣聖。本当にここまで強いとは思わなかったよ。二人で挑んであそこまで一方的に受けられるとは思ってなかったよ」
「そうね! マスターマリアーデの弟子と言うのも納得の強さだったわ!!」
「ありがとう、そういって貰えると嬉しいよ」
でもこの二人、絶対に何かまだあると思うんだよな。今回初顔合わせの初手合わせだから絶対に何か隠し手がある気がする。
「ミスター剣聖、良ければフレンド登録お願いできるかな?」
「私もお願いするわ! 剣聖の友人だなんて素敵じゃない!」
「それくらいなら喜んで」
そういう訳で二人とフレンド登録をチャチャっと済ませた。
「じゃぁまた会おうミスター剣聖」
「そうね! 会うなら共闘したいわ!」
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