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夢見こころ『プレイヤードネクロロン。プラネットクロニクル生活part3』

タイトルがネタバレ・・・ユルシテ・・・

今回は会話形式が多いです。

「どうするよお前ら」


「どうするってお前・・・そりゃ・・・あれだろ」


「これ絶対うちらで独占していい話じゃないよねぇ」


「アハ★キャパオーバー★」


「お手上げだ」


「僕も何も浮かなばいねぇ」


「にゃー・・・」


「アール実は疫病神?」


「失礼すぎじゃね?」


話し合っているのはマリアーデの事についてだ。


今尚人気の高いマリアーデと言う人物。それこそつい先日マリアーデに関して大勢に詰め寄られたばかりだ。お祭りという事で上手い事はぐらかしたけど、長続きしないのもまた事実なんだよ。


んで、それだけじゃなくて昨日ノリでクランハウスに泊める事になった訳なのである意味爆弾を抱えている訳だ。


んで多分あの師匠しばらく居付くだろうから多分遅かれ早かれまた大勢に詰め寄られる。


それだけならまぁ良いんだが、問題はマリアーデの対応だ。


何度か言ったがマリアーデは基本興味ない相手に対していい返事をしない。


特に簡単に強くなろうとか、お近づきになろうとかそういう輩は特にだ。これは剣聖物語時代からずっとなので、往来のファンであればあるほど知ってる事が当たり前なのだ。


しかし時代は進み剣聖物語に触れた事の無い俗にいうエアプ勢は自分の理想、あるいは都合のいい解釈をしてしまいやすいので間違いなくマリアーデに絡みに来る。


下手すると嫌がって全員纏めて斬りかねん。


俺としてはマリアーデの好きにさせてしまえばいいとは思うのだが、クランとしては、関係者になるので、出来れば穏便に話を進めたい。主にプレイヤードのヘイトは買いたくないのだ。


今の時代、良い事も悪い事もあっという間に広がる社会。俺たちがマリアーデ関連の情報を独占してるという話が流れれば、個人の活動、クランハウスでの経営にも影響が出かねない。


追い出してしまうのが一番と言われればその通りなのだが、それが出来る図太い精神は俺達にはない。寧ろマリアーデと言う人物がここまで身近にいると言うこのアドバンテージを手放すなんて勿体ないと言うのがマー坊たちの言い分だ。


俺としても大事な師匠なので雑な扱いはしたくないのでそれは助かる。


そうなるとどうするかなのだが、出来ればマリアーデの事を一回で全部紹介してしまえるような何かが。そうすれば知らん勢からしてもマリアーデという人物がどういう人物か理解するだろうし、俺達も一回だけで説明が済む。


だがそれを簡単に出来る状態ではないのだ。掲示板に書き込めばいいとか、各々SNSで情報流せばいいとかあるが、それで納得できない連中と言うのは絶対に出てくる。


そもそも仮に個人SNSで情報開示なんてすれば特定されてリア凸される危険性だってある。絶対にそれはダメ。


じゃぁ掲示板だが、絶対に全員が見る訳じゃない上に、マリアーデ本人からの話と裏付ける手段が無いので怪しい所。


それをマリアーデに対応してもらえればいいが、十中八九絶対に対応しない。そういう連中に限って間違いなくマリアーデが嫌いな人種だ。


それを理解しているからこうしてみんなして頭を抱えている訳だ。


「いっその事俺らの祭りにマリアーデ混ぜちまうか?」


「うーん・・・悪くないとは思うけど、推定数千人規模のプレイヤー相手にする元気二人にある?」


チーザーの提案にレイレイが答える。その通りなんだよな。そうなると俺とチーザーだけで対応するのは正直無理だ。多分対戦の他に話聞きたい勢が突っ込んでくるのが目に見える。


んでマリアーデが塩対応。一部プレイヤーがキレる。そうなると俺達めんどくさい。


「逆にマリアーデさんに演説でもしてもらうか?」


「そういう事をする人物じゃないだろう彼女は」


マー坊の提案は火力魂により否定される。そもそもそう言うのが嫌いで世捨て人してるようなものだ。演説は愚か、講演会も嫌がるのは眼に見えている。


「うちの喫茶店で対応するにはここは小さすぎるからねぇ」


「老眼鏡さんの意見も無しね。アキちゃん達に危険が及ぶ可能性があるし」


「悪いけど俺も同意見だわ」


「にゃーも良くないと思うのにゃ。絶対に子供に悪影響にゃ」


「「「「「「「「「うーん」」」」」」」」」


「こういう時こそ覚醒者の伝手で何とかならないの?」


「マスター、なってたらこんなに頭抱えてねぇよ。不特定多数との人付き合いとかマジめんどい」


チーザーが言うと説得力が違う。リアル有名人だからこその言葉って感じ。


「とりあえず・・・掲示板にいくつかスレ立てて書き込んで様子見かな?」


「それが一番だろうな。その後は少々手間だが対応していくしかあるまい」


「にゃー・・・めんどいにゃ。特に礼儀知らずの相手とかにゃーはしたくないにゃ」


「それは皆同じ気持ちよ・・・はぁ、考えるだけで嫌になるわ」


「だったら師匠に話して出てってもらう?」


「「「「「「「「それだけはない」」」」」」」」


「デスヨネー」


此処にいる全員がコアな剣聖物語ファンで、長年クリエイションモードクリアの為に心血を注いできたある種の変人たちだ。


そしてマリアーデに対する矢印も人一倍デカい。それが俺と言う存在のおかげで『愛弟子の友人』と言う欲しくても得られない立ち位置をゲットしたのだ。これを逃す事はしないだろう。


俺がマー坊たちの立場でもしないもの。


「どーすっかねぇ・・・」


「おいっすー!! マリアーデ様降臨したんだってー?」


ネクロロン・・・ネクロロン!!


「「「「「「「「「それだ!!」」」」」」」」」


「?? なに?」












ーーーー








夢見こころ プラクロ座談会~超豪華ゲスト出演~




「はい皆おはこんチャロちわー! ゲーム大好きvirtualwoman夢見こころこと、ネクロロン参上だよ~。今日のライブ配信は前回に引き続きプラネットクロニクルやっていくよ! 予定では好みの装備作る為の素材集め配信の予定だったんだけど、急遽変更するね。超豪華メンバーで座談会をしていくよ! 理由? それはこの後すぐわかるよー。まずはゲストその一! 話題を掻っ攫った我らがマスターアール!」


「クランブレイドエンセスターのマスターをしてるアールだ。よろしく」


「二人目!! 新人覚醒者のマイさん!!」


「お・・・おはこんチャロちわ? マイだよ~?」


「うーん、ちょっと硬いけどまぁOK! 次!! 私達の中で一番の暴君!覚醒者チーザー紫!!」


「誰が暴君だコラァ! オッスお前ら俺様がかの有名なチーザー紫様だ。ひれ伏せ」


「こう見えて女性だよ。声聞いたらわかると思うけどね」


「んだとゴラァ!!?」


「「どうどう」」


「まだいるよゲスト! 居合切りに人生を捧げた女武士! にゃーる!!」


「にゃー、よろしくにゃ」


「そしてそして!! 永遠の二十歳! いい? 永遠の二十歳だよ? 間違えたらキュってされるからね? ももちゅんさん!!」


「チャロー☆! でもネクロロンは後で裏でお話しようネ?」


「はい!という訳でクランブレイドエンセスターのマスターと覚醒者女性陣をお迎えして座談会だよ!! 男性陣はマスター以外は皆出演拒否されちゃったし」


「一人バックレた奴がいるのにゃ」


「逃げたわねあの雌猫」


「誰だコイツらって思った連中。聞いて驚け。俺様たちはこのゲームで上から二十人に入るエクスゼウスに脳を焼かれた廃人集団だ。とりあえず調べろ」


「チーザーネキは相変わらずだねぇ。おっと早速スパチャどもー。正直このライブ配信事故の可能性しかないから内心ビビってるんだよね・・・まぁそうなったらその時考えよう!」


「前向きな思考は大事だゾ☆」


「そうなんだよももちゅんさん! 失敗を恐れては人間成長しないんだよ! アールそこ替われ? だってマスター」


「今回俺いないと話進まんから悪いけど諦めてくれ」


「と言うかアールがほぼ中心の話でしょ」


「うむ・・・そろそろ余も話していいか?」


「そうでしたそうでした。はい!!今日最大の豪華ゲスト!! この世界で本当に生きる人! 月光真流開祖マリアーデ様です!! マリアーデ様! この球体見てください!! それから一声なにか下さい!」


「うむ! しかし魔法とはこのような事も出来るのだな。時代は進んだものだ」


俺達が取った手段はネクロロンの配信で全部話してしまおうと言う作戦だった。


とりあえずマリアーデには上手い事、話を通して配信に出演してもらい、他ゲストとして俺とその他女性陣で座談会風で皆に知って貰おうという訳だ。


配信場所はクランハウス二階の大広間。ここなら関係者以外は本当に入り込めないし、そもそも場所もわからないだろう。


ライブ配信ならば大勢が見る機会もあるし、SNSで話題沸騰しても俺たちのリアルには何も影響がない。ネクロロンも配信のネタがあってWINWINという奴だ。


強いて言うならマリアーデには何もないくらいか。


「もう皆配信内容理解したね? 今日はマリアーデさんのお話をメインにした座談会だよ!! ハイ拍手!!」


「「「「「ワーワー」」」」」


「???」


「今日はたくさんのお話をマリアーデ様から聞こうと思うのでよろしくお願いしますね!」


「うむ、愛弟子の友人の頼みならば余も協力しよう。何でも聞くがよい!」


「ではまず、ちょっと失礼ですけどおいくつですか?」


「二千から先は数えておらぬ。エルフ故不老不死なのでな」


「エルフ族の人って本当に凄いですよね。不老不死なのはびっくりだけど」


「余とて好きで不老不死な訳ではないからな。しかし不死とは言っても殺されれば死ぬ。生きていくのが辛くなり自殺を選ぶエルフも少なくない。だが余は不死でこれでよいこともあるぞ? こうしてまた愛弟子と出会えたのだからな」


「その愛弟子って呼んでる俺らのマスターだけどよ? アンタ聞いてた話弟子は取ってなかったんだろ? なんでコイツ弟子に取ったんだ?」


「うむ、少々長い話になるがよいか?」


「いいよ☆私達もマスターとマリアーデ様のお話聞きたいんだゾ☆」


「では話そう!」


こうして語られたのは俺とマリアーデが出会うまでの話。正確にはマリアーデが開祖である月光真流の成り立ちからの話となった。


生み出したはいいが、彼女以外に使える者が出てこなかった話。


それでもその剣術に魅了された人達が、自分たちでも使えるように月光真流を改良していった話。


それから、マリアーデから人が離れていった話。


そして、マリアーデが俺に出会う少し前の話。


ある時から、マリアーデの住む森に戦う事もおぼつかない少年が一人で入ってくる夢を見始めた話。


夢に出てきた少年が本当にいたら、見殺しにするようで気分が悪いと、森の見回りを始めた話。


「見回りを始めて三年ほどだな。その時ようやく愛弟子、当時はどうとも思わなかった小僧に出会ったのだ」


「五年間同じ夢って・・・アンタ苦労してたんだな」


「うむ、余も流石に参りかけていたからな。見殺しにするのは流石に堪えるのだ。それでようやく小僧も見殺しにせず、町に届けて余もゆっくり休めると思ったのだがな、それでもまだ夢を見るのだ。仕方なく翌日も見回りに出ればまた居るではないか。あれだけ来るな、死ぬぞと言い聞かせたのに本当に命知らずな小僧だと当時の余は思っていたな」


「だってさアール」


「アハハ、当時・・・と言うか前世ではそうしたかったからもう夢中でな」


「そこから一年は毎日小僧を拾って町に届けを繰り返した。仕方なく当時余の元に通っていた者たちの子孫に話を付けて小僧を二度と森に越させないようにさせよと言ったのだが、それでも来るのだ。ここまで来ると呆れたとかそう言う感情ではなく、その根性は買ってやらねばと思い始めてな」


そこから語られる話は、マリアーデのある意味気まぐれで俺を家に住まわせてくれた話。


そして月光真流の呼吸を教えて貰った話。


正確には何度か手本を見せて貰い、それをひたすら身に着けるために練習した話だ。


「当時の彼奴と言えば下手という次元ではなくて、センスがないと思うほどだったぞ」


「にゃー・・・今では考えられにゃい話だにゃ」


「だがな? 本当に当時はそのくらい愛弟子は月光真流に向いていなかったのだ。だが愛弟子は毎日毎日、諦める事無くそれこそ、余の夢に出てくるくらい練習していたのだ」


「夢に出てくるって・・・マリアーデ様嫌にならなかったの?」


「見殺しにするよりはずっと良かったのでな。それにいつか諦めると思っていたし、余も特に何かすることも無かったのでな。好きにさせていたさ」


裏話だが、俺はマリアーデに呼吸を教えて貰った最初の周回、結局一度も呼吸を習得することは出来なかった。それである日マリアーデにある意味で破門を喰らって、物語本編に強制進行させられた。


無論、森から出るまでは問題なかったが、最初の関門とされる中ボス的なモンスターに瞬殺された。クリエイションモードだと、中ボスが中ボスじゃないからなマジで。


そこからまた最初からになってもう一度マリアーデの元に辿り着く所からやり直しだ。


此処だけで数千回はやり直したと思う。


夢に出てきたと言う話はおそらく俺のやり直し回数、もしくは死んだ周回の話を夢に見ていたという事だろう。


「だがある日な? 少しだが上手くなったのだ。それから毎日見ていたが、少しずつ少しずつ出来るようになっていき、気が付けば下手ながらもしっかりとした余の月光真流の呼吸になっていたのだ!」


「すごい事だったの☆?」


「うむ!! 人が改良した人の為の月光真流の呼吸ではなく、余が生み出した月光真流の呼吸だったのだ!! あの日の事は昨日の事の様に覚えておる。あの瞬間、余は生まれて初めてともいえる感情に目覚めたのだ」


「その感情って?」


「うむ!! 愛だ!!」


「「「「愛!!?」」」」


「余が生み出した月光真流を覚える事が出来た唯一の子。この童は、余が育て、鍛え上げるために生まれてきた子なのだと余は感じたのだ!!」


「つまり・・・親愛的な?」


「うむ!! 故に愛弟子! 生涯で初めて余が認めた弟子なのだ!!」


「だってよ。良かったなマイ。ライバルじゃなくて」


「ちょっとやめてよチーザー。本気で焦ってたんだから」


「心配するな愛弟子の嫁よ。お主から愛弟子を奪うつもりは無いからな。愛弟子の幸せが余の幸せなのだ」


「にへへ・・・アールのお嫁さん・・・にへへへへ・・・」


「ちょっとマイちゃん!! 人に見せられない顔してる!! あぁスパチャ飛んで来たぁ・・・南無」


「オッホン☆! それでそれでマリアーデ様は愛弟子になったマスターに月光真流を教え始めたの?」


「そうだ! その日からは毎日手合わせと型の練習をさせたな。愛弟子も余に応えてくれるように技を覚えてくれていったから余は嬉しかった!!」


裏話。実はここでも周回してる。本編開始までの制限時間があって、それまではマリアーデの元で修業が出来たんだけど、本編開始の時期になると、実戦で学んで来いと送り出される。


この時になるとある程度身体が出来ているのでそこそこ進めるのだが、ボス戦はキツイ。勝つか負けるかはその時の体調次第で、どちらかと言うと負けの方が多かった。


そうするとまた最初からやり直し。これが数千回やり直しすることになった要因だ。


「気が付けば愛弟子は奥義を覚え、最終奥義。まぁこれは奥義を連続して放つものなのだが、これまでしっかりと覚えたのだ!! 感無量とはこのことだと余は初めて知ったのだ!! 気づけば立派な月光真流の使い手になっていたのだからな!」


ここでまた裏話。


ここまで来るとようやく本編での戦闘能力がクリエイションモード以外の難易度と同等程度まで伸びてきたので、苦戦はすれど、順調に進めるようになってくる。


しかし、世界は残酷で、油断した時、あるいはバランスを崩した一瞬で死ぬ。あるいは殺される。そしてまた最初からだ。


「それだけでは無くてな!? 余の書物から極大奥義の事を知った愛弟子はこれも教えてほしいと願い出てくれたのだ!! もう、もう! 余は感動で涙を流したのだ! 故に考えを改めたのだ。担い手では満足せぬ、愛弟子こそ余の月光真流の継承者として育て上げるとな!! それからは愛弟子にとってはある意味で地獄だったかも知れぬ、極大奥義は余が長い年月をかけて生み出した月光真流の更に先を行く奥義だ。生半可な修行では済まさぬかった故な」


「あの時は確かにキツかったな。正直何度か死んだ・・・と思った。」


「流石に死なぬように余が助けたからな! 愛弟子の友人たちにはもうやったが、余が作った薬で愛弟子を直したのだ」


正確には実際死んでる。修業中に死ぬとかマジで? なんて思ったくらいだ。


しかし、極大奥義はいわばマリアーデを象徴する奥義。マジでなんて感情を抱くのは俺の覚悟が足りなかったせいだ。だからそれからは極大奥義習得の為にリアルでも体作りをし始めたし、マリアーデの修業にもより一層集中して取り組んだ。


「そして遂に!! 十年ほどの短い時間で!! 遂に愛弟子は余の月光真流を完璧に受け継いだのだ!! 人の手で作り替えられた月光真流ではなく、余が生み出した月光真流をな!!」


「裏側もなんとなくわかってきたがマスターオメーマジでやべぇ奴だなオイ」


「剣に人生注いだ自覚はあるよ」


ここまで来て、ようやく物語本編で無双・・・とまではいかずとも苦戦することなく進める事が出来るようになった。あとは体調と時の運。それから実戦経験で培った経験で本編クリアまでこぎ着けた。知ってるか? これで剣聖物語の三つのシナリオの一つクリアしただけなんだぜ?


「以上が余と愛弟子の出会いだな!! うむ!! 少し語り過ぎた気もするがよいだろう!!」


「いやいや人の歴史だから聞き応えありましたよ! 因みにマリアーデ様はマスターを送り出してからは何を?


「うむ! ここまで話したのならばすべて話そうではないか! 愛弟子の前世での人生をな!!」


そこから語られるのは剣聖物語の『真剣聖編』を主軸としたマリアーデ目線の話。主に何をしてきたか、どんな事があったのかだな。


大筋は剣聖物語を知る人ならば誰もが知っている話。違ったのはマリアーデが後の英雄を止めるための旅に同行してくれたことだろう。


これは真剣聖編だからではなく、おそらくクリエイションモード限定仕様。老眼鏡の現実の喫茶店で流している特別総集編と同じ内容だ。


なので見た事がある人ならば知っている。そして知らない人は本当に何も知らない物語。


マリアーデの言葉に皆がそれぞれ反応し、当時どんな気持ちと話を振られれば俺がそれを思い出しながら言葉を返す。


そうして、邪神の最後と英雄の最後。俺の真剣聖編での物語の話が終わった。


「以上が、愛弟子が世界を救った話だな」


「いやー☆当事者から話を聞くと色々発見があるんだゾ☆」」


「む? そうか? 愛弟子の話はまだまだあるのだが?」


「いやーマリアーデ様、私達これ以上は情報過多で頭くらくらですよ・・・」


「俺様としてはもっと聞きてぇが、ネクロの視聴者が聞きてぇことは別だろうから控えるわ。でよ、マリアーデ様よ。アンタ自身の話を聞くが、今まで何処で何してたんだ?」


「余の話か。面白い話ではないぞ? 愛弟子が二度目に世界を救った後、結局愛弟子は王国の玉座に座ることになってな。余と仲間たちはその手伝いをしていたのだ。その血を残すことが世界を二度も救った英雄に求められた使命だったからな。ま! 二度目の話は余を含めた愛弟子の仲間しか知らぬがな!! 余も王国の宮殿で剣の教育係として愛弟子の血族を鍛えはしたが、愛弟子ほどではなかったな。しかし才能はあったので中々に楽しい時間を過ごさせてもらったぞ。後年に残る『種族戦争』などと言う争いが起こるまでは、王国は平和だったのだがな」


それは俺も知らない。と言うか、アフターストーリーの話も出てきたな。アフターストーリーの話は既に皆には軽くしてあるのでここで話は止まらないが、その先の話は、興味津々で食いつく。


「マリアーデ様? その種族戦争っていうのは?」


「そのままの意味だ。どこの誰が言い出したか、自分たちの種族こそ世界を統べるにふさわしいと主張を始めたのだ。それは風に乗るように世界中に広がり、愛弟子が生きていた時代とは思えないほど世界は種族と言う枠組みにこだわり始めたのだ。そこからは良くある話だ。種族が集まり、思想を押し付け、話し合いから殺し合いになった。王国は最後まで中立で今まで通りを貫こうとしたが、それが逆に危険因子とみなされた。他の種族からは裏切り者、内通者、などと激しく非難されてな」


「・・・気持ちのいい話じゃねぇなァオイ」


「そうだろうな。当時の国王、愛弟子の血を継ぐ7代目国王は国民に自分の種族として生きるように告げ、逃がそうとした。しかし王国民は誰一人国から出る事を選ばなかった。皆、隣の友人を信じると、手を取って生きて行けると信じておったのだ。元より国民の戦力は高い方だったからな。簡単には滅びないと余は思っていた。が、各種族は切り札を隠していた」


「切り札・・・ですか?」


「魔法だ。今でこそ皆が当たり前のように使っている魔法。だが当時はまだ魔法の存在は明確にされていなかった。違うな。王国にだけ魔法の情報がいかないように各国各種族が隠し通していたのだ。個人戦力がいくら強くとも、広範囲を一気に攻撃できる魔法という未知の攻撃の前に、王国は成すすべなく敗走を繰り返した。王国の最後は国王と志願兵たちが死に物狂いで戦場に赴き、時間を稼ぎ、次世代へ希望を託し国外へと希望の種を飛ばし、王国は滅びた」


「「「「「「・・・」」」」」」


「余は希望を託された側だった。希望の種を世界中にばら蒔き、いつか再び種族の垣根を超えて、在りし日の王国が蘇るのか、それともこの悲しい争いがずっと続くのか、それをどうか見届けてほしいと頼まれてな。愛弟子の血族に頼まれては断れぬよ。皆、不老不死の余を恐れず慕い、居場所をくれた者たちだったからな。種を世界中に巻いた後は、以前の様に、世間から離れ、世界の変わり方を見守っていた。約束だったからな」


「・・・言葉が上手く出てこないんですけど、今当たり前に使ってる魔法って、当時どんな感じだったんですか?」


「そうさな・・・弓矢や投石ではなく、無から生み出された火や水、風に土、それらが命を狩る形で襲い掛かってきた。恐ろしいと感じたな。余には使えぬ力だ。そして余でも解決できない理不尽な力だ。どうしようもなかった」


「アンタは魔法使えねェのかよ?」


「あぁ、余は長く生き過ぎたのだろう。色々手は尽くしたが余は魔法・・・今では魔力と言った方が良いな。魔力に全く適応できなかったのだ。そのせいで、最後の戦いに出向くことすら出来なかったのは・・・そうさな、辛かったな」


「・・・ワリィ、軽率に聞いていい話じゃなかった」


「良い。これも一つの昔話だ。その代わりと言っては何だが、剣を磨き続けた。余に出来るのはこれ位しかないからな。おかげでこうして愛弟子に新たな技術を授ける事が出来るからな!」


「この歴史ってさ。もしかして戦火の悲種が起こした悲劇だったりするのかな?」


「そうだと思うにゃ。じゃにゃきゃ、急に種族戦争なんて悲しいこと起こるはずないのにゃ」


「でも、全ての責任をそれに押し付けるのはお姉さん違うと思うんだよね。きっかけはそれだったかも知れないけど、その言葉、その選択が正しいって思った人がいたって言うのも事実だから。これはさ、私たちが知ってる歴史も似た様なものでしょ?」


「余もそれには同意だ。責任のありか、善悪の所在を過去に求めても仕方がないのだ。大切なのは今と言う時間であり、今を生きる命なのだ。余の話は昔話程度に留めるがよい」


こっちの想像以上に重たい話だった。ある意味でリアリティ溢れるお話。血生臭い悲しい歴史。その延長線上に今の俺たちがいる。そういう話だ。


「重い空気は余は嫌いだ!! 話を変えるのだ愛弟子!」


「お・・・俺かよっ!? えぇっとじゃぁ・・・極大奥義! 師匠新しい極大奥義どれだけ生み出したんだ?」


「うむ!! 十から先は数えてない!!」


「多すぎにゃ!!?」


「ふっふっふっ! 時間だけは無限と言うほどにあったからな!! 余は張り切ったぞ!!」


「はにゃー☆」


「にゃーの語尾まねられたのにゃ!!?」


「その全部をマスターにマリアーデ様は教えるの?」


「無論だ!! 余の生涯唯一の愛弟子だからな! 全部覚えて貰うつもりだ!! 今はまず『天來真翔ニクスアラウダ 』を習得してもらわねばな!」


「あれ見てたけど本当にヤバいわよね・・・アールが何も出来ずに吹っ飛んでるの初めて見たもん私」


「いや、防御は間に合ってたし!」


「アヒャヒャヒャヒャ!!! なんだよマスター! 負け惜しみか!?」


「おぉそうだよ! 畜生!」


めっちゃ悔しかったんだからな!マジで初見で何も出来なかったの久しぶり過ぎて思考回らなかったし! でも原理は理解したから次は絶対に直撃は貰わねぇ!


「ちなみにマリアーデ様? マスター以外のプレイヤードを弟子に取ったりは・・・?」


「しないが? 無論愛弟子の友人であるお主たちも例外ではない」


「ケチくせぇ」


「そもそもの話だ。月光真流に限らず、歴史から消えた武術は魔法に適応できず、全てが魔法について行けなかった時代遅れの武術なのだ。魔法を手足の様に扱える今の時代の者たちに教えるものではないのでな」


「ちょっと待ってもらえます? 今サラッととんでもない発言してませんマリアーデ様?」


「事実なのでな。今残る武術は全て魔法と魔力に適応し、姿と形を変えたものだ。余や愛弟子が使う月光真流の技も魔力があれば再現可能であろうよ」


「・・・もしかして、衝撃を魔力って解釈すればいい感じ★?」


「うむ。その通りだ。生み出した余が言うのも変な話だがな。魔力に適応できなかった余は、月光真流を現代に残せなかった。そして人の生み出した月光真流も同じだった。故に余はこれ以上月光真流を誰かに継承する気はないのだ。要するに、愛弟子に教えるのは余の我儘なのだとも」


「月光真流継承者としては後世に残す気が無いって言うのはなかなか辛い話だわ師匠」


「時代遅れの武術なのだ。認めなければならぬさ。が、それを愛弟子に教えない理由にはせぬぞ? 余が認め、鍛え上げた余の継承者なのだからな!! それに愛弟子が誰かに伝えたいならば好きにするがよい。余はそれを否定せぬよ」


それを聞けて安心した。既にアキハ達に教えてるからな。これ以上教えるなと言われたらどうしようかと思った。


「でもでもマリアーデ様! 昔の武術に興味あるって人結構いるみたいなんですけど!!」


「むぅ・・・余の気持ちは変わらぬ。が、余以外の者ならば教えてくれるのではないか?」


「・・・マリアーデさん以外?」


「ここに来るまでに大勢の魂の色を見てきたが、昔見た事のある色をした者がいたぞ? その者が月光真流かどうかは知らぬが、歴史の中に消えた武術を知る者なのは間違いないはずだ」


「ちょっ!!? その情報詳しく話せるかァッ!?」


「良いぞ。とはいっても余もそこまで詳しくはないのでな」


語られたのはマリアーデがここに来るまでに通って来た旅路。聞けば人類領全土を巡り、全部の町を巡って、最後に辿り着いたのがルーキストだったとの事。そしてその旅の中で、過去にマリアーデが剣を少し見てやった人、模擬戦をした人、武芸者と分かる人物たちと同じ魂の色をした者が大勢いたと言う話だ。


「つまり・・・そういう人たちに出会えれば過去の武術を教えて貰える?」


「彼奴等次第ではあろうがな。余に教えを乞うよりは可能性があると断言するぞ」


「ヤベェな。ネクロの配信コメ見なくてもどうなってるか予想着くぞ」


「うん・・・歴史の話した時から書き込み凄すぎてコメント消したもん私。見るのコワイ」


「まぁ朗報ではあるよね。月光真流の事もそうだけど、他の歴史に消えた剣術を蘇らせる事が出来る可能性ある訳だし。うまく行けば現代風に」


マイのいう事は最もだ。失われたのなら蘇らせればいい。魔法に滅ぼされたなら、魔法によって蘇らせてしまえ。


マリアーデは魔法が使えなかったから諦めたってだけで、月光真流を捨てる選択をしたわけじゃなかった。そして俺はマリアーデの月光真流を継いだのだ。変えるつもりは無い。


けど、俺以外の人が試行錯誤して、現代風の月光真流として蘇らせるのは全然良い事だと思う。


「ちなみにマリアーデ様はにゃーたちが月光真流を魔法で蘇らせることについてどう思うのにゃ?」


「特に思う所は無いな。一度経験したこと故な。余の元から離れた人の月光真流に余が口出しすることはない。しいて言うならば『月光滅流』と名乗って欲しいとは考えたがな」


「月光・・・滅流?」


「魔法によって滅ぼされた剣術が、その原因たる魔法を取り込み蘇るのだ。滅びを取り込んだ月光の流れ。故に月光滅流! あとは余の好みだな。月光滅流とはなかなか語呂がよくないか?」


「それが理由かよマリアーデ・・・」


「うむ!! だが愛弟子よ! 中々良い命名だとは思わぬか?」


「正直めっちゃ好み」


「そうであろう!? 流石余!!」


心の中の少年が大歓喜する位にはめっちゃ好み。衝撃を魔力として捉えて放つ剣術。月光滅流。良いじゃん。


「これから俺たちの中では新しい月光真流は月光滅流って呼ぼうぜ」


「めっちゃ気に入ってるじゃんアール・・・まぁいいけど」


「にゃー・・・マスターも男の子だにゃ。異論はないにゃ」


「俺ァ気に入ったぜ? なかなかカッケェじゃねぇか」


「もう一人心が男の子がいたゾ☆」


「いいじゃんけってーい!! 私達の中では今後魔法で蘇った月光真流は月光滅流って呼ぼう! 他でもない月光真流開祖様の命名だし!!」


座談会メンバーの満場一致で可決されたので、これから見かける事があったら月光滅流って呼ぼう。


そんな話で盛り上がっていると、どたどたと階段を上がってくる足音が聞こえた。この足音は、ハルナか?


その数秒後、想像通りハルナが扉を開けて和室に飛び込んできた。そのまま俺の事を視界に入れると、背中に回り込んできて、そのまま抱き着いてきた。


「・・・お腹減った」


「第一声それかよ・・・老眼鏡にお願いしてたはずだろ?」


座談会がどれだけ長引くか分からなかったので、お昼ご飯は老眼鏡含めた下で待機しているメンバーに任せたのだ。


「・・・父さんのご飯がいい」


「お前なぁ・・・」


「行ってもいいよマスター? ついでに私たちに摘まんで食べられるもの作ってきて?」


ネクロロンが笑顔でそういってくれたが、その笑顔の裏にハルナの『お腹減った』を聞いて、自分も何か食べたいと言う気持ちが隠しきれてないぞ?


「俺フライドポテト!」


「にゃーはオニオンリングにゃ!!」


便乗してきたし。はいはいわかりましたよ。マイだけが悪いけど私の分もと申し訳なさそうにお願いしてきたから受けてやるよ。


「じゃぁ悪いけど少し席外すわ。とりあえずハルナ。一旦離れて?」


「・・・おんぶ」


「はいはい」


我儘娘め。


「師匠は何がいい?」


「そうさな・・・サンドイッチを所望するぞ愛弟子!」


「りょーかい。じゃぁ野郎は一旦席外すから女子会楽しんで」

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― 新着の感想 ―
[一言] 睦月卯月「一通り試しましたか〜。あの、今の一言で色々とお二人の関係を察してしまったんですけど、もちろんこれ他言無用ですよね? というかこの秘密を知った代わりに僕何させられるんです?」 リア…
[一言] 全体の情報量もさることながら、最後のハルナも子供好き()紳士たちに刺さってそう
[良い点] 前作では表裏一体だった月光真流と月光滅流が、今作では真なる月光流とかつて滅し新たに蘇った月光流として別物になったわけですね。前作の天匠流が長い時間をかけて変化していった流れを思い出しますね…
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