月女神祭り編:再開後のアール
まぁ、不甲斐ない姿は見せられないよね。
月女神祭りは一か月間と言う長い期間行われる長い祭りだ。
その為に一か月前から準備が始まり、人類領全体で盛り上げていく。
こうして始まった祭りは月女神様に『私たちはたくましく生きています』と報告するように、盛り上がりを見せる。
そしてプレイヤードもこのお祭りにかなり乗り気だ。
生産職のプレイヤードはこの一年間作ってきた装備などを各地で露店で販売しするし、食事系を提供するプレイヤードは珍しい食材を惜しげも無く披露し、自慢する。
あるいは現実では出来なかったバンド活動みたいな事をして祭りを盛り上げる。
楽しみ方は十人十色。
とにかくこのお祭りと言うイベントをとことん楽しむぞとかなり乗り気な訳だ。
乗り気な訳なのだが・・・ちょっと想定外が過ぎて盛り上がり方が尋常ではない。
俺の師匠、月光真流の開祖マリアーデの存在が確認されたからだ。
このプラネットクロニクルと言うゲームは前々からエクスゼウスの前作『剣聖物語』の続編にあたるのではないかと考察がされてきて、その可能性も多く上がっていたのだが、長寿族あるい不老不死、すなわちエルフ族のマリアーデの生存確認がされたことでその可能性が確定したわけだ。
んでここで大暴れ・・・もとい、大盛り上がりを見せたのは剣聖物語の根強いファンたち。
マリアーデは赤髪高身長美人良い声と言う、属性モリモリで、その容姿に惚れたファンは少なくない。
主人公には基本『面白い奴』程度の認識しかなく、基本的に協力はしてくれない。
ただ力試しに挑みに行けば、その結果次第では作中最強の武器『天來刀ズイカク』を主人公に授けてくれる。しかもその武器イベントをクリアした場合のみ、最終局面では助けに来てくれる。
しかもすさまじく強いし、『行け主人公!! ここは余が抑えてやる! 己が成す事を成せ!!』と後押しまでしてくれる。男女構わず惚れる人が続出し、薄い本が厚くなることもあった。
それこそ主人公のヒロインを押しのけて主人公×マリアーデのCP本まで多く作られるほどに。
それほど人気が出たマリアーデに弟子入りしようとしたプレイヤーはおそらく数万人は超えるだろう。しかし誰一人としてマリアーデを口説き落とすことは出来なかった。
ゲームの仕様だからと諦める者もいれば、何か条件があるのかと模索する人もいた。しかし結局表に出た情報でマリアーデの弟子になれたと言う話と証拠は挙がらず。
多くのファンをがっかりさせた訳なのだが。
ここに例外と言う俺がいる。
あのマリアーデに愛弟子と呼ばれている俺の存在が祭り期間中に明らかになったのだ。ファンからは対戦そっちのけで攻めよられた。全員に答えたが俺もマリアーデの弟子になれた条件はよくわからん。
記憶してる限りマリアーデに会いにひたすら住んでいる推奨レベルを凌駕した区域に突撃しては殺され、最初からと言う行為を何度も繰り返し、ようやくマリアーデに出会えた。
んで町に返されたからまた出向いて、殺されて最初からやり直し。
と言う作業の様な幼少期時代を繰り返していって、ようやく弟子になれたのだ。でも似たようなことなら既にネットに上がっていたし、それで弟子になれた報告は上がっていなかったので、本当にわからないのだ。
と言うのが建前。本心はおそらくクリエイションモード限定仕様だと思う。文字通りゲームとしてではなく、異世界人としてあの世界に飛び込むから、そういう人に向けたオマケとして実装自体はされていたんだろう。
そうじゃなかったらもっと大勢の人がマリアーデの弟子になれただろうし。
しかしそれで納得できない人もいる訳で。しつこく詰め寄ってくる連中はどうしてもいる訳だ。そういう奴はどうするかと言うと。
「月華美刃」
「アバァァァァッ!!?」
「ギエピィィィッ!!?」
「フンギャァァァッ!!?」
「アヒャヒャヒャヒャ!!! 見ろよお前ら!! 人が塵のようにコマ切れだぜ!!」
「うわぁ・・・アールさん容赦ない・・・」
催し物として俺とチーザーがやってる挑戦権に勝てたらマリアーデに紹介してやると言うオマケを急遽追加してみた。するとどんどん集まってくるので実力差を叩きつけて黙らせる。
「マリアーデの弟子になりたいなら、俺程度に瞬殺されるようじゃ話も聞いてもらえねぇぞ」
「チクショー!! 覚えてろー!!」
「「覚えてろー!!」」
「またの挑戦待ってるぜ」
「「「並び直して今度こそ倒してやらぁ!!」」」
まぁ今の三人組のように諦めずに何度も挑んでくるのもいる訳だが、だいたい沈黙する。
それほどまでにマリアーデと言うエルフは実力主義であると知られている。武器譲渡の為の条件も有志の調査結果ではパーティー戦闘ではマリアーデに少しでも本気を出させることが条件と判明している。
つまり、基本マリアーデは本気では戦わない。唯一本気と思われたのはイベント消化後の最終局面で助けに来てくれた時のみ。その時の強さと言えばもう『お前がラスボス倒せよ』と思う位だ。
そんな訳でファンであればあるほど、実力がないとマリアーデは話を聞いてくれないと知っているので皆割と常識人だ。
んで、弟子であると発覚した以上無様は晒せない。
俺が無様を晒す=マリアーデを怒らせる=マリアーデの名を汚す=ファンを怒らせるだからな。
少し前までの相手を観察し、一撃必殺を確実に叩き込むスタイルから、攻撃・反撃の隙を与えず、瞬殺するスタイルに変更した。
なので初手奥義も使うし、カウンターもバリバリ狙う。一戦闘平均時間一分弱だ。
「オラオメェら天下無敵のマリアーデの愛弟子様が本気出してんぜ! どんどん挑んでこいや!」
「「「「「「言われなくてもぶっ倒してやらぁ!!!」」」」」」
チーザーも面白がって煽るのでやる気・・・もとい殺る気満々な連中が次々にやってくる。掲示板にも既に情報が書き込まれ、全世界から猛者がやってくるわけだ。
そいつらを千切っては投げ千切っては投げを繰り返し、今の所全戦全勝である。
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【続編確定!!】最強剣聖マリアーデ降臨!! part22
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112:名無しのプレイヤード
マジヤバくね?
113:名無しのプレイヤード
うおぉぉぉぉおおおおおマリアーデ様ぁぁぁぁ!!!
114:名無しのプレイヤード
同姓同名じゃなくて同一人物なのやべぇ
115:名無しのプレイヤード
流石エルフ。長寿だ。
116:シロマサ
世捨て人設定あったから尚更長生きだったんだね
117:アーノレ
アールさんに勝てる気がしない。なんなんあのひと?
118:カトレア
流石死閃を単騎撃破した人外ですね。本当に話題が尽きないわねあの人
119:名無しのプレイヤード
と言うかさ? マジでマリアーデ様に愛弟子呼ばれてるの羨ましいんだが? 私も愛弟子って呼んで欲しいんだが?
120:名無しのプレイヤード
アールさん曰く幼少期にマリアーデに会いに行くのを繰り返したとは言ってたけど、検証した人たくさんいたはずだよね?
121:名無しのプレイヤード
クリエイションモード以外でな
122:ハルト
殆どそれが答えでは?
123:名無しのプレイヤード
バッカオメェ、クリエイションモードでしかも幼少期にあそこ行くとかマジで命知らずと言うか馬鹿すぎるだろ。
124:俺はマー坊
クリエイションモードの幼少期時代の攻略法は町の道場で剣術を学ぶことだからな。学ばんと戦いにもならん。
125:雷華
プラクロのようにある程度肉体が出来上がってるならば行けますけれど、剣聖物語だと強制的に幼少期時代の肉体ですものね。それに会いに行くとしてもゲーム開始から三時間はかかりますし
126:名無しのプレイヤード
序盤でも会いに行ける場所に世界最強がいるのは良いんだよ。問題はそのフィールドのモンスターが頭おかしい強さな事だよ。マジ幼少期じゃ無理。
127:クロサカ
青年期でもきついぞ。フルメンバーフルパーティーで全滅したこともあるくらいには強いぞあそこのモンスター。難易度ルナティクスだったが
128:名無しのプレイヤード
隠しキャラとしては最高のご褒美なんだよなマリアーデ。美人でエロスと雅さが出てる上に声が素晴らしく良い。あと滅茶苦茶強い。
129:シロマサ
そりゃ月光真流の開祖だからね。僕らが知ってる月光真流は彼女の月光真流を人が使えるように落とし込んだものって言われてるくらいだし
130:白輝
あれ? そういう事ならアールさんの月光真流って・・・
131:名無しのプレイヤード
・・・やっぱあの人も人外なんじゃねぇの。と言うか人外確定だろ。覚醒者かどうかはともかく
132:拳翔
あのー? 本気出し始めたであろうアールさんに瞬殺され始めたんですけど?
133:名無しのプレイヤード
マジで一騎当千してるよあの人
134:名無しのプレイヤード
ブレイドエンセスターの人たちみんな見に来てるのヤバい。覚醒者の集まりとかこれ何てシナリオ?
135:名無しのプレイヤード
露店の食い物両手に持って観戦してるの完全にお祭りに参加してるだけの一般人なんだよなぁ
136:名無しのプレイヤード
ネクロロンさんとテイマーズさん?って人が解説席用意し出して解説始めたの草www
137:名無しのプレイヤード
『あれは月光真流の暁月ですね。いやぁ素晴らしい精度ですね』
『流れるように十六夜に繋げましたな。動きに無駄がない』
この人たちも見えてる時点でそこそこヤバいけどな。どんな動体視力してるんだよ・・・
138:名無しのプレイヤード
ネクロロンさんはまぁわかる。夢見こころの芸名でゲーム配信良くしてるからゲームセンスは高い。テイマーズって人がマジわからん。
139:俺はマー坊
隣でにゃーるが『ぐぬぬ・・・にゃーだって本気でやればあのくらい・・・』って負け惜しみしてるの笑うわwww
140:名無しのプレイヤード
ちょっと何言ってるかわからないですね。にゃーるさんアンタ抜刀術なら雷華さん抜いて最速では?
141:ライトニング
チーザーネキが『最強はアールだ』って言ってたしにゃーるも負けたのでは?
142:名無しのプレイヤード
その上を行くマリアーデマジ最強、女神!!
143:名無しのプレイヤード
現地で見たけどマリアーデ様の剣マジ凄まじかった
144:名無しのプレイヤード
クッソ羨ましい
145:名無しのプレイヤード
誰か録画してないの?
146:クロサカ
してたら既にネットに上がってるだろ。無いって事はそういうことだ。
147:名無しのプレイヤード
ショック!!
148:名無しのプレイヤード
サラッと極大奥義って言ってみたこと無い剣技?使ってたよ。何したかはマジでわかんない。
149:名無しのプレイヤード
マイに障壁張られなかったらお話しできたのに・・・!!!
150:名無しのプレイヤード
寧ろ障壁張るだろ。マイはアールの関係者だから知ってても不思議じゃないし。師弟での話もあっただろうさ。
151:名無しのプレイヤード
仮に障壁無かったとしてもマリアーデ様なら全員無視してた可能性の方が高い。あの人マジで興味ない人には無関心だから
152:名無しのプレイヤード
作中最強武器をくれるのが作中最強キャラなのおかしくない?
153:名無しのプレイヤード
劇中のキャラが皆口を揃えて『あの方は我々の領域よりも遥か高次元の強さを持つ存在だ』と言うほどに強いからな。
154:しろへび
そんなに強いんですね。
155:名無しのプレイヤード
アールさんが一瞬で吹き飛んだと思ったら血だらけになってたからな。マジで意味わからん。
156:名無しのプレイヤード
とりあえずプラクロ作中最強キャラはマリアーデに更新でおk?
157:俺はマー坊
あの人なら邪神も一人で片づけそう。いやマジで。
158:名無しのプレイヤード
それな。俺ら必要なくない?
159:名無しのプレイヤード
忘れるな。あの人世捨て人だから世界の危機とかマジでどうでもいいと思ってる人だぞ?
160:名無しのプレイヤード
俺らがサブイベントで関わらないとマジで何もしないからなマリアーデ。
161:クロサカ
ズイカク貰って初めて助けに来てくれる程度には世間に興味なし。
162:名無しのプレイヤード
つまり今後も邪神相手は俺らがするって事よ。
163:名無しのプレイヤード
無知でスマンけど、ズイカクってどんな武器?
164:名無しのプレイヤード
太刀で絶対に折れないし砕けない武器耐久力無限の武器。
165:名無しのプレイヤード
剣聖物語でズイカクの使いやすさを知るとマジで他の武器使えん。太刀使ってなくても、使えるようになろうって思うほどに最強武器。
166:名無しのプレイヤード
月光真流を使う為だけに生み出されたって言っても過言じゃない武器。マリアーデが年月をかけて自分で生み出したって言ってた。因みに月光真流使わなくてもめっちゃ強い。と言うかあのゲームのシステム上何かしらの流派には所属するんだけど、どの流派であってもマジで扱いやすい。
167:名無しのプレイヤード
天下を取れる武器。売却しようとすると値段付けられなくて商人が泣き出す大業物。因みに売却すると最終決戦でマリアーデは助けに来てくれない。
168:名無しのプレイヤード
『其方、人にしてはなかなか良い実力だ。久方ぶりに良い経験をさせて貰った褒美だ。これを持っていけ』マジで上位種と言うかどこぞの王様かって思う位には上から目線。
因みにそう言われるにはラスボス三回くらい倒す勢いで戦わないといけない。
169:名無しのプレイヤード
クリエイションモード除く最高難易度ルナティクス安定クリアの為に必須級の武器。マリアーデの救援あるかないかとズイカク持ってるかどうかでマジ難易度変わる
170:名無しのプレイヤード
ズイカク持ってるとNPCとの会話にも補正掛かって少しだけアイテム安く売ってもらえるのがお得すぎる。あと各種イベントも楽になる。
171:名無しのプレイヤード
悲しいのは入手難易度が高いことくらいだよな・・・
172:名無しのプレイヤード
実質裏ボスマリアーデだからな。裏ボスなのに超人気キャラで人気投票一位だったし。
173:名無しのプレイヤード
声がズルいよ。あの容姿でイケメンで可愛いとかずるじゃん
174:俺はマー坊
速報:アール通算420連勝達成www
175:シロマサ
アールさんもアールさんでぶっ壊れ能力してるよ・・・
176:名無しのプレイヤード
ワイ既に五戦くらい挑んでるけどマジで勝てない。ちなレベルカンストしてます。
177:名無しのプレイヤード
集中力がマジ化け物。後ろにも目がついてんのかってくらい動きに迷いも無いし
178:名無しのプレイヤード
10人で囲めば勝てると思ったワイら、月華美刃にて瞬殺で候。
179:名無しのプレイヤード
月華美刃ずるくね? あの技マジで範囲広すぎる。それはまだいいけど太刀で広範囲、ほぼ防御貫通、急所狙いの確殺。これがマジズルい!!
180:名無しのプレイヤード
刀でも十分やべぇよ。早すぎて見えねぇよ。太刀の方がまだ見えるからいい。ただし避けられるとは言わない。
181:名無しのプレイヤード
体感マリアーデ様と戦ってるみたいでちょっと嬉しみ
182:俺はマー坊
マイ曰く、マリアーデにボコられてアール覚醒したって言ってたしな。心構え的な意味で。
183:名無しのプレイヤード
それはもう覚醒者と同じなんよ。
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夜。1日の対戦を終えてクランハウスにて、皆で集まった。
殆どの内容はマリアーデに関することだったので、俺が知る範囲、と言うか俺が経験して知ったマリアーデと言う人についてを話した。
ああ見えてとても優しくて、でも厳しく無理難題を押し付けてくるけど、毎日『よく頑張った』と褒めてくれたとか、危ない時は助けてくれたとか、そんな話だ。
世間一般に知られているマリアーデと言う人物からはかけ離れているので、聞いてる皆は唖然としていたけど。
「ここだな!!」
「「「「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」」」
そんな時だ。クランハウスの扉を開いてやって来た客人。と言うか今まさに話していたマリアーデ、来店。因みに店は閉めている。
「おぉやはりここだったな愛弟子! む、友人も一緒か、良い事だ。友人は大切にするのだぞ?」
「・・・思ったことは多いですが、マリアーデ様?」
猫被りでチーザーがバグったように口を開く。もう今の一言でマリアーデと言う人物像が音を立てて崩壊する位の衝撃なのだ。
高貴で優雅、それでいて王様気質でありながら幻想的。なんて言われることもあるマリアーデなのだが、今のマリアーデは完全に孫に会いに来た祖母くらいのノリだ。
「愛弟子の友人なのであろう? 様など付けなくともよい。気軽にマリアーデと呼ぶがよい!」
王様気質とは何だったのかと思う位気安い。俺も最初はビビったけど、チーザーの猫かぶりと同様にマリアーデもこっちが本来の姿だと思ってる。
「んで師匠、どうしてここに?」
「うむ! 町を見て回っていたのだがプレイヤードがしつこくてな。適当に撒いてここに逃げてきたのだ! 愛弟子の魂の色も見えたのでな!」
「た・・・魂の色・・・ですか?」
「うむ、余には魂の色が見えるのだ。それで大体相手がどのような者か判別できる。お主たちは皆美しい情熱の色をしている。余が好きな色だ」
「あ・・・ありがとうございます・・・?」
マイ、レイレイがぽかーんとしながらマリアーデと言葉を交わす。と言うかここにいるのは剣聖物語に人生奪われた廃人と言ってもいい連中ばかり。
当然マリアーデの事も大好きだ。そんな人に『お前たちの魂の色は美しくて好きだ』と言われればにやけるのもわかる。
「失礼マリアーデさん。その魂の色と言うのは?」
老眼鏡の質問にマリアーデが答える。それはある意味で俺たちを驚かせることだった。
「先に言っておくと余は魔法が使えん。魔法に適応できなかった旧人種という奴だな。代わりにその者が持つ魂のあり方が見えるのだ。色は様々あるが、濁りなく美しく色であればあるほど純粋な者だな」
「ま・・・マリアーデさんは魔法が使えないんですかにゃ!!?」
「うむ。使えん! 全くな!!」
「じゃ・・・じゃぁ回復とかは!?」
「薬を使うしかないな! だが余が自ら調合した薬だ! 魔法ほどとは言わぬが効能は保証するぞ!」
ドンと取り出したのは瓶に入った青い液体。懐かしい。修業中怪我をしたら毎回マリアーデに飲まされていた薬だ。最初は味は最悪だったんだけど、マリアーデが気を利かさてくれて俺でも飲みやすいように改良してくれたんだよな。
「ちょ・・・ちょっと見せて貰えます!!?」
「良いぞ。沢山あるからな!」
トトトトトっと取り出して同じ瓶を並べるマリアーデ。それに一番食いついたのは生産職組。一歩出遅れて戦闘職組が手に取った。
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エンシェントエリクサー改『製作者マリアーデ』
・数千年を生きるエルフ、マリアーデが調合・改良した結果生まれた万能薬。生涯唯一の弟子の為に味を改良したのが最後。その効力は一滴飲むだけであらゆる疲労と負傷を完治する。
効果:体力・状態異常・身体疲労・病・その他身体への悪影響完全回復。
:300秒間持続回復【極大】を付与。
時価:200万G
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「・・・これあったらイェラオの被害少なく出来たんじゃね?」
「「「「「「「「わかる」」」」」」」」
経験したこと無い俺とネクロロン、テイマーズ以外の全員がマー坊の言葉に同意する。
軽く情報は調べたが、イェラオとは、プレイヤードが唯一討伐出来なかった邪神らしい。既に消滅したらしいが、戦火の悲種と言う、邪神誕生の種をばら蒔いたのだとか。
しかも大勢が昏睡状態に陥って、そのまま死んでしまったらしい。プレイヤードにも大きな傷跡を残し、それはステータス減少と言う形でも現れたとか。
「ふむ・・・そのイェラオと言うのは知らぬが、欲しいならくれてやるぞ。愛弟子の友人なのだろう? ならば余にとっても無関係ではないからな」
「「「「「「「「「「貰います!! ありがとうございます!!」」」」」」」」」」
確かにあれ持ってると安心感あるよな。俺も世界を知ってこいと言われて旅立つとき、持たされたから覚えてる。どうにもならなくなった時に飲むとスッキリして、考えを纏めやすくもなるんだよな。
「代わりと言ってなアレなのだが、愛弟子、そしてその友人たちよ。宿を提供してはくれぬか? 町に戻ると民衆がしつこく五月蠅くて堪らんのだ。余は夜くらい静かに寝たいぞ」
「そういう事なら二階の部屋を使っていいよ。皆もいいか?」
「もっちろん!! むしろこれ貰ったんだからずっと居てもいいわ!!」
「にゃーも異論なしにゃ!!」
「俺も構わねぇよ。出来れば一戦手合わせをして欲しいなぁなんて思ったりするけど」
「私も大丈夫よ」
「一緒に居ればワンチャン何かを学べるかもしれないネ☆」
「なら明日の朝食は僕が用意させてもらうよ。マリアーデさんの口に会うかは不安だけど頑張るさ」
「俺は是非俺の剣を見て貰いたい」
「ネクロロン。ちょっと俺の事ビンタしてくれるか? 夢かどうかあいまいになってきた」
「安心してテイマーズさん。夢じゃないから」
「皆いいみたいだし案内するよ。師匠、着いてきて」
皆の同意も得られたので二階へ案内する。するとアキハ達も一緒についてきた。正確には俺を守るようにマリアーデとの間に入っている。
「むぅ・・・嫌われてしまった・・・愛弟子よ。助けよ・・・」
階段をのぼりながら、完全に敵意むき出しのアキハ達に壁を作られて凹んでる。
「ちょっとうちの子ら特別な環境育ちだからさ。時間かけてゆっくり仲良くなるしかないんだわ。こっちだよ」
「そうか・・・ならば仕方ないな。悲しいが余から歩み寄るよう努力しよう。なんたって愛弟子の子だからな!」
「・・・アンタ嫌い」
「ガーン!!」
ハルナの容赦ない一言に膝から崩れ落ちるマリアーデ。まぁ、うん。ドンマイ。
「皆手伝ってくれるか? 布団の用意するから」
「・・・父さんが言うなら・・・手伝う」
「うん・・・」
「えへへ」
「・・・コイツ嫌い」
「ガガーン!!」
ハルナ。そんな追い打ち掛けないであげてほしい。こう見えてマリアーデは身内には甘くなりやすいんだから。だからもろ身内の俺の子供のハルナ達の事も気に入ってるはずだ。
それなのに嫌われてるとショックはデカいだろうな。
「何度も言うけどあれは俺とマリアーデの手合わせだからさ。本当に殺す気はなかったんだって。な?」
「・・・でも嫌い」
「余、泣きそうだぞ・・・」
嫌い嫌い言われて相当ショックな様子。それでもアキハ達はテキパキと布団の用意を手伝ってくれているから憎いと言う感情ではないんだろう。
ただ俺が傷つけられたからコイツ嫌いみたいな嫌悪感があるだけで。
こればっかりはもうあれだ。時間が解決してくれるのを待つしかない。おそらくマリアーデはしばらくここにいるだろうし、その間に仲良くなればいい。
「愛弟子・・・余は泣くぞ。めそめそ泣くぞ・・・ぐす・・・」
「あーはいはい。よーしよし、布団用意できたからゆっくり寝なさい」
「子供扱いではないか!!?」
「あ、ごめん、つい」
「「「「・・・」」」」
「その嫉妬の目はやめてくれ!!? 余本当に泣くぞ!!? 泣いて枕を濡らすぞ!!?」
「「「「泣けば?」」」」
「意外とこの子ら容赦ないな愛弟子!?」
「うん。俺もそう思う」
誤字報告、感想への返信完了しました(6月22日)。みなさんいつもありがとうございます。
皆さんの声が私のモチベーションに繋がっています。
これからも応援してください!
ではまた




