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クラン『ブレイドエンセスター』始動

「えっと、クラン登録? ってのをしたいんだけど」


「かしこまりました。こちらの用紙に必要事項の記入お願いしますね」


ルーキストの町に来てギルドへクラン登録の為に来た訳なんだが。


うん。目立ってますね。わいわいがやがやしてたギルドにいたプレイヤードが一瞬で止まりましたわ。


「おいアール。クラン名忘れんなよ?『ブレイドエンセスター』だからな?」


「わかってるよ。皆の名前俺が書いちゃっていいの?」


「問題ない。間違えていたら自分たちで書き直そう」


「私が書くよ。アール変わって?」


「そうか? なら任せた」


「にゃー久しぶりにルーキスト来たけど初々しい装備の子が多いにゃー」


そりゃお前。こっちは全身ガッチガチの本気・個性マシマシ装備で、周りはほぼ初心者装備だ。そりゃそうもなるさ。だってここ始まりの町だよ? 自分らと比べるのはちょっとダメだって。


いやそういう俺も上級者装備かと言われると言い返せないけども。


「・・・ねぇ。なんか目立ってない?」


「目立っているな・・・私たち何か変なのだろうか?」


「もしかして・・・俺の伝説が始まる瞬間・・・!!!」


「無いですね。ミナツには無いですね」


「なんでだよ!!?」


アキハ達は人が多い所を好まないのだが、多少なりとも知り合ったチーザー達がいるからか、いつもより余裕があるように見える。ハルナ以外。


珍しくハルナが俺の背中に乗っている。最初はフユカが乗ろうとしたんだが、ハルナの眼光に負けて諦めた。代わりにレイレイにおんぶしてもらっている。


「今更だけどアール。アキちゃん達どうする?」


「どうするって?」


「クラン構成員に名前書いちゃう?」


「アキハ達もかけるの?」


「うん。チーザー、いいわよね?」


「構わねぇよ。もう家族みたいなもんだ。書け書け」


「っ!! 俺もいいの!!?」


「おういいぞ坊主! それに俺たちとお前ら姉弟はもう仲間だ!!」


「わぁ・・・わぁああ!! 冒険の始まる予感!!」


「「「単純」」」


「なんでさ!!?」


「うふふ☆この子たち面白いんだゾ☆」


ミナツは乗り気だし書いてもいいとして、他三人はどうだろうか?


「・・・好きにしたら。興味無いし」


「わたしは・・・父さんと一緒ならそれでいい」


「えへへ、仲間外れにしないでくださいね」


「フユカちゃん可愛い。えへへ使いマジカワユス!」


「なんか問題なさそうだし書いちゃって」


「OK」


その後、マイがテキパキと記入していってあっという間に手続きは終わった。


「はい。確認が出来ました。新クラン『ブレイドエンセスター』ですね。クランマスターはアール様。サブマスターはマイ様。構成員の皆様は敬称は省かせていただきますが、レイレイ、俺はマー坊、にゃーる、チーザー紫、火力魂、老眼鏡、ルーク、ももちゅん、テイマーズ、ネクロロン、アキハ、ミナツ、ハルナ、フユカ。以上の皆様で御間違いありませんか?」


「えぇ。間違いないわ」


「かしこまりました。では次にクランハウスの場所に関してですが、ルーキストで登録という事なのでルーキスト近辺に作っていただくことになりますが、よろしいですね?」


「それも問題ないわ。場所なんだけど、地図のここに建てるつもり」


「少々お待ちくださいね・・・隣に一軒お住いの方がいらっしゃいますが、確認は取れていますか?」


「ええ、住んでるのは私とその家族なの。問題ないわ」


「わかりました。では土地代とクラン認証費。それから保証料含めまして528万Gお支払いいただけますか」


「ちょっと待ってくれる? 全員どうする? 私がまとめて払ってもいいけど?」


「そこは俺様が出すわ。流石に提案者だ。ここで出させるのは悪ぃからな。現金と物資払いどっちがいい?」


「そうですね。ギルドでは現在回復薬をはじめとするアイテム制作の為のアイテムが少々不足しております。素材に関しましては定期的にそちらのアール様が定期的に討伐してくれていますので足りないものもございません。ですので現金での支払いをお願いいただけますか?」


「ちょっと待ちな・・・ひーふーみー・・・これから厄介になるからな。気持ちも込めて600万G払うぜ」


「ではありがたく受け取らせていただきます。ふふ、ではクラン『ブレイドエンセスター』の皆様。これからよろしくお願いいたします。ルーキストのギルドを代表して、これからの活躍を心より応援しております」


「おう、見てな。すぐに世界中に俺たちの名を轟かせてやるさ。おーしお前ら! クランハウス建てに行くぞ」


よし。終わった。凄まじい金額の動きとかあって思考回路が閉じかけていたが、無事に終わった。よし。


「ところで皆さま。ギルドから一つ依頼を受けるおつもりはありませんか?」


あ、なんか全員がにやりとした。もしかしてチーザーが多く払ったのはこれが狙いか?


視線が『受けろ』って言ってる。そうだね。俺がマスターだし受け答えしますよ。


「どんな依頼ですか?」


「実は近隣の村から救難依頼が来ておりまして。何でもデスペラードが複数見られたとか。ギルドで確認出来ていないので確証は無いのですが5匹ほどいるそうなのです」


「わかりました。ならその依頼俺たち『ブレイドエンセスター』が受けましょう」


「ありがとうございます。では依頼書をお持ちしますので彼方のカウンターでお待ちいただけますか?」


受付さんが奥に戻って行ったので指定されたカウンターへと向かう。さて。


「これが狙いか?」


「信頼を得るための第一歩と言ってくれよマスター。ギルドが抱えてる問題解決はクランの名声を上げるのに役に立つ。それに名が上がればギルドから色々優先して事を回してもらえるんだぜ?」


「マー坊が悪そうな顔で言わなかったら素直に受け止められたよその言葉」


「なぁ? デスペラードってどんなモンスターなんだ?」


「私知ってるわ! 四本腕のゴリラよ!」


「ネクロロンってば詳しいネ☆」


「ふふん! 配信者たるもの事前情報はバッチリ調べましたとも!」


ネクロロンは動画配信者だ。前に教えて貰ったが登録者数は10万人ほどいるらしい。同時視聴数は最高3万人にもなったとさっき自慢してた。


「実は集まらなくても配信する予定だったりした?」


「バレたか。実はすでに事務所からエクスゼウスに申請出してるのよね」


「あれ? でもそれ低レベルの俺とネクロロンでも倒せるの?」


「ほら、ここに最強の盾がいるでしょ?」


「誰が盾だ老眼鏡」


「盾にならないの?」


「・・・なるけどさぁ」


「「納得したわ」」


完全防御したるわ。


「お待たせしました。こちらが依頼書になります」


「どうも」


どれどれ、依頼内容は・・・あれ、ここって確か。


「どしたのアール?」


「にゃんかあるのかにゃ?」


「いいや、何の因果かなって思っただけさ」


そういえば、マイは定期的に様子見に行ってくれたけど、俺が行くのは本当に久しぶりかもしれないな。


そこは、俺が初めて依頼を受けた村の近くだった。










ーーーー










「でかーい!! 説明不要!!」


「うっわゴリラだね。四本腕のゴリラ。でもゴリラより賢者感ないね」


ルーキストを出て、目的地へ入ってから数分。早速一匹目と遭遇した。森に着くまでが早かったのはマイのおかげだ。覚醒者となったマイは様々な魔法を自由自在に使えるようになっている。


その中で今回使ったのは『転移魔法』。指定した場所に飛ぶ魔法だが、マイはこれを全員にかけて一斉に飛ばすことが出来る。


曰く凄まじいMP消費のはずなのだが、マイの覚醒者の能力として一定以下のMP消費は0になり、一定以上のMPもその一定数分減少しているらしい。なので大人数でもマイ一人で転移が出来るとの事。


そして飛んだ場所は俺たちが最初に救援に行った村。転移した時に出会った村人からは熱烈な歓迎を受けた。村の子供たちは立派な戦士目指して毎日武器を振るい、村人たちも活気を取り戻し、村として立派に栄えていた。


それを皆が俺に報告するように来るものだからさぁ大変。なのだが、今回来た理由を話すと、納得してくれた。元々デスペラードに苦しめられていた村だからな。事の重大性は直ぐに理解してくれた。


村の人たちにデスペラードに関する情報を聞くと、目撃こそしてないが、不自然な木の実の取られ方をした場所があったとの事。


地図にて場所を教えて貰い、向かった先で見事遭遇という訳だ。


「俺とアキハがタンク。あとは自由にやってくれ。アキハ、出来るな?」


「勿論だ父さん。一緒なら出来ない事はない・・・!!!」


「・・私は父さんの後ろにいるからよろしく」


「えへへ、遊撃ですね」


「フユカちゃん見た目に寄らず物騒なもの担ぐんだね」


「お気に入りです。えへへ」


「うーんキュート☆」


「言ってる場合か? うん。場合だったわ」


「むしろ過剰戦力過ぎて俺たちはいらないだろ」


「デスペラード相手にそう言えるのはあなた達だけだと思います火力魂さん」


「ふ、ルーク少年。君もすぐに俺たちと同じになるさ。それと火力で構わん」


「ギッタンギッタンにシバいてやってくれ。愚弟もそろそろ強敵相手にソロで戦えないとな!」


「それ絶対に味方に言うセリフじゃないよね姉さん!!?」


なんか。余裕あり過ぎて空気が緩いわ。実際そうなんだけどさ。


「って訳だマスター! 攻撃はお前の所のガキ四人とテイマーネクロロン! あと愚弟の三人でそれ以外はサポートで行くぜ!」


「了解!」


ほぼ一人に付き一人覚醒者がサポートに入る形になった。


『ウホ?』


これから討伐される事など、全く気にせず、デスペラードは暢気に木の実を食っている。本当にここだけ見たら無害なモンスターっぽいんだけどな。


問題はその巨体。暴れると危険すぎて一般人じゃ手に負えない。被害が出る前に討伐せにゃあかんのだ。


恨むなら、この辺を縄張りにした自分を呪ってくれ。


「撃ちます!」


フユカのアサルトボウガン『ビスマルク』の一撃が暢気だったデスペラードへ直撃する。すかさずハルナの矢も突き刺さる。


『ヴボボボボボオオオオオ!!!!』


「うわ立ち上がるとまたデカいなぁ!!」


足元へ駆け寄り、テイマーズが剣で切りつける。浅いな。


「くぅ!! このレベル差が絶望的な相手と戦う感じ! 剣聖時代を思い出すね!!」


「はっはぁーっ!! 鍛え上げた壁走りの応用!! 受けるがよいぞゴリラ!!」


正に壁走り。ネクロロンはデスペラードの背中を駆けあがり、脳天に一撃を叩き込む。


『ウボボボオオオ!!』


「おっと不味いね! そこの火力さん。着地任せるね!」


「任された」


振り払うように強靭な腕でネクロロンを払いのけようとデスペラードが動く。その前にネクロロンがジャンプして逃げる。その着地ポイントに火力さんが駆け寄りしっかりとキャッチ。初めてとは思えないほど戦い慣れてるなネクロロン。


「『Laaaaa』」


『ウオボォオ!!? ウボボオオオ!!!』


俺は俺の仕事をしよう。桜花戦舞。この叫びを刻み込め。


意識をこちらに向けさせて、地面を鳴らし攻撃誘導。デスペラードは何の警戒も無く突っ込んでくる。いつか見た突進からのラリアットだな。そういう動きをしている。


「アキハ。かちあげてくるぞ」


「わかった。押さえてみせる」


『ウボオオオ!!!』


「『月波』っ!!」


想像通り突進ラリアット。前に出たアキハが鞘で受け止める。


『ウボッ!?』


「返すぞ。『十六夜』」


するりと身体を動かし、受け止め動きが止まった腕の手首目掛けて一閃。今の衝撃分も乗せた居合切りがその手首を半分落す。


「ニャァッハ!!! やっぱりあきにゃんは居合切りの才能があるにゃ!! 磨けば光る原石発見なのにゃ!!」


「にゃーる」


「任せるにゃマスター! サポートが今日のにゃーの仕事!! 居合ッ!!」


斬り損ねた半分丁度骨の部分をにゃーるが切り落とす。さっきは対峙したが、味方になるとこんなにも心強いんだな。


「ウッヒョー撮れ高撮れ高!! 追撃おりゃぁ!!!」


『ウボォォォォ!?!?!?!』


切り落とされた手首の切り口目掛けてネクロロンが滅多切りをかました。流石に傷を広げられて痛かったのかデスペラードが後ろへ下がる。


「あ、そこに貰った罠でも置いてみたよ」


『ウボォォォォオオッ!?!?!?』


「ナイステイマーズ!」


戦闘前に皆から受け取ったアイテムの一つをテイマーズが設置していた。面白いほど綺麗に罠にはまるデスペラード。設置していたのは機動力を奪う粘着性の罠。それも老眼鏡がより効果を強力にした特注品。


いかに巨体であっても、抜け出せず、完全に片足を掴まれ、デスペラードはバランスを崩し倒れる。


「無論そこにも罠があるとも。今度は針山ならぬ剣山だけどね」


『ウゴボッ!!?』


首筋、それも喉元を同じく仕掛けていた剣の山の罠が貫いた。


喉を貫かれたデスペラードは苦しそうに藻掻くが片足を罠に掴まれ、思う様に身動きが取れない。


「誰かバフお願い! 私も腕の一本切ってみたいわ!!」


「ならちゃんとした過剰バフを上げよう『ブレイクパワーエンハンス』」


「おぉっ!! 怪力になった気分! おっしゃくらえぇ!!!」


老眼鏡よりバフを受けたネクロロンが吶喊する。起き上がろうと地面に付いた腕目掛けて。


「一本じゃ足りねぇだろ? 幻想の刃も持っていけロン!!『幻想十字剣』!!」


「うおぉぉおおお!!! 剣が増えたぁ!!」


「なら俺の火も持っていけ!!『剣刀爆炎』!!」


「燃えたぁああ!!! おっしゃいくぜ!!」


チーザー紫の二つ名であり覚醒者としての能力『幻想術師』。実体はないが確かにそこにあると言う矛盾を要した魔術。魔力で見せた幻影、あるいは幻想を使い、相手を混乱させる魔法。


チーザーは今回ネクロロンが持っていた剣を複製し、幻想の剣として追従させた。


そして火力魂の能力『豪火技師』。万物に火を灯す能力。火の規模から範囲まで自在に操る事が出来、ネクロロンの持つ剣と追従する剣全てを火炎剣へと変えた。


「なら僕は反対側の腕を切ってみようか!!」


「そう言うと思った。行くわよ『光乃福音』! マイ!」


「はいはい! 『瞬間転移』!!」


反対に回ったテイマーズのサポートにレイレイが回り、その力を行使した。レイレイの能力は主に譲渡。自分のステータスを全て対象に上乗せする。直接触れた相手でなければならないらしいが、それでも本人曰く全ステータス500を超えた数値を受け取れば、よほどの事がない限り強くなれる。そしてテイマーズはゲーマー。強くならない理由がない。


「僕出番無しぃっ!!?」


「な訳ないだろルーク!! おら嵐と共に突っ込め!!『嵐撃』!!」


「うわっ!? 風・・・いや嵐!!?」


ルークが持っていた剣をマー坊の大剣が叩く。するとルークが持つ剣が風を纏う。いいや、あれは確かに嵐だ。


マー坊の能力は嵐を司る。一撃が全て嵐を内包し、マー坊の加減次第でその嵐は味方への属性付与へと変わる。


「ももちゅん!!」


「了解マスター☆!! ミナツ君!! お姉さんの力を受け取りなさいな☆!!『天真譲瑠璃

』!!」


ももちゅんの能力はあらゆる能力を限界まで引き出し、追加効果を発生させる『天真乱舞』。一見地味かもしれないが、武器が持つ性能を超えた力を引き出し、さらにスキルの追加効果を必ず引き出すと言えば、その強さが分かるだろう。


「俺の伝説の一撃を喰らえェ!!」


四人がそれぞれ援護をもらい、倒れ込むデスペラードへと突っ込む。


「『『スラッシュ』』!!」


「『剛刃剣』!!」


「『暁月』!!」


魔法宿る複数の火炎剣が、嵐を纏う剣が、覚醒者と同等の力を得た剣士の一撃が、衝撃を有り余ることなく流し込み振るわれる一撃が、デスペラードの四本の腕を根元からぶった切る。


『ウボォッ!!?』


立ち上がる術を失い、より深く喉に剣が突き刺さるデスペラード。勝敗は決した。


「ハルナ」


「・・・わかってる! 撃ち抜く!!『弓式サジット』ッ」


止めの一撃。構えた大弓がデスペラードを縦に撃ち貫く。ハルナの一撃を受けてデスペラードは息絶えた。


「ハッハァー!! どうよテイマーにロン!! この世界での戦いは!! あの頃(クリエイション)を思い出すだろォ!?」


「そうだね。ここは確かに僕らが情熱をかけて挑んだあの世界だ」


「撮れ高最高! しかも気持ちがいい一戦だったわ! 皆サポートありがとう!」


「・・・テイマーズさんもネクロロンさんも動き良すぎじゃない? サポート受けててもデスペラードこんなに簡単に倒せる普通・・・?」


「アハ☆ ルークくん、解かってないねぇ☆。あの二人だってクリエイションモードクリアを目指して腕を磨いていた猛者だぞ☆? 腕は簡単に衰えないよ☆」


「・・・クリエイションモード経験者ってこんな猛者ばっかりなの?」


「正確には諦めずにトライし続けた奴だけだな。ある意味苦行を全身全霊で受け入れた馬鹿野郎の集まりだ」


マー坊の言う通り、クリエイションモードは常人がやるモードじゃない。自分で言うのもあれだが、廃人クラスがやり込むモードで、クリア者は今の所俺一人。でも、それでもクリアを目指してずっと情報交換しながら、励ましあった俺の自慢の友人たちだ。


「次はマスターのサポート無しで倒してみたいな」


「おぉいいね! タイトルは『始めたばかりでデスペラードと戦ったらどれだけ時間が掛かるか!?』だね!」 


「多分普通なら即死じゃないかな?」


「アハハお爺ちゃん! 楽しんだもの勝ちだよ!」


「お、みんなーレア素材取れたからあとで分けるねー」


「うっわなにこのレア素材の量・・・ビビるんだけど」


「こりゃいいな!! 俺様が気が向いた時にこいつで装備作ってやるよ!」


「それはありがたい。初心者装備もいいけどやっぱり個性は出したいよね。折角だし」


「チーザー私見た目重視の装備にしてね! もしかしたら今後するかもしれない配信でも使いたいから!!」


いいな。この皆でわちゃわちゃした感。アキハ達と一緒に戦うのとはまた別の楽しさがある。


「凄いんだな。父さんの友達は皆凄い」


「・・・父さんが一番だし」


「えへへ。最初の一発以外は皆さんが全部やってくれましたしね」


「上澄み連中が全力サポートしてるからな。個人ならアキハ達だって十分強いさ」


「そう!! それは本当にそう思う!! 特にアキハちゃん!!」


「っ!!?」


大声を出したレイレイに驚いて、呼ばれたアキハは俺の後ろに隠れてしまった。興奮止まらずと言った感じでレイレイはアキハに視線を合わせてしゃがむ。


「貴女は凄いの! デスペラードの一撃を月光真流の月波で受け止めて十六夜で返す! これがしたいプレイヤードがどれだけいる事か・・・!!!」


「そ・・・そうなのか?」


「そうなのにゃ!! にゃーも練習中だけどいまだ不完全なのにゃ!」


「だ・・・だがマミーが言っていたが・・・月光真流はプレイヤードなら多くが使える力と聞いたが?」


「俺もそう聞いてるけど?」


スキルとして実装されたことで月光真流と桜花戦舞は多くのプレイヤードへと広まったはずだ。思う所はあれば、月光真流の継承者としては今尚形を変えて受け継がれているのは嬉しい。


「そうなんだけどねぇ・・・最近の若いのは根性が足りないのよ」


「極めようとする努力が少ないのにゃ。途中半端な月波と十六夜にゃぞ、月光真流の風上にもおけないのにゃ。無論にゃーはまだ修行の身だから努力継続中にゃ!」


「そ・・・そうなのか・・・うん。そういって貰えると・・・父さんに教えて貰って頑張った甲斐が・・・あって、嬉しい」


「にゃーかわいい!! あきにゃん。やっぱり今度にゃーと居合切りについて勉強しにゃいかにゃ?」


「・・・私で・・・その、よければ・・・頑張ってみる」


「にゃー!! ありがとにゃ!! にゃーの事は好きに呼んでいいのにゃ!」


「にゃーさんって呼んでやれアキハ」


「うん・・・よろしく・・・にゃーさん」


「こちらこそにゃー」


アキハの人見知り解消の第一歩になりそうで良かった。フユカは気が付けばレイレイがなでなでしてるから時間の問題だろうし。


「・・・なに?」


「いや、ハルナが一番甘えん坊だなって思ってさ」


「良いでしょ別に・・・それより足音聴こえてるからもう一匹来るよ」


「おっと索敵してくれてたか。ありがとうハルナ」


「・・・うん」


「総員戦闘準備!! 二体目が来るぞ!!」










ーーーー










「戻ったよ」


「おかえりなさい皆さん。どうでしたか?」


ルーキストのギルドに戻って来たのは大体半日経たない程度。依頼書とは少し異なりデスペラードは七匹いたが、特に苦戦することなく、全部討伐してきた。


テイマーズとネクロロン。お前ら久しぶりにゲームしたって言ってたけど全然動けてたじゃねぇかと皆で突っ込んだ。


「デスペラード七匹を発見した。全部討伐してきたよ。これが証拠だ」


「確認しますね・・・確かにデスペラードのものです。最近強いモンスターがルーキスト近郊に現れるようになって困るんですよね・・・助かりました。こちらが報酬になります」


「ありがとう。また来るよ」


報酬を受け取り、ギルドを出る。この後は魔法使いたちが主体になってクランハウスを建設・・・建設になるのか? とりあえず作ることになる。


「じゃ、報酬に関してだが、改めて確認するぞ」


戻ってくる間に、クランで受けた依頼の報酬の使い方について話し合ったのだが。


「共有資産という事で自由に使えるようにする。間違いないな?」


「「「「「「「「「「異議なし」」」」」」」」」


クランハウスに金庫を設置して、そこに共有資産として置いておくことになった。使いたい人がマスターの俺かマイに一言言って持っていく。逆もまた然り、手持ちが多いから金庫に預けるというのもありにした。


基本的に俺やテイマーズたち以外は金に困っていないのでそもそも報酬金に興味はないらしい。寧ろこうして皆で組んで戦う方が楽しいと言ってくれた。


「とりあえず後はクランハウスを作って全員がそこに登録して今日は解散って所か?」


「そうね。アキちゃん達の晩御飯・・・は、アールに任せればいいから気にしないとして、クランハウス作った後は自由行動で良いんじゃないかしら?」


「俺もその方が助かる。作ってもらった炉を自分好みに作り替えたいのでな」


「俺はとりあえず約束した装備の制作だな。クランの裁縫師として初めての仕事だ。最高のものを仕上げてやんよ!」


「僕も少し店の内装を弄るつもりだよ。やっぱりあの頃の仲間と一緒は楽しいね」


「僕は完成したら拠点登録だけして今日は一旦寝るよ。ゲームへの情熱が蘇ったことだし仕事片づけて本格的に始めるよ」


「私もそこまでかな。時間的にいつものライブ配信もやるからさ。でも、私も一つ決めたからこっちで本腰入れるよ」


「私は皆のお手伝いだゾ☆ どうせ暇だからね☆」


とりあえず皆クランハウス完成までは一緒らしい。


「だったら晩飯食べてくか? チャーハンにする予定だから人数多くても問題ないし」


「いただくわ。折角だしね」


「俺も食うわ。アールの飯美味かったからな」


「ふっふっふっ、マー坊くん。今後僕の作った料理の虜にしてあげるから覚悟しておくんだね」


「何の覚悟だよ!? いや爺さんの飯絶対美味いからいいけどよ」


「・・・お肉」


「はいはい。焼肉チャーハンにしようか」


「なら食後のコーヒーは僕が入れよう。美味しいコーヒーを御馳走するよ」


なんか祝賀会並みに楽しい晩飯になりそうだ。


「皆」


「どした?」


「なにアール?」


「おう? なんだ?」


「どうしたんですか?」


「にゃーに?」


「どうしたよマスター」


「マスター?」


「こうして集まってくれて、本当にありがとう」


「「「「「「「「「「「「どういたしまして」」」」」」」」」」」」










ーーーー








魔法って言うのは本当に便利なものだと思う。


この世界ゲームで出来ない事はないんじゃないかってくらい凄い。


「よし完成。あとは各自付け加えてって」


作業時間僅か三時間余り。マイを始めとした魔法職系と生産職のメンバーが中心になってクランハウスを作り、残りメンバーはそれぞれ買い出しなどの必要なもの、


置きたいものを取りに行ったのだが。戻ってきた頃には見事な建物一つが出来上がるんだもの。もうあれだよ。なんて言えばいいかわからない位に凄まじいよ。


完成したクランハウスは二階建てだ。


一階部分は老眼鏡のプチ喫茶店と火力魂の鍛冶場兼販売店が多くを占め、庭に当たる部分には囲いが張られ、にゃーる希望の稽古場がある。


老眼鏡は第二の城のインテリアやら、天寧の配置やらをカスタマイズ中ですごく生き生きしている。


火力魂も似たようなものだ。鍛冶場の設備に素材を使って何かしている。本人が言っていたように自分好みの鍛冶場作りに熱中しているみたいだ。


階段を上がって二階には、まずももちゅんが希望していたクラン共有倉庫。早速ももちゅんが壁伝いに大きな箱型のアイテム収納箱と金庫を設置し始めている。


次に宿直室ともいうべきベッドルーム。個室が五つと大部屋一つに分かれており、個室は洋式でクイーンサイズのベッドが一つと小型の冷蔵庫型アイテムボックスが一つ。


大部屋には和式スタイルで畳が敷かれ、全員が入ってもまだ全然余裕があるくらい広い。


創られた押し入れの中に、レイレイがどこかから調達してきた布団やら座布団やらを次々と収納していく。


これを僅か三時間で作り上げたんだから、本当に何でもありだな。


ミナツは特に興奮しており、ずっとクランハウスの彼方此方を見て回っている。


「お疲れマイ」


「うん。これくらい平気だよ。魔法の練習だと思えば全然ね。幻想術師のチーザーが仮組して、私が魔力に質量を持たせて骨組み作って。あとは錬金術師の火力と老眼鏡さんが素材を使って完成って感じだったし」


錬金術師。これはジョブの一つだ。対価を捧げる事で何かを得る。あるいは作り替える能力を持つジョブ。一昔前にあった錬金術師が出てくるアニメを想像して貰えばわかりやすいだろう。正にそれだ。


そうして、あっという間にクランハウスは完成してしまったのだ。


こんな簡単に出来ていいのかと言うツッコミはゲーム世界なので気にしない事にする。



因みにルーク除く全員が普通に凄まじい軌道で動けます。はじめてすぐの内にそれぞれ伝説残して掲示板騒がせた経験ありです。控えめに言ってヤバいです此奴ら。

伊達や酔狂でクリエイションモードクリアを目指していなかったのです。ガチです。


感想・星評価・レビューにブックマークなど、作者月光皇帝の私の大好物です。

是非是非たくさん下さい。お願いします。


こういう所で言うことじゃないけど作者メンブレ中...7月の進捗怪しいです

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― 新着の感想 ―
[一言] 四つ腕ゴリラ相手にレイド戦してる?
[良い点] ギルドの初依頼がかつてアールさんが拠点にしていた村の近くだなんて縁がありますね。下手すれば村が壊滅していたのでは? [気になる点] 「って訳だマスター! 攻撃はお前の所のガキ四人とテイマー…
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