皆で魔法の勉強
今回の話は魔法について多めに触れていきます。
この世界で存在している魔法に関する話だが、スキルとして存在している訳じゃない。
普通はジョブに設定されていて、その特定のジョブを選択している時に限り自由に使えるとの事。なので初めてこの世界に触れるプレイヤードが魔法を使えるようになるためには魔法を使えるジョブを選ぶ必要がある。
が、これには抜け穴があった。というか、むしろこっちが本命ともいえる。
多くの魔法は各地にある魔法書と呼ばれる魔法の本に載っているらしい。どんな魔法なのか、どんな効果があるのか、消費するMPがどれくらいあるのかなど。
プレイヤードが新しく魔法を覚える方法はこの魔法書を読み解き、自分のモノにすること。簡単に言えば魔法書を読んで自分の中に魔法のイメージをしっかりと落とし込めるかどうかだ。魔法書にはイメージがしやすいように絵が描かれていたり、解かりやすく文章で説明されていることが多いので、基本となる魔法と、その上位にあたる魔法に関してはレベルさえ上げれば誰でも使えるという事だ。
しかし、これだけで終わらないのがプラネットクロニクル。
魔法は自由である。
端的に言えば、魔法は創れる。
そもそも魔法とは、魔力を出力し、形にする神秘の一つ。であるからこそ、そこに不可能はなく、魔法の創造主たる自分が完璧に魔法と言うものを0から生み出し、出力出来ればどんな魔法でも創造可能らしい。
MP消費の問題はあるが、時間と回復アイテム等の資源の確保さえ万全であれば初心者でも自分だけの魔法が創造できるとのこと。
まぁ初心者の内は魔法に対するイメージと、創造時の消費MPの問題。そして魔法に対する理解が乏しいためほぼ不可能らしい。
が、例外はどこにでも存在しており、初心者でも0から魔法を想像することが出来るとの事。それは友人知人に魔法に精通している人物がいて、MP回復手段を豊富に用意できる事。そして本人のイメージ力が高い事。この三つが揃っていればオリジナルの魔法を作ることが可能だ。
という事で、この魔法創造に関することを俺に当て嵌めてみる。
まずはイメージ力。自己診断だが、イメージ力はそこそこあると自負している。要は月光真流を使う時と同じで、それが衝撃ではなく、魔力と言うものに置き換わるだけだ。
次にMP問題。これはスキル『家族の絆・英通の一族』のおかげでマイからほぼ無尽蔵に供給されているためクリア。
三つ目。魔法に精通している人物。ここでマイの主戦闘を思い出してほしい。魔法使いだ。しかも覚醒者・魔導女帝という上澄みの中の上澄みだ。多分魔法の知識に関しては最上位の存在だ。
つまり、全部の課題をクリアしているため。こういう事が出来る。
「『エクストリームエンハンス』」
瞳が熱を帯びる。浮かび上がる紋章は月の形をイメージした。エクストリームエンハンス。極限なんて立派な名前を付けてみたが効果はシンプル。五感、特に視力と聴力の強化。対象を常にとらえ続けるための強化系魔法。
聴こえてくる風の音も、アキハ達が魔法の練習している際の呼吸も、離れた所で跳んでいる小鳥の羽ばたきも見える。
「どう? 上手く出来た?」
「出来たっぽいな。感覚が敏感になってるのは要修正案件だけど視力と聴力は集中すれば望む程度には強化出来たっぽい」
「アール今でも感覚リアルなのにこれ以上過敏になったら戦闘に支障が出そうだもんね」
「だなぁ・・・この塩梅が結構難しいみたいだ・・・MPの消費ってどれくらいだった?」
「大体発動時に100くらいだけど毎秒10減ってるから燃費悪いね。これなら効果時間一定にして発動時の消費MPを大きくした方がいいかな」
「一瞬見るだけならこれでもアリか?」
「アールならそれで対応できるとは思うけど、燃費の悪さが目立つのと、一瞬しか捉えられないのは経験則だけど危ないよ?」
「ならマイの言う様に一定時間限定の方向に舵切った方が良さそうだな」
「そうだね。あと五感じゃなくて視力・聴力それぞれ別にして強化するのを考えてもいいかも」
「一度に出来た方が良くないか?」
「消耗を押さえられるのが一つ。状況に応して必要なものだけを取れるのが一つ。あとはアールが想定する仮想敵が本当に出てきた場合は間違いなくレイド必須の敵だから考えなくていいよ」
「そうか・・・そうか・・・」
「露骨にガッカリしないでよ・・・でもアールがそれにこだわりたいなら練習あるのみだよ。まだ結構粗削りだからさ? 練習していけば求める魔法になるよ」
「・・・おし! 気を取り直してもう一回やってみるか!」
「その意気だよ!」
と、このように最初から自分が求める魔法を創造することが出来る訳だ。マイ様様である。と言うかマイがいないと不可能だ。俺はまた最低限のMPしかないらしいからな。
因みに現在のジョブは魔法使いに変更してきた。マイ曰く、魔法を作るなら魔法に関わるジョブにした方がいいとの事。
ギルドで変更が出来るとの事なので、アキハ達のジョブも含めて魔法使いのジョブを貰ってきた。
恩恵としてはジョブのおまけとして基本魔法の使い方が頭の中にインプットされた感覚があったので、使おうと思えば基本の魔法は使える程度だな。
攻撃魔法は火を起こす『ファイア』、水を生み出す『アクア』、風で敵を斬る『ウィンド』、石をぶつける『ロック』の四種類。
そこに回復魔法『ヒール』。攻撃に対する防御として『バリア』の魔法が今の俺の中にはある。
少し前に練習したが、問題なく使えた。威力は全然で、殴った方が強いけど。ただ補助系回復系に関しては装備の恩恵もあり、以前よりも効果が高くなっている気がする。
そんな訳なので基本の攻撃魔法は一旦隅に置いておき、自己強化、自己回復の方向性でいくことにしたのだ。
ここまでがプレイヤードの常識、あるいは俺の感想だ。
んで、ここからがNPCの魔法に関する話。要するにアキハ達の話だ。
NPCにもステータスがあるのは前にも教えて貰ったが、そのステータスによって魔法の才能が決まっている。要するにステータスの魔力と耐魔法力がある程度ないと魔法の才能がないという事だ。んで、全体的に伸びているハルナとフユカは魔法の才能が有り、魔力耐魔法力ともに低いミナツと魔力皆無のアキハは魔法の才能がほぼ絶望的。
が、ここにジョブと言う要素を加えると話が少し変わるらしい。何でも各種ジョブを持つと、ステータスが一部影響を受けて上下するらしい。
今まで四人はジョブ無しでいたので魔法に関しては個人差があったが、ジョブで魔法使いになっていれば魔力と耐魔法力に補正が掛かって多少改善されるとの事。代わりに物理方面が弱くなるらしいが、マイ曰く『この子たちなら誤差だよ』との事。
そういう訳で簡単な魔法ならば練習をすれば習得できるとの事。そして習得した魔法に関してはジョブを変更しようが何をしようが忘れることはないらしい。ここはプレイヤードも共通だ。
なので、とりあえず基本の魔法をしっかり習得したらあとは自分のスタイルに合ったジョブを選び戦うのがいいらしい。一度魔法を覚えてしまえば、あとは自分が欲する魔法を探したり、創造したりして増やせるとのこと。
そういう訳なので一家揃って魔法の練習中だ。
もとからマイの英才教育で魔法が使えたハルナとフユカは精度を上げるために反復練習。アキハとミナツは魔法を知って使う事から勉強中。俺は装備のおかげで『ヒール』と『ライフ』は使えたので魔法を感覚として理解していたので、教えて貰ったエンハンス系の魔法は問題なくすぐに使えるようになったので、試しに魔法創造に手を出したわけだ。
まぁこれが意外と難しくて、イメージが出来ても魔力が足りないとか、MPを意識して使うとか、課題は結構ある。けどこれがなかなかに楽しいのだ。
0から何かを作るって言うのはこんなにも楽しいものなんだなと実感しつつ、何度も練習中だ。
ーーーー
「うん。アキちゃんもバフ系の魔法は使えるようになったね!」
「あぁ、マミーのおかげだ。ありがとう」
魔法劣等生だったアキハが練習開始から十日ほど経ってようやく三つの魔法を使えるようになった。
まずは外傷治癒の『ライフ』。これがあると無いとでは戦闘継続能力に大きく差が出る。なのでマイとも話し最優先で覚えて貰った。アキハは前線で戦う剣士だから生傷は多くなるだろう。女の子だし傷はない方がいい。
次に水を出す『アクア』。これは攻撃魔法だが、水を出せると言うのはどこに居ても重宝する。飲料水としても使えるから最悪を想定すれば水分さえ補給できれば生存できる可能性は飛躍的に上昇する。残念なことに攻撃魔法としてみるとアキハの魔力的にほとんどダメージは与えられないらしいが、量を出して視界を一時的に塞ぐなどの応用は出来る。
最後の魔法は『ディフェンスエンハンス』。文字通り一定時間防御力を上げる魔法。『ライフ』の魔法同様に、前線に出るので防御力はあって損はないので覚えて貰った。
三つを見ればわかると思うが、アキハは生存能力には特化した魔法を覚えて貰った。もともと才能がないのだ。広く様々な魔法を覚えるよりも何かに特化させた方がいいだろう。
「ナツくんも頑張ったね! バフ系は一通りバッチリだね!」
「一生分の勉強した気がする・・・」
ミナツは攻撃補助。長所を伸ばすため自己強化系の魔法を一通り教わった。多分魔法に対する熱量は一番高かったから、教えるマイも気合が入ったのもあるだろう。
「ハルちゃんフユちゃんはもう立派な中級魔法使いだね。マミーもついつい色々教えちゃったよ」
「えへへ・・・褒められるのがうれしくて頑張れました・・・えへへへ」
「・・・まぁ、アリガト」
元から英才教育を受けていたハルナとフユカはマイ曰く中の上くらいの魔法使いにはなったとの事。使える魔法も俺たちと比べ大きく異なり、俗にいうエンチャンターみたいなことも出来るらしい。
「ハルちゃんはお父さんと同じ魔法覚えるために頑張ったもんね?」
「ちょ・・・違うし!! ただ使えたら便利そうだから覚えただけ・・・ん」
「よしよし、可愛いねぇハルちゃん。んでお父さん? 娘と同じ魔法が使えるようになって感想は?」
「お揃いだなハルナ」
「・・・うん」
俺はと言うと、練習が実を結び、『エクストリームエンハンス』改め『オルカエンハンス』を完成させた。マイとの相談を経て、聴力のみを強化し、音で相手を捕捉し続ける方向性にシフトした。
その結果完成したのがこの『オルカエンハンス』だ。イメージはその名の如く大海を泳ぎ、音波によって獲物を見つけ狩りをするシャチ。五感全てを強化するよりも比較的簡単であり、MP消耗も50、効果時間180秒まで伸ばすことも出来た。
他にも超高速、あるいは音速で動く相手に対しても対応が可能になる。
デメリットは二つ。一つは聴覚を強化したので雑音もかなり拾ってしまうので、集中力がかなり必要な事だ。まぁそこはデメリットにはならない。使う時は敵を捉えているはずだから、そいつに集中すれば雑音は意識的にカットできる。
んで、これが結果的に月光真流と相性が良かった。音が出る=衝撃があるなので、音と気配の二つで判別できるので索敵能力が飛躍的に上昇する。
今までは伝わる衝撃からある程度方向がわかる程度だったのが、音でその大きさも判断できるようになるからだ。おかげで効果時間中なら地平線の先だろうと集中すればモンスターを捉えられる。
あともう一つのデメリットは『オルカエンハンス』の効果時間中は他の身体強化系の魔法を受けられないという事だろう。とことん聴覚を研ぎ澄ますため、そして消耗を出来るだけ抑えるために試行錯誤した結果なのでこれは仕方がない。
なので気軽にホイホイと使える魔法ではなくなった訳である。まぁ回復系は問題なく受けられるので特に問題でもないんだけど。
結果的に完全な支援魔法になった訳だが、俺としては満足だ。それに初めての魔法創造で納得がいったんならそれで良くないか?
「よぉし!! じゃあ皆が魔法に関する最低ラインを乗り越えたからついに冒険の為の魔法を教えてあげよう!」
「やったぁ!! このために頑張ったんだ!!」
「・・・私はもう覚えなくてもいいんだけど」
「なんだよハルナ乗り悪いな。折角皆に教えてくれるってマミーが言ってるんだし教えて貰おうぜ!?」
「近い五月蠅い・・・楽しみだったのはアンタだけでしょ。私は別に冒険に興味無いし」
「えぇー!! ここまで来たんだから覚えようぜー!?」
「あーもーうるさい。分かった。分かったからデカい声出さないで」
冒険に興味しかないミナツと興味がないハルナの反応があまりにも正反対というか、想像通りだったので思わず笑ってしまう。まぁ魔法教わる気力も俺が教わるならって感じのモチベーションだったし仕方ないか。
「はいじゃあナツ君が主役だからナツ君がやろうか」
「押忍! どんな魔法なの?」
「転移魔法だよ。前にルーキストからファクリアまで飛んだ魔法覚えてる?」
「うん。覚えてる。なんかすごく不思議な感じだった」
「そうそうそれそれ。あの時の魔法を私たち限定、飛べる場所固定の魔法として新しく創造するの」
「まじ!?」
「マジよ。私がちゃちゃっと作ってもいいんだけど、ナツ君たちが作った方が今後実用的だと思うからね」
「マジかー!! 父さんがやってたの見てて実はちょっと憧れてた!!」
「ミナツは解かりやすかったからな。ちらちら父さんの事見てたから」
「たまに羨ましそうに見てましたもんね」
「だってかっこよくない!? 魔法を作るんだぜ!? チョーかっこいいじゃん!!」
「「「ガキミナツ」」」
「なんでだよっ!!?」
「はいはい。そういう訳だからナツ君。ナツ君が作って使えるようにならないと冒険じゃ使えないから責任重大だよ? 頑張ろうね?」
「うん!! 絶対に完成させて冒険する!!」
眼をシイタケのように輝かせ、何か周辺にキラキラした星まで見えるほどミナツのテンションは高い。
「マミー。その間私たちは何をすればいい?」
「あー・・・実はナツ君が魔法を完成させるまでアキちゃん達が出来る事無いんだよね」
「・・・つまり暇なんだ。私たち」
「ごめんね? でもナツ君が使えるようになればハルちゃんとフユちゃんも同じ魔法を使えるはずだからそれまでは一旦休み
かな。アキちゃんは言いにくいんだけど」
「大丈夫だマミー。私に魔法の才能が無いのはこの数日でわかってる。三つ使えるだけで十分だ」
カラっとしているアキハ。案外才能がないと言われてショックを受けると思っていたんだがそうでもなかったらしい。
「それに私には父さん仕込みの剣の才能がある。私はこっちの方がとても嬉しい」
「そっか。ならここから先はアキちゃんがしたい事を伸ばす時間だよ。もし魔法に興味があったらまたいつでもいってね。何とかしてあげる」
「ありがとうマミー。父さん。また明日からでいいから剣を教えてほしい」
「そういう事なら任せな。俺の次に強い剣の使い手になるくらい教えてやるよ」
「二番目か。でもいつか、私は父さんと同じくらい強くなれるか?」
「それはアキハの頑張り次第だよ。頑張ろうな? 未来の剣聖」
「剣聖?」
「あ!! それあの本の主人公じゃん!! ズルい!! 父さん俺も剣聖になる!!」
「ナツ君はその前に魔法だよ。冒険するんでしょ?」
「冒険もする! 剣聖にもなる!! 両方やる!!」
「「「ミナツ五月蠅い」」」
大声で叫ぶもんだからアキハ達は耳を塞いでいた。まぁデカい夢を持つのは良い事だ。
「ならまずは魔法を完成させなミナツ。一度に二つ同時にするのはお前にはまだ早いから、一つずつしっかりな」
「わかった!!」
「「「単純」」」
女子三人からは呆れやら五月蠅いやらの視線を向けられているが、当の本人は色々やる気に満ち溢れている。案外あっさり魔法を完成させたりしてな。
「お父さん。私たちは家に帰りませんか? 読んでる本があるんです」
「・・・私も帰る。最近ずっと魔法の練習してたからゆっくりしたい」
「父さんが帰るなら私も帰りたい。マミー、いいだろうか?」
「いいよ。じゃあお昼ご飯もお父さんにお願いしてもいい? 私達は私たちで食べるから」
「任された。なら帰るか三人とも。お昼は何食べたい?」
「「「なんでもいい」」」
「・・・マイ」
「何でもいいって言われるの結構困るでしょ?」
困りますね。これは。さて、とりあえず帰ってから決めようか。
ーーーー
アール達は帰ったから、私はナツ君に集中して魔法を教えることにしましょうか。
「まずは転移魔法って何かを教えるね。これがわからないとスタートラインにも立てないからしっかり覚える事」
「うん!」
ナツ君は意欲的だから教えがいがあって面白いんだよね。好きな事、決めたことにまっすぐなのは何処となくアールに似てきたかも。
「転移魔法って言うのは別の場所に物・人を飛ばす魔法なんだけど、これがなかなか難しいの。ものだけならそう難しくはないんだけど、人を飛ばすとなると一時的に肉体を魔力に変換しないといけないんだよね」
「魔力に変える?」
「そう。正確にいうと肉体だけを魔力に変換して魂だけの状態にする。魂だけなら魔法でどこにでも飛ばせるから、その魂が飛ぶ場所を指定して飛ばす。飛ばした先で変換した魔力を肉体に再構築してそこに魂を入れる。結構難しい事言ってるけどわかる?」
「正直びみょう・・・」
「だよねー」
私も転移魔法を教えるためにいろんな資料を広げて調べて、原理を理解したからね。子供のナツ君に同じことを理解しろって言うのは難しいか。けど、覚えて貰わないと始まらないし。
「とりあえずお父さん形式で身体で覚えようか」
「え? どうやって?」
「私が転移魔法でナツ君を移動させ続けるから、その時の感覚を覚えて『ポータル』」
とりあえず三点。感覚は五メートルくらいの幅で転移魔法の着地点を描く。一つはナツ君の足元、そこを頂点にして三角形のラインで魔法陣を描く。
「行くよ? 覚悟は良い?」
「えっ!? ちょっと待って怖い事!?」
「怖くないよ。ただちょっと浮遊感があるかもね。はい『ジャンプ』」
「ひゃ・・・・・いぃい!!?」
魂以外のモノを魔力分解して、隣の魔法陣に全て飛ばす。飛ばした後に魔力を再構築してナツ君の肉体を元に戻す。見た目は一瞬。けどやることは一瞬に詰め込むには中々に多い。集中力はいるし、失敗すると装備全損で裸で出てくることになるからね。
「はいこれが転移魔法の感覚だよ。連続していくね」
「ちょっとま・・・・・てぇぇええ!!?」
もう一度同じことをしてまた隣の魔法陣に飛ばす。それを連続して何度も飛ばす。
「まずは転移するって言う感覚を体で覚えて。ちゃんと覚えるまではナツ君を何度も飛ばすから『ジャンプ』」
「ま・・・・みー・・・ちょ・・・ま・・・・!!!!?」
「ついでに魂が魔力により深く触れるから耐魔法力の強化にもなるの。つまりMPも増やせるから何度もやるよ。ナツ君のスタイルは受けアタッカーだからね。物理魔法両方に耐性がある方が有利だから頑張って!」
これって実は私の魔法のコントロールの練習にもなってるから両方お得なんだよね。もちろん失敗なんてしない。教えるんだから私だってちゃんと練習したんだから。夜皆が寝てから毎日ずっと練習して、失敗もしたから大丈夫。失敗してもとりあえず全裸になるだけだから死ぬことはなかったし。そもそもこの状況なら何かあっても私が蘇生できる。
私だってただ適当に飛ばしてるだけじゃないんだから。
「おえぇぇ・・・」
「あ、ごめん。やり過ぎた?」
いけない。魔力酔いしちゃったかな。
魔力酔い。私たちプレイヤーはそういうの無いけど、NPCには魔力酔いって言う一種の状態異常がある。魔力に触れ過ぎて酔う。シンプルだけど、結構つらいらしい。けど何度も経験していくうちに魔力に対する耐性、耐魔法力が上がるらしく、NPCの魔法使いは耐魔法攻撃に対する力を得るために純粋な魔力の塊を全身に浴びて訓練するらしい。
こうして調べていくとプレイヤードの成長率がどれだけ優遇されてるかわかるよね。レベルが上がったら勝手に上がるし、アイテムを使えば自由に変更できる。追加で数値も乗せられるから。
覚醒者になったからかな? 前にハル君たちのステータスを見た時とは違う気持ちを持つようにもなった。プレイヤード以外の人たちは文字通り必死に努力して強くなってたんだってね。
「『ライフストリーム』」
ライフストリームは私が創造した魔法の一つ。外的負傷と内的負傷。要するに傷と状態異常の両方を回復する魔法。追加効果で一定時間状態異常にかからなくする魔法。
「うへ? 気持ち悪いの無くなった」
「よかった。じゃあ続きやるね?」
「m・・・マミー・・・すこ・・・し・・・きゅうけ・・・い・・・!!?」
「大丈夫大丈夫。最初は限界ギリギリまで体に教え込ませた方が早いから。ほーら行くよー」
叫ぶ元気があるうちは大丈夫だね。ナツ君。君が冒険したいと願うなら、私は多少厳しくても君が冒険できるようになるための術を教え込むよ。文字通り全部。私が培ってきた全部を君にあげる。
「剣聖になるなら弱音吐かずに頑張ろうね?」
「わ・・・かっ・・・た・・・けど・・・も・・・ゆ・・・り・・・!!!」
「余裕そうだしライフストリームの効果時間中はちょっとペース上げるよ。『クイックジャンプ』」
「t・・・m・・・・h・・・・!!!!?!??!」
私達と違って一度だけの命。だからこそ私は鬼になるよ。例え嫌われる事になってもしっかり全部教えてあげる。私はナツくんたちの鞭、飴はアールの仕事。
ーーーー
「なんかミナツが叫んでる気がする」
「ハルナもそう思うのか? 私もそんな気がするんだ」
「えへへ・・・やる気ありましたからマミーも張り切ってるんでしょうね」
「かもな。所で皆。オムライス美味しい?」
「あぁ、とてもおいしい。それに上に書いてくれた猫もかわいいとおもう」
「えへへ・・・マミーのご飯とはまた違って美味しいです」
「・・・私は父さんのご飯が好き」
「そっか。ありがとう。作り甲斐があって嬉しいよ」
ーーーー
「ただいまー」
「お帰り。ミナツは・・・寝てるのか」
暗くなり始めた頃、マイがミナツを背負って帰ってきた。
「厳しく教えたからね。おんぶしてあげたらすぐ寝ちゃった。アキちゃん達は?」
「風呂。マイはそのままミナツと寝ていいぞ。晩御飯も俺が作るよ」
「そ? ならお願いするね。お先にー」
ミナツが寝たって事は疲れもあるんだろうけど、マイに対して心を許している証拠でもある。普段からマイに可愛がられてたいたから、完全に心を許してるんだな。
「・・・ミナツのやつ、父さん以外でも寝れるようになったんだね」
「隣で読書中だったハルナが寝室へ入っていったマイとミナツを見ながらそういった。
「ハルナはどうなんだ? マミーと一緒でも眠れるか?」
「無理」
即答かい。まぁいいさ。ゆっくり時間をかけて治していけばいい。
「マミーもあったかいけど父さんの方がいい」
「そっか」
「うん」
コテンと肩に頭を乗せてハルナが静かに本を読む。
「・・・父さんはさ。私に何か覚えてほしい事ある?」
「急だな」
「ミナツじゃないけど・・・覚えて嬉しい事があるならちょっと頑張ってみようかなって」
覚えてほしい事か・・・そうだな。
「とりあえず月光真流の奥義一通り。そのあとは極大奥義も覚えてほしいかな」
「ん。それなら頑張れそう。明日からよろしく」
「いいよ。やる気あるのは大歓迎だ」
アキハとの稽古も明日から再開するからちょうどいい。全体的な才能はアキハだが、部分的に見ればハルナの才能も高い。特にコントロールに関してはハルナに軍配が上がる。となれば『響詩ヴェルゴラ』や『心波カプリコイル』なんかの衝撃のコントロールが重要になってくる奥義とは相性がいいはずだ。
ハルナに関してはそっち方向の稽古を始めてもいいかもしれない。
「お父さーん!! アキハ姉さんが目をくるくるさせちゃいましたー! たすけてくださーい!」
のぼせたか。アキハ長風呂好きだからな。仕方ない。
「ハルナ。手伝ってくれるか?」
「全く・・・姉さんならもうちょっとシッカリしてほしい」
「そういうなって。まぁ水分補給しっかりしろよって言ったの忘れたのは、お話しないとだけど」
「お風呂に長く入るのって何が楽しいんだろうね」
「心地いいんだろうさ。フユカお待たせ」
「あう~」
「姉さん重いです~・・・」
と、いう訳でミナツ君魔法を本格的に習い始めました。
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