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闘技場

闘技場は某狩りゲーイメージでお願いします。

「戦う場所を変えよう!!」


ある日、高原に出かける準備をしてる時、マイがそう言った。


「どうした急に?」


「アキちゃん達が相手だとこの辺のモンスター相手じゃもう役者不足だよ」


「・・・それを言うなら役不足じゃないの?」


「・・・」


黙っちゃった。流石に恥ずかしいよな。分かるよ。うん。


「と・・・とにかく!! どうせなら少し強い相手にも挑もう!!」


「私は父さんが良いならそれでも構わない」


「私もです」


「俺も!」


「・・・ここで文句言える雰囲気じゃないじゃん」


「だってさ。お父さんいーい?」


「良いんじゃないか。確かに慣れすぎるのも良くないし」


一緒に戦うんだから強いモンスターがいたとしても問題ないだろう。何かあれば俺とマイで一気に始末すればいいし。


「そういってくれると思って!! じゃーん!!」


そういって差し出してきた紙。何々?『ファクリアモンスター闘技場』?


「ファクリアにモンスターと戦える闘技場があってね? 段位が上がるごとに強くなるから現状のアキちゃん達の強さを図る手段としてはちょうどいいかなって」


「ファクリアか・・・」


俺は別にいいけど、アキハ達が生まれたであろう町でもあるし、トラウマとかもありそうでなぁ・・・それが心配。


「父さん。私は大丈夫だ」


「・・・ん」


「俺も多分平気だ! それにあそこは父さんとマミーと家族になった町だし!!」


「えへへ・・・思い出の場所って奴ですね・・・えへへ」


なんか子供たちは大丈夫っぽい。なら下手に気を掛けすぎるよりも、前に進む手伝いをした方がいいかな。


「じゃ、行こうかファクリア」


「全員私のパーティーに入ってるから多分ファストトラベルも使えるしすぐ着くよ。それじゃぁまずはルーキストまでレッツゴー!!」










ーーーー








準備を終えて、ルーキストに行って、ファストトラベル。そしてついたのは思い出深いファクリアの噴水前。いや、噴水に思い出は無いんだけども。


「闘技場行くならファクリアでここが一番近かったからね」


「なるほど。全員いるか? アキハ」


「いるよ父さん」


「ミナツ」


「押忍!」


「ハルナ」


「・・・ん」


「フユカ」


「はい」


全員いるな。よし。


「その闘技場まで結構歩くのか?」


「んーとね。歩いて15分くらいかな。ここからも見えるよ。あのでっかいの」


指をさした場所にはコロッセオのように大きな建物が見えた。確か前に来たときはあんなデカイ建物無かったよな。本当に最近できたんだ。


「富裕層が住む五番街の近くの大きな土地に出来た新しい施設だからね。お金の動きも結構大きいの。それにモンスターの質も悪くないから実力試しにはうってつけ!」


「・・・マミーもしかしてマミーの収入源ってあそこ?」


「おぉ!? ハルちゃん鋭い! そ、私あそこで荒稼ぎしてるの」


マジかよ。と言うか今の文脈から察したハルナもすげぇわ。そう思っているとマイは懐から一枚のカードを取り出す。白銀に輝くそれには『最上級 超越者マイ』と書かれていた。


「これフリーパスみたいなもんでね。これがあればどの段位でも挑戦し放題! だからそこでモンスター倒して素材売って稼いでるの」


フリーパスってお前・・・そんなに通い詰めたのね。最上位って事は一番強いランク帯なんだろう。やっぱりマイは強いんだな。


「アキちゃん達も新しく会員カード作ってもらう事にはなるけど、一度作っちゃえばあとは向こうで勝手に色々やってくれるから安心して」


「別にそこは心配してないんだが・・・わかった。マミーが言うなら心配しない」


「こんなこと聞くのは野暮なんだけど闘技場の運営側は稼げてるのかそれ?」


「観戦者が多いからね。最安値なら1000Gで見れるけど快適性を重視していけば最高10万Gまで客席があるから諸々の経費を考えても黒字だよ」


「まぁ儲かってなけりゃとっくに潰れてるか」


「その代わり討伐報酬とかは無いからお金欲しかったら素材をその場で売るしかないのよね。まぁ結構レアなモンスターが多いから、プレイヤードからは素材集めの場所だったり、初心者はちょっとした小遣い稼ぎの場として使ってるよ」


ふーん。お互い何かしらのメリットデメリットはあるんだな。今回俺たちの目的は腕試しだけだからそれを考えたら闘技場って言うのは悪い選択ではないのかもしれないな。


「なぁマミー。闘技場ってどんな風にモンスターと戦うの?」


「階位に応じてだけど出てくるモンスターの数が決まっててね。今回私たちが挑む予定の最下級なら合計モンスターは六体。ランダムで選ばれるけどそいつらを全部倒せばクリア。これを最下級なら合計10回クリアすれば次の階位に進めるの。また次の階位で10回、また10回ってクリアしていけば最終的に最上級になるね」


「へー・・・最上級のモンスターってどんなの出てくるの?」


「ベオウルフ、カラドボルグ、レッドクリムゾン、ジュラシックオーガ、ラーズグリーザー、テンペストフェニックス、メガアサルトワイバーンとか出てくるね」


「「「「「?????」」」」」


ダメだ一匹もわからん。精々オーガくらいはなんとなく想像できるけど、逆にそれ以外の想像が全くつかない。なんだよラーズグリーザーって。


「四つ足の騎士、蠍、竜、鬼、熊のキメラ、風の鳥、鎧みたいな鱗を持つ竜。これならわかりやすい?」


熊のキメラなのか。ラーズグリーザー。それだけ聞くと弱く見えるのに、生物名を言われると急に強く感じるな。ネーミングセンスがTHEファンタジー。


そんな闘技場の話を聞きながら歩くこと15分くらい。マイの言う通り歩いてくれば闘技場の入り口に辿り着いた。


最近できたとは言ってたけど結構客入りがいいな。プレイヤードの数も結構いるし初心者から上級者までかなりの数がいる。人気施設なんだな。


「プレイヤードに捕獲依頼とかもギルドを通して闘技場から依頼出してるから上位勢も姿を見せるんだよ。捕獲したモンスターは回復魔法で回復させて対戦相手が来るまで眠らせる魔法で眠らせて、対戦相手が出来たら起こすって感じ」


「へー。プレイヤードにも依頼出してるのか」


「相互援助ってね。最上位のモンスターは少ないけど上位までのクラスならそこそこの数が捕まえられてここに集められてるから『初心者装備を脱却したい』『素材は欲しいけど探しに行くのが面倒』とかいう人は闘技場に参加すればいいし。『至急お金が欲しい』とか『初心者のお手伝い』みたいな優しい人は捕獲依頼を受けてモンスターを納品する。これが上手い事行ってるみたいなのよね。間接的にプレイヤード同士で助け合う場所なのよここ。しかも最序盤から使えるからパワーレベリングやキャリーにも向いてるし」


「「「「????」」」」


「プレイヤードの用語は気にしないでいいよ。つまりお互い直接じゃないけど協力しましょうって言うのがここのコンセプトなの」


つまりだ。人が多いのは最序盤で使えるレベリングスポットとして優秀だからであり、自分の強さを示す場所にもなり、『俺人の手伝いしたんだぜ』と言う欲求も満たせる場所ということか。人の心情をよく理解して作られた場所だってのはわかった。








ーーーー








あれよこれよと参加準備を整えて、新規会員カードを発行したり色々して、俺たちは待機室に案内されていた。


その時の描写? いや別に目立った出来事も無く、ただ事務的な事をやってただけだしな。カットカット・・・誰に話してんだ俺?


あれかな? マイが野暮用で席を外してるから年甲斐も無く緊張して変な事でも言ってるんだろう。まだまだ俺も子供って事か?


「凄いな・・・誰も皆強そうだ・・・」


闘技場に用意されたフィールドは全部で五つ。その為受付をしてもはい直ぐに始めますとはいかないのだ。要するに順番待ちだ。待機室、というか今アキハが言ったように、待機広場には大勢のプレイヤードがいて、皆自分たちの番を今か今かと待っている。


「お!! アールさんだ!! やっほー!!」


「おぉ、オルガン! 久しぶり」


そこに現れたのは何時かともに戦ったオルガンはじめとした電卓騎士団の面々だった。見た目は前と変わっていないので装備を一新と言うのはしてないらしい。まぁそうコロコロと装備を新調するレベル帯ではないという事だろう。


「「「「・・・」」」」


アキハ達はそろって俺を壁にするように後ろに回り込んでいた。やっぱりまだ人と話したりするのはダメかぁ。


「おやおや~? そっちのかわいい子たちは誰かな?」


「オルガン。それ完全に不審者だから。その表情やめろ」


「えぇーお兄ひどくない!? お姉どう思う? 可愛い妹に不審者ーなんてひどくない?」


「今のはオルちゃんが悪いよ」


「ガーン!! オルちゃーんショーっく!!」


「相変わらず仲が良さそうで」


アルトりす、マーガリン、オルガンのコメディを後ろで見ながらトリスたん、胡坐ウェイ、パチスロットが楽しそうにしていた。


「んで、実際どなた?」


「詳しく話すと長いんだが、要約すると俺の家族。誰か挨拶できる?」


そう言われて顔を出したのは珍しい事にハルナだった。ものすごくめんどくさそうな顔をしつつも仕方ないから顔を出してやったぞ感が凄い。と言うか表情に出てる。しかし、その右手は俺の服をぎゅっと掴み離さないところにかわいらしさを感じる。


「・・・別にしなくてもいいじゃん」


「俺の知り合いだから挨拶してくれたら嬉しいなって」


「・・・ハルナ」


「「「え、なにこのダウナー系美少女可愛い」」」


女性陣からの受けが良いようで何よりだ。こら、ハルナ。嫌そうな顔しないの。


「え、まって・・・NPC?」


トリスたんがハルナ達の仕様・・・つまりNPCであることに気が付いたらしい。ぎょっとして全員がハルナ達の事を確認すると、同じようにNPCだとわかったらしく驚いていた。


「えっと・・・アールさん本気でここにNP・・・じゃなくてこっちの人と出るの?」


「しかもその子達は子供では?」


心配しするようにオルガンが首を傾げつつ聞いてくる。


「そうしようって決めてな。危なくなったら俺が助けに入るから心配しないでいいさ」


「いやうーん・・・それなら安心? ではあるんだけど・・・私たちと違って死んだらそこまでだからこういう所に子供を連れてくるのはあんまり・・・そのぉ・・・」


「大丈夫よ。私もいるもの」


「アイエー!!? 超越者!? 超越者ナンデー!!?」


用事が終わったのか、マイが戻ってきた。それに驚くオルガンはもうそういう芸人にしか見えなくもないが。


「お帰りマイ」


「ただいまアール。久しぶりね電卓騎士団。こうして顔を見るのは前の大会以来かしら?」


そういえばマイは電卓騎士団と大会で戦っていたんだっけか。負けたとも言っていたけど。実は因縁浅からぬ思い入れが有ったり?


「お久しぶりですマイさん。最近あんまりこっちに顔出さないからちょっとびっくりしてたんですよ」


「言ったでしょ。スローライフ満喫中だったの。今日はこの子たちの実力チェックで闘技場を使おうと思ってね」


そっか。そういえば俺は利用してない・・・というかゲーム内では利用できないが掲示板もあるんだよな。だから話だけは何処かでしていたのかもしれない。


「使おうって管理人m・・・何でもないです」


「よろしい。んで、あんた達の今日の獲物は?」


「ラーズグリーザーの変異種ラーズインフェライザーが入ったって聞いて居ても立ってもいられずにこうして来たんですよ」


でたなラーズグリーザー。しかも変異種なんて個体まで存在してるのかよ。一体どんな見た目なんだラーズグリーザー。ちょっと気になって来たじゃねぇか。


「なるほどね。アンタ達なら下手こかない限りは問題なく討伐出来るでしょうし、心配はしないから。頑張りなさい」


「アールさんアールさん。もしかしてマイさんと一緒にスローライフしてるのアールさんだったりします?」


マイを通り抜けてオルガンが近寄って来たのでサムズアップで答えておいた。


「・・・ちょーっと興味本位なんですけど、フリーのマイさんってどんな感じの人なんですか?」


「あらオルガン小娘。聴こえてるわよ?」


「ヒィ!? 退散退散!!」


オルガン。マイにトラウマでも植え付けられたのか?


「戦った時に回復役だから徹底的に狙って潰しに行っただけだよ?」


「あの時の表情は親の仇でもm・・・ナンデモナイデス。ワタシイイコデス」


「よろしい。利口な子は好きよ」


「・・・マミーって外だと怖がられてるんだね」


「「「「「「マミーッ!!!?」」」」」」


「何よ? 文句あんの?」


ハルナのマミー発言にたいそう驚いたのか、全員揃って一歩引くほどに驚いていた。まぁ、超越者なんて二つ名があるプレイヤーがNPCにマミーなんて呼ばれたら驚くわな。


「アール?」


「ナンデモナイヨ」


怖いわっ!! 読心術やめて!!


「え、まって、じゃぁそのこたちとあーるさんまいさんはかぞくってことですか?」


「トリスバグってる。おーい。戻ってこーい」


ガシガシと背中を叩く胡坐ウェイによって戻ってきたトリスたんから同じことを聞かれた。少々長くなるので端的に、非常に端的にこれまでの事を話した。


ハルナ達の境遇は離さずに色々あって家族になったこと。ハルナ達にいろんな事を教えていたことなどだ。


「意外・・・マイさん料理スキル取ってたんだ」


「基本習得可能なスキルは全部取ってるわ。ソロだと何かあった時、全部自分で出来ないといけないからね。まぁ料理スキルはこの半年で間違いなく上がったわ」


「ちょっと気になるんですけど何故マミー?」


「色々あってマミー呼び定着したのよ。今は気に入ってるの」


「やっぱり未来の有望戦士育成してたんじゃないですかヤダ-」


「残念基本は全部アールだから。私は魔法を少し教えただけよ」


「「「「「「その少しが絶対に少しじゃないと思う」」」」」」


『四番フィールドで試合を開始します。マイ様とそのパーティーの皆様は中央の転送魔法陣までお越しください』


おっと呼ばれたな。思ったよりも早く順番が来た。


「呼ばれたからこの辺で失礼するよ。皆行くぞ」


「そういう事だからまたね電卓騎士団。お節介だけど観戦した方がいいわよ。この子たちの戦い」


「「「「「「観戦しますわ」」」」」」


電卓騎士団との会話を切り上げて待合フィールドの中心へと向かう。魔法陣の前には係員の人がいてマイが手続きを進めてくれる。


「確認が取れました。マイ様とそのパーティー様の合計六名ですね。四番フィールドでの戦闘になります。準備はよろしいですか?」


「私はOK。アール。それにアキちゃん達。準備はいい?」


「いつでも」


「「「「大丈夫」」」」


「それでは転送を開始します。頑張ってくださいね」


魔法陣が起動し、俺たちの周囲は光に包まれた。まばゆい光に包まれて、数秒。やがて光が消えていくとそこに広がる光景は高い壁で覆われたバトルフィールド。


上の方には飛行型のモンスターが逃げないようにするためか、強固な檻で覆われており。周囲を囲む壁にも何やら魔法陣が描かれていた。


おそらくあれがモンスターの被害が観客に行かないための仕組みなのだろう。


「受付に相談してきて今回は特別な相手を用意してもらったから覚悟してね。大丈夫。アキちゃん達がいつもしてる事をすれば勝てる相手よ」


用事ってそういう事だったのか。確かに初級の相手じゃアキハ達の完勝だろうしその方がありがたい。しかし最上級って言うのはそういう都合もつけられるんだな。今度俺も目指してみようか?


「・・・緊張してきた」


「大丈夫だハルナ。マミーも勝てるって言っているし」


「お・・・俺は緊張何てしてないからな!!」


「ミナツはこれだからミナツなんですよ」


「フーユーカー!?」


「キャー」


「はいはい。そこまでにしとけ。お相手の登場だ」


俺たちと相打つように出現した魔法陣からモンスターが転送されてきた。収まっていく光の中から現れたのは全長6mはありそうな巨大な熊。白と青のコントラストが目立つその熊は閉じた眼をゆっくりと開く。


『ゴガァァアアアア!!!!』


びりびりと感じ取れる殺意と咆哮に肌が震える。熊型のモンスターはその全身の毛皮をまるで鎧のように変えて、爪を伸ばし、臨戦態勢へと移行していた。


「『ブレイブティアエンハンス』・・・さて、まずはこれで様子見。アキちゃん達。Goだよ」


全ステータス強化の魔法をかけて、マイは最前線を譲るように避けた。つまりマイの判断ではあの熊はアキハ達でも倒せると判断したって事だ。


「父さん」


心配そうな表情のアキハ。しかしここで甘やかすつもりは無い。やると決めたんだ。根性見せてこい。


「行ってこいアキハ。何かあったら絶対に助けてやるから」


「・・・わかった。行くぞ! ハルナ! ミナツ! フユカ!!」


「や・・・やってみる!!」


「・・・やるしかなさそうだし」


「頑張ります!」


四人はいつものように前衛にアキハミナツ。後衛にハルナフユカと並び、戦闘態勢を取った。相手は未知数の相手。さて、どう出る?


「父さん!! 行ってくる!!」


「あぁ!! 勝ってこい!!」


アキハ達が走り出す。同時に熊型のモンスターも戦闘態勢へと移り走り出す。


俺も呼吸を変えて意識を敵に集中させる。いつでも助けに入れるように身体の力も適度に入れておく。


「私の方でも障壁は出せるようにしてる。でもアールの判断で飛び込んで良いからね」


「そこは当然。助けるって約束したからな。けどギリギリまでは頑張ってもらうさ。ところであのモンスターの名前は?」


「ヴァルバロオソ。別名鎧熊。攻略法は魔法攻撃なんだけど、あの子たちならいけるわ」


個体名ヴァルバロオソと呼ばれたそいつは。先制攻撃を繰り出したミナツの一撃をその鎧の様な毛皮で防ぐと、カウンターの如く爪で引き裂こうとする。


アキハがその間に入り刀でその爪の攻撃を受け止める。若干地面が沈んだが、伝わる雰囲気からして、思ったほどでもないと笑みを浮かべていることだろう。


ハルナが横に回り矢を放つが、当然鎧の様な毛皮が矢を弾く。反対に回るフユカの方も同様で、弾丸が弾かれる。


「ミナツ! 見極めて爪の生え際!!」


「生え際ってどこ!!?」


「爪の根元!!」


「了解アキハ姉さん!!」


「ハルナフユカは牽制でひたすら撃て!!」


「・・・どこまで機能するか知らないけどね」


「わかりました」


受け止めた爪を弾き飛ばし。距離を取るアキハ。ヴァルバロオソの方も、防御したアキハに狙いを定めたのかアキハへと向かい動き出す。


腕のぶん回し攻撃、アキハは剣で受け流す。連続して放たれる爪攻撃をアキハは的確に受け流し弾いていく。


横と後方から弓と弾丸が飛来するが、相変わらずヴァルバロオソ・・・なげぇな。オソでいいや。オソは気にも留めない。


「チィッ。ムカつく。ちょっと本気出す」


ハルナがキレた。全く相手にされず、アキハばかり狙うオソに対し、ハルナは攻撃を止めた。


取り出すはその大弓に合わせたように大きな大矢ともいうべき一矢。ハルナの遠距離攻撃の中では最も破壊力のある一本だ。


「アキハ姉さん」


「やれ」


お互い細かい話は不要と言わんばかりにただ名前を呼びあう。同時に、アキハは攻撃を受け流すのではなく受け止めるに変えた。鞘に刀を収め、その耐久力をもってその巨体から振るわれた爪の攻撃を防ぎに行った。


「『月波』」


連続して繰り出されていた攻撃はアキハが防いだその一撃をもって完全に勢いを殺された。込められた衝撃を完全に受け止めたようだ。


「流石アキハ姉さん」


そこには自分と同等以上の大きさのある大弓と大矢を構え、矢を引くハルナの姿があった。浮かび上がる腕の筋はどれだけの力が込められているかがわかる。


「弓式『天翔サジット』」


瞬間。空を切る。


その矢の姿を見たものはそこにはなく、ただ結果がどうなったかだけが付きつけられた。


『ゴ・・・・・ガゴゴガガガ・・・』


オソは頭部の半分を失った。堅固な鎧だと思われていた毛皮は、たった一本の矢を防ぐことが出来なかった。もっとハルナを見ていれば、それは回避できたかもしてない。しかしオソは攻撃が通らないと判断したハルナを無視して、アキハを獲物にした。


それがこの戦いの生死を分ける事になった。


「ミナツ」


「あい・・・よっ!!」


鎧を失った肉体はもはや弱点でしかない。それが頭部となればなおさらだ。立ち上がった状態から頭部を失ったオソは飛び上がり失った頭部へ向けて大剣を突き刺すミナツの攻撃を避ける事は出来ず。その頭から心臓までを貫かれた。


「フユカ」


「あらよっと!」


「さよならです『月光閃』」


突き刺した大剣を抜き、大きく飛び上がったミナツに変わり、その反動でよろけたオソの身体に急接近したフユカがその銃口を貫くように突き付け、同時に引き金を引いた。


オソの身体はくの字に曲がりながら吹き飛び、地面を転がる。やがて叩きつけられながら地面を転がっていくオソは、その後起き上がることはなかった。


「おめでとう。まずは一匹。あと四体。連続で来るよ。アキちゃん。ハルちゃん。ナツ君。フユちゃん。その調子で頑張って」


死体に触れて素材化するマイの言葉を聞いて、アキハ達は再び陣形を立て直す。次のお客さんだ。








ーーーー








ファクリア闘技場の四番フィールドがヤバすぎる。




1:名無しのプレイヤード


ヤバすぎるんだが!?




2:名無しのプレイヤード


現地に居ないから何があったか知らん。




3:名無しのプレイヤード


はよ教えろ




4:名無しのプレイヤード


子供四人がヴァルバロオソ速攻で倒したんだがっ!?




5:名無しのプレイヤード


へー




6:名無しのプレイヤード


あ、そうですか。




7:名無しのプレイヤード


詰まんなそうなスレだったな。子供の見た目のプレイヤーなんてたくさんいるし




8:名無しのプレイヤード


解散解散。




9:オルガン


NPC!!子供NPCなの!!!




10:名無しのプレイヤード


詳しく聞かせて貰おう。




11:名無しのプレイヤード


なんだって!?




12:名無しのプレイヤード


それはヤバいな!




13:名無しのプレイヤード


お前ら俺の時と反応違うじゃねぇか!




14:名無しのプレイヤード


だってNPCなんて言わなかったし




15:名無しのプレイヤード


だって詰まんなそうな書き出ししかしてなかったし




16:名無しのプレイヤード


主語が抜けてんだよ。子供のNPCがヴァルバロオソ倒したって言えばワイらだってすぐに食いついたで?




17:名無しのプレイヤード


ヴァルバロオソって子供NPCでも倒せたっけ?




18:名無しのプレイヤード


無理。子供NPCのレベルなんていいとこ10ちょっとだし。




19:名無しのプレイヤード


推奨レベル50のヴァルバロオソを倒すなんてすげぇな!!! NPC!? もっとすげぇ!!




20:アルトりす


因みにマイさんのパーティー所属の子供NPCです。




21:名無しのプレイヤード


あ、納得です。




22:名無しのプレイヤード


まぁ、理解できるおかしさに変ったわ。




23:白輝


やっぱり未来の怪物育成してたんじゃないですかやだー




24:くろへび


前にそんな話してたですよね。魔法特化なら相性最高ですし納得できます。




25:名無しのプレイヤード


何しろ超越者様が一から仕込んだ有望な魔法使いだろ?




26:マーガリン


これ見てまだそんなこと言える?


Http///




27:名無しのプレイヤード





28:名無しのプレイヤード


闘技場の映像じゃんこれが・・・・な・・・・に・・・・はへ?




29:名無しのプレイヤード


なんか・・・ガラオベハと真正面から斬りあってる映像なんですが?




30:名無しのプレイヤード


ガラオベハ。別名爪羊。超攻撃性の高い羊で、鉄も斬るほど鋭利な羊毛を全身に纏う化け物羊。




31:紫怨


あ、しんd・・・でない? え待って真正面から剣で体当たり受け止めたんだけどどういうトリック?




32:名無しのプレイヤード


弓の子狙いえげつねぇ!! あの羊毛の間に矢を綺麗に打ち込んだし!!?




33:名無しのプレイヤード


ボウガンの子身長に対して得物が厳つすぎるwwwと言うかなんでそれその速度で持って走れるんだよwww




34:パチスロット


あ、大剣の子が真っ二つにガラオベハぶった切った




35:名無しのプレイヤード


ガラオベハってそんなに柔らかかったっけ?




36:名無しのプレイヤード


柔い訳ねぇよ。あのクソ羊くそかてぇよ。安物の装備なら一発で折れるわ。




37:名無しのプレイヤード


あのーマイ先生支援魔法使ってる様子ないんだけど?




38:名無しのプレイヤード


少し前に掛けたんだろきっと。じゃなきゃあの動きは・・・まぁかけてても異常だけど




39:ライーダ


ショタの気配はここだ!!




40:名無しのプレイヤード


悪い教祖今真面目だからふざけるの無しで。




41:サクラ


ペインライザーだぁ!! こいつ反射魔法常時かけてるから倒すのめんどくさいんだよね。




42:名無しのプレイヤード


マイ氏出番だ魔法打ち消せ・・・え? 消さないの?




43:火力魂


は?




44:名無しのプレイヤード


ちょ?




45:老眼鏡


Why?




46:ぞうもつまる


いちげきひっさつ?




47:名無しのプレイヤード


あの刀の子ナニモンだ!?! ペインライザー一撃でぶった切って終わらせたんだが!!?




48:名無しのプレイヤード


魔法使った様子ねぇぞ!!? マジで何した!?




49:カレイさん


刀を振るったのは解かる。それで横に斬れたペインライザーが意味わからん




50:名無しのプレイヤード


これNPC英雄並みにヤバい案件では?




51:胡坐ウェイ


間違いなく今後のメインシナリオに関係すると思う




53:にゃーる


あの娘っこ居合切りの才能あるにゃ




54:シロマサ


マイさんがサブシナリオ進めてるのは聞いてたけどこれはサブを偽称するほぼメインシナリオ系列のシナリオだろうなぁ




55:雷華


恐ろしく磨かれた剣術ね。これで子供ですって? これだけの才能がある子、どこにいたの?




56:ライーダ


子供だとしても、いいや、子供だからこそありえない動きしてんな。どれだけの修羅場くぐったんだこの子たち




57:シロマサ


連携もかなりいい。守りが刀の子で攻撃が大剣、遊撃支援に弓とボウガン。特にタゲトリは刀の子が上手すぎる。




58:雷華


それ以上に太刀筋が綺麗でありつつ豪快なのも凄いわ




59:ライーダ


今戦ってるのはエレメンタルガーディアンか。大剣の子攻撃の防ぎ方が上手いな。その衝撃はどこに消したんだ?




60:シロマサ


全く未知数。けど彼らのダメージは全くない。完全にあの巨体からの攻撃を防げてる。




61:雷華


刀の子視野が広いわ。エレメンタルガーディアンの弱点をもう見つけてるし、それを全員に共有してる。驚くのは指で見せて全員が理解した所ね。




62:シロマサ


弓の子本当に凄いな。その体でその大弓扱るだけで驚きなのにしっかりと狙った場所に当ててる。そう、そこだよ。エレメンタルガーディアンは両肩の魔法陣を打ち消せば勝てるよ。




63:ライーダ


問題はその打ち消し方だ。物理的に消すには相当の力が必要だし、魔法的に消すにはエレメンタルガーディアン以上の魔力がいる。確か合計値600あればいいからレイド推奨のモンスターだから、さて、どう倒す?




64:シロマサ


驚いたね。ボウガンの子の思い切りが過ぎる。真正面から壊しに行った。けどボウガンの一撃じゃゼロ距離でも抜くのはむずかs




65:雷華


ぶち抜いたわね。見た所何かの武術の応用だろうけど、それにそしてもすさまじい一撃だったわ。この感じならもう一つも問題なく壊せそうね。




66:ももちゅん


皆黙り始めたんだゾ☆




67:名無しのプレイヤード


そりゃ覚醒者が三人来て実況しだしたんやぞ? 黙るだろ。




68:ハルト


別に好きに話せばいいんじゃない? 誰も気にしないでしょ。 と言うか何気に他の覚醒者も来てるし・・・




69:雷華


弓の子のあの一矢はどんなカラクリですの!? 弓であの防御力を抜けるのはおかしいですわ!!?




70:蒼牙


面白い。NPC相手だが今度挑んでみるか・・・




71:昼行灯


あれ? あそこにいるの前に蒼牙氏と戦ったテスターさんじゃね?




72:トリスたん


そう。そうなのよ。あそこにいるの半年前に有名になったテスターさんなのよ




73:名無しのプレイヤード


いやごめん。そうだとしてもあれは意味わからん。




74:名無しのプレイヤード


防御貫通系のスキル? だとしてもステータス足りる? 防具もそんなに目立った者には見えないし




75:名無しのプレイヤード


マイさんがパッシブスキルつけてて常時バフかかってるとか?




76:名無しのプレイヤード


パッシブスキルなのはわかる。じゃなけりゃ理解出来ん。問題はそれが出来るスキルが全く分からん。




77:名無しのプレイヤード


せめて!! せめてNPCのレベルが見られたら!!!




78:くろへび


同じパーティーになるか、敵対しないとレベルわからないですもんね




79:ぞうもつまる


次何が来る?




80:ライトニング


スピーダーニードルワームか。また厄介なモンスターが続くな。




81:名無しのプレイヤード


ヴァルバロオソ、攻撃特化


ガラオベハ、防御特化


エレメンタルガーディアン、ギミックボス


スピーダーニードルワーム、俊敏性特化


出てくるモンスターどれもそこそこえげつないラインナップなんだけど




82:ライーダ


どう戦う?




83:シロマサ


基本に倣うなら防御メインで立ち回って、一瞬の隙をついて切り崩していくのがセオリーだけど。盾持ちが居ないからごり押し戦法かな?




84:雷華


後方二人はほとんど役に立てなさそうですけどどうなさるのかしら?




85:名無しのプレイヤード


なんか、弓バリスタの子たち剣持ち始めたんだけど




86:名無しのプレイヤード


うーん切り替えの判断が早い! けど使えるの?




87:クロサカ


使えるとは思うがサブウェポンだろうから熟練度はそこまでじゃないだろうとは・・・思う




88:名無しのプレイヤード


とげ叩き切ったな




89:名無しのプレイヤード


そっかーおえるのかー・・・もうぼくおどろかない




90:雷華


これはもう英雄クラスのNPCで確定でしょう・・・こっちの考察なんて簡単に超える実力者ですわ




91:ライーダ


とりあえず全戦見よう。話はそれからだ。



92:チーザー紫


アヒャヒャヒャヒャ!!!


掲示板回書きましたけど、やっぱり楽しいですね。

皆さんはどうでしょうか?感想くれるとうれしいです。


感想・星評価・レビューにブックマークなど、作者月光皇帝の私の大好物です。

是非是非たくさん下さい。お願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに子供たちの実力が知れ渡っちまったなぁ!さすがに半年前までただの孤児だとは思うまいよwww衝撃吸収の謎もまさか月光流の技だとは思わなかったみたいだし、いやぁ掲示板回やっぱおもろいわwた…
[良い点] 孤児院を経営していて恐らくNPCの子供を最も見てきたライーダさんが掲示板にいるからこそ、子供達の強さがどれほど異常なのかわかりますね。 [一言] 闘技場での戦闘が終わると同時に、他プレイヤ…
[良い点]  大規模戦でのお披露目かと思ってたけど、闘技場でのお披露目になったかぁ。  月光真流継承も兼ねたスローライフだからまぁサブシナリオ、メイン張れるレベルの内容の濃さではあるよねぇ。NPCから…
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