スローライフ
はい。今月二度目の更新です。
リテイク前みたいにたくさんブックマークと感想欲しいなぁー(ちらり|д゜))
「・・・」
片付けも綺麗に終えて、家具一式も取り揃え、必要なものが全て収まった新居にて。ここでの生活も早2か月が過ぎようとしている。そんな今日の過ごし方は家族そろって読書やら勉強やらだ。
このゲームデータ化さえすれば現実の辞典やら問題集やら教科書やらを個人に限り持ってくることが出来たので、この時間を使って大学の講義の予習復習をしていた。
ゲームの中でまで勉強かよと思う人もいるかもしれないが、ゲームを楽しむために勉強を終わらせるのだ。それにこっちの時間と現実の時間では進み方が違う。現実よりも多く勉強の時間を取れると考えれば悪い時間の使い方でもないだろう。俺とマイはゲームを理由に成績を落とす訳にはいかないのでしっかりと勉強中。
「「「「・・・」」」」
アキハ達は読書だ。最初は何をしたらいいのかわからず、とりあえず家の中の探索やら、ただただ俺にくっつき時間を潰していたのだが、俺がこっちで見つけた短編集、まぁ良くある本を読んでいたら、そっちに興味を示し、『読むか?』と渡したら嬉しそうに受け取ったのだが、アキハ達は文字が読めなかった。当然書くことも出来ない。
裏町で生きていくには不必要な知識だったかららしい。
それを知った俺たちはアキハ達に基礎学力を教えるために家庭教師のまねごとを始めた。文字の読み書き、算数に道徳。この世界の歴史・・・は、マイに任せたけど、とにかくこの世界で生きていく為に必要な知識をたくさん教えて行った。
何度か嫌がりもした子もいたが、ご褒美に晩御飯を豪勢にしたらやる気を出したので子供は単純だ。そこが可愛い所なのだが。
そんな生活をこっちで始めて一か月。難しい本は読めなくとも、現実で言う児童書くらいの本なら読めるようまでに成長した。
「・・・父さん。次の本読むから取って」
「自分で取ってきなさい」
「・・・アンタ達ここ取ったら怒るからね」
俺の左隣が毎日のお気に入りポイントのハルナは渋々と言う感じで立ち上がり本棚へ向かう。因みにミナツは特にお気に入りポイントはなく、しいて言うならマイの隣に座ることが増えてきたくらいか。んでフユカは俺の背中を背凭れにすることが多く、アキハは正面に座ることが多い。そんな感じでそれぞれテーブル周辺に陣取ることが多い。因みにマイがいるとマイは俺の右隣で場所を確保している。
「ハルちゃんは完全にアールっ子だね。べったりだ」
「マイにはミナツが一番懐いてるな」
「男の子は母性を求める生物なんだよ。ねー?ナツ君?」
「??? 母性ってなに?」
「お母さんっ子って事だよ。ぎゅー」
「もーなんだよー! 急にぎゅーってすーるーなーよー!」
口ではそういっているが、顔が嫌がっていないあたりマイの言う通り本当に母性を求めているのかもしれないな。マイもだいぶん子煩悩になってきてるとは思う。
正にスローライフって感じだ。モンスター除けの結界の維持はマイが器用にしてくれたのでこの家にモンスターが襲ってくる可能性はほぼない。一応俺も周辺のモンスター共に片っ端から威圧し『ここを襲ってきたらぶっ殺す』と縄張りを主張したので本能が逝かれているモンスター以外は来ることがない。来た奴もいたが速攻で俺かマイがぶっ殺した。
その日のご飯はそのモンスターの素材を使ったメニューだったのは言うまでもないだろう。
そうして今日一日もゆるりと時間が過ぎていく。
ーーーー
「あの・・・マミー」
「どうしたのアキちゃん」
アールがログインしていないある日、私はこっちで適当に過ごしていたんだけど、おずおずとアキちゃんが私の元に来た。一緒に生活をして結構経ったからか、アキちゃん達は私の事はマミー呼びで固定された。最初言ったあれが定着するなんて子供の成長は見ていて面白いものだね。
「・・・聞いてもいいだろうか?」
「良いよ。ご飯作りながらだけどねー」
今日のお昼ご飯は焼き豚チャーハンだよ。ネギと焼き豚しか使ってないハルちゃん大歓喜のやつ。
「とうさんは・・・私たちのせいで不自由をさせているんじゃないだろうか?」
「どうして?」
因みにアールは寝室で大の字になったままログアウトしている。このゲームはログアウトしても、その場に身体が残り続ける性質がある。アールはそれをうまく使って、夜子供たちが寝られるように身体を大きく開いて寝ている、ログアウトしているってこと。
最初こそ説明を受けたけどアキちゃん達は目を覚まさないアールに戸惑い混乱していたけど、心臓の音が聞こえた事と呼吸する音が聞こえた事、あと私たちプレイヤーはこの世界では休眠時間が長い時もある種族だって教えれば、徐々にそういうものだと認識して慣れていってくれた。
最初の頃はひどかったからね。アールがログインした時、ちょうど朝だったこともあるけど四人とも飛び起きて泣き出して一日中泣いてたんだから。今はもうそういう事は無くて、やっと慣れてきたって感じかな。
「・・・前に父さんとマミーは予定変更って話をしていたのを思い出したんだ」
あぁ、そういえばそんな話もしたね。落ち込んでいるような、申し訳なさそうな顔でアキちゃんは言った。
「私たちのせいで父さんはもっといろんなことが出来たのに、出来なくなってしまったんじゃないかって思うんだ・・・勉強も教えて貰った。お金の数え方も、文字の読み方も全部教えて貰った。だから」
「ストップ。丁度ご飯できたからみんなで食べながら話そっか。ハルちゃん達もその話したがってたし」
こういう話をしようとしてたのは今回が初めてじゃない。最初はナツ君から、次にユキちゃんハルちゃん。そして今日アキちゃんだ。
裏社会で生きてきたこの子たちだからこそ、自分たちの存在がどういうものか、理解が早かったのかもしれない。そんなこと無いのにね。
「アキちゃんは冷蔵室から適当に飲み物持ってきてくれる?全員分お願いできる?」
「わ・・・わかった」
振っていた中華鍋から大皿に山盛りのチャーハンを移し、ハルちゃん達が待つテーブルに持っていく。飲み物を持って戻ってきたアキちゃんから皆飲み物を受け取ったのを確認して 。
「「「「「いただきます」」」」」
さてさて、マイさん特製焼き豚チャーハンのお味はどうかな? うーん流石私! 自己評価90点だね! あとは蒲鉾とかもう少し具材があれば100点満点!
「・・・マミー。お肉美味しい」
「やっぱりハルちゃんには好評だね焼き豚たっぷりチャーハン!」
「えへへ・・・マミー。私も美味しいと思います」
「ありがとうフユちゃん。ナツ君は・・・いうまでもなさそうだね」
「うはい!」
口いっぱいにガツガツ食べてるから大満足なんだろうね。美味しそうに食べてくれてお母さん嬉しい!
「アキちゃんはどう? 美味しい?」
「うん・・・美味い」
「それは何より」
パクパクと食べ進めて半分くらい食べ進めたくらいに、ハルちゃんが口を開く。
「・・・さっきアキハ姉さんが言ってた話だけど、実際どうなの?」
「あぁあの話? 気にしないでいいよ?」
実際アールは全く気にしてないし。寧ろ今のこっちでの生活を満喫してるよ。戦うだけがゲームの楽しみ方じゃないって知ってるから余計だね。
「本当にそうなんだろうか・・・?」
「嘘じゃないよ。私はアキちゃん達に隠し事はするけど嘘はつかない。アールも同じ。それにアールからこの生活飽きたなって聞いたことある?」
「「「「ない」」」」
「でしょ? だから皆はそういうの気にしないでいいんだよ」
「・・・」
それでも不安そうなアキちゃん。こういうのってあんまり柄じゃないんだけどなぁ。アールに感化されたのと、こっちでこんな風に家族生活してるから私も本当にお母さんみたいな感性が出来たのかもね。
「アール・・・お父さんはね? 貴女たち子供たちがどんな風に成長していくかが楽しみで仕方ないの」
「・・・?」
「人間に関わらず命は皆幼年期幼少期少年時代青年時代・・・つまり子供でいられる時間はたった一度しかないの。自分で経験するのはたった一度だけ。私やお父さんはもうその時間はほとんど終わったのよ。そして今度は貴女たちの成長を見守る番なの。私たちが私たちのお父さんお母さんにしてもらったように」
「見守る・・・番?」
「そう。今だからわかる。私の両親は私の成長をずっと楽しみにしてくれてた。ずっと見守り続けてくれていた。それは義務感とか不自由とかそういうのじゃないの。それが何よりも愛おしくて、大切だったから」
「「「「・・・」」」」
「貴女たちはね? 私とお父さんにとって、もうかけがえのない宝物なの。だから一緒に居たい。どんな大人になっていくのか、その成長を見届けたい。もっとたくさんの事を学んで、覚えて、時には転んでもいい。泣いても良い。そして何度も立ち上がって前に進んで欲しい。いつか来るお別れの時に『あなたの親で良かった』って思えるような命の終わり方をしたいの。だから皆はこれからも変わらず私たちに毎日の生活を見せてくれればいい。それが一番の贈り物だから」
「・・・いいんだろうか。私たちがこんなにも幸せな事をずっと覚えてしまっても」
「いいの。世界中の誰もが貴女たちにそれが間違いだと指をさしても、私とアールは絶対にそれを否定する。『私たちの家族が幸せになって何が悪い! 子供が立派になる事が何が悪いんだ!』って、そんなこと言う奴らに怒ってやるわ」
「・・・えへへ・・・えへへへへ・・・私今とっても嬉しいかもしれません。えへへへへ」
「・・・うん。悪くないね」
「じゃ・・・じゃあこれからもずっと一緒に居てもいいんだよな!?」
「当然! むしろ一緒に居てくれないと私もアールも泣いちゃうわよ? それはもう一日中ね」
「あ・・・あれは忘れてくれ・・・恥ずかしい・・・!!!」
「ニャハハ! 年相応の子供らしくてかわいかったよ!」
「うわぁぁぁ・・・・!!! 恥ずかしくて死にそうだ・・・」
顔を真っ赤にするアキちゃん。そっぽを向くけど耳は真っ赤なハルちゃん。
恥ずかしそうに笑うフユちゃんに聞こえないフリしてチャーハンを食べに戻るナツ君。皆反応が違って可愛いね。
「そういう訳だからさ。迷惑とか不自由とかそういうのは考えなくて良し! どうしてもっていうならたくさん甘えて、たくさん勉強して、いろんなことを経験して私たちが自慢できる大人になってよ。それが一番の恩返しになるからさ」
「わかった・・・ありがとう・・・マミー」
「どういたしまして」
あぁー慣れないことしたから結構恥ずかしいなこれ! アールこれをほとんど素でやってるんだから本当に物語に、世界に入り込むの上手すぎる! あぁー私も絶対に顔赤い!
わからないように隠蔽魔法で顔赤いの隠しておこう!
ーーーー
「父さん。今更だけどマミーはいない時何してるんだ?」
マイがソロ活動で出かけているとき、アキハにそう聞かれ俺は即座に応えられなかった。
「・・・・・・ごめんアキハ。実は俺も詳しくないんだ。生活費を稼ぐ・・・は違うだろうし単純にモンスターを倒しに行ってる・・・もなんか違う気がする」
「・・・もしかして父さんもわからないの?」
ジト目で見てくるハルナ。そうなんです。分からねぇんだよ。
やることがあるって言って頻繁に出かけては二日三日したら帰ってくる。帰って来た時には貴重な食材やら、安売りしていた食材やらその時の気分で色々買って帰ってくるからいろんな場所に言ってるのはわかるけど。
どんな事をしているかはわからないんだよ。冒険なのかも怪しいし。もしかしたら闘技場的な場所で荒稼ぎしてる可能性も十分にある。
この生活の間も何度かイベントシナリオがあったらしいから、それに向けての準備やイベントシナリオ中は、ずっとかかりっきりだったこともあるし。
俺? 俺はスローライフ生活にどっぷりなのでイベントは今の所全部スルー。そもそもイベントがあるってゲーム内ではアナウンス無いからゲーム外で情報集めてそこに行く必要があるし。それをするくらいなら、今はこうしてアキハ達とのんびり過ごしている方が楽しい。
「ま・・・まぁ悪い事はしてないだろうさ。悪いことしてたら指名手配されてるだろうし」
「ふーん。ま、マミーが何してても別にいいけど」
ハルナは興味を失ったのかまた読書に戻る。ミナツとフユカは庭の砂場で何か作ってる。出来たら見せてくれるらしいから楽しみだ。
「それもそうか。何があってもマミーはマミーだもんな・・・」
そういってアキハも読書に戻った。因みに最近は両隣にハルナとアキハが陣取ることが多くなった。ハルナは変わらずだが、アキハは何か変わった気がする。良い意味で遠慮が無くなった感じだ。俺としては良い傾向だと思う。
「「「・・・」」」
そうして俺たち三人は庭から聞こえるミナツ達のやり取りを音楽代わりに、読書に耽っていくのだった。
ところで・・・いや、流石に気のせいか。でも気になるからもう少し顕著に聞こえてきたら試してみるか。
ーーーー
この生活も早い事でゲーム世界では半年ほど。現実世界でもそこそこな時間がたった。テスト期間も終えてしばらくは悠々自適な自由生活な訳で、今日はバイトだ。
「なるほどねぇ。真央くんそんなスローライフに身を置いてたんだねぇ。道理で掲示板とかで名前が挙がってこない訳だ」
店長はそういってコーヒーを入れてくれた。特別限定版含めた俺視点の剣聖物語の上映は週替わりで土曜日に固定したことを宣伝した。お客さんにもそれが様々な形で広がったおかげで、土曜日が稼ぎ時、それ以外は今まで通りのんびりとした喫茶店と言う感じで静かな時間が戻ってきた。土曜日は戦場が如く忙しいんだけどな。
主にメニュー進めて稼ぐって意味で。飲み物一杯で三時間居座れると思うなよ。最低客単価1000円以上は置いていきやがれ。みたいな気持ちでズイズイメニューをお勧めして注文を取っている。おかげで俺のバイト代も1.2倍に増えた。
「まぁそろそろメインシナリオも動きそうだからその時は真央君の名前が掲示板に名を遺す日も来るかもね」
「どうだろう? 今のあっちでの生活に割と満足してるからそれもスルーしちゃうかもしれない」
「アッハッハッ! メインコンテンツスルーしてスローライフかぁ! まぁ、それも楽しみ方の一つではあるからね。否定はしないさ。でも僕としては月光真流の本家本元の動きを見たいなー?」
「いっつも土曜日に見せてるでしょうに」
「ノンノン、いちプレイヤーとしてこの目でみたいのさ。流石にメインシナリオの時は僕も店を閉めてひたすら参加するからね」
「ふーん。まぁそういう事なら気が向けば出向きますよ」
「よし、言質とったよ」
「確定事項じゃないから良いですよ」
「ちぇー」
からんからんと店の扉を開ける音が聞こえる。飲んでいたコーヒーをごくりと飲み干し、お客の対応をする。
「いらっしゃいませ。今日はおひとりですか?」
「・・・あ、はい・・・・」
やって来たのは車いすのお客さん。いつもは女子高生二人に車いすを押されてやってくるのが多いが、今日は一人での来店だった。このお客さん口数が少ないと言うか、割と人見知りなので、こうして返事を返してくれるまで結構な時間がかかったんだよ。
テーブル席をあけて、車いすのまま席に就けるようにセッティングしてっと。メニューと水よし。
「メニュー置いときますね。決まったら合図してください」
「・・・」
コクリと首を縦に振ったのを確認して空いているカウンターに腰掛ける。マスターは何でも作れるように材料の確認をしている。
数分しないうちにすっと彼が手を挙げたのを確認してメニューを聞くために向かう。
「フルーツタルトセット一つ・・・ロイヤルミルクティーで」
「かしこまりました。他に何かございますか?」
首を横に振ったのでマスターにメニューを伝え、とりあえず待機。あ、そうだ。どうせ今日はお客さん彼だけだしちょっと特別サービスしてやろう。
「お客さん。三十分だけテレビの映像変えても良いですか?」
「??? あ、はい、どうぞ」
「店長、番組かえるからー」
「いいよー」
店の奥から一枚のディスクを持ってきて再生機に挿入。エクスゼウス特製のメニュー画面が出てきたのでチャプター選択でっと。
「っ!!!」
「お客さんここのシーン好きだったろ? 今日は特別だぜ?」
彼は戦いのシーンよりも修業シーンを見るのが何よりも好きらしく、毎週土曜日に来るときもそこのシーンに目を輝かせていたのを俺は見逃さない。
再生されるのはマリアーデとの月光真流の修業シーン。つまり今回は剣聖編の総集編だ。実は総集編で描かれてはいるが、メニューで選べば各シーンを一話形式で見られるという超絶特別仕様になっている。流石に土曜日の上映の時は総集編上映しかやらない。剣聖編、英雄編、真剣聖編の順番で毎週上映している。おかげでそれ目当てで来るお客さんも増えたから稼ぎ時なのさふっふっふ。
という訳で始まるのは見栄えのあるシーン皆無のはずの修業回。地味な修行が一話分。つまり三十分続くのだが、予想通り、彼はテレビ画面に食いつくように見ていた。それこそ、頼んだタルトセットが届いても、食べずにずっとな。そうして大体三十分。丁度一話分の再生が終わったので上映終了だ。
「お気に召したかい?」
「あ・・はい。ありがとうございます」
「良いって事よ。他にお客さんもいなかったし。ミルクティー冷めちゃったから冷たいのに変えてこようか?」
「あ・・・・えと・・・お願いします」
「少しお待ちを」
口もつけてなかったからこれは後で俺の飲み物にするとしてっと。
「はいアイスミルクティー」
「ありがとう店長」
「ふっ、新しい常連さんだからね。サービスしとくよ」
そういっていい笑顔できらりと歯を見せ笑顔の店長。GOODだぜ。
ーーーー
やっぱり気のせいじゃなかった。そう思ったプラクロ世界スローライフ生活のある昼下がり。
今日はマイ含めて全員読書時間なのだが、ページをめくる音と一緒に聞こえてきた呼吸音。マイの呼吸音は特に何かある訳じゃないけれど、アキハ達の呼吸音、呼吸の動きはもう見間違えようがない。
「ハルナ、ちょっといいかい?」
「・・・なに? 今良い所なんだけど」
「じゃぁアキハ、ちょっと「別に嫌とは言ってないでしょ。なに?」・・・ハルナ。深呼吸をしてもらえるか?」
「・・・良いけど」
「私もしようか?」
「うん。アキハお願い」
二人して何かはわかっていないみたいだが頼んだ通り深呼吸をしてくれた。その挙動、呼吸をんの一つも見逃さんと俺も呼吸を変えて神経を研ぎ澄ます。
うん。間違いない確定だな。
「どうしたのアール?」
「ちょっとな。ミナツ、フユカ。お前たちも深呼吸してくれるか?」
「俺らも? わかった」
「えへへ・・・背中にいたままでいいなら」
「いいよ」
呼吸で身体が動くから判別はしやすいしそれはそれでいい。言われた通り二人も深呼吸を繰り返す。こっちも確定か。子供の成長・・・いや、才能か? この場合。
「な・・・なにか悪い事でもあったのか?」
「・・・病気?」
「いや違う・・・ちょっとアキハ達の才能にびっくりしたんだ」
「「「「「才能?」」」」」
隠すことはない。ハッキリ言おう。
「アキハ、ミナツ、ハルナ、フユカ。お前たちには月光真流を使う才能がある」
「は・・・ハァァッ!!? アールそれマジで!!?」
「マジ。呼吸の仕方が完全に月光真流のそれだった」
月光真流の呼吸は全身に吸い込んだ空気を循環させるが如き呼吸だ。肺と腹だけでなく、毛細血管にも生き滞らせるが如く全身を使い、空気を取り込み、衝撃を操る。その基本となるのが呼吸と衝撃のコントロールだ。その片方。呼吸の方をアキハ達はほぼマスターしていると言ってもいいほど完成されていた。まだ粗削りではあるものの、ちゃんと指導すれば時間はかからないだろう。
「えっ・・・・まっ・・・・うわぁ、マジでか。これプレイヤー発狂レベルの大発見じゃん」
マイはお母さんを忘れて完全にプレイヤー視点に戻る。それほどまでの驚愕だったのだ。
知ってる限り、現状スキルとしての月光真流は戦技の解放条件は全て判明しているが奥義の解放条件は未だ未発見らしい。唯一『針撃スコルピア 』の解放条件がもう少しでわかるくらいの進捗だと聞いている。
「げっこうしんりゅう? とは一体何なんだ?」
「俺が使ってる剣技っていえばわかるか?」
「・・・半年前に私たちを助けてくれた時のあれ?」
「ハルナの言うそれだ」
「え? それってすごいの?」
疑問を持つミナツにマイが間髪入れずに答えた。
「凄い通り越してヤバい。プレイヤー・・・じゃなくてプレイヤードっていう私たちの種族でも未だ完璧にマスターしてるのはお父さんしかいない位の希少さがあるの」
「え? めっちゃすげぇじゃん!!」
「えへへ・・・私たちすごかったんですね」
「・・・へー」
「・・・」
ちょっと興奮気味のミナツとフユカに対し、ハルナはそこまで興味なし、アキハは・・・何か考える顔をしている。
「父さん・・・私がそれを使えるようになったら・・・嬉しいか?」
「すごくうれしい。この剣術は俺が師匠から受け継いだ大切な技だ。スキルって形でプレイヤードには伝わっているけど、直接受け継いだこの技術を、剣を残せるなら残したいさ」
「なら「だけど」???」
「やりたくもない事を押し付ける気も無いんだ。アキハが俺が喜ぶならっていって覚えようとしてくれたのは嬉しい。けど教えるとなれば俺はきっと容赦できない。厳しいことも言うし、修業は絶対につらい。だから俺の為にっていうならやらなくてもいいんだ」
自分で決めたことでなければ、やっていくうちに絶対にモチベーションに影響が出てくる。出来ない壁にぶつかり、そこで折れてしまうかもしれない。月光真流を教わるという事はそれだけの覚悟と根性がいるんだ。
だから俺の為に覚えるっていう気持ちでいるなら、気持ちだけ受け取っておきたい。
「・・・」
アキハは黙ってしまう。優しい子だ。きっと俺が喜ぶなら覚えようとしてくれたんだろう。けどごめんな。
「修業をつけるとなればいつか俺はアキハ達の親としての側面じゃなくて、月光真流継承者としての厳しい側面をみせないといけなくなる。だから」
「・・・わかった」
「アキハ・・・」
「あぁもう。そういうの別にいいし」
呆れたようにハルナが本を閉じて俺の目を見た。
「父さんと同じ剣使いたいから教えてほしいって最初から言えばいいじゃん」
「なっ!? いやそれは・・・」
「どうせ恥ずかしいとか思ってややこしく教えて貰おうとするから父さんが教えないっていうんだよ。一緒に居て分かるでしょ。父さんは正直な気持ち言った方が応えてくれるよ」
「あ・・・あうぅ」
「そういうことだから。父さん。私には教えて。身を守るための事は覚えておいて損ないし。お揃いなのも・・・その、悪くないし」
恥ずかしそうにしながらもはっきりと口に出すハルナ。
「わ・・・私も・・・折角ですし教えてほしいです。えへへ。お揃いって良いですよね」
「俺も!! あの時ズバンってしたの使えるようになりたい!」
「ミナツ。フユカ・・・」
「あうぅ・・・その・・・父さん・・・私も・・・父さんの剣を使えるようになりたい・・・父さんが喜ぶ事って言うのも嘘じゃないんだ。けどその・・・お揃いの剣って言うのは・・・恥ずかしくて・・・言い出せなかったんだ・・・」
「まだまだ子供だねぇ皆。さてアール。この子たちはやる気あるみたいだよ? どうするの?」
決まってるさ。
「言っとくけど厳しいからな? 辛いぞ? 泣くかもしれないぞ? それでもいいか?」
「「「「うん (!)」」」」
「よし、じゃあお前たちに全部教える。俺が教わってきた月光真流の全て。次代に繋ぐこの剣技。しっかりとモノにしてもらうぞ」
アールは現状イベント完全スルー。スローライフがあまりにも楽しくて満喫中。そして月光真流を継げる子たちだと知ってちょっと嬉しいです。
承認欲求モンスターに感想と言う名の元気を分けてください!! 超待ってます!!
沢山の人に読んで欲しいので是非レビューとか書いてくださいお願いします!
裏でこそっと全く関係ないローファンタジー短編作品投稿してました。良かったら其方もどうぞ。評判良かったらそっちも並行して書いてみようかと思います。




