必殺奥義
出来ました。
蒼牙は言動よりも頭脳派らしい。誘ってみてはいるが、乗ってこない。それどころか此方が先導していない個所目がけて攻撃をしようと必死に藻掻いている。
「シッ!!」
逆に言えばそこが攻撃の起点になる訳なので行動が読み易くもなる。時折フェイントを混ぜようと必死に藻掻いているが、そこは俺の誘導に乗った形での攻撃パターンとなっている。
繰り出される上段からの振り下ろし。ふわり身体を宙に預け、剣の腹に手を添える。その勢いに乗って前方宙返り、カウンター気味に繰り出すは蒼牙の勢いをそのまま乗せた踵落とし。
「クッガッ!!」
無理矢理身体を逸らし回避した蒼牙だが完全には回避しきれず、左肩に落ちた足から伝わって来たのは骨が軋む感覚。現実でいう所の脱臼だ。
地面を転がる様に距離を開けた蒼牙は左肩を庇う様に立ち上がり回復魔法をかけていた。やっぱり魔法便利だな。
「分が悪いな」
MPの自動回復数がどれ位あるかによるが、このペースでの攻撃では蒼牙の回復量に攻撃が追い付かない。一気に詰めるのも手ではあるが、蒼牙の行動パターン以外まだ分かっていない。下手に踏み込んで手痛い攻撃や状態異常を貰うのは勘弁したい。
「くぅ…ずいぶんと余裕だなアール! 攻撃の手を止めるとはな!!」
「打って出られる手が少ないんでな。慎重と言ってくれ」
とか言っている間に治療が済んだ蒼牙の肩は先程の様にスムーズな動きに戻っていた。
「ならばこちらからまた攻めさせてもらうぞ!!」
「『Woo~』」
「またそれかっ!!?」
蒼牙本来の太刀筋とは逸れた。いいや、彼自身が逸らしたと言える一閃を受け流しつつ、次の手を考える。刃が交わり火花が飛び、受け流した剣が地面を穿つ。こっちのカウンターを防ぎつつ攻めに転じてくる蒼牙は相当なものだ。桜花を気合と根性でねじ伏せて乗って来ないんだからこっちとしては少々やりにくい。
完全に封殺してくるなら使わないのも手なのだが、そこのラインかと言われれば微妙な所なのだ。やや有効くらいの影響は受けてるっぽいから下手に使わずに『カウンターでぶっ飛ばすから好きに打ってきな』と言うようなものだし、そうなれば向こうだってカウンターできないような攻撃を放ってくるのは目に見えている。それを確実に受け止められる保証がない現状、俺がその手を使うのはあまり気に入らない。
一か八かの賭けに出るときは命懸けの時だけだって決めてるんでな。
となると、現状決め手となるのは一つだけ。あとはそのダメージ量が相手のHP以上になるかどうか。その為の準備が今の時間だ。言動全てがその為の準備だ。
幸いその事に蒼牙は気付いていないと思う。ある意味初見殺しなのは否定できないが、初見じゃなくても見切られるつもりは無い。俺にも意地があるからな。お、このタイミング貰っておこう。
「しまっ「『月輪』」ゴッ!!?」
認識と感覚がずれたことで生まれた脇を開けるような僅かな隙目がけ、一歩踏み込み身体を回し、肩から上を胴体から切り落とすつもりで放った一閃。しかし装備の差か刃が鎧を切断することは出来ず甲高い金属音を響かせて彼の身体を吹き飛ばすのみとなった。負け惜しみだが、やっぱりマイとの約束を尊重するならばこの一撃では決め手にはならないか。
「蒼くん!!?」
「ちょ!!?」
魔法と言う概念が無ければ決定打になっている一撃ではあったんだがな。背骨がズレる程度では決め手にはならないか。
絞り出すように回復魔法を唱える蒼牙の上半身は歪に段ズレのように傾いている。魔法の効果でそれがゆっくりと元に戻っていく。
「………ッハァハァハァ!! ………死ぬかと思ったぞ!!」
「魔法が無かったら終わってたと思うんだがなぁ俺」
「大人げないが使えるもは全て使ってでもお前に勝つぞアール!!」
「構わんさ」
「故にだ!! アール!!」
「ん?」
「何故手加減のような事をしている!!」
その一言が周囲を駆け抜け一気に見ていた観客の動揺が走るのがわかる。あちこちで様々な言葉が飛び交っている。
「………へぇ、続けてくれ」
「今の一撃! それだけじゃない!! お前と言う男は”最初の一撃で俺を倒せる何かがあった”と俺の勘が告げている!!」
驚いたな。手加減………しているつもりは無かったが、行動制限をしていることは分かったのか。そう魅せるような事はしてなかったはずなんだがな。
「その理由を聞かせて貰おうか!!」
「………別に手加減してる気はないさ。ただ約束しててな? 緊急時以外は使うのは三つだけだとな」
『天翔サジット』、『葬爪レオ』、『星波ピスケス』。この三つ以外の奥義は使わないようにと、マイと約束をした。約束は守らないといけない事だ。
「この戦いは非常時の戦いじゃない。緊急性も無い。だから使うのは三つだけだ」
「………」
「怒るか?」
「ハハハハハハッ!!! 約束か!! ならば仕方ない!! ならばこそ!! 貴様にこの戦いが緊急であると認識させるのが今の俺がやるべき事だ!! 行くぞ!!!」
「来いよ」
「『握星:突』!!!」
「『月波』」
突進攻撃。しかもかなりの速攻。相手も切り札の1つを切ってきたようだ。剣の腹で相手を吹き飛ばすように放たれた一撃を真正面から受け止める。良い衝撃だ。………この感覚、不味いか?
「油断大敵だアール!!」
初撃は完全に殺したがどうやら今の攻撃は多段攻撃だったらしく、二撃目以降の衝撃を受けてしまい、後方へと吹き飛ばされた。致命傷にはならないが隙を生むという意味では良い一撃だった。
「今度こそ一撃貰ったぞ!!! 『握星:斬』!!!」
うん。確かに今のは反省点だ。速攻に対して桜花を合わせ損なった事、多段攻撃の可能性を見誤ったこと。他にも様々あるが油断した。俺も多少慢心していたようだ。
だが、直撃を受ければ間違いなく終わるのは目に見えている。振り下ろさせる斬撃をガードするのは無理ではないが、その後の追撃の可能性を考えれば厳しい。
素直に吹き飛んで間合いを稼ぐのが一番だろう。身体の芯をずらし、全身で月光真流の基礎である衝撃の内部蓄積を狙う為、身体の僅かに起こす。後は俺の意識が持つかどうかの我慢比べだ。
「っ!!」
脇腹に突き刺さる一撃。身体を走る痛み。装備が砕け骨の軋む感覚。蒼牙の一撃を貰った勢いで体が地面を弾み、蹴られた小石のように転がる。
頭が揺れている。視界がぼやける。身体が動き事に対して拒否反応を起こすように悲鳴を上げている。だが、立ち上がれない程じゃない。揺れる視界に蒼牙を捉え、ゆっくりと立ち上がる。
「どういうつもりだ! 貴様ろくな防御を取らなったな!? 何故だ!!」
どうやら俺の行動がある程度読めるみたいだ。鋭いな。が、その理由は分からんよな流石に。気管から登ってくる嘔吐感で血を吐く。あばら骨が気管に刺さったみたいだ。
「俺の慢心が生み出した………ガハッ………隙だ。甘んじて受けるのが礼儀であると判断したまでだ………ペッ」
強がりを言うように復調するまでの時間を稼ぐ。揺れる視界がゆっくりと収まり、流れた血が視界を赤く染める。死ぬほど痛いが、動けないほどじゃない。
「流石にレベル差があるのは大きいな。もう一撃は受けられない………か」
荒れていた呼吸を整え、全身に酸素を回す。
「何故回復魔法で回復しない!! 使えないとは言わさんぞ!!」
「言っただろ。ケジメだ。だが蒼牙。別にそれだけじゃない。これは俺が負うべき傷でもあるんだ。だからこのままでいい」
「何………?」
嘘ではない。そもそも何時かは負う傷だ。今のうちに一度その痛みを感じるのは間違いじゃない。ケジメと言うのはちょっと盛った気もするが、時間稼ぎにはなったらしい。
蒼牙の動揺と混乱がその表情からも伝わってくる。呼吸と酸素を回すには丁度言い。
「気にするな。俺のMPが切れたと思えばいい。それとも手負いの相手とは戦えないか?」
「………ならば容赦はしない!! 例えお前と言う男が万全でなくとも、俺は勝利をもぎ取る為に戦うまでだ!!」
「………」
「行くぞアール! この一撃で終わらせる!!」
駆け出す蒼牙の気迫は確実に次で仕留めると意気込んでいた。しかしな蒼牙。その踏み込みは甘いぞ。さっきよりも明らかに気迫と繊細さが少ない。
さっきまでのカウンターで返していた攻撃よりも若干勢いのある攻撃ではある。トドメの攻撃ではある。が、それは俺に次の動きを見せてるのと同じだぜ?
「『星波ピスケス』」
「っ!!?」
築き上げたのは最後に至る為の連携。衝撃は十分に受けさせて貰った。だから蒼牙よ。今の俺の全部を見せてやる。
駆ける蒼牙が地面を踏み抜き、一歩前に出る前に、その距離を詰める。
「がら空きだぜ蒼牙ァァ!!」
左手を伸ばし、蒼牙の首を鷲掴みにする。吶喊していた蒼牙の身体はその勢いを殺せず気道を潰し、呼吸を殺していく。
「ゼロ距離貰ったァ!!」
今まで蓄積していた全ての衝撃を開放し、蒼牙の身体を地面スレスレまで落とし、そこから回転しながら宙へと舞い上げ、手を放す。
「『葬爪レオ』!!」
ふわりと僅かに浮かんだその身体に、掻き毟るように、宙に浮く身体を地面に叩きつけるながら衝撃の爪が蒼牙の身体を引き裂いた。
「ガッ!!!?」
蒼牙は地面に叩き付けられた衝撃で地面を弾む。ワンバウンドで魔法の壁に叩きつけられた。そして身に纏っていた鎧が砕けその装飾が地面に砕け落ちているが、まだ息がある。
大の字に身体を広げ、壁に衝突した蒼牙はその目を上向かせ、気絶寸前と言ったところだった。勝機は逃さない。
「月光真流奥義『天翔サジット』!!!」
その距離を一気に詰めながら、握りしめた刀の鋒で心臓を穿つ必殺の一撃。大気を飲み込む衝撃は、放たれた矢の様に真っ直ぐ蒼牙の身体に突き刺さり、深々と身体を突き破る。
「オオオオオオオオオ!!!!」
「 」
呼吸が死に、意識が消えていく蒼牙の身体は、その衝撃のままに飲まれ屈折する。ピキリと音がした。魔法の壁に亀裂が走る。
「貫けぇぇぇ!!!!!」
ガラスが砕ける音と共に、半球のように戦場を覆っていた壁が砕けた。壁を失った蒼牙の身体は吹き飛び、その先にあった家屋の壁へと衝突し、その壁を破壊した。
「………俺の勝ちだ」
ギリギリではあるが、勝ちは勝ちだ。
――――
「アール!!」
決着と共にマイが駆け寄ってくる。軽く手を挙げて返事をすると、マイは直ぐに魔法での治療を始めてくれた。おぉ、これが他人からしてもらう魔法での治療か。傷が癒えるとはちょっと違うな。巻き戻される感覚か?
「見た目以上に負傷してる感じは無いしステータスにも異常は無いけど………無いけどぉ!!」
「ん?」
「バカアホ! すぐに回復しなよ! 痛いくせに! 矜持とかそういうのは良いんだよオタンコナスビ!!」
ポカポカと痛くない程度に胸元を叩くマイに若干の申し訳なさを感じるが、こればっかりはしょうがないんだよ。
「痛みだってどんなもんか知らないといけない事だからな。今回は色々噛み合って負うべきだって思ったんだよ」
「カッコいいこと言うな!! 私としてはアールが傷つくのが一番ダメなの!! 理解してよもう! もう!」
「傷付くの気にしてたら戦えなくない?」
「それでもなの!! あとこういう時の戦いは私との約束とかどうでもいいんだから気にしないで!! アールのオタンコナスビ!!」
オタンコナスビ流行ってるの? そう言いたくなる程マイはオタンコナスビと連呼する。とか若干いちゃついてる間に身体の具合は完全に元通りだ。気管に刺さっていた骨の感覚ももう無い。
「というかさぁ!! なんで魔法の防壁壊してるのさ!! あれ戦術級の極大魔法じゃない限り壊れないのに!!」
「そりゃマイさん。あれよアレ。『天翔サジット』は単発威力月光真流最強よ? 砕けない理由が無いのよ」
「あるよ!! 物理で魔法を超えないで!! 半分魔法みたいなものだけどさ月光真流!!」
マイさん。治療終わってるからもういいんじゃないかな? そう思うのだが、念入りにマイの回復魔法が何度も何度も俺に掛けられる。
「………」
そんな中、同じく治療が済んだであろう蒼牙が佇んでいた。戦闘中とは正反対の静かさだ。
「お前と言う男がどんな奴かなんとなく分かった」
「おう。なら良かった」
「今回の戦いは多くを学べた。次は勝つ」
「「何サラッと次の約束してるの蒼くん!!!」」
「ウケるwww」
女子二人に後頭部を叩かれながら突っ込まれ、それを見て笑っている推定友人に囲まれている蒼牙は、案の定というか、予想通りと言うか若干天然気味に彼らと言葉を交わす。
「アール。約束の一部訂正。次こういう試合の時は制限なしで全力でやって。怪我とかしたら許さないから」
「分かった」
「ん、よろしい」
マイからそう言われたらそうするさ。
「つまり次の戦い。アール本来の全力で戦えるのか。ならb「「ダメに決まってるでしょ!! 今日は帰るよ蒼くん!!」」せめて最後まで言わせてくれ………」
「あ………あはは………お邪魔しましたぁ………」
両腕を引かれて蒼牙はずるずると去っていった。残った気弱そうな青年がそう言うと、彼らの後を追うように何処かへと行ってしまった。
「とりあえず私たちも一旦休憩ね? 魔法で治せても気分までは治せないんだからしっかり休養だよ! ギルドへの報告はこっちでやるからゆっくり休む事!」
そういえば町に来たのそれが理由だったな。忘れるところだったわ。
――――
此処は一般人では立ち入る事すらできない空間。運営のみが立ち入ることを許されたある種の神域。そこでは………
「イヤッフゥァ!!! 怒涛の必殺連撃!! ヒャッハァ!!! たまんないぜぇ!!!」
「あぁあぁあぁ………!! もはや芸術レベルよ達する達する!!」
「明らかな致命傷、しかし立ち上がるのはテンプレだけど美しい!!!」
明らかにヤバい連中がそれぞれ至高の何かを見出していた。どいつもこいつもヤバい何かが取り憑いた様に狂喜乱舞が如く振る舞いで、最早カオスだった。
「ちょっと!! レベル差100あるのに二撃で全壊するとかバグってるんじゃないでしょうね!!?」
狂気に染まっていないのは彼の物語を知らないこの世界にのみ関わっているグループリーダーの一人。その反応は間違っていない。正しい………のだが、相手が悪かった。
「「「「ハ?」」」」
「ひっ!?」
般若が宿ったかの様な形相で睨まれてしまえば悲鳴だって上げるだろう。ここで止まればよかったのだが、彼女は自分を貫いてしまった。
「だ………だってレベル差あって装備の差だって大きいのにあんなのあり得ないですよ!! それに他にもモンスター戦だってあんな簡単に倒せるのはおかしいです!!」
うん。それは限りなく正しいし、間違った認識ではない。彼女の感性は素晴らしいものだった。誰だってバグを疑うし、不正を疑ってもおかしくない光景だったのだから。
だから彼女は何度も秘密裏にデータを確認し、不正がないかを自分で何度も見直した。カオスな先輩達に刷り込まれた『確認はしっかりと』をちゃんと行う優秀な社員だ。
しかし何度も言おう。相手が悪かった。『プラクロ』だけ担当してるならば問題無かった。しかしカオスな先輩達はこのエクスゼウスと言う企業を立ち上げ世界レベルの技術とテクノロジーを生み出した正真正銘の天才達。そして一人の男に魅入られた変態達。
「そんなことしたら下手人を先に消し去るんだが?」
「ひっ!!?」
「彼への侮辱は死罪。バグなぞこの命に掛けてないが?」
「ひっ!?」
「そもそも私達がゲームでそんな致命的な事すると思ってるのか?」
「ひっ!?」
「僕らはプロ、ならば贔屓にはしても不正は絶対しない。不正はエクスゼウス全社への裏切りだ。それを疑うのかい先輩?」
「先輩相手に出していい圧じゃない!!?」
最早彼女に救いはないのか。そんな時、彼女の頭を優しく撫ぜた女性社員がいた。その社員はグループリーダーの先輩社員で教育係もしていた。言うならば彼女にとっての恩師である。
そんな先輩に優しくされれば、彼女が助けてくれると思うだろう。若干涙ぐんでいたグループリーダーの彼女は救いを求める様に先輩を見た。
「貴女には一からこの世界の物理法則を勉強してもらう必要がありそうね?」
「しぇ………しぇんぴゃい?」
その目は一切笑っていなかった。
その目は一切の慈悲を持っていなかった。
「主任」
「良いだろう」
「………え? なに?」
「『クリエイション』ルームの使用を許可する。バグと銘打った事象の全てを検証してこい」
「やっ…………やだぁあああ!!?!?!」
「うふふ、バグかもしれないのだから確認しなくちゃねぇ? 後輩?」
別名:動作確認所。
またの名を地獄が生まれた場所。
またの名を|地獄旅行《『クリエイション』モード》の片道列車。
起動したが最後、体感時間十年を超えるか、『剣聖物語』を1ルートクリアするまで解放されない監獄。
世に『クリエイション』モードと言う狂気を送りだす前に当時の関係者全員が実体験してバグや精神衛生、肉体への負担等人体への悪影響が無いか、時間加速のシステムが人体へ及ぼす何かが無いかを確認する為に日夜検証したこの世の地獄。因みに誰一人クリアして退出した者はいなかった。
人体への悪影響が出ない事を確認する為のある意味牢獄だったのだからその役割はしっかりと果たしたと言える。
そしてエクスゼウスに入社する社員はこれを全員体験する。生み出す者が生み出した物を知らないでいるのはおかしいからだ。
社員全員が実際に時間加速を体験し、正常であることを確認する為の儀式とも言えるこの行事。当然やるのは『クリエイション』モードの『剣聖物語』。地獄である。
しかしそれを乗り越えたものがこうしてゲームの開発に関わることで、安全性が確保されているのである。
が、今回の使用例はそうではない。『剣聖物語』と『プラネットクロニクル』のシステムはほぼ同一。『剣聖物語』の上位互換が『プラネットクロニクル』と言える。そしてそれを日夜問わずに常に監視し、異常が無いことを確認するのが彼らの仕事である。
物理法則の確認だって彼らの仕事だ。
そこにバグがあると感じたなら言い出しっぺが確認するのは何ら不思議ではないだろう。
「やっぱり何でもないですはい!! バグなんて無かったです!!!」
「嘘はいけないグループリーダー。そう思ったなら確認するのは私達の仕事だ。安心しろ。いない間の穴埋めは上司である私が引き継ごう。安心してバグの確認作業をしてくるといい。あぁ心配するな。この席は変わらず君の席であることは保証しよう」
「嫌だ!! それなら降格した方がマシですぅ!!! 検証はいやだぁぁ!!!」
「ハハハッ面白いことを言うね? 諸君、彼女を地獄へ案内してあげてくれ」
「「「了解」」」
「地獄って言った!!? 間違いなく地獄って言いましたよねこの鬼!!!」
「刷り込みはどうします?」
「無いと検証にならない。特別に彼の経験データを入れてあげてくれ。本当は堂々とした不正はしたく無いが検証の為なら仕方ない」
「しなくていいです!! 怒ってますよね皆さん!!? バグっていったの怒ってますよね!!?」
「「「そうだが??」」」
「自分の誇り持ってだした仕事にケチつけられたらそりゃねぇ?」
「彼への不正疑惑は仕方ない。可能性が少しでもあるなら確認作業は大事だ。第二第三者がすべき確認なのは言うまでも無い」
「所謂ダブルチェックという奴だな。仕事だ。逝ってこい」
「思ってたよりも仕事人気質だった!!! 最後の言葉がこw」
それが放り込まれる前の彼女の最後のセリフだった。出てくるのはいつになるのか。因みに現実時間では約6時間程である。南無。
舞台裏書くの楽しい。
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よろしくお願いします。




