シュレーディンガーの僕
シュレーディンガーの猫の話です。
シュレーディンガーの猫の話ね
僕にもよくわからないんだよね
シュレーディンガーの猫だよね
そもそも何がわからないのか
そこから考えなくちゃね
量子力学って 重要な理論があるんだよ
それによると 電子や光子は
粒子であり 波動である
そんな馬鹿げた話になってるんだ
なぜそんなことになったか?
粒子を二重スリットに通過させると
干渉縞ができるんだ
音や水面の波も干渉縞はできるけど
これらは空気や水という媒質の振動だ
でも電子や光には媒質がなさそうなんだ
だから粒子そのものが波って考えるしかなかったんだ
シュレーディンガーの猫の話だったね
僕も考えてみたんだけどね
シュレーディンガーの猫の話するんなら
その話の前に量子力学とそれまでの理論
それぞれに何が違うのか考えるといいかも
粒子は波動と いってはみたもののさ
それの意味する波動ってのは
粒子の存在する確率って言う
そんな確率解釈が正しいらしいんだ
それに対して今まではどうだったか
振り子とか天体の軌道を計算するニュートン力学
座標も速度も確定してて
時計の周期も星の運行も
バッチリ計算で予測できるんだ
ニュートン力学に従えばなんでもできるとさえね
でも粒子の干渉縞はどうしても説明できなかったんだ
シュレーディンガーの猫の話だよね
大丈夫忘れてないよ 長くてごめん
シュレーディンガーの猫の話に移るね
一体全体何でこんな例えが持ち出されたか
そこにせまってみよう
粒子の居場所が 確率で決まるとなると
それが意味するのは粒子の座標も
そして速度も確定しないって言う
そんな理論なんだ量子力学ってのは
なにか違和感あるよね?
そうなると不思議な疑問
電子や原子や光子は量子力学に従って
確率的に運動する
振り子時計も星も石も生物も
みんな電子と原子が集まったものだ
それらの塊も量子力学に従うんじゃないかって話になる
シュレーディンガーの猫の話に突入だ
彼は波動方程式の発明者
シュレーディンガーの猫を考えたのは
彼は物理法則が確率的にしか決まらないのは
量子力学にまだ不備があるって思ったからなんだ
量子力学の波は スリットやらなにやら 考えうる
「ありとあらゆる」軌道を重ね合わせた波!
「ありとあらゆる」軌道に依存する物理状態も重なる!
観測すると確率的にどれか一つの物理状態に確定する
ならばその塊だって
重なり合わなきゃおかしくない?
例え話として 不定期に毒ガスが発生する箱の中に
観測されないように閉じ込められた猫を考えると
「生きてる」と「死んでる」が
重ね合った奇妙な猫が 箱の中には潜んでるはずで
箱の中観て猫の生死が確定する そうなるはずだろって話
シュレーディンガーの猫の逆説を
矛盾なくあしらう簡単な弁法は
シュレーディンガーの猫の逆説が
箱の中で重なり合ってようがいまいが
箱を開けなきゃ関係ないという弁法
猫を箱に閉じ込めているときしか
重ね合わせがおきないのなら
箱を開けて始めて確定結果が分かるだけなら
箱の中の重ね合わせがあろうがなかろうが同じこと
でも少し違和感あるんだ
確かに矛盾はなくせるけど
猫の生死が重なり合っても構わない
それを容認してもいいことになる
でもそんなことはほとんどありえない
僕はそう思うんだ だからいまから
話すことは僕の私見を含むから勘弁してね
シュレーディンガーの猫の例え話
実は僕 この例えが大嫌い
シュレーディンガーの猫の例え話
だって猫があまりにも可哀想で
仕方ないんだ
猫の代わりに僕が箱に入って読書する
僕だって可哀想だから毒ガスはやめて
催眠ガスにして「読む」と「眠る」の
重ね合わせを問う シュレーディンガーの僕の逆説
観測の話を考える
観測とは観測装置と被観測物との相互作用そのもの
観測という自然現象に人間様の意思の有無など関係ない
僕は箱の中で呼吸する
空気に知性はないけれど僕の呼吸のリズムで
「読む」か「眠る」か確定するはずだ
空気は人間の意図とは無関係に僕の観測装置なんだ
シュレーディンガーの僕の逆説
箱の壁だって僕のいびきの衝撃や体温の観測装置
シュレーディンガーの僕の逆説
僕の中の無数の細胞だって僕の状態を検知する
僕は「読む」と「眠る」のどちらかに確定する
僕は「読む」と「眠る」の重ね合わせにはならない
これが僕の シュレーディンガーの僕の逆説に対する反論
以上が、本来のシュレーディンガーの猫の逆説とそれに対する反論です。猫のように大きな物体には、シュレーディンガーの猫は成り立ちません。
本文で触れながら語りきれないものがあります。それは、ニュートン力学と量子力学の関係です。とても長くなるので結論だけ述べます。量子力学では、座標は確率的にしか決まりません。座標には、ハイゼンベルグの不確定性原理に従う、量子力学的な誤差があります。物体のサイズが量子力学的誤差よりも十分に大きければ、シュレーディンガー方程式は、ニュートンの運動方程式に近づきます。ニュートンの運動方程式は、シュレーディンガー方程式の物体が大きいときの近似式なのです。電子や原子の塊でできる振り子や星のサイズは、量子力学的誤差よりずっと大きいので、これらの運動は、ニュートンの運動方程式で計算して構いません。
最近、シュレーディンガーの猫が話題になります。量子コンピュータや量子もつれを用いた通信など、テクノロジーに関する話題です。この話題における猫は、本当の猫ではなく、電子や光子です。電子や光子の重ね合わせはありふれた現象です。量子コンピュータなどでは、電子や光子を、重ね合わせ状態にしたり、確定状態にしたりを、自由に操るという困難な技術を開発して、高速計算や通信を実現しようというものです。
本作の最後の方で、観測について述べました。厳密には、観測装置と被観測物のどちらかが大きな物体でないと、被観測物の状態は確定しません。両方とも電子や原子、光子の場合、不確定性原理による量子力学的誤差のせいで、欲しい精度が得られないのです。