病院
目を覚ますと、そこは病院だった。
自分の腕には点滴の針が刺さっている。
そして、何箇所か縫ったような後がある。
「先生!目を覚ましました」
横から女の人の声がした。
そして、白衣を着た男の人がやって来た。
「やあ、とうまくん、おはよう。」
「お、おはようございます、」
「うん、ちゃんと話せるね」
「あの、どうしてぼくはここに?」
「覚えていないのかい?」
「何がですか?···」
「これはまいったな···」
ぼくはなぜここにいるのかわからなかった。
記憶障害だな、と白衣の男は言ったが、いったい何のことかわからない。
記憶障害??
ぼくは頭でも強くうったというのか?
頭を整理するがわからない。
「とりあえず、ぼく家に帰ります。」
こう言うと、白衣の男は厳しい顔をして、ぼくに言った。
「家に帰っても、誰もいないよ。」
この男はいったい何を言ってるんだ。
家に帰っても誰もいない?
そんなわけないだろう。
ぼくはすぐさま言い返した。
「ぼくの家には家族がいますよ?父さんに母さんに妹だっています。あなたは何を言ってるんですか?」
力強い声でぼくは言った。
だが白衣の男は、ぼくよりも力強く、そして悲しい声で、ぼくに言った。
「きみの両親は···もう、亡くなった。君の妹も意識不明の重体で、いつ亡くなってもおかしくない···」
ぼくは耳を疑った。
父さんと母さんが死んだ?
さやが、意識不明の重体?
「ちょっ、と待ってください···いったいどうなったらそんなことが起きるんですか?第一何でぼくは病院に?だってぼくはさっきまで···家族と···一緒に···車で···」
頭の中で失くなっていた歯車が、少しはまったような感覚がした。
そして白衣の男がその歯車を押し込み、歯車が回り始めた。