リウのファン
別々で楽しもうということでディーネと別れたリウは、話しかけてくる貴族たちを適当にいなしつつパーティーを楽しんでいた。
しかし、忘れてはいけない。
ここにはリウが招待した魔王たちも居るのだ。
なので、リウと話している貴族をガン無視して話しかけてきても仕方無いのである。
「やっほーリウ~。招待ありがと~」
そう言いながらやって来たのはルリア。
隣には秘書ちゃんことシーアも居る。
聞けば、先ほどディーネと会ったのでどうせ近くに居るだろうと探してみたら案の定近くに居て、折角なので話しかけてきたらしい。
リウが適当に貴族を追い払ってルリアたちの方を向く。
「……シーアも来てたのね。お昼は楽しんだ? それとも休んでたのかしら?」
「存分に楽しませていただきました。ルリア様が迷子にならないか少々心配ではございましたが、ディーネ様が案内を申し出て下さったお陰で迷子になることもなかったようです。ルリア様に代わって感謝申し上げさせていただきます」
「ずっとそのお仕事モードなら頼りになるのに……というか、ディーネ城下町の道は覚えてるのね。あの子、さっき道に迷ってたのよ? 大広間への行き方くらいは覚えてくれるとありがたいのだけど。頑張るとは言ってたけど……どうかしら」
苦笑い気味にリウがそう話すと、シーアが柔らかく微笑んだ。
しかし、普段の変人なシーアを見慣れてるだけにずっとこんな態度だと違和感が拭えない。
とはいえ、立場的にも口調だけは崩してともお願いできないので我慢するしか道はないのだが。
「お城、そんなに入り組んでるの? 僕が見てた限りだとそんなこと無かった気がするんだけど……」
「入り組んでなくはないけど、城下町の方がずっと複雑よ。あなたのために覚えたんでしょうね」
「わぁああっ!! 言われると恥ずかしいからやめて!? ぼ、僕のためとか、ううぅ……」
「ふふ。……ディーネったら、ルリアが絡むとなんでも頑張るのよね」
「やめてってばぁ!? もうっ!」
ルリアが拗ねてリウから離れていってしまった。
シーアはぺこりとお辞儀をしてからルリアを追いかけていく。
リウがくすくすと笑みを零し、手を振って見送ると絶対にルリアがどこかへ行くのを待っていたであろうタイミングでリアがやって来た。
ルリアがどこかへ行った瞬間に出てきたので、タイミングを図っていたのは確実である。
「お姉さま。ヴェルジアのときはごめんなさい、落ち着かせときましたから安心して下さいね。ところで……お姉さまに縁談などという話を持ちかけていた不届き者がどこへ行ったかはご存知ですか?」
「リア、駄目よ。断ったから落ち着いて。ね?」
「……お姉さまが言うなら。あ、そうだ。城下町でのお祭りも楽しみましたよ。このお城やお姉さまの姿を模したクッキーがあったのは知ってます?」
「あぁ、買ったわよ。それがどうかしたの?」
「完璧とは言いがたいですが、中々にお姉さまのお美しさや可憐さが表現されていました。クッキーであそこまで再現するとは感心です。きっとお姉さまのファンに違いありません!」
リアがそう力説したが、リウは頬を引き攣らせてそれを否定した。
「いや、違うと思うわよ? ほら、だってこのお城とか、私以外にもレアとかディーネとか居たじゃない!」
「いいえ絶対にお姉さまのファンです。このお城やレアちゃんたちのもよく出来ていました。ですが、形に若干の歪みがあったのです。でも、お姉さまのはなに一つとして歪みなど存在しませんでした。つまり、製作者はお姉さまの大ファンなのです。あ、ちなみにいくつか買って確認しましたから確定ですよ? 美味しかったです」
リアがドヤ顔を披露すると、リウはむすっとしてそっぽを向いた。
拗ねたらしい。
チャンスとばかりにリアがリウの頭を撫でると、すぐに払い除けられてしまった。
リアがしゅんとし、やりすぎたと呟いてトボトボと人混みに紛れ込んでいった。
しばらくリウが一人で立食パーティーを楽しんでいると、二世代目の一人、人形王の名を冠するレティがやって来た。
彼は人見知りなので夜会には参加しない可能性も考えていたのだがどうやら参加したらしい。
「……リウ様、歓迎、ありがとうござい、ます。……ドレス、お綺麗、ですね」
「あら、ありがとう。レティもその燕尾服、似合ってるわよ」
「……あり、がとう……ございます……」
レティが真っ赤になってしまった。
リウが微笑み、好きに楽しむように告げて緊張してしまうだろうからとレティを見送った。
次に、二世代目のもう一人、月光操者の名を冠する魔王であるレイルがやってきた。
公共の場なので流石に吸血はお預けである。
「綺麗じゃのぅ……やはり、吸血を」
「あ゛?」
「な、なんでもないのじゃ。妾はこのパーティーを楽しまなければならないのでな、挨拶だけになってしまったが勘弁してくれると嬉しいのじゃー!!」
逃げるようにレイルが去っていった。




