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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
みんなで騒ぎましょう
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国認祭

更新するの忘れてました……

昨夜黒歴史が増えたばかりのリウだが、くしゃみ事件のことは綺麗さっぱり記憶の中から抹消したお陰でなんとか復帰することに成功していた。

と、それは置いておくとして。

現在リウは普段よりも豪華なドレスを身に纏い、バルコニーに立っていた。

なお、ドレスの色は普段と同じである。

貴族などの地位のある者たちのための立食パーティーは夜からなので先ずは街に国認祭開催の宣言を行わなければならないのだ。

軽く息を吸い、リウが口を開く。


「少し前に、この国が国家中立議会にて正式に国として認められたのはご存知かしら。……いえ、知らなかったとしても今知れたのだからどうでもいいわね。とにかく、此度の祭りはこの国が正式に国として認められたお祝いよ」


そこで一度言葉を区切り、リウが右手を空に向けて伸ばした。

すると、上空に無数の魔方陣が現れそこから出現した闇色の光が空へ一直線に飛んでいく。


「ここに、国認祭開催を宣言するわ! ノルティアナの国民も、観光客も、来てくれた貴族や王族の方々も、各々祭りを楽しみましょう!」


リウの言葉が終わると同時に、上空にあった闇色の光が弾けた。

セラフィアの故郷にある兎耳族の集落でも披露した〝闇花火〟。

闇火炎(ダークネスフレイム)〟という魔法の応用で、魔法を弾けさせることで日中に疑似花火を打ち出すという技術だ。

ちなみにセラフィアの故郷だが、少し前に完全にノルティアナと統合され、既にあそこはノルティアナの国土となっている。

現在はほどほどに前の面影を残しつつもノルティアナの雰囲気に合った場所となっていた。


閑話休題。


バルコニーから室内に戻ったリウはすぐにいつものドレスに着替え、その上からローブを纏いフードで顔を隠して〝瞬間転移〟で城下町に向かった。



数十分後、リウの手には色々な食べ物が握られていた。

串焼き肉や、りんご飴、チョコバナナを右手に持ち、左手には果汁を絞ったジュースを持っている。

りんご飴とチョコバナナに関しては異世界人が普及させたものだ。

チョコバナナはカカオとバナナが必要なため、地域的に育てられない場所が多く、一部でしか食されていないのだがノルティアナは奇跡的に二つ共苗を購入することに成功し、あとはグアルディアの加護のお陰で環境に関係なく栽培することに成功しているのだった。

しかし、それだとグアルディアの加護が無くなれば二度と食べることができなくなってしまうので現在は品種改良中である。


「んっふふ~」


リウがご機嫌でそんな声を漏らした。

そして、ぱくりと串焼き肉にかぶり付く。

リウはお祭りが開催している間にも仕事があり、更に夜には立食パーティーに参加しなければならないため時間がある今の内にお祭りを楽しんでいるのだった。

ちなみにリウは少しでも時間ができればその都度〝瞬間転移〟で城下町に赴き、お祭りを楽しむつもりである。

準備を頑張ったのに仕事でお祭りを楽しめないというのは少々不憫というもの。

そういうわけで、リウは空き時間でお祭りを楽しんでいるのだった。

食べ物ばかり購入しているのはご愛嬌である。

食べ物を食べ終わり、ジュースも飲み終わって辺りを歩いているとリウに声がかけられた。


「――どうして君が城下町に居るの?」


ビクリとリウの肩が跳ねる。

それは、一番聞きたくない、けれどこの国に居ることだけは確定している人物の声だったから。

会う可能性があるのは承知していたが、それでも切に会いたくないとリウが祈っていた人物。

ブリガンテ帝国第五皇子こと転生の勇者、ヴィレイン・アージェストリ。

リウに執着する彼が、リウの後ろから声をかけていた。

恐る恐るリウが振り返る。


「久しぶりだね、僕のお姫様。本当は国家中立議会にも参加したかったんだけど、あれは国主か代理として認められた公爵しか参加できないからね。泣く泣く見送ったよ」

「……人違いでは?」


声質を変えてリウが踵を返そうとする。

しかし、その手をレインが掴んだ。

後ろからリウを抱き締め、その耳元に囁く。


「今ここで、暴れてもいいんだよ?」


リウから視線を外し、楽しそうにする一般人に視線を向けるレイン。

深く溜め息を吐いたリウが真っ直ぐにレインを見据えた。


「何の用? 私を誘拐しに来たの?」


冷え冷えとした声をレインに浴びせるリウ。

しかし、レインはそれに全く動じることなく微笑んだ。


「違うよ、まだ手は出さない。敵として会うのは三年後だよ。本当に、ただ観光に来ただけ。まぁ、折角君を見かけたんだから無視するなんてことは不可能なんだけどね。僕の執着心は君も知ってるでしょ?」


レインが微笑み、少しだけリウから離れる。

警戒するリウに向かって再び微笑みかけ、レインはその場から去っていった。


「……なんだったの?」


小さなリウの呟きは、街の喧騒に溶けていくのだった。

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