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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
みんなで騒ぎましょう
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天界

リウは現在、ヴェルジアに拉致されて天界(ヴェルジアの自宅)にいた。

ヴェルジアとリアは夫婦なので正確にはヴェルジアとリアの自宅である。

天界と呼ばれるその場所には巨大な神殿が鎮座しており、そこでいつも二人は過ごしている。

リアは国も持っているのだが、一週間に一度顔を出すだけで仕事はしていない。

それだけ部下が優秀ということではあるのだが、それにしても任せっきりはよくないのではと常日頃からリウは心配していた。


「……で、リウ。お祭り参加させて?」

「無理」

「別に賓客として呼べとは言ってないよ? ただのお祭りに参加しにきた観光客でいいんだよ?」

「リアは賓客扱いなのだけど」

「あっ、じゃあ僕も賓客」

「結局賓客として呼ぶことになってるじゃない」


リウが溜め息を吐いた。

誤魔化すようにヴェルジアが目を逸らす。


「そもそも、なんで参加したいのよ?」

「……リアとデートしたい……」

「それなら私のところじゃなくてもいいわよね?」

「だってリウのところが一番リアが喜びそうなんだもん! それに、妻の姉の国の様子を見に行くって言えば許可下りそうだし!」

「あなた、まだ天使にそこら辺の管理されてるのね」


ヴェルジアは自分で造り出した天使にスケジュールを完璧に管理されていた。

提案などは許されるが、ヴェルジアに自分でスケジュール管理をするような権利は存在しないのだ。

管理しないと変装してふらふらとデートをしに行くので。

やらなければいけない仕事も放置して、である。

変装してくれる分騒ぎにならないのが唯一の幸いだ。


「最近リアとイチャイチャできてないからデートしたいの! だからお願い! ね?」

「無理」

「なんでー!」

「あなたねぇ……仕事サボらなければある程度は暇もできてリアと接する時間も増えたでしょうに」

「うっ」


正論を突き付けられて思わず声を漏らすヴェルジア。

天使に全てのスケジュールを握られてるとはいえ、休憩時間もある程度設けられており仕事だって時間的には余裕もできるように設定されていた。

ヴェルジアは知らないことではあるが、時間以内に仕事を終わらせられれば天使がリアを呼び出しすぐにヴェルジアとリアが色々と話したりできるように話も通されている。

だというのに、ヴェルジアはサボってリアを探しに行きそんな時間を自ら失くしているのである。

そんなことをリアから聞いたことのあるリウは、とても憐れんだ瞳でヴェルジアを見た。


「……なんでそんな目向けるの?」

「可哀想だと思って」

「だったらお祭り参加させてよ」

「無理」

「チッ……」


ヴェルジアが不機嫌そうな顔で舌打ちを漏らした。

そんなヴェルジアを見て、リウが告げる。


「そんな柄悪いところ見たら、リアはあなたのこと嫌いになるかもしれないわよ?」

「何回も見られてるし、今回は舌打ちしたところ見られないよ。さっきベッドに連れて行ったもん」

「そう……絶対来ないの?」

「来ない」


どこにそんな自信があるのかと尋ねたくなったリウだが、それは堪えて話の方向を修正するために話しかけようとする。

しかし、リウが口を開く前にヴェルジアがリウの手首を軽く掴んだ。


「なんで駄目なの? ちゃんと変装するよ」

「……面倒な流れになったわね……変装するって言っても、リアはどうするのよ? リアだって注目の対象にはなるはずだから、そう簡単にはデートなんてできないと思うわよ?」

「うぅ~……でもデートしたい……」

「またの機会になさい。……ヴェルジア、本当にリア来ないのよね?」

「うん。終わったら行くって言ってあるから、入れ違いにはなりたくないだろうし動かないはずだよ。で? それ聞くってことはなんかあるの?」


そう尋ねてきたヴェルジアにリウが頷き、帝国から送られてきた手紙について話した。

全てのギフトやスキルを作った張本人のため、転生の勇者の現在についてもきちんと把握している。

というか、把握していなかったらリウが本気でぶん殴っている。


「……〝これ〟が来るから、他の面倒事を起こしたくないってことね」


納得したようにヴェルジアが頷いた。

リウが肯定し、口を開く。


「あいつが来ることが確定している以上、こっちに集中したいのよ。他の面倒事が起きちゃうと、集中力が分散してしまうでしょう。なにか仕出かす可能性もあるから、監視だけはしておきたい。だから今回は見送って」

「リアのこと気にしてたのは聞かれたくなかったからか」

「ええ。あの子なら、話を聞いたら必ずなにかしらアクションを起こす。心配だってあまりしてほしくないから秘密にしておきたいのよ」


そう言って苦笑いするリウを見て、ヴェルジアが薄く微笑んだ。

首を傾げるリウに向かってヴェルジアが柔らかく告げる。


「やっぱり、リウはちゃんと〝姉〟なんだねぇ」

「へっ? あ、えっと……ありがとう……?」


困惑し、疑問符を浮かべながらもリウが感謝を口にした。

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