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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
みんなで騒ぎましょう
80/1100

愚弄

一応、まだ遅れてない……はず。

リアがリウに甘えたり、レイルがリウの血液を狙っていたりしていると二世代目のもう一人、魔人形という人形に命が宿った希少な種族の魔王、人形王(ドールレクス)レティサンス・リアンヒアがやってきた。


「あら、レティ。久しぶりね」

「……」


リウがそう声をかけると、レティという愛称の彼は小さく頷いた。

相変わらずだとリウが微笑み、その美貌をぼんやりと眺める。

背中で一括りにされている夕陽色の髪はとても長く、切れ長の瞳は透き通るような黄金色。

彼は高名な人形師が全力で自分の理想を作り上げた人形に宿った魔人形だ。

一人の理想の完成形であり、その容姿は整っている。

しかし、彼、レティには一つの欠陥があった。

それは性格だ。

見た目のせいというべきか、見た目のお陰というべきか。

レティは無口に見えるが、実はとんでもない人見知りなだけなのであった。

なので、他も基本的に軽い挨拶をするだけだ。

普通に声もかけるが、会話の内容も返答を求めるようなものではなくただ単に聞いてもらうというもの。

みんな愚痴ったり面白おかしくあったことを話したりするため、レティは原初の魔王三人、そしてレイルとの仲は普通に良好なのであった。


「ねーねーレティ、元気だった? 僕さぁ、一ヶ月くらい前にリウと戦ったんだけど殺されかけたんだよね。挙句の果てにてへって。あざといけど許されるわけないよね。うん許されない。だってさぁ、詠唱ありなんだよ? あのリウが! 強化詠唱なんだよ!? 僕でも死んじゃうよぉ~」

「……さ、災難……でし、た、ね」

「うん災難だった! すっごくね!」


ルリアの言葉にむすりと唇を尖らせるリウ。

しかし、その表情はすぐに消えることとなった。

新参魔王たちがやってきたからである。


「チッ……何の用だよ、テメェと違って俺様は忙しいってのによ」


荒々しい感じのこの男が新参魔王のリーダー、ザイーフ。


「まぁ、ザイーフさんはお強いですしっ。許可してやったらいいんじゃないですかっ、強者の余裕としてっ」


気弱そうな、されど見下すような色を秘めた目でリウのことを見る少女は、リーテン。


「ええ、その通りです。というわけでさっさとお話いただけますか、最古の魔王様?」


明らかにリウのことを見下し話す男は、ストム。

これで全員が揃った。

しかし、見下されたリウは溜め息を吐き、更にやる気を減じさせていた。


「面倒だから簡潔に言うわ。今回魔王たちの舞踏会(サタンズバイレ)を開いた理由は国を創ったという報告よ。以上。面倒だけれど、規定だから我慢して。はい解散」


リウがそう告げると、魔王たち――主にリアとレイルが動揺をあらわにした。

それを確認して、仕方無いと苦笑いしてから新参たちに視線を向ける。

すると、ちょうどニヤニヤとしているザイーフが声をかけてきた。


「おいおい、最弱魔王サマが国だって? もっとマシな冗談を言えよ! まぁ、事実だったとしてもどうせまともに繁栄もしてないんだろうがな! 重鎮だってどうせマトモに居ないんだろ? 居たとしても何の役にも立たな――」


ザイーフの首筋が少しだけ切り裂かれた。

驚くザイーフの真後ろの壁にはリウの刀が突き刺さっている。


「〝聖剣召喚・〈光鈴(こうりん)〉〟」


ザイーフの真後ろに突き刺さっていた刀がリウの手元に戻った。

リウが無表情で足を組み、ザイーフを見据える。


「私の仲間を愚弄することは、許さない」


威圧感を伴った言葉がリウの口から放たれた。

しかし、ザイーフはニヤリと笑うと手に持った大剣で思い切りリウを切り付けた。

だが、そんなものリウには効かない。

リウにとってはなまくらのその剣を人差し指一つで受け止めたのだ。

刃物であるはずの大剣はリウの薄皮一つ切り裂けていない。

今度こそ、ザイーフは目を見開いた。


「どんな遊びを求めているのかしら。一方的な蹂躙? ええ、付き合ってあげましょう。……ほら、さっさと立ちなさいな」


リウが立ち上がり、そうザイーフを促した。

ザイーフはひしひしと嫌な予感を感じ、頬を引き攣らせながらも立ち上がる。

途端、リウが駆けた。

高速でザイーフに詰め寄り、その首筋に刀を当てる。


「死にたくないなら謝罪なさい。たっぷりと誠意を込めて、ね」


ザイーフは唇を噛み締め、しばし黙り込んだ。

そして、思い切り大剣を振る。

リウは後ろに下がり、そしてザイーフを見た。


「……そう」


呟き、リウはもう一度ザイーフとの距離を縮めた。

ボトリ、とザイーフの頭が転がる。

死体を〝消失(ロスト)〟で消し去ってからリウはリーテンとストムに視線を向けた。


「今後、できる限りで私に関与しないと誓い、そして私の仲間を愚弄しないと約束するのなら見逃してあげる。さぁ、どうする?」


死にたくはない二人は、呆気なく頷いた。

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