ドワーフにご挨拶
プロット無しで自由に書くの楽しい
猫耳族への挨拶を済ませた四人は、ドワーフの集落に向かっていた。
ドワーフは全員が鍛冶師または建築士であり、またほとんどの者が酒豪だというのも特徴なのであった。
早速挨拶に赴いた四人は――絡まれていた。
「いやはや、魔力で物を造り出せるたぁ流石姐御だなぁ……」
「え、えっと……ありがとう?」
レアがつい漏らしてしまった物質創造のことを聞いてドワーフたちが集まり、リウが実演して見せると何故かリウのことを姐御と呼ぶようになってしまっていた。
若干頬を引き攣らせつつ助けを求めようとリウが視線を彷徨わせれば、レアはドワーフの女性たちに可愛がられ、セラフィアはドワーフの男性たちに口説かれており、フローガは酒飲み勝負をしていた。
とりあえず酔っ払っているフローガは後でシメると決意しつつリウはドワーフたちに声を掛けた。
「私、国を造っているのだけど……素材なら幾らでもあげるから移住してくれると嬉しいわ」
ジリジリと後ずさりながらリウが告げた。
ふにゃりとした笑みにドワーフの心が射抜かれる。
ガシリと腕を掴まれてリウの口から小さく悲鳴が漏れた。
「移住する! するから結婚してくれぇええっ」
「いやあなたさっき妻がいるとか言ってたわよね!?」
「妻が二人居ても問題ねぇ!」
そう叫んだドワーフの男性に、一人の女性が近付いてきた。
こっそりの男性の背後に忍び寄ると、握り拳を思い切り振り上げ、
「問題無いわけないでしょこの阿呆が!!」
男性の頭を思い切り殴った。
周囲に痛そうな音が響く。
1拍置いて、男性が叫んだ。
「いってぇええええ! なにしやがる!?」
「なにしやがるじゃないわよ! 魔王様が困ってるでしょうがぁ!!」
もう一度、男性の頭を女性が殴った。
相変わらずとても痛そうな音が鳴る。
しばらくして痛がる男性に満足したのか女性がリウの方を向いて頭を下げた。
「うちの夫が申し訳ありませんでした。コイツには言い含めておきますので、どうかご容赦を」
「……あ、いや、気にしてないわ。大丈夫。少し驚いただけだから……」
チラリとリウが頭を抱えてのたうち回る男性に視線を向ける。
もがき苦しむ様子になんとも言えない気分になってリウが女性に曖昧に微笑んだ。
「そうですか? 遠慮しなくても大丈夫ですよ。なんなら殴っていただいてもいいですが」
「ほ、本当に平気だから。謝罪なら、私の国に移住でもしてくれると嬉しいわ」
「そうですね……検討させていただきます」
「えーと……それじゃあレアとセラフィアも困っていそうだから、私は行くわ。国で会えることを期待してるわね」
リウはそれだけを言い残してレアの方へ歩き出した。
未だに女性たちに可愛がられている。
「レア、大丈夫?」
「あっ……リウ様! 助けて下さい!」
レアが女性たちに抱き締められながらリウに向かって手を伸ばす。
それに気付いて、女性たちが顔を上げてリウを見た。
リウがのんびりと歩いてレアを離してもらうために声を掛けようとして、
「「「かっわいい~!!」」」
そんな言葉と共に、レアと一緒にリウも抱き締められた。
リウがレアのすぐ隣でキョトンとする。
そして、すぐに現状を理解して、
「ぅ、あ……うわぁあああ……!?」
顔を真っ赤に染めてそんな声を上げた。
すぐに手で顔を隠すリウ。
しばらくして顔の赤みが引いてきた頃にリウがドワーフの女性たちに頭を撫でられながらセラフィアに助けを求めようとした。
口説いてくる男性たちから脱出していたらしいセラフィアが、酔っ払っているフローガの目の前で鞭を持ちながら仁王立ちしていた。
リウは顔ごと目を逸らして見なかったことにした。
レアはちょっとそれどころではなくなっていた。
心なしか目がぐるぐるしている。
そんな二人の様子を知ってか知らずか、ドワーフの女性が声をかけてきた。
「ねぇねぇ、お嬢ちゃんたち。エルフ製の髪飾りとかネックレスがお姉さんのお家にあるから、ちょっと来ましょ? ね?」
女性はそう言うなり二人を抱えて家の中に連れて行ってしまった。
きゃいきゃいとはしゃぎながら他の女性も付いてくる。
リウは抵抗したが、思いの外女性が怪力だったので怪我をさせてしまうかもしれないと断念。
レアは気力が尽きて無抵抗で連れられていた。
数時間ほど髪を弄ばれ尽くしてやっと解放された二人は誰かに絡まれない内に急いでセラフィアの元へ行き、エルフの集落へ急ごうとした。
が、赤いんだか青いんだか分からない顔色をした酔っ払いのフローガを連れて帰らないといけないのでセラフィアは純血竜の集落へと帰ることになり、二人きりでエルフの集落に向かうことになったリウとレアは一抹の不安を覚えながらもエルフの集落へと向かうのだった。
ドワーフの女性は体格のいいお姉さんって感じです