準備
第二章開始~!
国家中立議会にて国として認められ、更にお礼として金貨二十万枚まで受け取った魔国ノルティアナ。
そんなわけでリウは、記念として宴を催すことにした。
純血竜が解放された記念でもある。
しかし、正式に国として認められたためか移住が多くなり、まだまだ忙しく宴の準備は遅々として進んでいない。
更に、問題が一つ。
随分前にリウが〝国を創ったら他の魔王たちに知らせなければならない〟と言っていたのを覚えているだろうか。
今までは、正式に認められたわけでもなかったので報告は後回しでもよかった。
だがしかし、認められた以上知らせなければならないのだ。
……ちなみに、既に認められてから一週間が経過している。
「レア~、お祭りの準備進んでる~?」
休憩中にリウが尋ねた。
ちなみにリウのスケジュールは全てレアも把握している。
「一応は。ただ、大工さんたちも忙しいみたいですぐには開催できなそうです。というわけでリウ様、怒られる前に他の魔王様に報告しましょう」
「やーだー……行きたくなぁい……」
「でも、やらないといけないんでしょう?」
「そうだけど……今のところ誰かから促されたりしてないし……」
「私にされてるじゃないですか」
「レアは魔王じゃないから例外なの!」
リウがむすりと頬を膨らませた。
こんな風に、嫌がって報告しようとしないのだ。
何故なのかレアは把握していないが、自分のことを見下している新参魔王に文句を言われると面倒くさいからという理由だったりする。
ルリアが聞けば〝だったら力を見せつければいいのに〟と正論を告げることだろう。
結局リウは面倒くさがっているだけなのだ。
「……はぁ。リウ様、招待するのは誰にします?」
レアが溜め息を吐いて話を変えた。
すると、リウが誰が居るだろうかと思案を始める。
「先ず、ルリアは確定でしょう? あとはイルム王国にもお世話になったしウィズダムと……以上!」
「賓客は二人だけですか? リウ様ならもうちょっとお知り合いとか居ると思ってたんですけど」
「確かに居るけど……リアとか、二世代目とか」
「え、えっと」
「あぁ、リアは私とルリアと同じ原初の魔王よ。神聖悪帝ルエリア・リリアスフィナって言ったら分かるかしら」
「あっ! はい、分かります! えーと、となると二世代目というのも魔王様の……」
「ええ。私たちの次の世代の魔王二人のことね」
レアが目を輝かせた。
そして、リウの手を掴んで詰め寄る。
「会ってみたいです! とっても! 会うだけでもいいのでっ!」
「え……っと、二人共結構……変人よ?」
「いいです! お話なんてしなくてもいいので! 会うだけ、いいえなんなら遠くから見るだけでもいいです!」
「わ、分かったから、そんなに詰め寄らないで……」
「じゃあお誘いするついでに報告してきて下さいね」
「え、あ……」
そこで、リウは悟った。
嵌められた、と。
しかし、リウとしても変人ではあるが友人といえば友人の二世代目と同じ原初の魔王のリアを誘いたい気持ちはあり、誤魔化す気が起きないリウ。
レアは上手くいったと一人満足げに頷き、とりあえず今日は普通に仕事をしてもらおうとリウを促した。
そして、手紙を送るなどの方法が頭から抜け落ちているリウは報告のために各魔王を集合させるための連絡手段と会場場所を頭の中でリストアップしていた。
◇
それから三時間後。
再び休憩をしていたリウの元にディーネが訪れた。
『お疲れりーちゃん! れーちゃんから聞いたよ、やっと報告の準備始めたって!』
「う……」
『あれ、もしかして嫌々やってる?』
「だって新参共から見下されてるから文句言われそうで面倒だし、リアも二世代目も変態だし!」
『えー、あの子は変態じゃないと思うけどな』
ディーネの言うあの子とはリアのことである。
しかし、リウはむすりとして答える。
「変態ではないかもしれないけど、私に対して過保護すぎるの! 私の方が強いのにっ!」
リウはそこが納得行かないらしい。
ディーネが苦笑いし、リウの頭をなでなでする。
『で、あれでしょ? 〝魔王たちの舞踏会〟開催するんでしょ?』
ディーネが尋ねると、リウがディーネの手を払い除けながら頷いた。
〝魔王たちの舞踏会〟とは、魔王たち全員が集まる場のことである。
「そう、なるわね……」
『でもあれってなんでああいう名前なの? お茶会とかでもいいんじゃない? あとはなんだろ、宴とか?』
「武闘会ともかけてるのよ。あとは、単純に字面とか。当時は集まっては新しい魔法を披露したり、それを使って模擬戦とかしてたから」
『へえ~』
「はぁ、私一人しか行っちゃいけないのが辛いわ……」
『あ、同伴禁止なんだ』
「昔に色々あってね」
リウが溜め息を吐き、〝魔王たちの舞踏会〟の予定を立てていった。




