家族
あれから、なんとか国家中立議会の手続きを終わらせたリウ。
それから一週間して、リウはしっかりと国家中立議会に参加することが認められた。
現在は会場の手前で最終確認を行っている。
リウに同伴しているのはグアルディアとディーネ。
高位の精霊である二人なら多少の牽制になるだろうということでこの人選となった。
ディーネは幼女の姿であるため、精霊であることを分かりやすくするために基本宙に浮いていてもらうことになっている。
『条件を満たしていること、そして国民を尊重し、大切にしていることが認められればいいんだよね?』
「ええ。だから、それを上手く言い表すことができれば大丈夫なはずよ」
『審査員が国をその目で見てくれれば早いのですが』
「難しいでしょうね。確かに、言葉で聞くより確実性はあるでしょうけれど……必ずしもその国が安全なわけじゃないし、もし安全だったとしても通る道が安全だとも限らない。その目で確認したとして、国全体が取り繕うことはかなり困難ではあるけど不可能じゃないし。幻覚とか見せれば当人はいい国だって判断して、認められることになる。そうなったらやり放題でしょう?」
世の中にそんな人間がいなければこれも採用できるのでしょうけど、と呟くリウ。
ディーネは確かにと苦笑いし、会場に向かおうと促した。
頷き、リウは少しの緊張を胸に歩き出した。
◇
案内された場所に座ると、リウは軽く周りを見渡した。
リウの前に居るのは、全員が審査員。
そして、吹き抜けになっている二階に居る者は国家中立議会にて国として認められた場所の国王、または公爵である。
そこにはイルム王国国王のウィズダム・イルム、そして魔国シェイタンガンナ女王のルリアスタル・アーシャンレートことルリアも居る。
強制参加ではないため、全員ではないがそこそこな人数がそこにいる。
ちなみに、帝国は参加していない。
レインはとても行きたがっていたが、皇帝ではなく皇子である時点で参加するのは不可能である。
「これより、魔国ノルティアナの審査を始める」
審査員の一人がそう口にした。
それを合図にして、審査員たちから様々な質問が投げかけられる。
リウはそれに堂々と、そして真摯な態度で丁寧に嘘偽りなく答えていった。
「国民のことはどのように思っている?」
そんな質問がリウに投げかけられた。
国として認めるにあたって、大事な質問。
それに、リウは優しげな笑みを浮かべながら答えた。
「私にとっても、国にとっても、とても大事なものだわ。国民が居なければ、国は成り立たない。そして、私が街に出ればみんな歓迎してくれる。だから、そうね……言い表すのなら、家族かしら。国民がいなければ、それは国として成り立たない。国民が居れば、私を暖かく受け入れてくれる。国民が居るから、国民のために頑張ろうと思える。だから、私にとって国民は家族よ」
終始笑顔でリウがそう告げれば、審査員は静かに頷き次への質問へと移っていった。
そうしてまた幾つかの質問が投げかけられたあと、審査員たちはコソコソと話し合っていた。
元々聴力はいいため、リウやディーネ、グアルディアに会話は筒抜けなのだが。
会話の内容は、主に治めるのが魔王なのに国として認めて大丈夫なのだろうかというもの。
不安になるのは分かるが、とリウが苦笑いし、そして声をかけた。
「少し、いいかしら?」
「……どうぞ」
審査員からの許可が降り、リウはその表情から笑みを消して口を開いた。
「私を警戒する気持ちは、分かるわ。けれど、〝中立〟であるはずのあなたたちがそれを理由に入れて国として認めるか否かを話し合うのは如何なものなのかしら?」
審査員たちがハッとした。
その様子を見て、無自覚だったのかと少々驚くリウ。
しかし、それは大したことではないため他のことに意識を向けた。
それはルリアだ。
彼女は、何故だかとても微妙そうな顔をしていたのである。
なので、魔法でルリアに話しかけることにしたリウ。
ちなみに審査員は感情を挟まずに再度話し合いを行っている。
『ルリア、どうしたの?』
『あ、リウ。いやさぁ、僕のときはもっとちゃんとしてたのにって思ってね』
『あら、そうなの?』
『うん。私情とかは一切挟んでなかったかな。まぁあのときとはそもそも人が違うし、当然ではあるんだけど。あの子たちの気も引き締めれてよかったかもね』
『そう……あ、話し合い終わった』
リウが魔法を解除し、審査員に意識を向けた。
「魔国ノルティアナを国として認め、国家中立議会の所属下とします。また、此度は大いなる失態を指摘して下さりありがとうございます。お礼として、議会より金貨二十万枚がノルティアナに贈られることが決定致しました。準備ができ次第送らせていただきますので、よろしくお願いします」
「に、二十万……お礼なんだし、中立どうこうとは関係ないけれど……いやでも、こんなには流石にっ……!」
「受け取って下さい。国家中立議会が中立ではなくなってしまうところだったのです。あなたが指摘しなければそのせいで国として認められなかった場所が出てくる可能性もあったのですから、これでも足りないくらいです」
「……それは有難いけれど……本当にいいのね?」
「もちろんです」
諦めたようにリウがお金を受け取ることを認め、ノルティアナは晴れて国として認められることになったのだった。
元々は、帝国のものになるはずだった純血竜たちとその居場所。
認められなかったら帝国のものとなるのだから、これまで不安に付き纏われていたことだろう。
それが、国として認められたことにより綺麗さっぱり解消された。
当然、リウからの報告を聞いた純血竜たちは歓喜に包まれるのであった。
第一章はこれにて終了です。
明日からは第二章になりますので、よろしくお願いします!




