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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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猫好き

時刻は午後七時。

現在レアはメイリーに教わりながら裁縫を行っていた。


「レアちゃん上手ですよぉ~。針が指に刺さらないように気を付けて下さいねぇ」

「あ、は、はい!」


慎重に針を進めていくレア。

そんなレアを傍らでリウとディーネが見守っていた。

リウはレアへの恐怖心とそれを抱えるに至った事象を忘れることにしたようで、ニコニコと優しく微笑みながらレアを見守っている。


「……キリのいいところまでやったら一旦お風呂に入りましょうか」

「分かりました! あ、危ない……」

「大丈夫? ……話しかけない方がいいかしら……」


リウの言葉にレアが頷くと、注意が散漫してしまったようで針が指に刺さりそうになってしまった。

それを見てリウが心配そうに声をかけ、話しかけたせいでこうなったのだからと困ったように呟く。


「さ、刺さってはないので大丈夫です。針から目は離さないようにします……」


反省したようにレアがそう言って、また裁縫に集中し始めた。

それからしばらくして、キリのいいところまで終わり四人がお風呂に入る。

また洗い合い、リウがくすぐられ、拗ねたリウの機嫌を取り、レアが御守り作りを再開した。

リウは少し離れたところでむすっとしている。


「レアちゃん、その調子ですよぉ~。頑張って下さいぃ」


気の抜ける声でメイリーに応援されながらレアが御守り作りを続け、午後八時少し過ぎには完成した。

レアを労ってから四人で眠りにつき、翌日、もう一度城下町に赴いていた。

観光のためである。

今日はリウとディーネ、メイリーとレアのペアでの観光だ。

広場で別れ、昨日と同じくお昼には集合する約束をしてからリウとディーネが歩き出した。


「ディーネは昨日ちゃんと観光できた?」

『できなかったよ、うん……ずっとメイリーの着せかえ人形になってたから……』

「お疲れ様。道中に気になるところとかあった?」

『ん~……あ、なんかね、小物店みたいなとこあったからそこ見てみたい』

「場所は分かる?」

『大まかにだけど。こっちだよ』


ディーネがリウを伴ってしばらく歩くと、辿り着いた場所は小さなお店だった。

ここがディーネが気になっていた場所らしい。

中に入ると、色々な小物が置いてある。

可愛らしいデザインのものや、気持ち悪――独特なデザインのものなど。

ディーネによると、ここには昨日も少しだけ寄ったらしい。

しかし、本当に短時間しか居れなかったためまた来てみたかったそうだ。


「……ん」


ディーネがぐるぐると店内を回っている間、リウもマイペースに商品を眺めているとリウがふと猫の置物を手に取った。

そして、ふにゃりと綻ぶような笑顔を浮かべる。


「猫ちゃん……かわいい……」

『……りーちゃんってそういえば途轍もない猫好きだったね』

「んにゃっ!? い、いつの間にぃいい……」


ディーネが後ろからリウに声をかけると、驚き悲鳴をあげてリウが顔を真っ赤にしていた。

恥ずかしかったらしい。


『……欲しいなら買えばいいのに』

「猫好きが露呈するじゃない!!」

『露呈しちゃ駄目なの?』

「だって恥ずかしいんだもの」


リウが唇を尖らせた。

むすっとした表情のまま店内を歩き回る。

しかし、猫の形の小物や猫が描かれたものを見つける度に立ち止まってそれを眺めてしまっていた。

そこでふと小さな猫のぬいぐるみをリウが発見する。

それをじっと見つめ、リウがそれを手に取った。

しばらくして、迷うような素振りをリウが見せ始める。

ぬいぐるみは欲しいが、恥ずかしいらしい。


「……う~……」

『次来たときには無いかもね』

「買うっ!!」


ぬいぐるみは白と黒の二つがあるが、リウは両方購入することにしたようだ。

ついでにピンク色と水色のリボンを手に取りつつ、購入を済ませるとなにかを買ったらしいディーネと共に外へ出た。


『そういえば、リボンも買ってたけどなにに使うの?』

「ぬいぐるみ猫ちゃんの首元と耳元で結ぶの」

『ぬ、ぬいぐるみ猫ちゃん……』


物凄く子供っぽくなっているリウを見てディーネが苦笑いを零した。

リウはそんなディーネの様子にも気付くことなく上機嫌である。

ちなみにぬいぐるみとリボンはちゃんと亜空間にしまってある。

お昼まで観光を続け、昼食もそこらへんの食堂で済ませ、夕方にはお城へ帰っていった。



空が赤く染まった頃、四人はルリアと別れの挨拶を行っていた。

ディーネが泣き出しそうな雰囲気で別れを告げているが、ルリアはあまり気にすることなく隣に居るリウに〝時間できたら遊びに行くねー〟と気軽に別れを済ませていた。

そんなわけで、張り切る御者にエスコートをされてリウたちは魔国ノルティアナへ帰っていった。



国に帰ってくると、四人は国民に出迎えられた。

どうやら魔国シェイタンガンナから手紙があったらしい。

気が付けばセラフィアの手に手紙が乗っていたらしく、不思議そうにするセラフィアにリウがルリアの仕業だろうと答えていた。

そんなわけでわいわいとした雰囲気で出迎えられ、とりあえずは各々の家や部屋に帰っていった四人。

街の賑やかさも落ち着いてきた頃に、少し前にイルム王国へと一緒に赴いたリエラが報告をしにやってきた。

久しぶりの再会である。


「リウ様、国民人数についてのご報告にやって参りました」

「……ええ」

「現在の国民人数は約四千人です。このままでは中々国民が集まらないかと思われますが……」

「そうね……ルリアの国でも宣伝しておいたからもう少し増えると思うけれど。どうしましょうか……うーん、冒険者とかが色々な人に伝えてくれれば嬉しいのだけど……いっそのことここを通らなきゃいけないところに魔物大量発生とかさせようかしら」

「そ、それはやめて下さると嬉しいです」

「冗談よ。……やっぱり足りないのは知名度だと思うの。ここでなにかが起これば、知名度も自然と上がる。この場所の特徴といえば、精霊竜グアルディアの影響を受けていること……」


精霊竜グアルディアはレアたちの先祖であり、遥か昔にリウが助けてあげた竜である。

特産物である精霊薬を作ることができるのもこの土地にグアルディアの遺体が眠っており、その影響を受けているためだ。


「……そういえば、グアルディアって有名だったわねぇ……」


にやりと、リウが口角を吊り上げた。

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