二人目の神
リウとルリアが模擬戦をした日から数日後。
国交を結ぶ準備も終わり、リウはレア、ディーネ、メイリーを伴って玉座の間に佇んでいた。
現在はルリアとリウによる長々とした演説が終わり、丁度解散となったところだ。
「はー……疲れたぁ。リウは疲れないの?」
「私は別に。適当に喋ってただけだし」
「あれで適当……僕は無理だから事前に考えてきてるんだけどぉ! ずるい! その頭脳僕に分けてよ!」
「そう言われても困るのだけど……」
リウが困ったように微笑んでいると、ルリアは思考を切り替えてふと尋ねた。
「そういえば、リウたちはいつ帰るの?」
「んー……ディーネがあなたと話したがっていたし、今日はまだ滞在する予定よ。まぁ、明日か明後日くらいかしらね」
「ん、了解。前日には教えてね、馬車用意するから」
「……私が転移した方が早いのだけど……」
「残念、御者が張り切ってるから無理でーす。なんか秘書ちゃんを通して帰りも担当させてくれって頼まれたんだよね。てことで、報告はよろしく」
「まぁ、いいけれど。とりあえず、決まったら報告するわ」
「うん。じゃ、僕は執務室に居るから。じゃーねー」
ルリアが立ち去ると、リウたちも部屋に戻っていった。
◇
「……で、帰りはいつにする?」
部屋に帰り少し休んだあと、リウがみんなにそう尋ねた。
ディーネが勢いよく手を上げて口を開く。
『はいっ! ずっとここで過ごっ痛い!?』
「あなたが役職を持ってなければそれも許可したけれど、もう役職持ってるんだから駄目よ。ルリアに気が向けば来るように言っておくからそれで我慢しなさい。あと次にここに来ることになったらディーネも出来るだけ同行させてあげるから」
『う~……はぁい』
ディーネがしゅんとしながら頷いた。
リウがディーネの頭を撫でながらレアとメイリーに意見を求める。
すると、二人が顔を見合わせて同時に口を開いた。
「「観光がしたいです!!」」
観光がしたいらしい。
リウが思いの外大きな声で言われたため少し驚きつつ、思案するような仕草を見せる。
「観光ね……別にいいけれど、となるとあと何日滞在しようかしら……一日だけでもいい? それとも二日欲しい? あ、今日はここで過ごしなさいね。というか、観光するならプランを練りましょう」
「リウ様! 私は二日欲しいです! その方がたくさん観光出来ますし!」
「私はどっちでもいいのでぇ、レアちゃんの意見に賛同しますぅ」
「ん、ならあと二日ね。明後日に帰るって伝えておくわ。なんか御者が張り切ってるらしいわよ」
「そうなんですか?」
「ええ。なんでか分からないけれど……ルリアに遅いって言われたからかしらね」
「じゃあ、帰りは期待ですね!」
「……そうね」
にこりと微笑み、レアの頭を撫でてからリウがルリアに二日後に帰る旨を伝えに向かった。
リウを待つ間、少し暇になったレアが立ち上がり本棚へ向かった。
そして、一番端からタイトルを確認し始める。
『れーちゃんなにしてるのー?』
「観光のために、この国の地図でもないかと思って……」
『あ、確かにあったらプラン立てやすいかも。私も探すー!』
「じゃあ私も探しますぅ」
三人が揃って本棚に群がり地図を探し始めた。
探し始めてからしばらくして、ふとレアが一つの本を手に取る。
『ん、見つけたー?』
「いえ……ただ、ちょっと気になっちゃって」
『そう? なら読んでてもいいよ。えーっと、なになにー? 神話……? 私は知ってるからいいや。メイリーも気になるようなら読んでていいよ』
「ごめんなさいディーネ様ぁ、少々休憩させていただきますぅ」
メイリーがそう言うと、レアと一緒に本を読み始めた。
レアがゆっくりと朗読を始める。
「遥か昔、創世神ヴェルジアに並ぶ神が存在するとされていた。彼の神は、満月の夜に降臨し、かつての大国リフィード王国を一夜にして滅ぼし、そして姿を消した。目撃者によれば、その神は純白と漆黒の二対四枚の翼を持っていたと言う……彼の者が神と呼ばれる理由は、その瞳である。その瞳は、翡翠色であったという。翡翠の瞳は――」
ガチャリと扉が開き、リウが入ってきた。
そして、レアが持つ本を見て首を傾げる。
「なに読んでたの? えっと、神話……?」
頷き、レアがその瞳を見ながら少し微笑む。
「はい。あ、地図探してる最中でした。そろそろ終わりにしときますね!」
レアが本棚に本をしまい、探すのを再開しようとするとリウがそれを止めた。
そして、手に持ったそれをひらひらと動かす。
「これ、あると便利だろうからって渡されたわ」
手に持ったそれは簡易地図らしい。
全員でリウの膝の上に広げたそれを見ながら観光ルートを決めていく。
「じゃあ、二人一組でここで別れて、各々でこの辺りの好きな場所を観光するってことでいいかしら? 集合はここで、そのあとはまたみんなで移動して……そういう流れでいい?」
「「『はーい!』」」
「ん、じゃあこれで決まりね。今日はちゃんと寝るのよ」
リウがそう言うと、四人は各々でくつろぎ始めた。




