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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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リウの実力

パーティーを開き、のんびりした時を過ごし、ワーカホリックなリウを無理矢理寝かした日の翌日。

リウたちが過ごしている部屋にルリアが一緒に居た。


「リウ~。書類仕事疲れたぁ~」

「……私は昨日やってたら無理矢理寝かせられたわ」

「えー、ずるいぃ」


机に突っ伏していたルリアが顔を上げて文句を言った。

すると、無言でルリアの髪を弄っていたディーネがむすっとした声でルリアに声をかける。


『りーちゃんは仕事しすぎなんだよ。だから無理矢理止められて当然』

「……リウって書類仕事好きだっけ?」

「書類仕事が好きというより、書類仕事をすることによって国が回ることが好きなのよ」

「え、リウの国って回るの……?」

「物理的な意味じゃないわよ。馬鹿なの?」

「リウって僕にだけなんか辛辣だよね。……あ、でもルエリアに対しての方が暴言多いか」


リウはルリアやもう一人の原初の魔王、ルエリアに対して辛辣らしい。

理由はなんかウザいから、らしいが。


「なんかさ~、国家中立議会の書類が昔にあったじゃん? あれ手伝ってもらったとき異様に書類やるの面倒くさがってなかったっけ?」

「だってノルティアナの仕事をするのは必要だからで、仕事の成果が目に見えて、あるいは聞いて実感できるでしょ? でも議会はそういうのないじゃない。書類仕事をしたあとの実感が好きなのであって、書類が好きなわけじゃないし……」

「……じゃあ、書類仕事をすることによって多少のストレスは溜まるよね」

「まぁ、なにをしてもストレスは多少なりとも溜まるでしょう。で?」


リウがルリアに話を促すと、ルリアはずいっとリウに顔を寄せた。


「久しぶりにさ。――殺ろ?」


ルリアの紅い瞳が、妖しげな光を宿していた。



五人はルリアの先導により、途轍もなく広い訓練場に移動していた。

今の時間は軍の訓練もなく、人がいないらしい。


「あ、あの……魔王様同士が戦っても大丈夫なんでしょうか……? ほら、周りの被害とか……」


少し距離を取って相対する二人に恐る恐るという風にレアが尋ねた。

確かに、原初二人の魔王が戦うというのだから周りも気にしてしまうだろう。


「リウ、結界お願い」

「ん。えーっと……〝空間創造〟」


〝空間創造〟という亜空間を作り出すギフト。

リウはよく便利な収納箱として利用するが、もちろんそれだけの能力ではなかった。

……無限に収納が出来る時点で充分チートではあるのだが。

リウは目の前に亜空間を創り出し、それに物を突っ込むことで収納として使っている。

亜空間はリウが許可しなければ認識することさえ不可能なのだ。

防犯もばっちりである。

……というのはいいとして。

亜空間を創り出し、その中に人が入れば中でなにをしても外に被害が出ず、リウが許可をすることによってレア、ディーネ、メイリーも見学が出来るというわけだ。


「じゃー、戦おっか~。ディーネも含めてリウの実力よく分かってないでしょ。人間相手じゃ一秒もかからないし。まぁお遊びしなければだけどね。あ、リウはどっち? その……あ、聖剣なんだっけ? その剣? それとも魔剣?」


リウは普段はしまっているが魔剣も所持している。

普段は聖剣だが、むしゃくしゃしてるときはその魔剣を振り回してストレスを発散するのだ。


「んー……聖剣だと悪魔であるあなたに有利になるわよね……対等に殺り合いたいから魔剣にするわ。〝魔剣召喚・〈闇宴(やみうたげ)〉〟」


リウの言葉が終わると同時に大剣が現れた。

光が呑み込まれているのではと錯覚しそうなほどの漆黒の刀身と、赤黒い柄。

全体的に細く、小柄な体躯のリウに似合わないそれを肩に背負いリウがディーネに話しかけた。


「ディーネ、審判お願い」

『ん、りょーかい! 危ないって思ったら止めるけど、それでもいい?』

「んー……そこらへんの手加減は把握してるし、周りの被害が酷かったらでいいわよ。念のためある程度離れておいてね」

『分かった! えっと、じゃあ……両者構えて! ……始めっ!』


ディーネの言葉が届くと同時、リウがルリアに迫った。

大剣の刃がルリアの肌に届く直前で藍色の魔方陣が一瞬で広がりその刃を弾く。

その瞬間にリウがひらりと後退した。

刹那、水の刃が先ほどまでリウが居た場所を切り裂く。


「――あはッ」


どこか狂気じみた笑い声がリウの口から漏れた。

すぐにルリアがその場から飛び退く。

しかし、飛び退いた先で碧の混ざった黄金の魔方陣がルリアの頭上に広がった。


紅流星群(クリムゾンミーティア)!」


魔方陣から無数の紅い光が放たれた。


「これは不味いよぉ……っ」


ルリアの口から苦悶の声が漏れる。

しかし、なんとかその魔法を撥ね飛ばし幾つもの魔法をリウが居る場所とその付近で発動させた。


「ふふっ、あはっ……あはははは! あっははははは!」

「あーもうっ! それ怖いんだよぉ! なんでこの魔法を無詠唱で出来るの!」


ルリアが大量の泣き言を零した。

瞬間、ピタリとリウの哄笑が止む。


「……〝希望喰らう深淵よ、顕現せよ。全てを喰らい、世界を絶望に堕とせ。喰らわれた命は苦しみの中で終わり、二度と輪廻を巡ることはなく。やがて世界は終わり、全てが深淵に呑まれる。終焉よ、深淵を以て訪れよ〟――〝深淵渦アビスメイルシュトローム〟」


ルミアの顔が真っ青に染まった。

後ずさり、そして。


「ギブっ! ギブぅううう! 詠唱ありのそれは死んじゃうからぁあああああ!」


その声が響くと同時にルリアが亜空間から弾き飛ばされ、すぐにリウも出てくる。

そして、黒い渦で包まれた亜空間を手に持った聖剣でリウが斬ると、黒い渦は黒い光となって消えていくのだった。


「……てへ?」


リウがやっちまったと言わんばかりの表情でそう言えば、ルリアは。


「てへじゃねぇよこの馬鹿がァ!!!!」


鼓膜が破れそうなほどの声量で叫ぶのだった。

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