強欲の大悪魔
遅めの投稿~
一夜明けて、ルリアを含めた五人は現在学園長と対面していた。
とはいえ、当然と言うべきかルリアと学園長は面識があり。
「やほー。事前連絡はさせたはずだけど届いた? 今日はよろしくぅー」
なんとも気安い言葉を学園長にかけていた。
そして、意外にもリウも面識があるらしい。
「……強欲」
ボソリとリウが呟いた。
とても嫌そうな顔をしている。
リウと学園長が顔見知りなことは知らなかったらしく、ルリアが少し首を傾げた。
「あれ、アヴァールとリウって顔見知りだったの? でも友達って雰囲気じゃないね」
学園長はアヴァールという名前らしい。
リウが顔を顰め、そっとメイリーの後ろに身を隠した。
「えっ、なになに!? アヴァール、リウになにしたの!?」
「姫、我は何もしておらぬ」
「嘘よ! 私の剣盗もうとしてたもの! 聖剣だから弾かれてたけど!」
「えっそれ聖剣なの!? 僕としてはそっちの方が驚きなんだけど!」
リウが使っている刀は聖剣らしい。
魔王なのに。
剣なのか刀なのかはっきりしないが、この世界には刀という概念そのものが無く、異世界人の話でこういう剣の一種があるらしいと広まり、それを鍛冶師が再現したものが〝切断〟するための剣、もとい刀なのである。
つまりは、地球で言う刀という武器自体は存在しているが、刀という名称は広がっておらず剣の一種という認識なのだ。
「弾かれたからよかったものの! 盗まれるところだったのよ!?」
「あぁ、うん……そうなんだ。アヴァール、人のもの盗んじゃ駄目だよ」
「我は盗もうとは……」
「持ち運ぼうとしてたじゃない! 大体ね、他人のものを許可も無しに触れるのはどうなのかしら!? 良くないでしょう! 更に謝罪だって無いし! それにっ! 不法侵入してきたのよ! さぁルリア! これを叱って!」
むすっとしながらリウが捲し立てた。
さらりとアヴァールをこれ呼ばわりしつつ、ルリアに叱ってと訴える。
「わ、分かった、分かったから落ち着いて! えっと、叱ればいいんだよね、えーっと……アヴァール、人のもの触ったり不法侵入したりしちゃ駄目だよ! 分かった?」
「……反省する」
「反省したって!」
「ふんっ」
ふいっとリウがそっぽを向いた。
反省しても許すわけではないらしい。
「あ、これずっと拗ねてるパターンだ。じゃあもう話進めるね。アヴァール、案内人は?」
「そろそろ来る頃だろう」
アヴァールがそう言うと、扉がノックされた。
噂をすればなんとやら、である。
「入れ」
一言アヴァールが告げると、扉が開いた。
すると、恐らく案内人であろうキリリとした雰囲気の女性が入ってくる。
女性は扉を閉め、一礼してリウたちの元に歩いて来た。
「先ずは、姫様。お久しぶりでございます」
「ん、そういえば教師として働いてるんだったね。ご苦労。エクセレンテが案内人?」
「その通りだ」
アヴァールが頷くと、ルリアは四人の方を向いてエクセレンテと呼んだ女性を紹介し始めた。
アヴァールのことは忘れることにしたのか、リウも普段の調子に戻って大人しく紹介を聞くことにしたようだ。
「四人共、この子はエクセレンテ。今回の案内人みたいだよ。で、エクセレンテ。右からリウ、レア、ディーネ、メイリー。リウは僕の同じ原初の魔王で、ディーネは水の大精霊。レアとメイリーはリウの配下だよ。今日は案内よろしくね」
にこりとルリアが微笑むと、エクセレンテは四人に向かって礼をした。
顔を上げると、静かに口を開く。
「紹介に与りました、エクセレンテと申します。以後、お見知りおきを。そして姫様、見学中は勝手にどこかへ出歩かないようお願い申し上げます」
エクセレンテが自分の名を名乗ったあと、ルリアに向かってそう告げた。
ところで、国主であるルリアが姫様と呼ばれるのには理由がある。
ルリアとディーネの関係にも関わっているが、元々ルリアは悪魔の知識を持たぬまま生まれてきた。
そのため、他の大悪魔たちに可愛がられてきた結果姫様と呼ばれるに至ったのだ。
ちなみに強欲の大悪魔であるアヴァールも姫と呼んでいるのは〝姫〟という呼び名が一種のあだ名であるためである。
ルリアとしては姫というあだ名も嫌いなわけではないが、名前も呼んで欲しいため悪魔以外の知り合いには姫ではなくルリアと呼ぶように言っている。
「え、エクセレンテ? な、なんのことかなぁ……」
「惚けないで下さい。こちらも仕事、責任が伴っているのです。勝手に出歩かないで下さい」
「……ごめんなさぁい」
少しの沈黙のあとにルリアが謝罪を口にした。
エクセレンテはそれを聞いて頷くと、リウに視線を向ける。
「そちらは、自由気ままな方は居られますか?」
「んー……ディーネは出歩くけど絶対一言先に言ってくれるし、レアは……質問はするかもしれないけど勝手に走ったりはしないから……メイリーが一番出歩きそうかしら」
「えっ!? 酷いですよぉ、リウ様ぁ……!」
「綺麗な子とか居たら追いかけようとするでしょうし、衣装関連のものがあれば近付こうとするわよね?」
「……う」
呆気なくリウに論破され、落ち込んでしまうメイリーであった。




