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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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動かないルリア

リウが意気揚々とレアに文字を教えていると、ディーネが死んだ魚のような目のルリアを連れて入ってきた。

リウが頬を引き攣らせ、レアはサッとリウの後ろに身を隠し、メイリーは短く悲鳴をあげてキッチンへ逃げ込む。

そんな三人にディーネは首を傾げ、光の見えない瞳でリウに尋ねた。


『ねぇ、みんなどうしちゃったの? なんだかルリちゃんも動かないし……』

「……強いて言えばあなたの今の状態が怖いからじゃないかしら?」

『今の状態……? 私、いつもと変わらないよ?』


光の見えない瞳のままディーネがニコニコとした笑顔で怪訝そうな声を出した。

そんなディーネを目撃したレアが身を隠そうと子竜の姿になってリウの背中に張り付く。

リウが溜め息を吐いてディーネからルリアを引き剥がした。


『……りーちゃん、ルリちゃん返して』

「とりあえず、ちゃんと中に入りなさい。返すのはそのあとよ」

『……』


ディーネがむすっとしながら中に入り、扉を閉めた。

それを確認すると、ルリアを返さないまま椅子に座ってルリアを膝の上に乗せ、ディーネに手招きをした。

早くルリアを返して欲しいディーネは大人しくルリアと隣り合うようにリウの膝に乗る。

リウの背中に張り付いていたレアはリウの頭の上にちょこんと佇んでいた。

ちなみにメイリーは未だにキッチンに隠れている。


「で、ルリアが逃げたの?」

『うん。だから捕まえたの。そしたら動かなくなっちゃった』

「いや、動いてるわよ。小刻みに」


つまりは震えているらしい。

相当ディーネのことが怖かったらしい。


「……まぁ、それはいいわ。ちゃんとお互いで話した?」

『うん……謝ったら、ルリちゃんはなんで謝るのって言ってきて。ついつい怒鳴ったらルリちゃん逃げちゃったの。だからね、謝りたくて捕まえたんだけど……』

「動かなくなっちゃったのね」

『うん。……なんでだろう』


ディーネのことが怖かったからなのだが、ディーネは気付いていないらしい。

リウがどうやって説明しようと悩んでいると、いつの間にかリウの頭から降りて人の姿になり、お茶を淹れてきたらしいレアがディーネに紅茶が入ったカップを手渡した。

リウにも手渡して、ルリアはたぶん現状にさえ気付いていないので下手に刺激することなくそっと机に紅茶を置いておく。

レアが一つ頷いてディーネの側に駆け寄り、ドヤ顔を披露した。


「ディーネ様! これ、リウ様に教えてもらったんです! 飲んでみて下さい!」

『う、うん……あ、美味しい』

「えへへ。先ずは落ち着かせるべきかなって思って……」

『ありがとう、れーちゃん』

「どういたしましてです! 私メイリー様と一緒に居ますね!」


レアがキッチンの方に去っていくと、ディーネが必死にルリアに紅茶を飲ませようとしていた。

リウが溜め息を吐いてディーネからカップを奪い取る。


「そういうことするからこうなるんでしょう。とりあえず状況を知りたいのだけど、ルリアが逃げたあとディーネは追いかけたのよね? そのあと、ルリアは隠れた?」

『うん。だから見つけて捕まえたよ』

「どこに隠れてたの?」

『えっとねぇ、お城の中の細い道。薄暗かったよ。ルリちゃん端っこで立ってた』


薄暗い細道で、小さいとはいえ人影が見えたら誰だって恐怖を感じるだろう。

更にその人影はだんだんと近付いてくるのだ。

基本的にビビりなルリアが震えて動けなくなるのも仕方無いかもしれない。

それにしても怖がりすぎではあると思うが。


「捕まえたってさっきから言ってるけど、どういう風に捕まえたの?」

『近付きすぎたらまた逃げちゃうかもしれないから、少し離れたところで水を細縄みたいにして左右から腕を拘束したの』

「うん、動かなくなったのはそのせいね」

『なんで?』

「だって、ただでさえ怖がりなルリアのことよ? 薄暗い細道に隠れてたら人影が見えた上に、突然冷たい水が肌に触れて拘束されるのよ? 誰だって怖いわよ」


ディーネが一度俯き、想像してみて怖かったのか少し顔を青くしながら確かにと呟いた。

側に居るルリアに視線を向けて、ディーネがしょぼんとしながら謝罪を口にする。


『……ごめんなさい、ルリちゃん』

「――へっ?」


そこで、ルリアが復帰した。

少し呆然としながらディーネの瞳を見つめる。


『こ、怖かったよね、怖かったから動かなかったんだよね……ごめんなさいっ!』

「え、あ……いや、大丈夫! うん! ちょっとびっくりして硬直してただけだから! うん!」


まだ少し震えているので恐らく大丈夫ではないのだろうが、人影がディーネだったということは理解したようでルリアが恐怖心を誤魔化すようにそう告げた。

しかし、普段と様子が違うのでディーネは疑うように首を傾げた。


『ほんと? もう私のこと怖くない?』

「怖……くないことはないけど! でも平気だから! ちょっと落ち着いたら大丈夫だから!」

「……ねぇ、ルリア」

「ひぇっ!? う、うん、なに?」


突然リウに呼ばれて変な悲鳴をあげながらルリアが首を傾げると、リウは真顔のまま告げた。


「城内で薄暗い細道って、死角になってるところにある緊急用の避難通路よね」

「……」

「どれだけ本気で隠れてたのよ……」

「……」


ルリアが冷や汗をかきながら目を逸らし、誤魔化すように無駄に上手な口笛を吹いた。

る、ルリアとディーネの仲直り大事なので……

(次はちゃんと進めます)

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