ルリアの愚痴
お風呂から出た三人は、リウにたっぷりと叱られていた。
嫌がってもやめなかったのだから、当然の報いだろう。
「ディーネとメイリーはなんとなくやりそうなイメージはあるけれど、どうしてレアまで加担しちゃったのよ……」
リウが少し不思議そうに呟いた。
その表情はむすっとしており、不機嫌だと示している。
「あ、あはは……その、リウ様があんなにくすぐり弱いのが意外で……つい、加担しちゃいました。ごめんなさい」
レアが少し気まずそうにしながらリウに謝った。
そんなレアを見て、リウが不機嫌そうな顔をしたまま告げる。
「レアはいいわ。最初は止めていたし、真っ先に謝ってくれたし。でも、ディーネとメイリーは駄目ね。先ず私に謝ってない。誠意だけでも見せるべきでしょうに。例え表面上だけでも、謝るのって大事なのよ?」
リウにそう告げられて、ディーネがしゅんとして頭を下げた。
そして、小さな声で謝罪を口にする。
『りーちゃん、嫌がってたのにくすぐってごめんなさい……』
小さな声ではあれど、確かに謝罪を口にしたディーネにリウが微笑み、海色の髪を撫でた。
心地いい感触がディーネの頭に伝わる。
「ん、よくできました。いい子いい子。……さて」
にっこりと、リウが笑みを浮かべた。
その視線は先ほどから一言も発していないメイリーに向けられている。
ゆっくりと、リウがメイリーに尋ねた。
「なにか、言うことがあるわね……?」
「……リウ様だってぇ、何度も舌打ちしてたじゃないですかぁ」
文句を言うようにメイリーが告げた。
リウが目が笑っていない笑顔でじっとメイリーを見つめる。
「あうぅ、分かりましたよぉ。ごめんなさい、ただの出来心ですぅ」
「……そんなに拗ねることかしら」
「むー……」
リウが苦笑いして溜め息を吐き、メイリーを抱き締めながらベッドに沈み込んだ。
ずるいずるいとディーネがリウの背中に抱きつき、一人出遅れ寂しくなったレアはリウとメイリーの間にある隙間に潜り込む。
しっかりと抱き締められているのに隙間がある理由?
胸とだけ言っておこう。
「妬ましいけど抱き心地はいいわね。抱き枕として最適だわ」
「誰が枕ですかぁ」
「いいじゃないいいじゃない。じゃ、寝ましょう」
問答無用でリウがそう告げた。
◇
翌日の午前10時。
リウはルリアの自室に居た。
「もうほんっとに、ちょっとの誤字くらい見逃してくれたっていいのに。僕の秘書ちゃんったらもう……あれ、リウ聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。あ、紅茶のおかわりお願い出来るかしら? ルリアの相手大変よね、お疲れ様」
リウがメイドに紅茶のおかわりを頼み、ルリアの相手は大変だろうと声をかけた。
ニコニコとしているリウにルリアが憤りの声をあげる。
「ちょっと! 全然大変じゃないよ! ぜんっぜん迷惑かけてないし!」
「それはあなたが判断することじゃないのよ。話変わるけどルリアって色欲の癖に女性ばっかり側に置くわよね。色欲の癖に」
「なんで二回言ったの!?」
リウはルリアの愚痴を聞いているのだった。
なお、現在はリウがルリアで遊んでいる構図になっているのたが。
ぷくりとルリアが頬を膨らます。
「ふんっ、別にいいもん。お風呂場でくすぐられてたの知ってるしぃ?」
「なんで知ってるのよ……」
「だって客人を危険に晒すわけにはいかないでしょ。だから監視出来るようにしてあるんだよ」
「あら、意外と考えてるのね。なるほど、監視……そういう方法もありなのかしら」
納得するようにリウが頷いた。
ルリアが再び頬を膨らませる。
「ちょっと、僕の国の技術盗まないでよ」
「盗みはしないわ。リスペクトとか、参考にするだけよ」
「同じような気がするんだけど」
「そんなことないわ」
「ほんとかなぁ……」
嘘である。
リウはナチュラルにルリアの国の技術を盗もうとしていた。
偶然とはいえ言い当てられたからにはその内バレそうなのでやめたが。
「ねぇリウ、書類仕事って嫌い?」
「……仕事全般嫌いじゃないから、どうでしょうね。強いて言えば視察とかの方が好きかしら」
「だよねぇ! 視察は楽しいよ、だってあんなのほとんど散歩だもん!」
何故かルリアのテンションが上がり始めた。
書類は単調だから嫌い、などなどとルリアの愚痴が次々と吐き出されていく。
リウは適当な相槌を打ちながら紅茶を楽しみ、ルリアの愚痴を聞き流していた。
「……真面目な話すると、最近帝国怪しいよねぇ。……って、なんかあった?」
帝国の言葉が出た瞬間に目に見えて表情が歪んだリウを見て、ルリアが尋ねた。
リウは苦々しい表情をしながらレインのことを話す。
「あー、なるほど。接触されちゃったんだ。大変だね……しかもドレス姿。動きにくかっただろうし……お疲れ様……」
ルリアが苦笑いし、優しい声でリウを労った。




