悪魔の楽園
リウが夜が明けるまで仕事をした日の二日後(夜が明けてしまっていたので一日後とも言える)。
城の前に黒い馬車が停まっていた。
その馬車を引く馬は真っ黒な姿をしており、全身が揺らめいている。
目は赤色である。
「お待たせ致しました、魔国ノルティアナ女王リウ・ノーテル様。こちらへお乗り下さい」
その言葉を聞いてリウが頷き、軽く後ろを振り返って微笑む。
そこには見送ると言って聞かなかった大勢の人たちが居た。
この国の重鎮たちと、ただの国民までもがリウを見送ろうと辺りに集まっている。
「国は任せるわ。仕事がある人たちは私やディーネ、レア、メイリーが居ない間も頑張ってね。仕事がない人たちも、家でのことを頑張るのよ。騒ぎは出来るだけ起こさないようにね? それじゃ、行ってくるわ」
リウがそう締めくくって再び微笑むと、見送りの人たちが一斉に口を開いた。
「「「「「「いってらっしゃいませー!!」」」」」」
リウがくすりと微笑み、御者の手を借りて馬車に乗り込んだ。
幼女二人組も御者の手を借りてなんとか乗り込み、メイリーも手を借りてリウの隣に陣取る。
リウが少しだけ嫌そうな顔をした。
ちなみに幼女二人組はリウとメイリーの対面で仲良く座りながら手を繋いでいる。
リウがそんな二人に和んでいるとメイリーがリウに尋ねた。
「私たちもやりますかぁ?」
「へ? ……やらないわよ!? ああいうのは幼いから和むのであって……! やりたいわけじゃないし!」
やりたいわけじゃないのかとメイリーが肩を落とした。
リウが不機嫌そうに頬を膨らませる。
そんな光景に今度は幼女二人組が和んだ。
そんな風にのんびりと馬車の旅を楽しんでいると、数日経ってルリアの国に辿り着いた。
〝瞬間転移〟を使えばすぐに来れたのにと思いつつもリウたちが馬車から降り、歓迎を受ける。
「やっほぉーーー!! いやはや、随分遅い到着だったねぇ!」
会って早々にルリアがわざとらしくそう告げた。
ジト目になりつつリウが溜め息を吐く。
「御者に言って頂戴な。私は乗ってただけだから」
「……確かに」
ルリアが納得したように頷いて御者に文句を言いに行った。
なにがしたいのか全く分からない。
ご機嫌でリウの元に戻ってきたルリアにディーネが話しかけた。
『ルリちゃん!』
ルリアがピシリと固まった。
顔を赤くして狼狽え、ディーネを視界に映したまま後ずさろうとして、途中でリウに首根っこを掴まれて停止した。
後ずさろうとした体勢のままディーネの様子を窺うルリア。
『寂しかったよぉおおおおおっ!!』
ディーネが突然ルリアに突撃した。
ルリアを抱き締め、その藍色の髪をわしゃわしゃ撫でる。
「なっなにっ!? あっ髪の毛崩れちゃうよぉ!? やめてよいくら短くても大変なんだからね!? 歓迎のためにちゃんと整えてきたのにぃ!」
『ねぇ、名前呼んで! ディーネお姉様って呼んで!』
「ぅ……お姉様なんて昔だってたまにしか呼んでないよぉ! ディーネお姉様! これでいい!?」
『ルリちゃんかわいいー!!』
「ひゃあ!? ちょっ、リウ助けて! ね、親友だもんね!? 僕のこと助けてくれるよね!? お願いぃ! いつも頼ってばっかりなの謝るから助けてぇ!!」
ルリアの言葉を聞いて、リウが溜め息を吐いた。
無言でディーネの腕を掴み、引き寄せる。
『りーちゃん!? 止めないでよ! ルリちゃんとの至福の時間が……!』
「少しは相手の様子も見なさい。ルリアは嫌がってるわよ。事情は知ってるから気持ちは分からなくもないけれど……ここにはルリアの国の国民も居るのよ? ほら、とにかく謝りなさい」
『あ……うう、ルリちゃんごめんなさい』
「う、うん、大丈夫……んんっ」
ディーネから解放されたルリアが咳払いをして仕切り直す。
姿勢を正し、にんまりとした笑みを浮かべながらルリアが口を開いた。
「ようこそ、魔国シェイタンガンナへ! ここは悪魔による全種族のための楽園だよ! お客様は僕が直々に案内してあげる!」
ルリアがそう言ってディーネと手を繋――ごうとしたが、恥ずかしかったので近くに居たレアと手を繋いだ。
少し期待したディーネが肩を落としてレアと手を繋ぐ。
幼女二人組が幼女三人組に進化した。
リウとメイリーが仲良く手を繋いで進む幼女三人組を微笑ましげに眺めながらついていくと、ルリアが立ち止まった。
目の前の扉を開き、中に入るとそこは黒を基調とした豪華な部屋。
ふかふかな大きなソファーや本棚、大きな机などがあり存分にくつろげそうな作りになっている。
「扉が三つあるでしょ? 左側の手前の扉は簡易キッチン。茶葉とかあるからお茶淹れれるし、お茶請けも一応あるから。左側の奧の扉は浴室。好きに使ってね。で、右側の扉は寝室だよ。費用とか色々大変で、キングベッド一つにはなっちゃったけど……全員女性だし、大丈夫だよね? 駄目ならリウに頼んで。あとで片付けてくれるなら〝物質創造〟使っていいから。じゃあ、僕は仕事してくる。条約とか、そこらへんは明日話し合おうね。僕に用事があれば僕の執務室の場所を聞けば分かるよ。今日はしっかり休んで」
そう言ってルリアが退出していった。
リウはルリアを見送り、突然豪華な部屋に連れられて困惑するレアとメイリーに早くくつろごうと促し微笑むのだった。
そういやいつの間にか文字数が十万行ってましたね。
おめでとう私。
じゃあ次は五十万でお祝いしましょう。
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