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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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招待状

レアのおめかしをした日から約一ヶ月。

ノルティアナは順調に発展していた。

イルム王国で宣伝をしたお陰か、ちらほらと観光客が現れるようになり。

セラフィアの故郷の、当時移住を見送った者たちもやって来たりもした。

素性がはっきりしていれば移住を受け入れていたのもあって、そこそこ国民も増えていた。

ところで、国として認められる条件は道がちゃんと整っていること、住民が十万人以上居ること、城、またはそれに準ずる建物とその主が存在すること、2ヶ国以上に国として認められていることである。

以上の条件を満たした上で国家中立議会で国として認められれば正式に国として登録されることになる。

ノルティアナが満たしていない条件は二つ。

住民十万人以上と2ヶ国以上に国として認められることである。

とはいえ、住民の方は今すぐ解決出来るものではないので先にやっておきたいのは国として認められることだ。


「どこに行きましょうか……」


リウを困らせているのはそこだった。

とりあえず帝国は除外である。

レインには会いたくないので。

自分の部屋のベッドに寝転がって思考に耽っていたリウがふと窓から外を眺めた。

仲良く遊ぶ子供たちが見える。


「……学園ってどこの国にあるんだっけ」


学園。

時々召喚される異世界人の知識を借りてどこかの国が建てた教育施設である。

そこへ、ノックの音が響く。

気配で誰なのかを把握したリウが入室を許可するとメイドが入ってきた。

ルファではない。

そのメイドは藍色の髪と紅い瞳を持った特徴的な幼女だった。

少女ではなく、幼女である。

背丈はディーネと同じくらいか、少し低め程度。

幼女が姿に似合わない妖しげな笑みを浮かべた。


「やっほぉ、リウ。一応久しぶりになるのかな? 一ヶ月ぶりだねぇ。ねぇねぇ、ここに僕が居ることについてどう思うのぉ? ねぇ、ねぇねぇねぇ」

「相変わらず表情と言ってることが合致してないわね」

「で、学園のある国だっけ? 僕のとこだよ」

「話聞けこの永劫幼女が」


リウの口から罵倒が飛び出した。

表情がとても冷めている。


「あっ、怒った? 怒っちゃったぁ?」

「……ディーネ呼ぶわよ」

「あっ!? ごめ、ちょっと待ってそれは無理ぃ!! 要点だけ話すから、僕の国招待して認めるって話をしようと思っただけで!! 騒がれるのが嫌で侵入しただけで!!」

「最初からそれ言えばいいのよ。……で、招待してくれるの? ()()()


にっこりとリウが微笑んだ。

幼女の正体は原初の魔王の一人であるルリアスタル・アーシャンレート。

悪魔姫(イブリースコンチュア)の名を冠する魔王である。

不機嫌そうにルリアが頬を膨らませ、ベッドに腰掛けた。


「するよ。招待状は一旦戻ってから送るから待ってて。……イルム王国でも言ったけどなんとかしてくれるんだよね?」

「それは分かったから。招待状はいつ頃になりそう?」

「んー……たぶん二日後。遅くても三日後くらいじゃないかな」

「そう。じゃあ届き次第向かうわ」

「じゃあ僕は盛大に歓迎する準備でもしとこうかな。あ、そうだ。今後の参考にもなるだろうし学園の見学――」


ノックの音が響いた。

直後に扉が開かれる。


『りーちゃん、暇ぁあああっ!?』


ディーネが悲鳴をあげて硬直した。

視線の先には同じく固まっているルリアが居る。


『えっ、え、る、ルリ、ちゃん……?』

「……」


ルリアの視線が物凄い勢いで彷徨い始めた。

一歩二歩と後ずさり、窓を振り向いて。


「後で弁償するから許してぇえええええええっ!!」


真っ赤な顔を晒しながら窓を突き破ってどこかへ去っていった。

恐らく自国に戻ったのだろう。

ディーネは割れた窓を見ながらポカンとしている。


「……防音と幻覚の結界張っといて正解だったわね」


リウがぽつりと呟くと、ディーネが現実に復帰する。

掴みかかるような勢いでリウに迫り、大声で問い詰め始めた。


『りーちゃん! なんでここにルリちゃんが居たの!? なに、幻覚!? 窓割れてるよね!?』

「説明するから落ち着きなさい」


苦笑い気味にリウが告げるがディーネが落ち着く様子はない。

仕方無いので溜め息を吐いて一旦放置することを決め、そっと割れた窓に手を翳した。


「〝時間逆行〟」


碧色の混ざった金色の魔方陣が広がる。

すると、リウの言葉通りに時間が逆行するようにガラスが勝手に元々あった場所に戻っていった。

割れていたはずなのにくっついている。

リウがたった今発動したギフト、〝時間逆行〟はその名の通り指定したものの時間を戻すことが出来るというもの。

魔力消費型で、命を巻き戻すことは出来ない。

時間が巻き戻るという不思議な光景を目にしてディーネがやっと落ち着いた。


『えっと、とりあえず経緯教えて?』

「んー……簡単に言えばルリアが手助けしに来てくれたのよ。それで、招待状を送ってくれるっていうことになって……ディーネが入ってきちゃったのよ」

『手助け……ねぇりーちゃん、私ルリちゃんとお話したい』

「それは同行者を決める会議で決めるわ。ほら行くわよ」

『……うん』


ディーネが頷き、リエラやセラフィアに会議室に人を集めるように指示しながら歩いていくリウについていった。

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