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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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昔の惨事

投稿し忘れてた☆(すいません)

リウの部屋のベッドの上で国家中立議会の創設者が創世神ということを聞いたディーネが固まっていた。


『えっ、えっ? 創世神様? 私を生み出したあの創世神様?』

「創世神は一人しか居ないわよ。……確か他の世界にだったら別の神が居るんだったかしら。そういえば大精霊生み出したのってアイツだったわね……」

『な、なんで? 確か人間には干渉しちゃいけないっていうルールがあるとか言ってた気がするんだけど……』

「あぁ、言ってたわねぇ」


のんびりとリウが告げた。

ディーネが混乱する。


『え、なんで干渉してるの……?』

「……確か私が魔王になった数百年後くらいだったかしら。国家間での戦争が激化したの。どこかしらで小競り合いは常に起きていたし、本格的な戦争だって頻繁にあって、人間の数も大幅に減って。酷い状態だったわ」

『……私が精霊界に籠ってた頃だ』

「そう。なら知らないのも無理はないわ。戦争が激化して、戦力だって低下して。そんな中でも無意味な戦争が続けられている最中で、この世界が創られてから最初の魔海が発生した」


魔海――魔属性の魔物が津波のように押し寄せてくる現象である。

戦力が低下している中で、何百、何千、何万と押し寄せてくる魔物の対処など、出来るはずが無かった。


「……結局、アイツが私たち魔王に魔物の殲滅を頼んで事態は終息した。だけど、それだけじゃまた戦争の激化が起こる可能性がある。記録も、伝承も、いつかは薄れて、残ったとしても多大な改変が為され、危機感をもたらすものにはなり得ないから。だから、アイツが天界から魔法で自分の姿を世界中に投影して、国家中立議会を設立したの。宣戦布告はそれを通して行うこと、援軍は勝手に送ってもいいけど、他の国が戦争中の場合は新たに戦争を始めることは出来ないこと……そんなルールを設けて、あの惨事が起きないようにした」


リウが目を伏せて、脳裏に当時の光景を思い浮かべた。

悲しげに表情を歪め、リウは俯いてしまう。


『……どうして、りーちゃんが責任を感じているの?』


ぽつりとディーネが尋ねた。

ベッドの上に座り込むリウの両手をディーネがそっと両手で包む。

幼女の姿をしているのでリウの両手を完全に包むことは出来なかったが、その温もりに癒されてリウが小さな声で話し始めた。


「戦争が激化したのは、大きな力を持っていたリフィード王国が滅んだから。あの国の戦力が残っていたなら、あそこまでの惨状にはならなかった。魔海にも対応出来た。……私が、あの国を滅ぼさなければ」


ディーネがリウの震えた肩を抱き締める。

ゆっくりと顔を上げさせて、ディーネがその双眸を見つめた。


『あれは、りーちゃんは悪くないでしょ』

「事実は変わらないわ」

『知ってる。でも、あれはどうしようもなかった』

「……」


リウが沈黙した。

自分が悪くないのかどうかはとにかく、ディーネの言葉は事実だったから。

反論のしようがなくて、ひたすらに沈黙を重ねるリウの頭をディーネが優しく撫でた。


『ねぇ、りーちゃん。あの国を滅ぼした当時、辛かったんだよね。苦しかったんだよね。……その苦しみを覚えてるから、簡単には忘れられないんだよね』

「……」

『私はりーちゃんじゃないから、苦しみの全部は分からないけど……でも、知ってるから。折れそうなときは頼って? りーちゃんのことを心配してくれる人が、今はいっぱい居るんだよ? 私は頼ってほしいけど、でも別に頼るのは私じゃなくてもいいの』

「……本当に? 表面上の優しさじゃない? 打算的な優しさじゃないの?」


リウの言葉に、ディーネは苦笑いを零した。

過去を知っているから、心配する理由も分かってしまって。

そんなの杞憂なのにと、ディーネは微笑んだ。


『りーちゃんなら分かるでしょ? 大丈夫だよ』


微笑み、そしてリウを巻き込みながらディーネがベッドに寝転がる。

狼狽するリウをぎゅっと抱き締めて、ディーネは無理矢理に眠らせようとする。


『ほら、一時的にでもいいから忘れよ! はい寝る! 昔はよく一緒に寝たよね。思い出すなら幸せなこと思い出して! おやすみ!!』

「へ!? ちょっと、ディーネ……!」

『お・や・す・み!!』


ディーネが無理矢理リウを寝かしつけた。

やっとのことでリウが眠り、それを確認したディーネが溜め息を吐く。


『……れーちゃん。いつまで隠れてるの?』

「はぇっ!? あ、えと、その……! ぬ、盗み聞きするつもりじゃなくて!」

『分かってるから、落ち着いて? りーちゃんの危うさはなんとなく感じ取ってるでしょ』

「……はい」


諦めたように隠れていたレアが姿を現し、ディーネに歩み寄った。

そんなレアの頭を撫でながらディーネが話をする。


『実際、りーちゃんは危ういんだよね。だから時々不安定になる。……いや、不安定だから危ういのか。まぁ、とにかくね。れーちゃんも気にかけてあげて? 謝るのは……りーちゃんが起きたらにしよっか』

「……はぁい」

『ほら、れーちゃんも一緒に寝よぉ』


ディーネがレアをベッドに引きずり込み、リウを中心にして川の字で眠りについた。

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