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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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治癒

メイドの母親を治癒するため母親に近付くリウと、それを見守るディーネとリエラ。

二人はすることがないのである。

リウは母親から顔が見える位置に行くと、綺麗な礼をする。


「はじめまして。私はリウ・ノーテルよ。あなたの娘さんが私のところで働くことになったから、あなたのことも治癒してあげようと思って」

「……本物、なのですか……?」

「生憎、証明できるものは持っていないのだけれどね。まぁ、私の名を騙るものなんて余程の馬鹿くらいなものらしいけれど」


ちなみに、リウが〝らしい〟と言ったのは他の魔王にそう言われたからだったりする。

その魔王はリウにとって物凄く信用出来るのでその話も信用していた。


「……でも、ご迷惑をお掛けするわけには」

「いいのよ、もののついでだから。遠慮しないで頂戴な。手首に触れるわね」


問答無用で、しかし驚かせないようにそっと母親の手首に触れるリウ。

目を閉じ、念のために〝情報網羅〟で症状を把握したリウは適切に回復魔法を掛けていった。


「……これでいいはずだけれど。どうかしら、歩ける?」


手首から手を離し、リウがそう尋ねた。

母親が恐る恐る立ち上がろうとすると、慌ててメイドとその弟が母親を支える。


「身体が軽い……ありがとうございます、魔王様」

「ふふ、別にいいのよ。それじゃあ、えっと……お名前を窺ってもいいかしら? 三人共ね」


リウが微笑みながらそう告げると、メイドがハッとした様子で頭を下げ、自己紹介を始めた。

自分が名乗っていなかったことを思い出したらしい。


「私、プルファソラ・ウルクです。ルファとお呼び下さい!」


メイド、プルファソラことルファが震えた声で自己紹介をした。

ルファが自己紹介をしていなかったことに母親が驚きつつも笑顔で名前を名乗る。


「ヴァリマヤーナ・ウルクです。マヤと呼んで下さると嬉しいです。娘をよろしくお願い致しますね」


リウが微笑み、マヤに抱きつく四歳ほどの少年に視線を移した。

しゃがみこんで視線を合わせ、リウがこてんと首を傾げた。


「はじめまして。お名前を教えてくれる……?」

「……ニル」


少年が呟いた。

ニルという名前らしい。


「この子はヘルヘーニルという名前です。ニルが愛称なので、そう呼んであげて下さいね」


マヤが微笑みながら告げた。

ニルは恥ずかしそうにマヤの後ろに隠れている。


「そう……ニル、よろしくね」


そう言ってリウが微笑むと、ニルは更に母親の後ろに隠れてしまった。

少し苦笑いしてリウが後ろを振り向く。


「じゃ、二人共挨拶なさいな」


リウの言葉を聞いて、先ずはディーネが前に出た。

無邪気な笑顔を浮かべて自己紹介をする。


『私は水の大精霊(ウンディーネ)。愛称はディーネだよ! 昔はりーちゃんの契約精霊で、今はリエラの契約精霊をしてるよぉ。よろしくね~』


綺麗にお辞儀をしてディーネが下がると、次はリエラが控えめに前に出る。

リエラは緊張した面持ちでカーテシーをし、口を開いた。


「わたくしは一時的にディーネ様と契約をさせて頂いております、リエラと申します。以後お見知り置き下さい」


そう告げてリエラが下がると、リウが満面の笑みを浮かべた。

ルファ、マヤ、ニルの三人を視界に収めて告げる。


「あなたたちには私の国に来てもらいたいの。ルファはもう確定なのだけれど……マヤとニルはどうする? ここに残りたい? 色々と要望を聞いた上で家も建てるつもりだし、働いてくれるなら給料もしっかり出すけれど」


リウが尋ねると、マヤはとても悩んだ。

しかし、ニルがそっとマヤの服を引っ張る。


「おかーさん、ぼくおねーちゃんといっしょにいたい」


潤んだ瞳でそうニルが訴えれば、マヤはあっという間に陥落した。

可愛い子供のお願いは断れないらしい。


「分かったわ。魔王様、お願い出来ますか?」

「お願いも何も、私から言い出したんだもの。大歓迎だわ」


リウがそう微笑んで頷いた。

そして、国を出る日と時間について話し合う。


「今日は無理だから、明日以降よね。荷造りも必要だから……」

「明日の……午前九時辺りでどうでしょう?」

「私たちの方は大丈夫だけど、そちらは間に合うかしら? ニルはまだ幼いし……」


不安そうにチラリとリウがニルに視線を向ければ、ニルは恥ずかしそうにしながらも小さく笑った。

そして、もじもじとしながらも口を開く。


「まおーさま、ぼくはやおきできるよ。いつもしちじにおきておかーさんのおてつだいしてるの」

「あら……そうなの、ニルはとってもいい子なのね。なら大丈夫かしら」


リウが微笑ましげにふんわりと微笑み、マヤに視線を戻した。

一つ頷くと、今決めたことを確認するために口を開く。


「それじゃあ、午前九時に出かけるということでいいわね? んー……待たせても嫌だから、こちらから迎えに来るわ。私たちが来るまでここで待っていてくれればいいから」

「分かりました」


マヤが頷くと、リウは三人に別れの挨拶を告げてからディーネとリエラを伴って城に帰っていった。

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