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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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話し合い

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます!

帰国の際にメイドもついてくることを了承したあと、しばらくしてリウは一人でウィズダムの執務室に赴いていた。

同盟締結のための最後の話し合いである。

二人きりになった室内でリウが口を開いた。


「同盟の内容……同盟というよりも条約というべきなのかもしれないけれど……まぁいいわ。同盟兼……適当に相互協力条約とでも呼称しましょうか。魔国ノルティアナはイルム王国より有益な情報、資材や人材などの支援を得る」


リウの言葉を引き継ぐようにしてウィズダムが告げる。


「イルム王国は魔国ノルティアナより必要時の援軍と優先的な技術提供を得る」


ウィズダムの言葉にリウが頷き、椅子に体重を預けた。


「まぁ、基本的にはそれくらいでいいでしょう。正直言って、お互いに全面的な協力を……で終わらせてしまいたいのだけど……そちらは人間だものね。いつ性根の腐った者が王に就いてしまうのか分からない」

「……追加点を話し合おう」

「そうね。まぁ、ノルティアナがイルム王国にだとか、そういうのは関係無くお互いに有益な情報も資材や人材も、援軍も優先的な技術提供もするつもりだけれど……ま、どちらかがどちらにというのは基本考えなくていいわよね。となると、一先ずお互いの要求を吐き出してしまいましょう」


二人の要求を纏めると、リウ――ノルティアナ側の要求はギルドなどの組織の支部を作りたいため便宜を図ることを出来るのならしてほしいというもの。

また、同盟は関係無いがリウ個人の願いとしてもうしばらく滞在してもいいからこの国でノルティアナの宣伝、つまりは演説をしたいという要求もしていた。

正直、リウが居る以上〝物質創造〟でなんでも創れてしまうので、欲しいものといえばギフトを使ってもどうしようも出来ないものくらいなのである。

ウィズダム――イルム側の要求は特になかった。

イルム王国の国土が広くなろうと他国に目を付けられるだけで、貧しいわけではないが特別栄えてるわけでもない現状の方が平和なのだ。

無論、もっと平和にしたいとは思ってはいるが細々とやっていければ大丈夫であろうという認識らしい。

リウが少し申し訳なさに苛まれた。


「ギルドの方は総合ギルドのギルドマスターに相談してみよう。演説に関しても準備を進める」

「……ええ、ありがとう。同盟締結はどこで?」

「演説の際に、では駄目だろうか」

「あぁ、なるほど……人も集まるしいいんじゃないかしら」


ウィズダムの言葉にリウが笑顔で頷き、微笑んだ。

予定が粗方決まったところで、リウが部屋に戻り、


「疲れたぁ~……」


ディーネとリエラを巻き込みながらベッドに倒れ込んだ。

ウィズダムの執務室に居た時間は短かったはずなのにとディーネとリエラが首を傾げる。


「マナーとか面倒だしポーカーフェイス保たなきゃいけないし、ノルティアナが関わることだからふざけたら大惨事になる可能性もあるし……もうやだぁ」

『……気を遣うのに疲れたってこと?』

「ん」


一言だけの返事をしてリウが目を閉じた。

二人がきょとんとしていると規則的な寝息が聞こえてくる。

眠ってしまったらしい。

二人は顔を見合わせ、くすりと微笑むと優しくリウの腕の中から抜け出して毛布を被せた。


『リエラ見て、りーちゃんの寝顔かわいいよ。ほら!』

「お、起こしてしまわないでしょうか……」

『大丈夫大丈夫! 叫んだりしなければ平気だよ』


不安そうにするリエラに声をかけてディーネがリウの寝顔を覗き込んだ。

とても魔王とは思えない寝顔を晒すリウの姿がディーネの視界に映る。


『……りーちゃんはね、色々と隠し事するんだよね。悪気があるとかじゃなくて、誰かを守るための隠し事。優しい嘘。さっきみたいに幼く振る舞う時もあるけど、そういう時は本気で安らいでるか、緊張感から解放された時。たぶん、アイツのところに誰か他人が居たんじゃないかな。……他人っていうか、敵か。だからたぶん、りーちゃんはアイツを敵から守るために気付かれないようになにかした。りーちゃんは隠し事をして、隠したことも最後までしっかり隠しちゃうから……バレちゃったらどうしようっていう気持ちと、バレないようにしたせいでなにか起こったらどうしようっていう気持ちで、緊張してたんだと思う』


リウが隠し事がバレたらという緊張感と隠したせいでなにかが起こったらという緊張感から解放されたから、先ほどの幼児化リウが出来上がったらしい。

恐らく、ウィズダムに命の危機が迫ることは無いことだろう。

緊張していたとしても、リウは確実に部外者に対処したであろうから。

少なくとも、ディーネはそう思っている。

リエラは心配してはいるが、心のどこかで杞憂になるのだろうとは察していた。

不器用だな、なんてことを思いながら二人はすやすやと安らかに眠るリウに向かって優しく微笑み、リエラはディーネから〝りーちゃんのかわいいところ〟をたっぷりと聞かされるのだった。

リウが目覚めたとき、リエラはどこかげんなりしており、ディーネはリエラと相対するように物凄く満足げな表情をしていたらしい。

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