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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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約束

ラーデンとメイドを勧誘した日の深夜。

リウは眠らずにベッドに腰掛け、窓越しに夜空を眺めていた。


「……はぁ」


リウの口から溜め息が漏れる。

物憂げな瞳は夜空を見据えておらず、どこか遠くを見ているようだった。


「誰かと一緒に過ごしたのなんて、いつぶりかしらね。レアに出会う前なら、ありえないことだったわ。……今なら、私も変われるのかしら」


そう独り言を呟いて、リウは嬉しそうに微笑んだ。

今まではそんなことを考えることもなかったので、つい嬉しくなってしまったのだ。

今度は、しっかりと夜空を見つめる。

リウが孤独だったときは、夜空を見つめているときが一番安らげる時間だったのだ。


『……りーちゃん……?』


目を擦りながらディーネが身体を起こした。

起こしてしまったらしいとリウが苦笑いする。


「……なんでもないわ、ディーネ。眠る気になれなくてね」

『ん……そっか……』


ディーネがリウに駆け寄り、抱きついた。

不思議そうな表情をするリウをディーネが見上げる。


『……りーちゃんは、もう居なくならない?』


今にも泣き出しそうな声だった。

悲しそうで、暗い声。


「……」

『なんでっ……約束してよ! お願い、もう私の前からいなくならないでよ! もうあんな思いするのは嫌! もう、やだ……』

「私とあなたとディーネが契約してた頃にした約束、覚えてる?」

『……ずっと、一緒に居るって……』


リウがディーネを抱き締め、頭を撫でながら優しく尋ねればすぐに答えが返ってきた。

リウはふわりと微笑むと、ディーネの耳元で告げる。


「ごめんね」

『……わざとじゃないのは、分かってる……でも、納得出来ないよぉ……』

「私は、もう約束を破りたくない」

『……うん』


静かな声色で、リウはディーネを抱き締めながら語っていく。


「逃げてるのは、分かってるの。でも、どうしても怖い。……だから、約束は出来ない」

『……りーちゃんも、辛いんだよね』

「情けないでしょう? でも、怖いの」

『当たり前のことだよ』


はっきりと怖いと発言したリウの姿を見て、ディーネは控えめに微笑んだ。

ディーネはリウが恐怖を抱く理由を知っているから。

先ほどは取り乱してしまったが、それにも理由があったのだ。


「さっき、どうして取り乱したの?」

『……夜空を見てたりーちゃんが、儚く見えて、いなくなりそうで……怖くなっちゃった……』

「そう。……駄目ね、もう寝ましょう? 暗い考えばっかり浮かんでしまうわ」

『……やだ。昔みたいにお話したい』


控えめな我儘を告げたディーネは、リウに向かって〝だめ?〟と首を傾げた。

リウは少し微笑むと、ディーネを抱き締める。


「なら、ディーネの話を聞かせてくれないかしら?」


ディーネが満面の笑みを浮かべた。



次の日、二人はあれから一睡もしなかった。

だが、魔王と大精霊なだけあって睡眠は必要ないので問題ないのである。

リエラを起こし、朝食を摂った三人時折脱線しつつも今後について話をしていたのだが。


「国王陛下が参られました」


そこへ、ウィズダムがやってきたのだ。

疑問符を浮かべつつも入室を許可し、椅子への着席を促したリウ。

特に何も言わずに腰掛けたウィズダムに向かって、リウはとりあえず尋ねた。


「暇なの?」


ちなみに、リウに悪意は一切無い。

遠慮も容赦もするつもりはないが、悪意はないのだ。

ウィズダムはちゃんと忙しいので流石に頬を引き攣らせた。


「例のメイドの話なのだが」


リウの発言は忘れることにしてウィズダムが話を始めた。

大人しく話を聞き始める三人。


「リウ殿の国、魔国ノルティアナの場所を把握していないため、帰国時についていくという形でいいだろうか」

「……あぁ、確かにそうよね。ええ、いいわよ」

「感謝する。同盟は午後には締結出来るはずだ。それまでは待っていただきたい」

「ええ、もちろんよ。それと、あのメイドに言いたいことがあるのだけど……適当な部下か誰かでいいから伝言を頼めるかしら?」


リウが首を傾げながら尋ねた。

どうやら言い忘れてしまったことがあるらしい。


「平気だが……」

「そう、ありがとう。なら、メイドに〝家は用意するから、家族も連れてきて構わない。誘いたいなら友人も誘ってくれていい。母親の病気が動けないほど重いのなら、私に伝えてくれれば先に治癒する〟……と。お願いね」

「了解した。伝えておこう」


ふんわりとリウが微笑んだ。

結構長かったが、ウィズダムはきちんと覚えたらしくしっかりと頷いた。

イルム王国は情報国家なので入ってくる情報も多いだろうし、そこら辺の事情もあって記憶力はいいのかもしれない。


「では、そろそろ失礼する」


そう言って去っていったウィズダムの後ろ姿を眺めつつ、リウは密かに同盟締結の時にも会うんだからその時に話せばよかったんじゃないかと思うのだった。

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