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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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ディーネの説教

サンセール商会会長ラーデン・サンセールの勧誘に成功した三人は、イルム王国国王ウィズダム・イルムに与えられた部屋に居た。

ちょこんと部屋にある椅子に座り俯いているリウの目の前には、貼り付けたような笑顔を浮かべるディーネが居る。

頼れるお姉さん(二人がハチャメチャ過ぎてどうしたらいいか分からないのでほとんど出番無し)であるリエラは我関せずを貫いていた。

リエラだって怖かったのだ、部屋に入った途端に結界を張り、恐ろしい威圧感を放ち始めたディーネのことが。


『ねぇ、りーちゃん?』


表面上は優しげなディーネの声が響いた。

しかし、威圧感――もとい、荒れ狂う魔力が更に吹き上がったので安心など出来るはずがない。

リウはそっとディーネから視線を逸らした。


『ねぇ、りーちゃん?』


ディーネから先ほどと全く同じ言葉が放たれた。

しかし、先ほどの表面上の優しさなど全くもって存在せず、怒りと威圧感だけが込められている。

リウがぷるぷるしながらディーネを見た。


『戦闘狂発揮したのはまぁ性分だし、敵が可哀想なくらいだけど別に許せる。……だけど問題はその前。なんでわざわざ自傷したの? ねぇ、りーちゃん?』

「だ、だって……」

『だってじゃないよ。言い訳じゃなくて理由が聞きたいの。自傷する必要性がどこにあったの?』

「……ぃ……」

『なに? もっと大きい声じゃないと聞こえない』


不機嫌そうなディーネの声に肩を震わせ、リウが恐る恐る告げた。

嘘偽りのない真実を。


「……ない……わ」


シュンと肩を落として落ち込みながらリウが告げた言葉に、ディーネは満足げに頷いた。

椅子から降り、リウに駆け寄るとぎゅっと抱きつく。


『認めれるんだったら最初から認めてよ。怖いんだからね、私。今度からは自傷なんてしないでね?』

「あんなんじゃ私は傷付いたりしないから、みんなは心配するってこと忘れてて……その、ずっと……一人、だったから」

『……りーちゃんは、私やリエラ、れーちゃんが自分で自分を傷付けたりしたら嫌だよね?』


こくりとリウが無言で頷いた。

心配させたことをちゃんと理解したらしく、少し涙目になっている。


『りーちゃんが私たちを心配するように、私たちもりーちゃんを心配する。りーちゃんが心配なことは、私たちも心配。それが分かってればいいんだよ』

「……ごめんね、ディーネ、リエラ」

『大丈夫だよ、りーちゃん』

「はい、ディーネ様の言う通りです」


二人の暖かい言葉に、リウは嬉しそうな笑みを浮かべた。

堪えきれないとでも言うようにぎゅうっと二人を抱き締める。

ディーネは嬉しそうに抱き締め返し、リエラはオロオロとしてどうしていいのか分からなくなってしまうのだった。



それから数時間ほど経った頃。

三人はウィズダムと会話を行っていた。

内容は例の毒を盛ったメイドの処遇と真犯人についてである。


「真犯人は見つかったの?」


早々にリウがそう尋ねれば、ウィズダムは静かに頷いた。

だというのに、ウィズダムは浮かない表情をしている。


「なんとか見つけて、捕らえはしたのだが……自分で舌を噛み切って自殺した」

「ふぅん……まだ裏に誰か居る、ということでしょうね。でも、自殺されたから……」

「聞き出すことは不可能だ」


捕まりたくないのならば脱出を試みるはずであるし、生を諦めたのならば死刑を待てば良かった。

つまり、自殺したのは尋問をされないためという説が濃厚である。

リウは一つ溜め息を吐くと、ウィズダムに尋ねた。


「メイドの処遇はどうなるの?」

「……リウ殿に決めてほしい」

「あら、あなた私のこと殿って付けて呼んでたの。……そのメイドって、働きぶりはどうだったの? 優秀?」


ウィズダムの口から出た呼び名に意外そうな表情をしてからリウが尋ねた。

質問の意図が理解出来ず少し困惑するウィズダムだが、すぐにリウの質問に答える。


「小さな失敗は多々あるものの大きな失敗は無く、仕事は迅速で堅実。……というのが主な評価だ」

「ふぅん……じゃあ、そのメイドに私が会うことは?」

「可能だが……」


きっぱりと可能と告げたウィズダムに、リウがにっこりと微笑んだ。


「会わせて」



そうして、三人はウィズダムとは別れ監視員にメイドの元へ案内された。

メイドが入れられていた牢は質素ではあるが、粗悪というほどではなく食事もちゃんと与えられているようでメイドも健康そうであった。

リウがボーッとしていてこちらに気付いていないらしいメイドに鉄格子越しに話しかけた。


「こんにちは、メイドさん」


声が響くと同時にメイドの肩が跳ねた。

リウの姿を視界に収めると、その瞳が怯懦に染まる。


「魔王……様……」

「怯えないで。私はあなたと話をしに来たの」


怯えるメイドの姿を出会ったばかりの頃のレアと重ねつつ、リウは優しい笑みを浮かべた。

〝みぃつけた〟にはラーデンとか含めて誰も気付いてないのでまだ触れないです。

何者なんでしょうね?

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