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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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説得

遅れましたごめんなさい!!

ラーデンを襲った暗殺者を戦闘狂を発揮して殺したリウ。

そしてそんなリウに引いているディーネは、とりあえず見るに堪えない姿の暗殺者から目を逸らしながらリウに〝消失(ロスト)〟――効果範囲内にある全てのものを消し去る魔法で死体を消し去ってもらって、なんだか呆然としてばっかりなリエラを現実へ復帰させた。

完璧に元に戻した応接室で、リウが戦闘狂モードから平常モードへ切り替え笑顔でラーデンに着席を促し自分もディーネやリエラと共にソファーに座る。


「……こんな風に、守ってあげるから心配はいらないわ。この国よりも安全だと思うでしょう? 城はもちろん、街の状態も大雑把にではあるけど常に把握しているし……ね?」

「え? ……あ、いえ、それは……」

「まだ渋るの? あなた、闇取引をしているとは言ったけれどわざわざ白状する必要無かったわよね? ただ受けれないとだけ告げて帰せばよかった。巻き込みたくなかったのだとしても、それだけでよかったわよね。あなたの言い方は、闇取引に手を出したことを後悔しているようだったわ。恐らく事情があって手を出したんでしょう。……違う?」


リウはラーデンをどうしても雇いたいのか、自分が感じた違和感をつらつらと述べていく。

ラーデンはリウの真摯な瞳から逃れるように目を逸らした。


「……私は」


呟くような言葉から、ラーデンの話が始まった。

リウは話を聞く姿勢に入り黙り込む。


「私は……かつて、宝飾品を作る仕事をしていました。最初はあまり売れませんでしたが、少しずつ売れるようになって……そこそこ有名になっていたのです。ある時、私が作った宝飾品を公爵様がお気に召されたらしく。それはもう嬉しかったものです。……ですが、私が作った宝飾のほとんどは偽の金や宝石で作られていました。私自身は本物の金や宝飾を使っているのだと思っていて……公爵様にも、そして今まで買って下さった方々にもそう説明していました。なのに、鑑定士に偽物だと告げられ……絶望しました。犯人は私がいつも宝飾品に使うものを仕入れていた商人で……彼が偽の金や宝石を私に売っていたのです。なのに、裁かれたのは私のみ。莫大な罰金を支払わされ、国からは追放。宝飾品を売っていたのですから商談は出来たので、私は商人になろうとしていました。しかし、商人は情報に敏感です。公爵を騙した悪人として私の噂は広まっていて、雇ってくれる人など誰一人としていませんでした。自分で商会を開こうにも、お金はない。途方に暮れて、丸二日ほどほとんど食事を摂れていないところで縋りついたのが、闇取引でした。闇取引ならば噂など関係なく、自分の商談を活かすことも出来たのです。今思えば、商談を活かすことなど諦めて一からなにかを為せばよかった。……この商会は闇取引で稼いだお金で開いたものです。それに、私は今も裏取引に手を染めています。足を洗う機会など、幾らでもあったというのに……」


簡単に纏めれば、ラーデンは偽物を本物だと騙され、公爵を騙した悪人として断罪され、お金と居場所を失い追放され、苦肉の策として出したものが闇取引に手を染めることだったのだろう。

しっかりとラーデンの話を理解したリウは、静かな声で話し出した。


「……まぁ、少なくとも。一番悪いのはあなたを騙した人で、一番の被害者はあなた。闇取引に手を染めたのも仕方無かったことは理解出来る。当時、冷静だったとは思えないものね。その場で出来た最善がそれだった。ただ、それだけ。だから、気に病む必要は無いのよ? 自暴自棄になって国家反逆とか起こしたりするよりかは何倍もマシでしょう」

「……しかし」

「それにね、闇取引をしているあなただからこそ私は今勧誘しているのよ? あなたがただの商人なら、他を当たってもよかった。あなたは有能ではあるけど、天才なわけじゃない」


訝しげな表情をするラーデンに微笑み、リウは告げる。

彼女が彼を真剣に説得をする、その理由を。


「闇取引を経験している者がいれば、闇取引に関連する問題に対処しやすい。後々、大きな利点になると思うの」

「私の知識が、役に立つと……?」

「ええ。人が移住すれば、もちろん悪い人だって流れてくる。ノルティアナで闇取引を始めたとして……それを見つけたとしても、あからさまなものじゃない限りは知識がないとよく分からないの。例えば薬物。ただの風邪薬とでも言い張られておしまい。なら、そこに知識のある者がいたら? 主張を論破出来る。その薬の特徴、効果……諸々とね。ほら、役に立つでしょう?」


にこりとリウが微笑んだ。

ラーデンは迷うような素振りを見せ、頭を下げる。


「お世話にあずからせて頂きます、リウ様」

「ええ。よろしくね、ラーデン」


再び笑みを浮かべ、リウが手を差し出せばラーデンもまた笑顔でその手を握るのだった。




「――みぃつけた」

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