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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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サンセール商会

ウィズダムを見送ったリウ、ディーネ、リエラの三人は、現在高級感漂うソファーに座っていた。

リエラは遠慮したのだが、二人に強制的に座らされたので既に諦めている。

三人が居るのは、商業ギルドにてオススメされ、また国王であるウィズダムからも紹介されたサンセール商会の応接室、もとい商談部屋である。

リウが見ても防音設備や警備が整っていたので、恐らく信用は置けるだろう。

もっとも、まだ会長と会っていないので勧誘を決めるには早いというものではあるが。

リエラは姿勢を正し突然入ってきても失礼の無いように気を配り、ディーネは興味津々な様子で周りの家具を眺め、リウは出された紅茶を口に含みながら悠々と会長を待つ。

数分ほどして、会長が入ってきた。

小太りで人の良さそうな男だ。


「お初お目にかかります、私、サンセール商会会長ラーデン・サンセールと申します。いやはや、まさか魔王様にお会い出来るとは想像もしていませんでした」

「……私はリウ・ノーテル。最古の魔王、悲劇女王(テラジェディレジーナ)の名を冠する者よ」


リウが魔王としての名も含めて自己紹介をした。

定型句はあるが、面倒だったのと怖がらせたいわけでもないので普通に挨拶を行う。

恐怖政治をするつもりはないのである。

同盟国に怖がられようがどうでもいいのでウィズダムには定型句を使った。

ちなみにどちらにせよ魔王であることは明かしているのであまり変わらない。


「それで、リウ様。ご用件はなんでしょう?」

「……私の国の収入源が欲しいの。まぁ、主な要件は特産品を売り、国の宣伝もしてほしいといったところかしら。あと一時的な資金として宝石を売りたいのと、それと、勧誘もだけれど……」

「勧誘についてはのちほど話しましょう。して、特産品というのは?」

「とりあえずは仮称として、精霊薬と呼ぶけれど……精霊竜グアルディアの加護を受けた地に国があってね。その恩恵で、水がこの精霊薬になるのよ。特徴は、傷の回復に通常の回復薬よりも美味しくて、肌に塗れば化粧水にもなるというもの。そのままじゃ効果が強すぎて値段を上げないといけないし、高すぎると売れないから普通の水で薄めるけれど」


リウはサンセール商会会長、ラーデンにそう説明し小瓶を二つ取り出した。

中にはキラキラと様々な色の光が舞う透明で不思議な液体が入っている。


「これがその精霊薬ですね。無色透明だが……中で光が舞っているようだ」

「正確に言えば、グアルディアの魔力ね。力が強大だから、周辺にまで効果を及ぼす。水が魔力を吸収して出来たものがこの精霊薬なのよ」

「ちなみに、この薬は傷を回復してくれるそうですがどの程度……?」

「……そうね、知っていた方がいいでしょう」


リウが刀を取り出し、自分の片腕に添えた。

驚き固まってしまう三人を尻目に、リウが自らの腕を浅く切り付けた。

血が垂れてきたことを確認すると、リウが片方の瓶を手に取り中身を飲み干す。

すると、すぐに傷が治っていった。


『……っ、りーちゃん! わざわざ自傷しなくても……!』


すぐにディーネが声を荒げる。

しかし、リウはキョトンとした様子で首をかしげるのみ。

その理由も理解しているディーネは、無駄なだけだと肩を落とした。


「リウ様……?」

「なぁに? リエラ」


なにも感じていない様子のリウを見て、リエラはここで話すべきではないと一旦諦める。

ラーデンは頬を引き攣らせながらもキョトンとするリウに話しかけた。


「り、リウ様、回復力は理解致しました。薄めても掠り傷を治したりするのは余裕そうですね。是非、取り扱わせて頂きます」

「あら、そう? ありがとう。じゃあ次は、資金が欲しいから宝石を売りたいのだけど」

「宝石とは、どんなものでしょうか」

「ええと……これ高いわよね?」


そう言いながらリウが取り出したのは、黒色の宝石――というより、鉱石であった。

それを見て、ラーデンが目を見開く。


「魔属性の魔力鋼……ですね?」

「ええ。魔属性って珍しいはずでしょう? それに、純度も高いと思うし……」


魔力鋼とは、魔力を大量に吸収することで変異した鉱石のことである。

リウが取り出した魔力鋼は黒。

魔属性を示す色であった。

魔属性というのはかなり珍しい属性で、魔属性の魔物の種類だって少ないので魔属性の魔力鋼はほとんど発生しない。

ちなみに、五百年に一度起こるとされる魔海が発生すれば別である。

魔海というのは、魔物が海、正確には津波を連想させるほど大量に押し寄せてくるという現象で、魔海により発生した魔物は全て魔属性なので終わったあとは鉱石が大量の魔属性魔力鋼になっていたりする。

リウがどうやって純度の高い魔属性の魔力鋼を回収したのかはお察しである。


「そうですね……これなら、金貨35枚……といったところでしょうか」

「んー……まぁ、すぐに無くなることはないでしょうし充分ね。ありがとう。……さて。――勧誘は、受けてくれるのかしら?」


にっこりと、リウが楽しそうな笑みを浮かべた。

ラーデンってラーメンみたいで美味しそうですね

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