過保護の理由
書くの忘れてましたがブックマーク、評価ありがとうございます!
正直何も考えずに書いてるだけの作品を見てもらえるとは思ってなかったので……
リエラの恋愛話を聞き終わり、ディーネの知り合いの恋愛についての話へと移らせたリウ。
……ディーネ本人の恋愛話は無かった。
リエラがリウ自身の恋愛についての話は持っていないのかと尋ねたが、リウの目が一気に死んだ魚のようになったので慌てて先ほどの発言を取り消していたりしたがそんな蛇足はここら辺にしておこう。
話に花を咲かしていた三人だが、途中で食器の回収をしに来たメイドが三人の姿を見てポカンとしていたので毒を盛った、或いはそれを知らされていたということを確信した。
食事を配膳してくれたメイドと同一の人物だったのである。
そんなわけで夕方になり、再びあのメイドが食事を配膳してくれたが夕食にも毒が盛られていた。
あの毒が効かないと理解したらしく、今度は致死性の猛毒を盛ったらしい。
リウとディーネは当然効かなかったが、リエラはあくまでも耐性を持っているだけなので効果を殺し切れず軽度の頭痛と腹痛を起こした。
すぐにリウが治癒したが、〝私の配下を傷付けるなんて覚悟は出来てるんでしょうね死ね!〟などと言い始めたのでリエラ的にはそっちの方が大変だった。
なにしろ、物凄く暴れたのだ。
結局ディーネが念のため防音結界を張ってリウを水で拘束し、とりあえず甘やかしたら落ち着いた。
そんなリウは現在真っ赤になってベッドの端で膝を抱えている。
「……毒盛った奴が悪いもん……」
『暴れたのはりーちゃんだよね』
「……暴れた理由作ったのは毒盛った奴だもん……」
『だからって配下が体調を崩した程度で暴れていいわけないよね』
「ふぐぅ……」
リウがベッドに突っ伏した。
備え付けられた枕を抱き寄せ、足でホールドする。
不満げなリウの頬はリスのように膨らんでいた。
『毒盛った奴に対して怒るのは別にいいんだよ? でも犯人分かってない状態でどこ行こうとしてたの?』
「……適当に……誰彼構わず……」
『じゃあ駄目だよね?』
「うー……」
リウが軽く幼児化している。
今までその様子を見守っていたリエラが控えめに口を開いた。
「リウ様に治癒して頂いたお陰でもう治っていますし、お気になさらないで下さい。あれで軽く体調不良を起こすだけで済むのですから、毒で死ぬこともないでしょうし……」
苦笑い気味にリエラが告げれば、リウは少し落ち込んだ様子で口を開く。
碧と翡翠のオッドアイは、不安げに曇っていた。
「……なら、直接襲撃されてしまったら? そして、死んでしまったら?」
ポツリとリウが尋ねた。
今告げた言葉こそ、リウが暴れた理由であった。
「そのときは、返り討ちに……」
「それが不可能なほど実力差があったらどうするの?」
リウは心配でならないのか、終わりの無い質問を繰り返す。
戦えるとは思えないほど細い腕が縋るようにリエラの肩に回された。
リウが肩を震わせながらリエラの肩に額を擦り付ける。
「リウ様、質問してもいいでしょうか」
「……ん」
リウが小さく返事をしたのを確認すると、リエラは躊躇いがちに尋ねた。
「先ほどから……どうして、わたくしが居る場で弱みを見せているのですか? リウ様は、簡単に弱みを見せるような性格ではないと思うのですが……」
リウが息を呑んだ。
きゅっと唇を引き結んでから恐る恐るというように口を開く。
「……私の、尊敬する人と重ねてしまうの。外見も、喋り方も全然違うのに……たぶん、性格が似ているからね。隠していることを見抜かれて、私のことを心配してくれる……ごめんね。リエラはリエラなのに、あの人と重ねちゃってつい過保護になってしまったの」
「いえ。心から心配して下さっていることは分かりますから」
「……そういうところよ。はぁ、駄目ね……ちゃんとしなきゃ。心配してくれてありがとう。今日はもう寝ましょう?」
小さく微笑み、リウがリエラを巻き込んで寝転がる。
黙っていたディーネもリエラの隣に陣取った。
リエラを中心として川の字で眠るらしい。
リウが普段通りに戻っておやすみと告げると、リエラとディーネも就寝前の挨拶を返して眠りにつく。
二人が完全に眠ったことを確認すると、リウがゆっくりと後ろを振り返った――
◇
一方で、イルム王国国王ウィズダム・イルムは城の会議室に居た。
「……メイドの一人が、彼の魔王に毒を盛ったらしい」
ウィズダムの静かな言葉で始まったその会議は、過去最高に白熱していた。
魔王であるリウの怒りを買えば、たかが小国でしかないイルム王国は滅んでしまうと考えたからである。
ウィズダムは、なにも知らない貴族ほどは焦っていなかったが。
「そのメイドは捕らえたのか?」
公爵の一人がウィズダムにそう尋ねれば、肯定が返ってきた。
しかし、安心したのも束の間。
「だが、処刑は保留にしている」
ウィズダムの言葉に、貴族たちから怒りの声が上がる。
死刑にしてしまえば魔王もこちらへ矛先を向けることはないだろう、と。
だが、ウィズダムは淡々と自分の考えを語った。
「処刑してしまえば、彼の魔王は却って怒ってしまうだろう。少なくとも、私の目にはそう行動するほど彼の魔王は優しいように見えた。……メイド自身も、処刑してくれていいとは言っている。だが、」
ウィズダムは一度言葉を区切り、そして貴族たちを見据えた。
「魔法で口外出来ないようにされているため自白は出来ないが、自分に指示を出した人にも処罰を与えて欲しい、と言っていた。メイドを処刑するもしないも後回しだ。先ずはメイドに指示を出した者を探す。異論は認めない」
その言葉に、貴族たちは無言で従うのだった。




