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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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ナンパの命運は

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不穏な気配を発見し、一抹の不安を抱えるリウとディーネ、そしてそんな雰囲気からなんとなく察してそれとなく周囲を警戒しているリエラの三人は、イルム王国に入国するため行列に並んでいた。

気配を見つけてからしばらく経っており、あと数分もすればいよいよリウたちの番というところまで来ていた。


『もうすぐだね~、りーちゃん、リエラ』

「そうね。……リエラ、今の内にお金も渡しておくわ」

「申し訳ありません、り――」


リウがそっと立てた人差し指を唇に添えた。

にっこりと微笑み、少しだけ声を潜めながら告げる。


「私も今の今まで忘れていたけれど、偽名。その名前で呼んでは駄目よ。それと、ディーネみたいに呼ぶか、呼び捨てにして」


リエラがハッとして頷いた。

それに少し微笑み、リウが前に向く。

リウの偽名は〝リエ〟である。

ついでに言えばディーネ考案で、しかもリエラのエから取っている。

それから少し待つと、リウたちの順番がやって来た。

外見年齢的に一番歳上で、かつ三人の中では一番若いリエラが決めた通りに門番と会話をする。


「身分証明を出来るものは?」

「申し訳ありません、辺境(森の中)(里だった場所)から来たもので持っていないのです」

「なら、先ずは全員こちらに手を翳して魔力を通して下さい」


門番がそう告げながら、側にあった水晶玉のような魔道具をリエラたちに向かって少し押し出す。

先ずは先頭のリエラが水晶玉に手を翳し魔力を流した。

門番は水晶玉が淡く緑色に輝いたことを確認すると、次はリウを促す。

リウも同じように魔力を流すと、緑色に輝いた。

ディーネも同じことをして、リエラがお金を渡すと三人は入国を許可される。

門番は親切で、次に入国する時のためにギルドなどに登録することをオススメされた。


「えーっと、とりあえず……商人に会いたいのよね。宝石売るついでにコネを作っておきたいわ。あわよくば勧誘もしたいところだけれど」

「では、商業ギルドにでも行きますか?」

「そうね。……商業ギルドってどこ?」


リエラの言葉に頷いてから、リウはこてんと小首を傾げて尋ねた。

そんな様子にディーネは可愛い可愛いと抱きつき、リエラは苦笑い気味に商業ギルドへ向かった。



商業ギルドに辿り着くと、リウたちはそれはそれは注目を集めた。

三人共、とても顔が整っているのである。

目立つのは仕方無いので、視線を無視してリウが小声でリエラに信用のおける商人が居るかどうかを受付嬢に尋ねるように促した。

リウが尋ねるのはちょっとおかしいので大人しくリエラが受付嬢の元へ向かう。


「すみません。少しお聞きしたいことがあるのですが……」

「はい、なんでしょう」

「信用のおける商人の名前を伺いたいのですが」

「そう、ですね……信用のおける商人ですか。サンセール商会などは人気がありますが……」


リエラが頷いて、受付嬢に微笑む。

そして、更に質問を重ねた。


「では、そこの会長さんにお会いすることは?」

「それは、すみません」

「いえ。そのサンセール商会の場所はどこでしょうか?」

「こちらの地図をお渡ししますね。この場所がサンセール商会です」

「ここですね……ありがとうございます」


リエラがお礼を言ってリウとディーネの元に戻った。

三人は商業ギルドの外へ出ると、地図に描いてあるサンセール商会に向かう。

そうして歩いている途中で、三人はチャラチャラした五人の男に話しかけられた。


「君たち、もしかしてこの街初めて~? 案内しようか? この近くに美味しいカフェがあるんだよ」

「そうなのですか。ですが、申し訳ありません。私たちは用事がありまして」


リエラが少し警戒しながら男の言葉に返答する。

ディーネはリエラの後ろで空中に佇み、リウはキョトンとしていた。

リエラとディーネは知っている。

こういうお誘いはただのナンパで、断るべきなのだということを。


「まぁまぁ、そう言わずに。少しだけでいいからさ?」


男がリエラににじり寄った。

リエラは少しだけ後ずさる。

ひっそりと、後ろでリウが不快感をあらわにした。

そして、静かな声で口を開く。


「リエラから離れて」

「……は?」


男たちが背後のリウを見た。

淡い金髪に、碧と翡翠のオッドアイ。

その顔立ちは未だ幼いが、確かに整っている。

ナンパの対象になるのも、無理はなかった。


「君、可愛いね。どう? 休憩がてら一緒にカフェでも――」

「どうして、私があなた方のような下衆共とカフェに行かなければならないの?」


男の言葉を遮ってリウが冷ややかな言葉を浴びせた。

いつもより丁寧で、それでいて毒を含んだ言葉を聞いたディーネが()()()()がキレたのだと察する。

リウは純粋な笑みを貼り付けてリエラの前に出る。


「非常に残念なのだけれど、私たちは忙しいし、辺りの女性方に声をかけて迷惑をかけることしか能のないあなた方のような低能とは違ってちゃんとした用があって居るの。お分かり?」


純粋無垢。

そんな言葉がぴったりと当て嵌めるような笑顔を浮かべながらリウが毒を吐いた。

一度怒れば止まらないことを理解しているディーネは、諦めたようにリウの気が収まるまで待つことを決める。

再びにこりと微笑んだリウは、男に近付き、


「国の情報網と迅速な対応に、感謝なさいな」


その耳元にそう囁き、素早くリウたちを包囲した王国騎士に向かって柔和に微笑むのだった。

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