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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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不穏な気配

イルム王国に入国するため、門の前に出来た行列に並んだ三人。

それから約数分間ほど経ち、早々にディーネが暇をもて余していた。


『りーちゃん、リエラ。暇ぁ』

「我慢なさい」

「申し訳ありません、わたくしではどうにも出来ませんので……」


リウからは冷たい言葉を浴びせられ、リエラからは申し訳なさそうな声が飛び出してディーネはシュンとしてしまった。

我慢するしかないということは理解しているので、手入れをするだけで飾ることもないリウの淡い金髪を弄り出した。

手櫛で丁寧に梳かし、先ずはハーフアップにしてみる。

髪留めは無いので魔法で出した水をリウの髪に固定して代用した。


「ディーネ、やめて」


僅かに顔を顰めながらリウがそう告げる。

ディーネはそれを無視してハーフアップにアレンジを加えて遊んでいた。


「嫌いなのよ、こういうの……」

『別にいいでしょ、注目されるくらい。別に結ぶこと自体が嫌なわけじゃないでしょ?』

「そうだけど……それだったら、ほら……リエラにやればいいじゃない」

『リエラの髪も綺麗だと思うけど、もう結んであるから出来ないんだもん』


正論である。

リウはチラリと申し訳なさそうな表情をするリエラの緩くお団子に結われた紫色の髪を恨めしげに眺めた。

リウがどうして上の方ではなく下の方で結っているのだろうと現実逃避気味に考えた。


「リエラはどうして下の方で結んでいるの?」


現実逃避で考えていたことが本格的に気になり始めてリウがリエラに尋ねた。

リエラが一瞬キョトンとして、少し首を傾げながら答える。


「自分で結んでいるので、下の方がやりやすいから……でしょうか。長らくこれで過ごしているというのもありますが……」

「ふぅん……そうなの」

『あんまり変わらない気がするけど……しいて言えば腕が疲れにくいのかな? あ、リエラ。見て見て、これ可愛いでしょ。三つ編み』


いつの間にかリウの髪がハーフアップから三つ編みに変わっていた。

全ての髪を一つの三つ編みに束ねられている。


「リウ様は、なんでも似合うのですね」

「なんでもじゃないわ。というかディーネ、暇なら自分の髪弄りなさいよ」

『他の人のだから面白いんだよ。あ、だったらりーちゃんが私の髪弄ってみて? 楽しさ分かるよ。それ嫌だったらほどいていいから』

「ん……ほどけた。まぁ、されるよりはした方がマシね……ほら、私の前行きなさい。ちゃんと歩くのよ」

『やったぁ!』


ディーネが意気揚々とリウの前に行った。

リウは少しだけ思案して、ディーネの海色の髪を手に取りポニーテールにした。

普段の元気で明るい雰囲気も相まって非常に似合っている。


『ポニーテール? どう? 可愛い?』

「可愛いわよ」

「非常に可愛らしく存じます」

『えへへ、ありがとー』


しばらくディーネがその場ではしゃぎ、落ち着くとリウに他の髪型にするようにねだった。

次はリエラと同じように緩いお団子にしてあげるリウ。

ディーネはリエラと同じ髪型だと嬉しそうにはしゃぎ、次々と髪弄りをねだった。

飽きたわけではないらしいが、なんとなく違うことをしたいと思ったらしく髪をほどいてもらったディーネはリウとリエラの周りをぐるぐると周り始めた。

リウは苦笑いを零し、リエラはキョトンとしている。


「ディーネ様、どうされたのですか?」

『んー、なんとなくー』

「……ディーネ……」

『呆れないでよぉ』


明らかに呆れているらしいリウにディーネが文句を言った。

しばらくすると、リウの腕の中に収まる。

リウは気を遣ってそっと魔法でディーネに話しかけた。


()()()()()?』


そう話しかけられると、ディーネが嫌そうに答えた。

先程の行動は誰かへの威圧行動だったのだ。

誰も、大精霊と敵対しようなどとは思わないだろうから。

大精霊とは気付かれなくても、リウとリエラの精霊ということを知らしめられればそれでよかったのだ。


『……リウを襲った奴の仲間。服装が同じだった。人数は五人かな。動揺してたみたいだし、これから来る誰かを狙っていたか、この国を監視していたかだと思う』


ディーネが見つけた誰かは、リウへの刺客の仲間らしい。

その言葉を聞いて、リウが表情には出さずに思案した。


『……国の諜報員、または暗殺者かなにかかしら?』

『なら、りーちゃんを狙ったのはなんでかな』

『私が魔王だから? いえ、わざわざ危険を侵すこともないわよね……んー……考えてもしょうがないわね。私は平気だけど、リエラも居るし気にかけてくれる?』

『りょうかーい』


そんなディーネの軽い返事を確認すると、リウは魔法を解除した。

リウとディーネは不穏な気配を遠くから感じつつ、リエラもまたそんな二人の雰囲気からなにかがあったのだろうと察して一抹の不安を感じながら三人は行列に並び続けるのだった。

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