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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
国を作りましょう
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噴水

ディーネにたっぷりと甘やかされ眠ってしまったリウは、自室のベッドの上でぼんやりとベッドの天蓋を眺めていた。

隣にはリウの腕に抱きついているディーネも居る。

リウは寝惚けているらしく、呆けたような表情でただ天蓋を見つめていた。


「んん……ディーネ……」


ふと、リウがそんな声をあげる。

横を向き、ディーネを抱き締めた。

ふにゃりとリウが笑みを浮かべ、ディーネの頭をそっと撫でる。


「仕返し……しないと……」


甘やかされたことへの仕返しということらしい。

リウもディーネも表情が嬉しそうなのでじゃれているようにしか見えない。

ちなみに、ディーネは爆睡している。

が、撫でられている感触は伝わっているようである。


「んふ……」


悪戯っぽい声が漏れた。

未だ眠たげな瞳ではあるが、頭は冴えてきたようである。


『んんぅ……りーちゃん……?』


ディーネが薄らと目を開いた。

水色の瞳がリウの姿を捉える。


「ディーネ……起きちゃったの……?」

『へ? あ、うん……起きたよぉ。おはよ。……でも、お昼かぁ』

「仕返し、まだ終わってないのに……」

『ん~? していいよ~?』


ディーネがそう告げると、リウがぎゅっとディーネを抱き締めて頭を撫で始めた。

完全に目が覚めたのかその瞳には確かな知性が宿っているが、にんまりとした笑みのせいで知的な雰囲気は微塵も感じられない。

普段のリウから知性な雰囲気が感じられるのかと聞かれれば、答えには少し詰まってしまうかもしれないが。


「可愛い、ディーネ可愛い。レアも可愛いけど、ディーネも可愛い!」

『……へっ!? い、いや、ちょっと待ってりーちゃん! 素なの!? それが素!?』

「? ……あ。いや、その、いやっ、別にぃ!? か、可愛い物好きとかじゃないし! ディーネとレア着せ替え人形にして可愛がりたいとか思ってないし……! あうぅ……えっと、ディーネったら変なことを言うのね!!」


リウが壊れた。

否定してはいるが、本音を全てぶちまけてしまっている。

本音なのが丸分かり過ぎてディーネに微笑ましげな、それでいて呆れているような良く分からない視線を送られるほどである。


『変なことって……まぁいいや、りーちゃんがそういうことにしたいならそういうことにしとくね。あー……目覚めちゃった。りーちゃん、なにしよう?』

「あ、あなたね、すぐ私に頼らないでよ……しいて言えばレア連れてきて私の着せ替え人形になって?」

『やだ。えー、なにしよう。んん~……あ、そうだ! リウが寝言で街道がなんかちょっと物足りないとか言ってたし、もう一回改良しに行こう? 噴水とか、あとは道の脇に窪み作って水流すとか』

「採用。作りに行きましょう」

『は、早い!? りーちゃん待ってぇ!』


二人がもう一度外へ出た。



リウが〝物質創造〟で道の脇に窪みを作りながら歩いていた。

その横には当然ディーネの姿もある。

ディーネはリウが創った窪みに精霊の力で水を流しているようだ。


「噴水はどこに創りましょう。国の中心はお城だし……やっぱり城下町の中心? でも、そうなると四つも設置することになるわよね……一つ一つ趣向を変えれば飽きが来ないかしら? それとも統一するべき……?」

『四つに区分けした城下町のそれぞれの中心に広場を創るのは決定だったんだよね? だったら場所はそこでいいよね。噴水は……微妙に変えるのはどう? あ、確かそれぞれの種族の族長は大きな屋敷に住んでて貴族的な立ち位置なんだよね? じゃあそこに住んでる族長さんのオブジェクトを噴水に飾りとしてやればいいんじゃない? れーちゃんの種族は純血竜だから、小さい竜の像とか』

「面倒だから採用。創りましょう」


二人が一区画目の広場に辿り着くと、リウが〝物質創造〟を発動させた。

少し大きめの噴水が出来上がり、その中心には小さな、されど威厳ある姿の竜とその竜に寄り添う兎の像があった。


『そっか、兎耳族も暮らしてるもんね。可愛い』

「お世話とかしてると後々差別やら格差やらで問題が起きそうだから、甘えさせてみたわ」

『可愛い……ずっと見てれる』

「ふふふ、自信作だから気持ちは分かるけど次に行きましょう」


二人が二区画目へ移動する。

創り出した先ほどと全く同じ形の噴水には、猫と犬の像があった。

この場所は猫耳族と犬耳族が暮らしているのだろう。

ぴったりと背中を合わせており、仲が良さそうに見える。


『これ、りーちゃんの才能だよね。凄いよ、これぴったり背中合わせになってるから仲が良さそうに見えるんでしょ? しかも可愛い』

「んふふ~……次行くわよ」


嬉しそうな笑みを零しながらもリウがディーネに声を掛け、三区画目に虎耳族と熊耳族の像。

四区画目にエルフとドワーフの像という風に噴水を創っていった。

そんな噴水を見た族長たちは、とても嬉しそうにリウに感謝を述べるのだった。

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