偽名
すみません超短いです。
数時間後。
「……ん、んぅ……?」
「あ、おはようございます、リウ様」
「レア……? おはよぉ……」
リウが目を擦りながら身体を起こして朝の挨拶をした。
といっても、もう既に夕方なのだが。
「んん~……今何時ぃ……?」
「えっと……午後7時過ぎですね」
「7時ぃ……?」
「はい」
リウがきょとんとした。
そして、寝惚け眼のまま窓を見る。
茜色に染まる空を見てリウが意識を覚醒させた。
「な、なんでこんな時間!? 私いつの間に寝てっ……!」
『えっとねー、れーちゃんに抱きついてそのまま寝ちゃったよ?』
「レアごめんなさい! 重かったわよね!?」
「はい!」
レアが満面の笑みで頷いた。
事実、とてもとても重かったので。
リウが申し訳なさそうな表情をする。
「うう、ごめんねレア……」
「いえ、大丈夫です」
リウがそっとレアを抱き締めた。
レアが優しく微笑む。
「それで、リウ様。色々とやることがあると思いますけど、どうしますか?」
「あ……そうね。えっと……時間的には少し早いけど、会議を開きましょう。私の過去は知っておいてもらった方がいいと思うし……」
「分かりました! メンバーはどうしますか?」
リウが少し考え込み、答える。
「えっと、私とよく関わる人たち……かしら。いつもの会議のメンバーは当然として……他にも数人かしら?」
「そうですね。今から招集しますか?」
「ええ、お願い」
「分かりました!」
レアが駆け出していった。
二人のやり取りを眺めていたディーネが慌てて起き上がってレアを追いかける。
『れーちゃん待って~! 私も手伝うー!』
そんなディーネの後ろ姿を見てリウがくすくすと微笑んだ。
リウがベッドから降り、ゆったりとした足取りで会議室へと足を進めた。
◇
数十分後。
会議室によくリウと関わっているメンバーが着席していた。
メンバーの確認を行っていたリウが頷き、立ち上がる。
「さて……会議を始めましょうか。議題は……私の過去についてよ。……ただ、興味のない人は戻ってもらっても構わないわ。私の過去を知るのが必要なのかと言われるとそうでもないし。……私が、知っておいてほしいだけだから。興味がないならそれでもいい」
リウがそう告げて会議室を見渡した。
しかし、立ち去るものは居ない。
リウが嬉しそうに微笑んだ。
「……途中で聞くのをやめてもいいわ。本当に、聞きたい人だけでいいの」
最後の確認とばかりにリウがそう告げた。
そして、深呼吸をして口を開く。
「先ず、私の本当の名前は、リルシー・ヴェイル・リフィード。私にとってはリウ・ノーテルという名前も自分の名前なのだけれど……真名では無い以上、偽名、ということになるのでしょうね。……ごめんね」
リウが眉を下げながら言った。
しかし、誰一人として嫌な顔をする者はいない。
それに小さく微笑んでリウが言葉を続けた。
「私は、遥か昔に存在した大国、リフィード王国の第一王女だった。優しくてご立派なお父様とお母様に、とても愛されて育ったわ。――だけど」
リウが一度言葉を区切った。
「あの日から……私が聖女だということが判明した日から、私の人生は変わってしまったの」
リウが脳裏に過去の出来事を映し出した。
ここで切らないとキリが悪くなっちゃうので……すみません……




